【みっつんの勉強会ブログ・第14回】<過去問斜め読みシリーズ(その1)>歴代16年分のA社の変遷を見てみよう
おはようございます/こんにちは みっつんです。
1次試験の結果が発表されましたね。合格された方、おめでとうございます。これから残り少ない2次までの時間を有意義に過ごしていただくためにも、過去問を例えば過去5年に絞って取り組んでいただくと良いと思います。そんな中、6年以上前の過去問も気になる、という方は、ぜひこの記事を最後までお読みください。
前回のブログまでシリーズでお送りしてきた「60点答案に学ぶ(学ばない)低空飛行合格術」は、みっつんの再現答案のストックが底をついてしまったため、終了してしまいました。なんとか新シリーズを模索しようとして2次試験問題をあれこれ見直しているなか、純粋に、どんな企業が過去問に登場してきたかをざっくり見直せる記事があってもいいかなと思いました。
そこで、歴代の過去問に登場した与件企業の“変遷”を紹介する「過去問斜め読みシリーズ」をお送りしたいと思います。多くの合格者が言う通り、過去問は5年分はやっておいた方が良いと思いますが、かなり昔のものまで手を付ける時間もないと思いますので、そこでこのブログでお役に立てればと思います。
今回はその1回目、事例I(A社)の斜め読みです。
新制度になった平成13年度以降に登場したA社を、16年分順次ご紹介します。
【平成13年度】パンおよび菓子の製造・販売企業
・売上高52億円、従業員250名(臨時社員が55%)
・典型的な同族企業で、株式のほとんどを創業者一族が所有
・製造部、営業部、管理部を中心とした機能別組織(職能別組織)
・戦前創業の老舗
・長引く景気低迷の中で売上高・営業利益ともに低下しており業績改善が急務
【平成14年度】独立系の中堅情報処理サービス企業(独立型システム・インテグレーター)
・資本金1億円、売上高40億円、従業員数450名(パート含む)
・営業利益1.2億円、営業利益率3%で高利益ではない
・取引先の7割がメーカー系エンジニアリング会社でエンドユーザ系企業の売上比率は3割未満
・医療システム事業部、システム開発事業本部、システム運用事業本部と、営業本部、管理本部、経営企画室の管理部門により構成される
【平成15年度】中古自動車販売業
・資本金1,000万円の株式会社。売上高4.6億円、売上高経常利益率2%、従業員は全員正社員で11名
・4年前から新規事業として焼肉店a店を開業、全国展開の中堅焼肉FCのQ社と契約
・BSE問題で売上高30%ダウン、アルバイト・パートの士気も落ち込む
【平成16年度】印刷業者
・1930年代に創業、資本金1,000万円、従業員21名(パート含む)、売上高3.5億円、経常利益は3期連続マイナス
・売上高人件費比率が30%まで高騰
・長期不況下でコスト削減策を求める顧客圧力の中で、最新設備を導入した大手印刷業者により低価格競争に拍車がかかった
・売上の多くを一部の主要顧客に依存する傾向
【平成17年度】IT関連ベンチャー企業
・資本金1,000万円、売上高3億円、社員14名(アルバイト含む)
・社長も従業員も20歳代の若者
・2002年、当時学生であったA社社長が有限会社を設立
・現在の売上構成は、創業当時からのプログラム開発とホームページ作成が40%、バナー広告料60%を占める
・短期間で急速な成長を遂げた一方で、経営管理体制や人事制度はほぼ皆無で手つかずの状況
【平成18年度】化学品の専門商社
・資本金9,000万円、売上高200億円、従業員は100名(契約社員、派遣社員含む)
・売上高営業利益率2%で、近年の景気回復基調の中で業績は上向き傾向
・1950年代初頭、中堅化学メーカー100%出資の販売子会社として発足。その後主要取引先からの出資もあり親会社の出資比率は60%に。
・社長就任1年を経て現社長は5年後のあるべき姿として「売上高400億円、営業利益率3%」という数値目標を定めた経営ビジョンを掲げた。海外市場の拡大と廉価品の輸入といった輸出入事業の成長を見込んでいる。
【平成19年度】インポート・ブランドのアクセサリー販売業者
・資本金2,000万円、売上高6億円、営業利益1,600万円、従業員は66名(正社員15名、契約社員47名、アルバイト4名)
・東京都心の直営路面店1店舗と、有名百貨店や大手ショッピングセンター内のインストアショップ14店舗を保有
・社長は1990年に有名アパレルメーカーを退職、セレクトショップを開業し、その後事業拡大してきた。
・平均単価10万円超の高級Xブランドと平均単価3万円の若者をターゲットとしたYブランドを保有。今後はブランド力を高めていくことが大きな経営課題である。
【平成20年度】国際線の機内食の製造販売を主業とする食品加工メーカー
・資本金3,000万円、売上高18億円、従業員300名(正規・非正規含む)
・1970年代半ば、航空会社の機内食用ミニカップ入り食品の製造で起業。ケータリング会社からサラダ用カット野菜の注文を受けて事業基盤が固まってきた。
・1990年代半ばになり、航空会社からの打診を受け、本格的調理(ホット・キッチン)を必要とするアントレーの製造を開始。製造設備や温度管理、配送体制等を整備した。
・2007年に最新の製造設備、24時間稼働体制で操業を開始した第4工場はハサップ(HACCP)認定工場となっている。
・営業利益率は2005年度8.0%から2007年度0.9%と大幅に減少
・それまで流れ作業で行っていたアントレーの盛付けを、担当者が一人で一つのアントレー盛付けを行う「シングル・ワークステーション(SWS)」方式に変更した。
【平成21年度】菓子メーカー
・資本金4,000万円、売上高12億円、従業員130名(パート・アルバイト含む)、15店舗を保有
・地方都市W市に拠点をおく。1年半前に事業拡大を企図して地元の洋菓子メーカーF者を傘下に収める
・4年前からの大都市圏内のデパート、高級スーパー進出により成長を遂げる。原材料重視というコンセプトが消費市場の食の安全に対する意識や自然志向の高まりにマッチしたことが成功要因。
・昨年末の景気低迷で消費市場は厳しさを増し、売り上げの落ち込みもみられる。
【平成22年度】砂糖等の食品原材料を扱う一次問屋
・資本金8,000万円、年商170億円、経営利益は2~3億円でここしばらくは増収増益傾向。社員125人。
・砂糖業界に限ると、取引している二次問屋が1,000軒を超えるA社は国内でトップクラス
・顧客の価格志向が強くなり、また、砂糖業界での企業間競争も激しくなってきている。
・年功序列型給与体系を適用してきたが、ある程度新陳代謝を促していかないと存続すら危ういという不安があり、わずかではあるが成果主義的要素を取り入れた。
・中小喫茶店チェーンなどをターゲットにスティックシュガー等を供給する新規事業に取り組んでいる。
【平成23年度】医薬品メーカー
・資本金1億円、売上高37億円、従業員230名(うち非正規社員20名)
・一般家庭向け医療品分野で商品ラインナップを充実させ事業規模を拡大、高度経済成長期に開発したガーゼ付きの救急用絆創膏を発売して全国市場で有名になる。
・1970年代に不動産事業や医療品以外の物販事業に進出するも失敗、再建にめどが立ち始めると創業家一族の勢力が復活した。しかし1980年代初めに差別化競争・価格競争の激化によって再び経営不振になる。営業の最前線にいた当時の常務取締役が現社長となった。
・主力商品の絆創膏の製造で培った技術を応用し、高付加価値製品を医家向け市場に供給することを目指す。
・現社長は事業多角化にも乗り出し、「健康・美」を求める中高年層をターゲットに化粧品や健康食品事業に参入した。
【平成24年度】金属部品の製造および金属の表面加工処理メーカー
・資本金7,000万円、売上高40億円、従業員109名(うち非正規社員66名)
・1970年代初頭、自動車部品メーカーY社からの要請で、部品軽量化を実現するアルミニウムの硬度強化の技術開発に取り組み、実用化に成功、徹底した品質保証体制を確立した。
・自動車メーカーX社の勧誘と経済的支援を受けて2002年、経済成長著しいS国の経済特区内に初の海外工場を開設した。海外工場で国内と同様の品質保証の体制の確保できるかどうかは、大きな挑戦である。
【平成25年度】サプリメント等の健康食品の通信販売業者
・資本金1,000万円、売上高70億円、従業員135名(うち非正規社員109名)
・創業当時近畿県産の特産品の通信販売を営んでいたA社は、現在の主要委託製造先であるX社からの販売の依頼がきっかけでサプリメントを扱いはじめる。
・2000年代半ばにX社と共同して企画した骨・関節サポート向けサプリメントへの絞り込みを決断してから、業績が急速に伸長し始めた。
・売上規模を急拡大させた中にあって、毎年2~3名程度の正規社員を中途作用してきたに過ぎない。他方、顧客に直接対応するコールセンターのオペレーター業務は、非正規社員とはいえ直接採用し、売上規模の伸びに応じて増員している。
【平成26年度】精密ガラス加工メーカー
・資本金2,000万円、売上高3.5億円、従業員40名(うち非正規社員15名)
・生産、研究開発を中心にした機能別組織
・2度のターニング・ポイントがあった。最初はレーザー用放電管の開発で、研究機関からの依頼ではなくA社社長のアイデアではじめて自社開発に着手し、レーザー装置そのものの製品化に繋がり、売り上げが大きく伸長する。2つめは、理化学分析用試験官のOEM生産を化学用分析機器メーカーから依頼されたことであった。製造設備の内製化を進め量産体制を完成させた結果、良品率の改善を図れた。
・これらターニング・ポイントを経る中で、A社社長は、以前にも増して、研究開発力の強化なくして事業の成長も存続も望めないことを痛感するようになった。
【平成27年度】プラスチック製品メーカー
・1950年代創業、資本金1,000万円、売上高14億円、従業員75名(非正規社員含む)。1979年設立の従業員70名のプラスチック製容器製造を手掛ける関連会社を含めると総売上高36億円で、グループ全体での売上構成比は、プラスチック製容器製造が60%、自動車部品製造が24%、健康ソリューション事業が16%。業績はほぼ横ばいだが高い利益を上げているとはいえない。
・1970年代に台湾や中国製の廉価なシャトルコックが輸入され、A社の売上は激減したが、自動車部品の受注生産やレジャー用品の製造で採用していたブロー成型技術の高度化が、A社再生への道を切り開くことになる。
・再起をかけたA社社長は、自社開発の新しい成型技術を活かすことができる楽器収納用ケース製造等の新規事業を、関連会社として独立させた。
・ゲートボールやグラウンドゴルフ等シニア向け事業で培ってきた知識・経験、ネットワークを活用できることから、スポーツ関連分野の事業全体を健康ソリューション事業と位置づけ、体力測定診断プログラム等のソフト開発にも着手しサービス事業を拡大した。
【平成28年度】印刷業者
・資本金4,000万円の地方都市に本社を置く老舗印刷業者。売上15億円も、ここ数年赤字経営に近い状態で推移している。
・売上の70%を占めているのは学校アルバム事業であり、創業以来の主力製品である。製販から製本までのアルバム制作の全工程を一貫して自社内で行っており、国内シェアもトップクラス。
・1970年代半ばに他社に先駆けてオフセット印刷機を導入し、独自で技術開発に取り組んで印刷精度を向上させた。社員教育に力を注ぎ、企画力やデザイン力を強化・向上させ、他社と差別化を図った。
・1980年代後半、事業多角化を模索し始め、カレンダー等のオリジナル製品の開発、コンサルティング事業やタウン誌等の出版事業にも手を伸ばした。
・現社長が就任した2003年を前後して、印刷のデジタル化により他業種から印刷事業への新規参入が急増するようになった。価格競争激化により市場規模が縮小した。さらに2008年のリーマンショックの余波が印刷業界を襲った。
・A社社長は経営改革を決意し、多角化した事業に分散していた経営資源を主力製品であるアルバムに集中し強化することにした。ターゲットを学校だけに限らず、美術館や企業、一般消費者のアルバム需要の掘り起こしに注力した。
・組織改革にも着手し、「営業⇒企画⇒編集⇒印刷⇒製本⇒発送」といった一連の工程を中心に学校アルバム事業に適応するよう編成してきた機能別組織体制を見直し、アルバム事業、一般印刷事業、美術印刷事業、教育関連事業等、複数の事業間に横串を刺すことによって、全社が連動し人材の流動性を確保できる組織に改変した。
*****
さて、ここまで一読されてお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、直近年度の平成28年度に出題された「印刷業者」は、実は12年前の平成16年度にも別の「印刷業者」が出題されていたことがわかります。もちろん、業種が同じというだけでA社の前提は全く異なるため、過去問を解いていれば有利というわけではないと思いますが、一度目を通したことのある業種が出てくれば、全く初見の問題でもとっつきやすく感じることができると思います。皆さんが受験される平成29年度はどの業種が「当たり目」になるでしょうか。
なお、同業種であればSWOTのO(機会)やT(脅威)が共通する部分があるかもしれませんが、与件文に書かれていない事柄を想定して問題に取り組むのはご法度ですので、注意が必要です。念のため。
次回のみっつんブログでは、事例Ⅱ(B社)の斜め読みをしてみます。ご期待ください。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
明日は関西から:スーさんです。お楽しみに。
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初めまして。夏セミナーに参加させて頂いたものです。斜め読みは分かりやすく素晴らしいですね!是非参考にさせていただきます!
アンゾフの成長マトリクスと、もう一つチャートにしてまとめようと考えています。(まだ縦横軸はノープランです…)
以上です。失礼しました。
ヨシダサンさん、コメントありがとうございます。みっつんです。返信が遅くなり申し訳ありません。隔週金曜日のブログでこれから事例Ⅱ、Ⅲ、Ⅳについても順次斜め読みしてみますので、引き続きご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。