採点者視点でみる読みやすい文章 byぶぃの
皆さま、こんにちは、ぶぃのです。先日の一次試験合格発表を終え、多くの方が日に日に近づいてくる二次試験に向けて準備をされていることと思います。勉強の進み具合はいかがでしょうか?私は現在、3回目の実務補習中真っ只中でちょうどこのブログが掲載される日は、社長への最終プレゼンの予定です。これを終えれば、晴れて診断士の登録申請をして登録となります。これでも自分なりにできるかぎり時間を割いてきたつもりですが、なんだかんだ、二次試験当日から1年近くの時間と、それなりの投資金額をかけてやっと登録ができそうです。今回の記事も私の一年くらい前を振り返り、この時期に何を考えていたのかを思い出してみます。
この時期に悩んでいたこと
私は昨年、二次試験受験の権利はあったものの、一次試験を保険受験をしました。理由は少し二次試験の勉強がスランプ状態だったため、気分転換をしたかったからです。一次試験のようにひたすら過去問を回す勉強が二次試験では通用しません。自分の現在地を客観的に認識し、足りないものを補うには何が必要なのかを考えなければなりません。もしかすると、受験生の方の中には過去問などを一通りやり尽くしたものの、このあと自分が何をすればよいのかわからなくなっている人もいるかも知れません。私も一通り過去問をやってはみたけど成長実感がなく、合格できる気なんて全くない。試験日が近づいてきて焦りはあるのに事例を解くのに集中できない、そんな状況でした。
私が悩んでいた時期、たまたま伊藤真先生の「合格のお守り」という本に出会い、付属していたCDでかなり気が楽になりました。
『スランプというのは、理想とする自分と現状の自分のギャップがあるから認識できる。つまり、目標に向けて頑張っている人にしかスランプなんてやってこない。「明日の自分は、今日の自分が創る」今、自分に何が必要かを見定め、一歩ずつ進みなさい。
このような内容で励まされました。ほとんどの受験生は悩みながら、スランプに陥りながら取り組んでいるのだと思います。今、自分がやれる合格へ近づくための方法は何があるのか?本番まで考え抜いた先に合格があるような気がします。
また、人は元来、怠けたい(合理的に考えたい)生き物なのでゴールが近づくと手を抜きたくなります。そんな意識を感じたときは、二次試験はゴールではなく、新たなスタート地点であるということを意識してみてください。スポーツ競技でいえばトライアスロンのようなイメージでしょうか。1つの種目ごとに確かにゴールはあるけれど、それが終わるとすぐにまた別の種目がスタートするイメージです。二次試験のあとに口述試験、実務補習や実務従事が待っています。多くの方が受講するであろう実務補習は、5,6人程度のグループで編成され、毎回1人が班長となり診断士試験に合格した仲間をまとめ上げる役割を担います。今回、私が班長になりましたが本当に優秀なメンバーの中で、かなりのプレッシャーを感じながら取り組んでいます。そして登録後にはプロとしての診断業務の実務が待っています。
採点する側の状況を考えてみた
自分が何をすべきかを考えていたとき、最終的に採点者に合格答案として選んでもらう要素、つまり、良い解答と悪い解答の違いがわかれば、自分の解答を良くするために、やるべきことも見えてくるんじゃないかと考えました。そこで、採点者というのはどういう状況に置かれながら採点しているのかをイメージしてみました。最新の2020年度の数値と日程で改めて考えてみましょう。
今年は更に多いかもしれませんが、令和元年度の二次試験受験者数の約6千人で考えてみましょう。令和2年度の二次試験日である10月20日から、合格発表の12月6日まで47日です。受験生からしたらとても長いのですが採点者からしたらどうでしょうか?全国の二次試験会場から答案を回収してチェックし、採点結果をもとに合格発表の準備をすることを考え、採点の期間は30日前後と仮定してみます。1日の休みもなくぶっ続けで採点という職場環境はあまりにブラックすぎるので、ざっくり営業日ベースで実稼働は20日としましょう。
6千枚の解答を20日で割ると、1日あたり300枚です。8時間勤務で考えると、1時間37.5枚。ということは、採点者が一人だとすると、1枚あたり1.5分、2人だとして3分、3人でも4.5分です。その他にも採点基準の検討や、答案用紙の入れ替え、休憩、ダブルチェックの時間なども別途かかりそうです。つまり、受験生が80分の死闘を経て我が身の分身とも言える状況で作成した渾身の答案ですが、点数がつくまでの時間は3~5分程度で採点されていると考えてよいのではないでしょうか。(注意:私個人の勝手な憶測ですので、実際のところはどうなのかは不明です)
ちなみに6千枚の答案用紙ってイメージできますか?解答用紙自体は薄いですが、紙と紙の間の隙間を加味して、0.1mmとして考えると6千枚集まれば60cmの高さになります。1箇所で採点しているのかどうかは不明ですが、机の上にA3の束が60cmの高さで積まれ、それを1ヶ月で採点しなければならない業務はなかなか精神的にも辛そうです。
私は、このシミュレーションをしてみてから、採点者に解答をじっくり時間をかけて採点してもらうことは期待できない。自分が伝えたいことをストレスを与えず、誤解なく伝えられる練習をしよう、と思い至りました。
読みやすい文章とは?
そこで私が答案作成の際に改善しようと意識したポイントや、私が参加しているWEB勉強会のコメントで気づいた点などをいくつか例示いたします。
・時間の変化を意識して、過去→現在→未来への流れで順番を考える。
文章を初見で読むとき、古い状況からだんだん新しい方向に向かうんだろうな、という先入観で読み始めます。この順番が少し狂うと読みにくい文章になってしまいます。例えば、「問い合わせ対応の効率化をすすめ、技術情報のマニュアル化を進め、社内の情報を集約する取組で対応人員を増やす。」なんとなく、言いたいことはわかるような気がしますが、時系列を意識してプロセスを考える、社内の情報を集約→マニュアル作成→対応人員が増加→問い合わせ対応の効率化できる、という流れがオーソドックスかと思います。要素として書き出しただけだと、順番が狂いがちですので、骨子を作成する際に矢印「→」でつなぎ「Aを実施して→Bが実現できると→Cの効果を得られる」といったように、順を追ってつないでやるとストーリー作りが明確になります。
・問われた時制と解答の表現が一致している
表現上の細かい部分ですが、過去のことを問われているのに現在形の文章で解答していたり、文章の中で複数の時制が混在している解答があります。例えば、「社内情報を集約したことで、技術者の標準化を図ること」のような文章です。読み手を混乱させてストレスを与えるとともに、文意が変わってしまいます。どの時制に対して表現しようとしているのか、動詞の時制は統一されているか意識してみてください。
・曖昧な表現を避け、明確な動詞を使い分ける
受験生の解答を拝見していると、〜を効率化する、を最適化する、適正化する、といった提案を解答として記載されている方がいます。「在庫の適正化により、原価率を最適化します」のような提案では、何をすべきかさっぱりわかりません。在庫の発注ロットを増やして仕入原価を下げるのか、在庫量を減らして管理コストを削減するのか、主語となる対象物に対応させて、述語で、減らすのか、増やすのか、どう変化するのかを示して、効果で結ぶと読みやすい解答になると思います。述部の表現の例は、「削減する」「短縮する」「増員する」「取りまとめる」など。効果表現の例は、「向上する」「獲得する」「創出する」「捻出する」「拡大する」「確保する」などです。参考書や、予備校解答などから使えそうな表現をまとめておくと、ご自分の解答の引き出しが増やせると思います。
・きれいな字で、誤字をなくす
ご存知のとおり、二次試験は手書きの筆記試験です。いかに読んでもらう字を書くか、誤字のない正確な答案を作成するかの意識も採点者に与える印象が大きく変わってきそうです。私は一時期、勉強の合間の気分転換でスマホの美文字アプリでひらがなの練習もしていました。また、漢字を迷いなく書けるよう、先程紹介した使える表現のストックとともに、オリジナルの漢字ドリルも作成していました。参考までに私が練習していた漢字のリストをいくつかご紹介します。
煩雑、頻繁、乖離、柔軟、貢献、過剰、移譲、委譲、高揚、醸成、遂行、凝集、繁閑、繁忙、閑散、逓減、希薄、希釈、脆弱、喪失、捻出、享受、発揮、円滑、衰退、撤退、脅威、試行錯誤、跨る、抑制、年俸、奨励、斬新、模倣、漸進、革新、待遇、遵守、生涯、老舗、嗜好品、魅力、掲載、媒体、整頓、躾、など。
いかがだったでしょうか?自分が採点者として手書きの答案の束に囲まれて、「良い答案を選びなさい」という業務を受けている側だとしたら、どういうところに加点をしたくなるか、あるいは、どういうところが減点対象にするか。違った立場から捉えてみると、答案作成の心構えが少し違ってくるのではないでしょうか。
明日は風大さんがR元年事例Ⅰを再現します。お楽しみに!
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