経営情報システムの傾向分析とおすすめ勉強法 byゆるふ
読者の皆様、こんにちは!タキプロ15期の ゆるふ と申します。今日は、1次試験科目【経営情報システム】に関する記事をお届けします。
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目次
■はじめに
経営情報システムは、1次試験7科目の中でも何となく異質な存在である気がするのは、診断士受験生共通の感覚だと思います。「さあ、情報システムやるぞ!」と息巻いて対策本を読み始めたものの、いきなり大量の横文字や人生初見の単語を目の前に愕然とする…。それならと過去問の暗記に舵を切り、頑張って脳に刻み込もうとするもページが一向に進まない…。最終的に、「あーもう情報システム苦手だ、自信ない」と意気消沈する…。非IT系の受験生は高確率で経験するパターンです。
そこで今回は、苦手意識を持つ受験生の多い経営情報システムという科目との対峙の仕方について、令和5年度試験の分析や、協会から公表された令和6年度試験の出題内容の表記変更の内容を踏まえ、私なりのおすすめである「ITパスポート→経営情報システム」の2段階の勉強法についてお伝えしていきます。
■自己紹介
申し遅れましたが、初投稿のため自己紹介させていただきます!
・ハンドルネーム:ゆるふ
・年代/性別:30代/男 1児のパパ
・職種:製造業研究開発職(非IT系)
・受験歴:1次/2回(R3・R5)、2次/1回(R5) ※R4は長男の予定日が1次試験日付近だったため延期
・勉強時間:1次/400時間 2次/150時間
・勉強方法:1次/スタディング 2次/市販の参考書、予備校模範解答集・模試
・得意科目:1次/経営情報システム 2次/事例Ⅱ
・受験時保有資格:応用情報技術者・日商簿記2級・知財管理検定2級など
私は生粋の理系(専門は応用化学)であり、学生時代から現在にかけて化学薬品や実験器具ばかりを相手にしてきました。化学以外の知識は皆無で、視野も偏っていると自認しており、30歳を機に新しい挑戦をしてみようと決意し、中小企業診断士の取得を目指すことにしました。今後は技術経営(MOT)の勉強を進め、将来は大学発スタートアップの支援や中小製造業の持続的競争力の向上により、科学技術の発展と公益の確保に貢献していきたいと妄想しております。
私がタキプロからノウハウを得て診断士試験に合格できたように、タキプロの活動を通して少しでも受験生の皆様のノウハウにしていただけるような情報を発信できるよう尽力してまいります。よろしくお願いします!
■1次試験の出題内容
中小企業診断士協会HPの試験情報のページに、令和6年度の試験についての最初の情報として、出題内容の表記の変更についてのお知らせがあります。皆様はこの1次試験の出題内容について目を通したことはありますか?
令和5年9月11日 一般社団法人中小企業診断協会 【令和6年度からの変更】中小企業診断士第1次試験における出題内容の表記の変更について
私も「おや?」と思ったのですが、あくまでも「表記」の変更であり、試験範囲が変わるわけではないようです。変更の目的としては、「受験者の方が必要な知識の習得に取り組みやすくなるようにするため」とのことで、これを活用しない手はないと思います。確かに、従来よりも単語レベルで具体化された表現が増えており、学習を進めていく中での知識の抜け漏れの確認にも使えそうです。ぜひ、定期的に目を通してみてください。
■経営情報システムの傾向分析
令和5年度試験までの統計情報を反映した、協会発表の過去18年分の科目合格率をまとめました。
過去18年分のデータを見ると、経営情報システムの平均合格率は7科目中最も高い一方、合格率の標準偏差も7科目で最も大きくなっております。合格率の最高値(H25の51.8%)と最低値(H21の3.8%)の差は、驚異の48.0%です。すなわち、最も点数が安定しにくい科目であると言えます。(ただ、直近10年分R5~H26のデータで見ると、平均合格率・標準偏差とも他科目と同等で、高くも低くもないといった状況です。)令和5年度(本試)の経営情報システムの科目合格率11.4%は、同年度1次7科目中2番目に低い数値であり(1番は運営管理8.7%)、経営情報システムとしては過去18年で5番目に低い数字でした。
次に、令和5年度の経営情報システムの問題を、協会公表の出題内容記載の分類によって分けてみました。あくまで私の主観で分けている点、ご承知おきください。(参考:令和5年9月11日 一般社団法人中小企業診断協会 【令和6年度からの変更】中小企業診断士第1次試験における出題内容の表記の変更について 別紙)
令和5年度は、大分類としては情報技術に関する基礎的知識から14問、経営情報管理から11問に分けられました。中分類としては、各論点から満遍なく出題されている中で、人工知能や機械学習といった最新技術は1.(1)情報処理の基礎技術、ビッグデータの蓄積や利用に関する技術は1.(3)データベース、近年ますます重要性が高まる情報セキュリティ関連は2.(3)情報システムのマネジメントに分類することができ、トレンド性の高い問題が追加されている分、これらの分類の比率がやや高くなっていると考えられます。
以上のような出題傾向を念頭に、本番の試験で科目合格を狙うには25問中15問、足切り回避するには25問中10問をもぎ取る術を考えなければなりません。対策本を読んでも過去問を解いても中々頭に定着しないのに、過去問には無かった最新トレンドまで問われる可能性が高い経営情報システムという鬼門…。この科目をどのようにして乗り切るのが効率的かについて、次からは私のおすすめの勉強法をご紹介していきます。
■おすすめの勉強法 ITパスポートからスタート
ITパスポート→経営情報システムの順番で学習
今回お薦めする勉強法というのは、経営情報システムの対策本や過去問に手を出す前に、ITパスポートという資格試験の勉強を行うというものです。何なら、1次試験全科目に手を出す前にITパスポートに手を出すべき!極論、診断士試験を受けない人でもITパスポートを取得すべき!!というものです。ITパスポートのすゝめに関しては、タキプロの先人たちも大変参考になる記事を沢山出されていますので、そちらもぜひご参照ください。タキプロ14期さくまるさんがリンクをまとめてくださっております。
診断士の勉強に他資格の勉強は必要ない、遠回りでしかない、とのご意見も多々あることは承知しておりますが、私個人としてもこれだけは超絶お薦めしたいという想いを持っておりますので、下記理由に納得頂けた場合はぜひITパスポートの参考書を一度手に取ってみてください。
■おすすめの理由Ⅰ 1次5科目の内容が含まれている
診断士1次試験の5科目に関係する内容が勉強できる
まず、ITパスポートとはなんぞや、というお話です。ITパスポートは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施している国家試験であり、対象者像は全ての社会人、合格するとITに関する共通の基礎知識を習得した者とみなされます。あまり知られていないのですが、ITパスポートはストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の三分野から出題されます。しかも、大抵の人がITパスポートに対してイメージしているテクノロジ系の問題よりも、他分野の問題の方が多く出題されています。ここでも、ITパスポートの公式シラバスを参照していただきたいと思います(下記HPの「iパスとは」の「試験内容・出題範囲」から見られます)。
シラバスを見てみると、いきなり【ストラテジ系-大分類1企業と法務-中分類1企業活動-項目1経営・組織論】とあります。(ITっぽいワードじゃない!)用語例も見てみますと、【経営理念、人的資本経営、モチベーション、リーダーシップの在り方(コンティンジェンシー理論)、事業部制、機能別組織、マトリックス組織、society5.0、DX、GX…】とあります。お気づきの方がほとんどと思いますが、まんま企業経営理論で使える知識です。他にも、【大分類1企業と法務-中分類1企業活動-項目2業務分析・データ利活用】では、【パレート図、ABC分析、アローダイアグラム…】といった運営管理の内容や、【大分類1企業と法務-中分類1企業活動-項目3会計・財務】では、【P/L、B/S、損益分岐点、流動比率、収益性、効率性、安全性…】といった財務会計、【大分類1 企業と法務-中分類2法務-項目4知的財産権】は、【特許法、意匠法、商標法、個人情報取扱事業者…】といった経営法務、【大分類2経営戦略-中分類3経営戦略マネジメント-項目9経営戦略手法】に至っては、【SWOT分析、PPM、VRIO分析、3C分析】といった企業経営理論や2次試験でも最重要とされる内容が記されています。他の分類も見ていただきたいのですが、いずれも診断士1次試験の範囲に含まれている内容です。そして当然、経営情報システムの範囲はテクノロジ系で問われます。以上のように、ITパスポートを勉強することにより、1次試験の5科目に関係している内容を学ぶことができる点が最大のメリットと言えます。(参考:独立行政法人情報処理推進機構 ITパスポートシラバスver.6.3)
■おすすめの理由Ⅱ 挫折しない難易度
非IT系初学者には、経営情報システムの診断士試験対策本はハードルが高い
「■はじめに」でも触れましたが、非IT系の受験生にとっては経営情報システムの対策本を一通り1周読むのですら挫折しやすいと思います。実際、経営情報システムの問題では、ITパスポートの上位レベルである情報処理技術者(基本情報や応用情報)レベルの問題も出題されています。例を挙げると、R5第1問の NANDやNORの用語としてはITパスポートレベルですが、出力の速さまでの知識は基本情報以上、R5第10問のシンプロビジョニングやSANは応用情報レベルになると思います。これらの論点について、初学者がいきなり経営情報システムの対策本で読んでも、ずっと一知半解のままになってしまうのは容易に想像がつきます(正直、応用情報取得していても理解するのに時間かかります…)。
そこで、ITパスポートの参考書から手を付けることで、テクノロジ系の基本についても常に理解が追いついている状態のまま参考書を読み進められるので、挫折せずにまずは一通り全体像を把握しやすいというメリットがあります。その後、経営情報システムの対策本や過去問に取り掛かることで、今度は挫折することなく、本番で問われるレベルや範囲にまで知識を深堀でき、これらの対策本を100%活用できるようになります。
■おすすめの理由Ⅲ 参考書の豊富なラインナップ
参考書の種類が豊富
ITパスポートは年間20万人以上が受験する人気資格であり、参考書も豊富に販売されています。そのため、自分に合ったレイアウトが選べますし、価格相場が低いため低コストで手に入れることもできます。いざ書店で参考書を見てみると、その分厚さに一瞬ひるむかもしれませんが、絵や図をふんだんに使って解説してくれていることでページが嵩んでいるためであり、読んでみるとサクサク進むことができ、非IT系初学者が初めから経営情報システム対策本を読むよりも断然効率よく知識を吸収できます。
また、ITパスポートはおよそ1~2年に数回シラバスが改定されており、それに準拠した参考書が毎年改定されて販売されます。したがって、最新のトレンドに関する内容も非常にわかりやすく解説されています。経営情報システムは、過去問には無い最新のトレンドについて突然問われることが多い科目ですので、そのような初見の問題への対応力も身に着けられるメリットもあります。(例:R3第25問テレワーク浸透に伴うテレワーク方式の分類。R6は生成AI絡みの出題があると個人的に予測しています)
■注意点 ITパスポートはあくまでも足掛け
ITパスポートは診断士1次試験への足掛け
ここまでITパスポートを激推してきましたが、注意点もあります。それは、ITパスポートを完璧にしても、経営情報システム(や他の1次科目)の合格点には及ばない、何なら近年の試験レベルでは足切り回避も怪しいということです。「■お薦めの理由Ⅱ」記載の通り、経営情報システムの問題を実際にみると、情報処理技術者試験でいうところの基本情報や応用情報レベルの出題も少なからずあります。したがって、ITパスポートはあくまでも非IT系受験生にとっての経営情報システムの診断士対策本への足掛け(他科目にとっても診断士1次試験の超入門)であるという点は意識していただきたいと思います。
ITパスポートを勉強することで、診断士対策本ですら高かったハードルがようやく乗り越えられそうな高さになります。ここからは診断士対策本でより本番レベルの知識まで深掘りし、過去問でアウトプットすることで、科目合格の25問中15問、足切り回避の25問中10問の奪取が可能なレベルになります。
■おわりに
私も非IT系の人間ですが別の機会で基本情報や応用情報まで取得しており、その自信もあって経営情報システムは得意科目でした。1次試験全体の戦略としても、経営情報システムをあえて免除せずに受けて8割以上取り、苦手な経済学や経営法務の埋め合わせをするというものでした。しかし、結果的に情報システムが68点、経済学が76点、経営法務が80点でした(失笑)。ただ、もっと勉強していれば良い点数を取れたかと聞かれると、そうとも言えないなというのが今の気持ちです。応用情報を勉強していても聞いたことのないワードがいくつか本番で出ましたし、診断士過去問でも見たことのない問題もありました。本番でかなり焦った記憶が鮮明に呼び起こされます。タキプロ13期のS@buさんも、情報処理技術者試験を取得している中で経営情報システムの点数が思ったより伸びなかったという、私と似た経験談を載せられています。
このことから、診断士試験で経営情報システムを初めて勉強する人にとっては、科目合格は最初から目指さず、足切り回避という戦略が一番効率が良いのかなと個人的に思います。そのためにも、1次試験全体の戦略をしっかり立て、その中で経営情報システムはどうするか、という相対的な視点も持つことも重要です。上記でおすすめした方法を取ればきっと足切りは回避できるはずですので、ご自身の戦略と照らし合わせつつ、ぜひ参考にしていただければ幸いです!
次回は、nyoko さんの登場です。
お楽しみに!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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