【タキブロ+】弁護士が考える経営法務攻略・令和4年最新版byヌノ
タキプロ13期のヌノです。
さて、今回で6回目の投稿です。
これまで、
①合格体験記
②事例Ⅱ
③事例Ⅲ
④2次試験対策
⑤診断士活動
について記事を書いていますので、よければお読みください。
今回は、タキブロ+の投稿です。
われらがブログ班リーダーのまぁしぃさんより、飲み会の際に「法律試験のことを書いて!」と打診いただきましたので、書かせていただくことになりました!
「経営法務について、どこかでこれまでの経験を生かして何か書きたいな~何か司法試験とかで得られたことを診断士受験生の皆さんに還元出来たらいいな~」などとほんのりと思っていたので、とても良い機会をいただいたと思っています。
一応断っておく必要があるのですが、弁護士や司法試験合格者は、経営法務の科目免除することができ、私も科目免除にしたので、実際には受験はしていません。
とはいえ、令和4年の過去問を含むひととおりの問題には目を通していますので、その前提でお読みいただければと思います。
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■経営法務学習法・おすすめの書籍
経営法務については、直近でまぁしぃさんが、タキプロメンバーの記事を総集編としてまとめてくれていますので、そちらもぜひお読みください。
みなさん、本当によく考えて勉強されていると思います。
私のような変な先入観がない分、実直に試験に取り組まれており、私の記事より役に立つような気がします。
さて、経営法務の難易度は一般的に高いと考えられているようで、しっかりと学習する必要があります。
出題数は例年25問(1問当たり4点)。
かなり受験者側にリスクの高い配点ですよね。
確か経営情報システムが同じ形式で、私が合格したとき足切りギリギリの40点でしたから、本当にやめてほしいと思った記憶があります(足切りがあるんだからもう少し問題増やして1問ずつの配点減らしてよ…)。
法律学習には、私自身はもはや忘れてしまいましたが、やはりそれなりにハードルが高いと思う方が一定数おられるのではないかと思います。
しかし、法律というのは、その面白さに気づくことができれば、本当に学習していて楽しいものです。
特に民法は、「私法の一般法」という位置付けであり、奥が深すぎて底がまったく見えません。
すべての私法の根幹(私法とは、私人と私人の関係を規律する法領域)ですから、中小企業診断士試験によく出る会社法や知的財産法も、民法の存在を前提に制定されています。
要するに、民法を得意になることは、経営法務を制すると言っても過言ではないわけです。
ここで、個人的なおすすめ書籍を紹介したいと思います。
あくまで参考で、私自身、こと中小企業診断士試験に関しては、1次試験はスピードテキスト+過去問完全マスターで完全に攻略できると考えています。
ですので、時間に限りのある方は、基本的に↑の二冊を完璧にすることを優先していただいた方が良いです。
その中で、時間的に余裕ができ、法律を少し深く学んでいただきたい方や、スピードテキストではどうしても頭に入らないので、副読本が欲しい、という方は、一度書店でパラパラと立ち読みし、ご自身に合うと感じられれば、買ってみてもよいかもしれません。
【おすすめ書籍】
その1 まるごと講義生中継
この書籍は、公務員試験向けのものですが、決して侮れません。公務員試験の法律はそこそこ難しく、経営法務と同じくらい(あるいはそれ以上)のレベル感はあると思います。
何を隠そう、この書籍を書かれた郷原豊茂先生は私に初めて民法を教えてくださった先生で、本当に民法のことを深く理解されています。
また、教え方がとてつもなく分かりやすく、面白い!
私が法律に興味をもったのは、この方から民法を教われたからといっても過言ではありません。超おススメです。
そんなに頻繁に改訂されているわけではありませんが、令和2年の民法改正は反映しているようです。
総則・物件編と、債権編の2冊に分かれています。
その2 リーガルクエスト会社法
会社法の基本的な知識が分かりやすく書かれている本で、入門・応用両方に役立つ書籍です。
司法試験の参考書としてかなりのシェア率を誇る本書ですが、内容は決して難解ではありませんので、経営法務の副読本としても良いのではないかと思います。
ただ、中小企業診断士試験とはあまり関係のない分野についてもそれなりの分量で記載されていますので、通読までは不要です。
その3 知的財産法入門
特許法・著作権法が中心ですが、商法・意匠法・不正競争防止法などの基本的な知識も満遍なく記載されている、その名のとおり知的財産法の入門にぴったりの書籍です。
いかがでしょうか。
あくまで壁に当たった方や、どうしても時間が余って暇で暇で仕方がない方、あるいは経営法務を学習後、法律に興味がわき、司法試験にも挑戦してみようかな…という物好きな方におススメということです。
時間がなく、それなりに学習の地力がある方は、過去問と専用のテキストだけこなし、他の科目を含めて満遍なく学習する方が絶対に効率がいいです。
以上に注意して、参考にしていただければと思います。
■短答式試験学習のコツ
これまで数々の短答式試験を突破してきた私が(公務員試験全勝、予備試験・司法試験とも短答式試験一発合格)、法律試験に限らず、短答式試験を受験するときに特に意識していることをお伝えしたいと思います(なんか、自慢みたいになってすみません…)。
【知識の一元化】
多くの方がやっているとは思いますが、過去問を解いて得られた知識は、テキストなどに書き込み、知識を一つの媒体に集めておくことをおススメします。
書き込みの作業自体が記憶の定着に役立つほか、知識が一元化されたテキストはこの上ない復習の材料となるからです。
そのテキストを試験会場に持ち込めば、ざっと見返して試験直前に総復習することができます。
書き込みのやりかたは人それぞれですが、私は、過去問で出た知識であることを示すため、その知識が記載されている部分にアンダーラインを引き、余白に「R3-4-ア」などと書いていました(令和3年試験の第4問の選択肢「ア」という意味です。)。
できるだけコンパクトにするのがコツです。
【「関連付け学習」により体系的な理解を身に付ける】
法律の学習は、基本的には分野ごとに進めていくのが良いと思います。
ですので、過去問集でいえば、体系的に問題が並んでいる過去問完全マスターが圧倒的におススメです。
ところで、1つの問題の中で、複数の分野の知識が問われることがあります。
分野ごとに学習していると、「あ、この選択肢はまだ学習してないから飛ばそうかな」などと思ったりするわけです。
しかし、こういうときこそ、知識を盤石にするチャンスなのです。
例えば、以下の問題を見てみましょう。
これは、令和2年度試験の第1問ですが(たまたま民法改正について問われています。改正分野の学習の指針は、後述しています。)民法に関する知識が横断的に問われています(なお正解は「エ」。EASYですので必ず正解したい問題です。)。
「ア」は民法総則の意思表示、「イ」は債権総論の法定利率、「ウ」も民法総則の意思表示、「エ」は債権総論の保証の分野からの出題です。
このような分野横断的な出題があったときは特に意識してもらいたいのですが、「この問題を解いて終わり!」とするのではなくて、必ずテキストの該当箇所を確認して、出題があったことをメモしておいてください(↑の「知識の一元化」にもつながる話です。)。
問題を解いているときには、学習範囲外の分野については、完全に理解するのは難しいかもしれません。
しかし、学習を進める中で、必ず当時学習範囲外だった分野に追いつくことになります。
そのとき、テキストにメモを残しておけば、「あ、そういえばあのとき問われていた知識だったな」と思い出すことができるのです。
ついでに、他の選択肢ではどういうことを問われていたかな、と確認すれば、知識が二重、三重に上塗りされ、体系的な理解が身についていきます。
この関連付け学習は、中小企業診断士試験でも有効と考えています。
私は、経営法務以外の科目を学習するときにも意識していました。
【優先すべきはインプットではなくアウトプット・制度趣旨の理解】
これも、多くの方が意識されていることだとは思いますが、念のため。
学習するとなると、まずはしっかりテキストを読み込んで、という方が一定数おられます。
しかし、何のとっかかりもなくテキストを読むだけで点を取れるようになるのは、一握りの天才だけで、そうでない方たちにはおススメできません(もちろん私自身もアウトプットで記憶してきた人間です。)。
知識は、「思い出す作業」によって記憶に定着します。
そして、「思い出す作業」をする最も典型的な場面は、問題を解くときです。
予備校の入門講座やテキストをざっと見てなんとなくの雰囲気をつかんだら、早速問題を解いてみることが重要です。
また、例えば関連する知識を、表にまとめたりすることがありますよね。
これも、表の中身を覚えようとすると、キリがありません。
覚えるのは、表の「枠組み」です。また、表の中身(知識)ではなく、「なぜそうなるのか」という理由を理解するようにしてください。
法律には、すべて「制度趣旨」(平たく言えば、なぜそのようなルールができたのかという理由です)があります。
制度趣旨を理解することこそが、法律学習の最重要ポイントなのです。
あとは、中身が空っぽの表を用意して、その中身を、理解した理由をもとに導きだすだけです。
この学習法も、「思い出す作業」を多く含んでいます。
表にまとめる作業それ自体を否定するわけではありませんが、完成したきれいな表を眺めるだけでは、中々記憶には定着しませんので、是非この学習法を試していただければと思います。
■法改正学習の指針
経営法務を学習するにあたって、悩ましいのが法改正の分野です。
1次試験前のタキプロのセミナーに参加させていただいたとき、多くの方がどう学習すればよいか悩んでおられました。
私なりに過去問や種々のブログ記事等を分析したことを踏まえ、指針を立てたいと思います。
【「いつ」の時点での法令が出題されるのか?】
私が経営法務のことを調べるにあたって、一番初めに気にしたのがこの問題です。
というのも、法律の内容は改正によって頻繁に変わりますから、いつの時点での法令を前提に回答するかによって、答えが違ってくることがあり得るからです。
司法試験などでは、いつの時点での法律を前提に回答するか、きちんと事前に案内があります(基本的には試験実施時に「施行」されている法令)。
中小企業診断士の試験案内を確認しましたが、特にいつの時点での法令を前提にするかについては、記述がありませんでした…(見落としているだけかも)。
また、経営法務について書かれているブログ記事はいくつかありますが、このことに触れている記事もありませんでした。
基本的には、未施行の法律のことは考える必要はなく、司法試験などと同様に、試験実施時点で施行されている法律を前提に答えればそれで足りると考えてよさそうです。
上記のとおり、令和2年度試験では、早速施行ほやほやの民法改正の分野が問われています。
すなわち、令和5年度試験に向けて、少なくとも令和5年8月頃までに施行される改正分野については、学習の必要性がないとはいえなさそうです。
【直近の試験ではどのような改正分野が出題されたか?】
では直近の令和4年度試験を見ていきましょう。
これは令和元年会社法改正(主に令和3年3月1日施行)について問われた問題です(選択肢省略)。
答えは「10」。知っていれば、3秒で解ける一撃問題でした。では次へ。
これは相続法改正(主に令和元年7月1日施行・配偶者居住権については令和2年4月1日施行)の知識が一部問われた問題です。
「ア」は、相続による権利の承継について、法定相続分を超える部分の対抗要件具備の要否を問う問題ですが、答えは×。
取引安全を重視する規定です。つまり、外から見て、法定相続分を超えた権利の承継があったことは分かりにくいので、登記という公開情報をもって外に知らせておいてねというルールです。
「イ」「ウ」は、改正とは無関係。
「エ」は配偶者居住権について問う問題ですが、答えは〇(この選択肢が正解)。建物の価値を所有権と法定の「居住権」とに分けて、遺産分割の際に柔軟に現預金を分配できるようにした制度です。
これらの2問で、会社法と相続法の改正が問われていますが、どちらも重要な改正でしたから、あまり出題されても文句は言えないかな、と感じました。
令和4年度試験においては、他の改正(特許法や著作権法に若干の細かい改正があったほか、民法では、成年の年齢が引き下げられました。他、電子帳簿保存法などの改正もありました。)については問われませんでした。
【令和5年度試験に向けて、何を学習すればよいか?】
令和5年度試験は、令和4年度試験と同じ日程と考えると1次試験は8月に実施されると思われるので、令和5年8月時点で施行されている法律は、出題されても文句は言えません。
令和5年の改正で、試験範囲と重なる重要な分野は、ずばり、「所有者不明土地の解消に向けた民事法制の見直し」です。
所有者不明土地とは、その名のとおり、所有者がだれか登記を見ても分からない土地のことで、正確な相続登記がなされないまま放置されており、土地を有効利用できないという問題です。
この問題は、高齢化が進む今後、さらに重大になっていくと考えられています。
この問題を解決すべく、民法や関連分野の法律が改正されます(複数の法領域に及んでいるので、段階的な改正が行われます。)。
このうち、令和5年には、民法の共有関係や相隣関係、遺産分割に関するルールが改定される予定です。
国土交通省の資料(特に、リンク先のPDFファイルP18~25)は、そんなに分量も多くなく、わかりやすいので、これをもとに学習を進めれば、そこまで学習に時間をかけることもなく、一定の知識が得られるのではないかと思います。
また、もちろんこれまでと同様、令和2年民法改正、相続法改正、令和元年会社法改正については、超重要改正分野ですから、引き続きお手元の書籍で学習をしてください(もはや施行から一定期間が経つと、改正分野とは言わなくなるかもしれませんが…最新のテキストであれば当然反映されていると思います。)。
その他、令和5年には、個人情報保護法や消費者契約法等、種々の改正が予定されてはいますが、出題頻度等を踏まえれば、学習の優先度は高くないといえます(ただし、責任は一切もちません、、、)。
なお、受験生のお立場として、法改正によって毎年学習の内容が変わることに対し、拒絶反応を示されることはとてもよくわかります。
しかし、法改正があったとしても、法律の根幹・基本的な考え方は、変わることがありません。
ですので、試験戦略的には、これまで同様の頻出分野に集中し、改正分野の学習にはあまり力を入れすぎないのが吉だと考えます。
枝葉の部分にこだわりすぎて、基本的な学習に時間がとれないのは、本末転倒です。
■おわりに
以上、現時点で私がもてるノウハウは概ねお伝え出来たかと思います。
編集能力が追い付かず、字だらけのブログになってしまいました…
見にくいブログで、申し訳ありません。
このブログで少しでも経営法務の苦手意識がなくなり、良い点を取れる方が増えれば、本当にうれしいです。
次回のタキブロ+は年末年始特別連載「受験生支援体験レポート」
お楽しみに!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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