【日曜日は名古屋の日】”うめもん流”独断による平成28年度2次試験の所感と解答<事例Ⅱ編>

さて、引き続き事例Ⅱです。

解答状況や条件はこちらを参照ください。


※今年受験されていない方へ 問題はこちらより入手してください。


平成28
年度 第2次試験【事例Ⅱ】

【所感】難易度:中~低(やや易化)

・設問数は5問です。第2問、第4問で配点が高くなっていますが、小設問に分かれるため配分はオーソドックです。与件分量はグラフを除けばやや少なめ、解答文字数も480字と少な目です。

・事例構造は、製品にこだわりのある企業のマーケティング戦略を問う問題で、こちらもテッパンです。一部チャネル戦略とブランド戦略が出題されていますが、それほど困難な内容ではないでしょう。

・唯一気をつけるべき点は、メーカーが直販への進出を考えている点です。過去問の岩崎ワールドに浸り放しでは陥りやすいトラップが仕掛けられています

 

【解答のプロセス】

 1.事例のテーマ

 マーケティング戦略の再構築により成長を続ける老舗企業の事例

 2.各設問

 1)第1問 【難易度:低】

 第2問への繋がりを意識し、製品コンセプトとライン構成でまとめました。

 

 2)第2問 【難易度:低】

 これもさほど時間を要しませんでした。設問要求がそれぞれ2つ(設問1でのターゲットと商品戦略、設問2のプロモーション戦略と販売戦略)であることを外さなければ容易だと思います。

 なお、ターゲットに地域性は解答に盛り込んでいません。文字数が少なく埋められなかったこと、Z社の市場とオーバラップしていることからプライオリティを落としました。

 

3)第3問 【難易度:低~中】

 解答要素はテッパンですが、設問の制限事項が「飲食店(直営店ではない)」であることには注意が必要です。また、設問要求の「メリット」と「効果」をどう書きわけるかに多少文章力が要求されます。(設問要求が2つであることを意識できていれば、内容は問われないと思います。)

 

4)第4問 設問1【難易度:低~中:要注意

 一見、岩崎ワールドの地域ブランドを解答したくなりますが、ここはZ社の難色の解消、カニバリゼーション回避を意識したダブルブランド戦略以外あり得ません。

 与件に相当の分量を裂いてZ社の記載をし、「難色を示している」とまで明確に書かれています現在の依存度が高いだけでなく、今後のB社製品戦略にも合致し、全国・海外に販売先を持つZ社は今後も=少なくとも短期的には=B社成長のためには不可欠です。依存度が高い点だけを捉え、経営基盤の安定、依存度の低下を思考すると多分NGです。
 また、解答すべきブランド戦略の目的は、設問の制約条件であるインターネット販売を軌道に乗せる」ためですあり、時制は立ち上げ期の話です。この点からも当面の弊害であるZ社の難色を解消することが解答で要求されるブランド戦略の目的と読むのが妥当でしょう。立ち上げ期の課題として、早期の売上拡大実現の解答も取り得ますが、いずれにしても目的、時制の制約を念頭においた解答が要求されます。

 合格発表を待たないと何とも言えませんが、他の設問が平易な分「足きり問題」のような印象も受けました。

 

(5)第4問 設問2【難易度:低~中】

 インターネット販売におけるコミュニケーションの提案です。テッパンであり、制約事項の「インターネット上であること」「リピート喚起であること」を押さえていれば問題はないでしょう。

 

—-うめもんの解答————————————

第1問(配点20点)

国産大豆、自社蔵での仕込など、創業以来の製法にこだわりを持った商品を製造している。また、製品ラインは市場ではなく同業他社を意識、同調した構成となっている。(77)

第2問(配点30点)

設問1

健康志向の強い消費者を対象に、国産自然素材、製法へのこだわりを製品コンサプトにする。アイテムを見直し、成長性のあるしょうゆ関連製品を主力とし、事業者向け、減塩品などを除き一般向けしょうゆは縮小していく。 (文末句点含め101)

設問2

プロモーションは、容器やPOPで素材や製法のこだわりを表示、消費者に訴求する。販売は、Z社のような健康志向、高付加価値を扱う卸会社とのみの排他的チャネルとする。(80)

第3問(配点20点)

最終消費者と接点を持てる貴重なチャネルとして、製品への反応を直接確認できるメリットがある。だしやつゆの製品開発に活用できるほか、遠方からのX市来訪客に対し直営店でのB社製品購買を誘引する効果がある。(99)

第4問(配点30点)

設問1

Z社との競合を避けるため、直接販売用の専用ブランドを冠したダブルブランド戦略を採るべきである。 (47)

設問2

購買経験者へメールマガジンを発行、季節ごとのメッセージやB社製品を使った新たなレシピを提案、ホームページも定期的に更新しページの鮮度を保ち、訪問と購買を誘引する。(文末句点含め81)

★★

ブログ掲載にあたり、第4問設問1を修正します。

第4問 設問1

Z社の懸念を緩和、競合を回避するため、専用ブランドを冠したダブルブランド戦略を採るべきである。(47)
<趣旨>競合回避でけではないため、表現を補足

—-解答ここまで————————————

以上、うめもんでした。
引き続き事例Ⅲでお楽しみください。
事例Ⅰ事例Ⅳはこちらです。

 


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【日曜日は名古屋の日】”うめもん流”独断による平成28年度2次試験の所感と解答<事例Ⅱ編>” に対して4件のコメントがあります。

  1. rapidwien より:

    設問2

    >高付加価値を扱う卸会社とのみの排他的チャネルとする。

    シャネルなどの高級ブランドなら理解出来ますが、最寄品の醤油で排他的チャネルは現実離れしてませんか?。さらに排他的チャネルを構築するにはサプライチェーンの上流たりメーカーサイドにかなりのパワーが必要になりますが市場縮小している醤油市場、おまけに中小企業の製造メーカーにそれができるのかと。

    1. タキプロ より:

      rapidwienさん
       うめもんです。コメントありがとうございます。
       ご質問にお答えします。
      ・設問1でアイテムの絞り込みに言及しています。一般向け醤油は縮小を提案、その流れで、まず、今後B社の扱うしょゆは最寄品ではなく、自然材料を活かしたこだわり商品に特化、買回品の位置づけを想定しています。
      ・現実問題、現在でもB社のしょうゆはほとんどがZ社のチャネルで販売されています。Z社の主要販売先は「百貨店や中〜高価格業態のスーパーや自然食品店、国外では東アジアやアメリカなどで日本食材を扱う小売業」(与件より)で、最寄品の主要市場である一般スーパーなどは主要取引先には含まれていません。
      ・排他的取引に関しては、与件の「特別な排他的取引契約はない」の部分を、製品特性を意識したチャネル戦略を採っていない、と解釈したものです。ご指摘の市場縮小しているしょうゆは前段のアイテム戦略で絞り込みに言及していますので、今後の販売戦略として、アイテムを絞り込んだらチャネルも絞ったほうがいいのでは?、少なくとも製品コンセプトを意識したチャネル戦略を採用すべきである、との提言をまとめた意図です。限定的チャネル戦略と書いてもよかったのですが、与件の用語を引用することを重視しました。
      ・中小企業にできるか、とのご質問については、上記のとおり戦略意識の問題であり、現在もほとんどがZ社経由でもあることからチャネルの改変は最小限で済みますので、十分に可能との判断をしています。(もし、現在最寄品のしょうゆを一般スーパー向けの卸に販売しているのであれば、アイテムの絞り込みとともにそのチャネルは排除していく、かつ、一般市場向けの新たなチャネルは採用しない、といったイメージです)。

  2. rapidwien より:

    うめもん様

    御丁寧にお答えいただき感謝申し上げます。

    ただ一点気になるのですが
    第1問で製品ラインの多さを指摘されている
    第2問では製品ラインの見直しを前提にしたプロモーションが問われている

    つまり、
    これまでのフォロワー戦略としてのブランド拡張路線が失敗だったことを暗示していますよね。

    にもかかわらず第4問でダブルブランド路線(ブランド拡張の亜種)を採用するのはどうなんでしょうね?

    1. タキプロ より:

      rapidwien様

      うめもんです。
      コメントの確認が遅れ、遅くなりました。申し訳ありません。
      ご指摘の点に回答いたします。

      結論は、ご指摘の前提条件についてうめもんはそうは考えていませんので、ダブルブランド戦略が妥当との考察、解答に至りました。

      1.これまでのB社のブランド戦略
       まず、これまでのB社のブランド戦略についてですが、これは与件に記載がありませんので、ブランドがあったのかどうか、ブランド拡張戦略だったのかどうか、は断定できません。

      2.★これまでの★戦略の評価
       そのうえで、ブランド戦略があったとして、B社のブランド戦略、もっといいますとマーケティング戦略は失敗しているのでしょうか?
       うめもんの解釈は否です。
       与件にはしょうゆ市場全体のマクロ環境が記載されています。
       メーカー自体は淘汰、生き残りとなっていますが、「X市でも50年前にはしょうゆメーカーが8社でしたが現在はB社を含め2社」となっており、B社は淘汰の中で生き残っています。
       しょうゆ出荷数量も1973年をピークに約6割に落ち込んでいます。具体的な売上構成比が記載されていませんし、好調な飲食店の支えがあるものの、市場縮小のなかでB社の売上げは対前年比100%超をキープしています。
       これらを根拠に、B社の★これまでの★販売は堅調ではないにしても決して低調ではない、すなわち、過去のマーケティング戦略、ブランド戦略は少なくとも失敗ではない、と考えています。

      3.解答の骨子
       ただ、★今後★となると話は別。過去のマーケティング戦略の延長で成長できるかは別問題。
       B社の悩みも「今後」です。「現状のままでは著しい成長は期待できない。人口減少社会を迎え、縮小するしょうゆ市場の下で、生き残りと成長を求めて、危機感をもった」(以上、与件のまま)社長への回答が今回の解答です。
       与件のテーマにも書いたとおり、今後の成長のためには、外部環境への対応を軸に新たなマーケティング戦略を再構築するべき、との趣旨です。

      4.ブランド拡張戦略とダブルブランド戦略
       ブランド拡張戦略とダブルブランド戦略は概念からして別物です。
       ブランド拡張戦略、ダブルブランド戦略とは、コトラーのブランド戦略の定義です。ブランド名称の「既存/新規」、製品の「既存/新規」で区分し、新製品に既存ブランドを使用する戦略をブランド拡張戦略、既存製品に新名称を採用する戦略がダブルブランド戦略です。
       自社や製品のポジショニングによって戦略を分けています。亜流でも何でもありません。
       

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