地雷科目化した経営情報でIT非経験者が50点台を死守するための勉強戦略 by あしゅらん
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タキプロ15期の あしゅらん です。ブログでは、はじめましてです。
令和6年度の最終合格発表が目前に迫り、特に2次筆記試験の結果が厳しかった方は、これからどのような対策をしていけば良いのか、悩まれている方も少なくないのではと思います。
本ブログでは、直近(R5)の合格者として、令和7年度1次試験の経営情報システムに対して、どのような対策をすれば良いか、私なりの考察を述べたいと思います。
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■はじめに
2025年度版のTAC過去問題集(後ほど詳しく見ます)によると、令和6年度の経営情報システムは、A(正答率80%以上)・Bランク(正答率60%以上80%未満)がほとんどなく、C(正答率40%以上60%未満)・D(正答率40%以上60%未満)ランクばかりの印象を受けました。爆弾科目とまではいかなくても、かなり対応が難しい状況だったように思います。最初に結論めいたことを書いてしまうと、令和6年度の経営情報システムは、やはり相当厳しかったと言えます。実際、1次試験直後から、X(旧Twitter)などでは落胆どころか、「これだけ残っていた方々の時間を奪った気がします」といった、ほぼ悲鳴に近い声が散見されました。私の見解を述べると、難易度だけではなく、出題趣旨も明らかに変わったと言わざるを得ません。
(他方で、IPA有資格者で経営情報システムだけ免除の6科目受験をして難を逃れ、結果ストレート合格をされた方が、少数派ですがいらっしゃいます。もちろんその方の結果は素晴らしいですが、明らかに不公平な試験制度だと私は主張したいです)
従って、令和7年度の経営情報システムへの基本スタンスとしては、
IT非経験者が60点を取りに行ける科目ではもうなくなった
ということを前提に対策をせざるを得ません。以前は、経営法務が最難関科目と言われていましたが、令和の時代は経営情報システムなのかもしれません。もし私が受験校の講師であれば、「同じ4点を狙うなら、財務・会計で取ってください」と申し上げます。とは言え、経営情報システムが足を引っ張ったがゆえに1次試験不合格というのは避けたいところです。
■このブログの著者は何者か?
申し遅れました。
私は新卒で大手IT企業(ソフトウェア受託開発、いわゆるSIコンサル)に入社し、現場経験を多少ですが持っています。その後はIT業界を離れ、別業界でキャリアを歩んでいます。その為、基本情報技術者は保有しています(ただし、取得したのは15年以上前ですが)。
また、私は1次試験の重多年度生だったので(7年目5回目受験で合格)、経営情報システムの科目免除狙いで応用情報技術者試験を受験したこともあります(午前問題1マーク差で落ちましたが苦笑)。
令和6年度の経営情報システムは、このようなIT開発現場の感覚を持っていると、それほど悲惨なことにはならないのですが(「業界にいれば常識問題」というポストすらありました)、IT業界経験がないと、途方に暮れるというのが正直なところではないかと思います。
診断士試験に関しては、かいつまんで言いますと、令和2年度に経営情報システム科目合格、令和4年度に1次試験合格(中小企業診断修得者)、令和5年度に2次試験合格(1次試験は保険受験)、という受験歴です。また、大雑把に言うと情報系の大学院に所属していました。
本ブログでは、IT非経験者で令和7年度の経営情報システムを受験される方を対象に、どのような対策が望ましいかをご提案します。
■令和6年度の本試験分析〜明らかに激変した出題趣旨〜
これまで10年間での経営情報の難易度変遷を下図に示します。
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出典:
「2025年度版 中小企業診断士 最速合格のための第1次試験過去問題集5」および
「2020年度版 中小企業診断士 最速合格のための第1次試験過去問題集5」。
※データ利用は、TAC出版様の許可済
定量的に見ても、やはり令和6年度はかなり厳しかったと言えます(科目合格率の上昇は、没問の影響と思われます)。
もう少し細かく見てみます。
経営情報システムの問題は、大まかに分類して、前半の情報通信技術分野(以下、テクノロジ問題)と後半の経営情報管理分野(以下、マネジメント問題)に分けられます(便宜上、統計問題も後半に入れます)。直近3年の難易度の割合を下図に示します。
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この2つに分けると、出題傾向が変わったと言われる令和5年度より以前は、暗記系のテクノロジ問題できっちり得点し、知識系のマネジメント問題で多少現場対応できれば、合格点は狙えたものと言えます。即ち、これまでの1次試験対策の鉄板とされてきた、「過去問反復訓練+テキスト学習」という学習スタイルを忠実に実行すれば、合格点は取れる仕組みでした(実際、私もそうでした)。
しかしながら、上図から、令和5年度からこの構図が逆転し、暗記系のテクノロジ問題で鉄板問題が減り、現場対応型のマネジメント問題で勝敗が決まる構造に変わったことが見て取れます。さらに、令和5年度に比べ令和6年度が全体的に難化したため、「見たことがない単語ばかりだ」という事態になってしまいました。EBA中小企業診断士スクールの江口明宏先生は、「この科目は過去問のみで6割は取れない設計で作問されています」と明言されています。
従って、令和7年度の対策としては、テクノロジ問題で頻出論点(SQL、正規化、プロトコルなど)は死守し、マネジメント問題でも現場対応できる力を身につける、ということが必要になってきます。
ご参考のために、私が令和5年度(保険受験)の得点および令和6年度の本試験問題を実際に解いた結果を下表に示します。表中太線の左側がテクノロジ問題、右側がマネジメント問題です。△は、見直しを丁寧にすれば、まぁ取れたのではという問題です。
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令和5年度(保険受験)に関しては、実際、本試験会場で「もうちょっと準備すれば、この問題は取れたんだろうな」という問題を複数落としたという印象でした。他方、令和6年度(自宅で解いた)については、テクノロジ問題はほぼ全滅(ノー勉で解いたため)、他方、業界経験からの感覚(=勘)が効いたマネジメント問題はほぼ完答という結果でした。これらは、別に自慢をしたいのではなく、そういう形に出題趣旨が変わってしまったということのエビデンスです。
業界経験からの感覚(勘)というのは、例えばこういうことです。
【令和6年度 第19問(没問)】
情報セキュリティ管理に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
- CC(Common Criteria)とは、組織内での情報の取り扱いについて、機密性・完全性・可用性を確保するための仕組みのことである。
- CSIRT(Computer Security Incident Response Team)とは、24 時間 365 日体制で企業のネットワークやデバイスを監視し、インシデントの検出を行う組織のことである。
- CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)とは、情報セキュリティにおける脆弱性やインシデントに付与された固有の名称や番号のカタログのことである。
- CVSS(Common Vulnerability Scoring System)とは、情報システムの脆弱性の深刻度を、基本評価基準、現状評価基準、環境評価基準の 3 つの基準で評価する枠組みのことである。
〈解答方針〉
a→“組織内の”仕組みなのに、“完全性”なんて担保できるのか?
b→24時間365日稼働する“組織”(=生身の人間によるチーム)なんかあるのか?
この2つを×にできると、エ(正答肢)しか残らない。
後ほど触れますが、IPA(情報処理推進機構)を試験委員が意識しているのは、ほぼ間違いがないだろうと思われます。しかしながら、診断士1次試験の経営情報システム対策でIPA資格を取得するのは、以下の2点から、私はおすすめしません(次項で詳しく触れます)。
〈理由1〉出題者の属性が違う
IPA試験の出題者は、IT業界の実務家です。他方、診断士試験は、1次試験/2次試験問わず、作問しているのは学者(大学教授)です。同じ情報システムという対象についても、両者の観点は当然異なります(参考:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 委員の内訳)。
例えば、SoS(System of Systems)が令和3年度に出ましたが、このような学術的な内容(分野としては、「システム理論」(Systems Theory)という学術分野です)は、実務家が出題することはあり得ません。学者が作問していることの明らかな証左です(そして、250%二度と出ません)。
〈理由2〉基本情報技術者試験・応用情報技術者試験自体が、非常に範囲が広い
診断士のテクノロジ問題は、難易度にばらつきはありますが、取るべき問題の範囲は割と決まっています。他方で、 IPA試験の午前問題は、テクノロジ系を含め非常に出題範囲が広いです。診断士試験対策でIPA試験を取りに行くのは、コスパが悪すぎます。
この2点は、明確に意識しておく必要があるでしょう。
■気になるIPA(情報処理推進機構)との関連
みなさんがよくご存知の通り、経営情報システムは、IPAの応用情報技術者以上の資格取得が免除要件です。他の科目も免除要件がありますが、例えば経済学・経済政策では、免除要件は博士号です(修士号ではありません)。財務・会計なら会計士や税理士、経営法務なら弁護士です。これらの途方もない要件に比べれば、「応用情報なら、勉強すればなんとかなるのでは」と思っても不自然ではありません(実際、先ほど述べたように、私も科目免除狙いで応用情報技術者試験を受験したことがあります)。
先ほど触れましたが、IPA試験問題を診断士の試験委員が意識しているのは、ほぼ間違いがないだろうと思われます。例えば、EBAの江口明宏先生は、去年度・今年度と、月刊『企業診断』で、IPA試験問題と経営情報システムの関連性を明確に指摘しています。
ここで、IPA試験の仕組みを見ておきましょう。
IPA試験は以下のような複数レベルの構成になっており、基本情報技術者試験(レベル2)も応用情報技術者試験(レベル3)も午前問題はマークシート方式、出題領域はテクノロジ・マネジメント・ストラテジに分類されます。診断士の経営情報システムと出題分野構成が酷似しているのは、一目瞭然です。ちなみに、ITパスポート(レベル1)は別にして、基本情報技術者以上の午前問題は、どのレベルでも難易度にそこまでの差異はありません。
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出所:試験区分一覧 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
今年度、ビジネスモデルキャンパスが出題され、応用情報技術者試験の関連性が指摘されていますが、この論点は250%未来永劫出題されないと断言できます(先述のSOSもそうですが、経営情報システムに限らず、「こんな問題、二度と出ないだろう」という問題は、1次試験によくありますね。某受験校のテキストには載っていますが)。ビジネス教養として知っていれば秒殺の問題ですが、どちらかというと、企業経営理論で出題されてもおかしくない論点です。このような理由から、基本情報技術者・応用情報技術者に手を出すのは妥当ではないと言えます。なぜなら、膨大な範囲と量の過去問を相手にしなければいけなくなってしまうからです。
では、試験委員が何を求めているのかというと、診断士になった立場から申し上げると、中小機構のITプラットフォーム(IT経営サポートセンターなど)で必要となるスキルを求めているのではと考えられます。即ち、「中小企業の社長さんとITベンダーとの橋渡しができますか?」という知識を問うているのではないのかということです。この点は、経営法務の会話問題をイメージしていただければ良いと思います。
従って、経営情報システムの対策のために、IPA試験を受験する必要はないというのが私の考えです(次項で述べるように、ITパスポート試験は受けても良いと思いますが)。特に、IPA試験に“受かるための勉強”をするのは、全くの時間と労力の無駄だと思います。
■私が推奨する主な対策
まず、IT業界の感覚をどうやって身につけるかですが、比較的余裕のある今の時期のうちに、IT業界についての解説本を一読することをおすすめします。
意外にそのような書籍が少ないのですが、おすすめは以下の2冊です。
世界一わかりやすい IT業界のしくみとながれ(イノウ編著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4802614861
1週間でシステム開発の基礎が学べる本(増井敏克)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C7VBVZNR
1冊目で十分だと思いますが、物足りなければ2冊目を読んでも良いと思います。
次に、テクノロジ問題についてですが、これは診断士試験の過去問で十分です(先述したように、IPA試験は範囲が広すぎます)。ただし、ここ数年で出題傾向が激変しているため、5年分では危ういです。8年分くらい見ておき、これまでの頻出論点を確実に押さえておく必要があります(9年前の平成28年度と10年前の平成27年度は、爆弾科目の様相なので、必須ではないでしょう)。過去問完全マスター(同友館)でももちろん良いですし、過年度の受験校の過去問題集を中古で買うのもありです。
中小企業診断士試験 過去問完全マスター 6 経営情報システム (2025年版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4297144743
※2025/2/10発売予定
最後に、一番気掛かりなマネジメント問題ですが、こちらはIPA試験問題を活用した方が良いです(正直に申し上げて、受験校の対策は、後追い対策になってしまっていると思います)。テキストは、レベル的に応用情報技術者試験が無難だと思います(基本情報技術者試験だと取りこぼしがありそうです)。おすすめは、キタミ式です(まとめシートに近い感じです)が、他の出版社のものでも構わないです(テイストの好みの問題です)。テクノロジ系を見る必要はありません。マネジメント系とストラテジ系(システム戦略のみ)だけ最初に通読し、あとは辞書代わりに使えば良いです。
キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者 令和07年
https://www.amazon.co.jp/dp/4297144743
一方、問題集は、先ほど述べたように、基本情報技術者試験以上に手を出す必要はありません。むしろ、ITパスポート試験の過去問題集を9割目標で固めることをおすすめします(“受かるための勉強”は無駄なので、「楽に受かる教材」は不向きです)。応用情報技術者試験レベルを大体6割取れる状態ではなく、ITパスポート試験レベルを確実に9割取れる状態の方が、望ましいです。なぜなら、取れそうな問題の取りこぼしが、診断士1次試験では最も致命的だからです。なんとなく解けた(なんで解けたかわからない)は全く意味がありません。
ITパスポート過去問道場|ITパスポート試験ドットコム
(出題分野を絞りこんで解くことが可能です)
ただし、ITパスポート試験自体を受験する必要はないでしょう。腕試し(達成度確認)で1回受けても良いと思いますが(CBT方式なので、いつでも受けられますし)、はっきり言って合否自体はどうでも良いです。腕試しという目的を見失わないようにしてください。
■その他の対策
1)統計問題についての対策
私が科目合格した5年前くらいまでは、検定名(カイ二乗検定など)を丸暗記していれば取れましたが、近年は統計分野についての考え方の理解を問う問題が増えています。令和6年度の統計問題が解けなかった方は、高校レベルで良いので、統計入門の本を一読して、統計分野についての理解を深めることをおすすめします(大学レベルは不要です)。例えば、以下の書籍が良いでしょう(「大学」と名がついていますが、内容は平易です)。
大学4年間の統計学が10時間でざっと学べる(倉田博史)
https://www.amazon.co.jp/dp/4046043164
2)トレンド問題についての対策
「日頃から情報収集のアンテナを立てて、ウェブ記事などをこまめにチェックしよう」と言うのは簡単ですが、このブログをここまで読んでいる時点で、そのような余裕はないでしょう。「情報通信白書を一読すべし」と言うのも無理筋かなと思います(中小企業経営・政策で「中小企業白書を一読すべし」と言っているのと同じです)。これについては、受験校のオプション講座に課金するのが、一番コスパが良いかなと思います(お金は必要ですが)。
3)ヤマ当て講座について
できるだけ網羅したくなるのが受験生心理ですが、いかんせん、出題範囲が広いのが診断士1次試験です。令和6年度も、某所のヤマ当てが1問当たったようですが、宝くじのようなものです。受けるなら1つに絞り、それをなるべく消化する(本試験会場で確実に想起できるようにする)のが望ましいでしょう。
■おわりに
長くなりましたが、本ブログの内容をまとめます。
経営情報システムは、IT非経験者が60点を取りに行ける科目ではもうなくなった
(過去問対策だけでは厳しい(下手をすると足切りの憂き目に遭う))ことを前提に、
今から取り組むべき手順は、以下の通り。
- 今のうちに、業界解説本でIT業界のイメージを掴んでおく
- 情報通信技術分野の対策は、診断士過去問8年分くらいを確実に固める
- 経営情報管理分野の対策は、応用情報技術者試験のテキストを辞書がわりにして、ITパスポート試験過去問を9割目標で固める
- トレンド問題は、対策するなら、受験校のオプション講座に1つだけ課金する
- ヤマ当て講座は、取るなら1つに絞り、完全消化する
本ブログが、令和7年度1次試験の経営情報システムを受験される方に、少しでもお役に立てれば幸いです。
次回は、風さん の登場です。
お楽しみに!
【参考文献】
「2025年度版 中小企業診断士 最速合格のための第1次試験過去問題集5」(TAC出版)
「2020年度版 中小企業診断士 最速合格のための第1次試験過去問題集5」(TAC出版)
令和6年度の1次試験結果と令和7年度の対策(江口ブログ)
月刊『企業診断』(同友館)
- 2020/9令和2年度中小企業診断士第1次試験 総評 (古森創)(品切れ)
- 2020/11令和2年度 中小企業診断士 第1次試験 経営情報システム (永井貴之)
- 2021/10令和3年度中小企業診断士第1次試験 総評 (江口明宏)
- 2021/12令和3年度 中小企業診断士 第1次試験経営情報システム (永井貴之)
- 2022/9 令和4年度中小企業診断士第1次試験 総評 (江口明宏)
- 2022/11 令和4年度 中小企業診断士 第1次試験(1・2日目科目) 経営情報システム (永井貴之)
- 2023/10 令和5年度中小企業診断士第1次試験 総評 (江口明宏) (品切れ)
- 2023/11令和5年度 中小企業診断士 第1次試験(後編) 経営情報システム (永井貴之)
- 2024/9 令和6年度中小企業診断士第1次試験 総評 (江口明宏)
- 2024/12 令和6年度 中小企業診断士 第1次試験(後編) 経営情報システム (永井貴之)
教養としての「情報Ⅰ」―大学入試導入で変わるITリテラシーの基準(松尾康徳)
大学受験科目「情報」と国家資格「ITパスポート」の違いを、代ゼミ講師・藤原進之介が徹底解説!(Yahoo!ニュース)
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