気まぐれ過去問解説【H26事例Ⅰ】 (by フランシスコ)

みなさん、こんにちは。フランシスコ@タキプロ6期生です。

 今回は唐突ですが、H26の事例Ⅰについて私なりの解説を試みたいと思います。と申しますのも、先日のタキプロ勉強会でこのH26事例Ⅰをテーマにしたディスカッションに参加したのですが、どうにも引っかかる部分がありまして、一晩たってもすっきりしなかったので、文章化しておこうと思った次第です。受験生の皆様も一緒に考えてみてください。

 H26事例Ⅰの問題はコチラ

【経営環境とは??】

 では設問1について考えてみましょう。

A 社は、小規模ながら大学や企業の研究機関と共同開発した独創的な技術を武器に事業を展開しようとする研究開発型中小企業である。わが国でも、近年、そうした タイプの企業が増えつつあるが、その背景には、どのような経営環境の変化があると 考えられるか。120 字以内で答えよ。

 この設問は、近年のわが国の中小企業を取り巻く経営環境の変化について問うています。

 勉強会に参加された方の多くは、「公的補助金などの施策が整備されたため」という点を主要な論点に置いていたようでした。

 全く異論はありません。しかし違和感がありました。それはこういうことです。

 補助金というものは、国が何らかの方針のもとに行う施策です。「補助金が出て資金調達がしやすくなったから…」というのは、「国がそっちに誘導しているから…」といっているのと、ほとんど同義ではないでしょうか。経営環境の変化として認識すべきなのは、「国がそっちに誘導するようになった原因」ではないかと思うのです。

 身近な例えで考えてみましょう。

 自分の子供の将来のために、英語力が必要だと考えている親がいたとします。子供が英語でいい成績をとったら小遣いを出すことにしました。子供は小遣い欲しさに一生懸命勉強して、英語の成績があがりました。

設問:「最近Aくんのように英語の勉強に力をいれる子供が増えた背景には、どのような環境の変化があるか?」

答え:「親が英語の成績に応じて小遣いを出すようになったから」

 いやいやそうじゃないでしょう。それは英語力が必要な世の中になったから(と親が考えているから)でしょう。と思うわけです。

 もとの設問に戻ると、まず、グローバル化の進展による価格競争の激化があって、日本の企業の競争力を高めるためには研究開発力を強化するべき、という国家戦略があって、補助金政策が打たれるようになった…というのが背景にある出来事です。

 それを踏まえて考えると、私としては解答の中でグローバル化の進展についてどうしても言及せずにおれません。みなさん、わりとその辺りをスルーされていたのが、違和感のもとかなと思います。

【いい解答とは??】

 上記の私の考えが、試験解答として適切かどうかはわかりません。グローバル化云々について与件文に記述がないので、解答に盛り込む根拠が薄いという意見もあるでしょう。ごもっともだと思います。試験は時間との戦いです。正しい解答より受かる解答を書くべきです。それもわかります。

 しかし、環境分析はコンサルタントとしてもっとも基本的かつ重要なスキルです。環境分析の精度が悪いと、後の戦略立案がぶれてしまいます。ここが正確にできるかどうかで、コンサルとしての力量が決まってしまうのではないかと思うほどです。

 駆け出しの私が偉そうに言える立場ではありませんが、中小企業診断士として活動するからには、表面的な出来事にとらわれず、常に水面下に潜む問題に目を向けるように心がけたいと思った次第であります。

 これからも不定期で過去問解説をしていくつもりです。また来週お会いしましょう。フランシスコでした。

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気まぐれ過去問解説【H26事例Ⅰ】 (by フランシスコ)” に対して3件のコメントがあります。

  1. ナゴヤのオヤジ より:

    通りすがりの名古屋のオヤジです。
    鋭い考察、恐れ入ります。
    当方の解釈は以下のとおりです。
    1.設問要求は”経営環境の変化”です。これに対して、ご指摘内容は”市場環境”もしくは”事業環境””マクロ環境”と捉えます。”経営”を「企業永続のために行う事業管理活動」であるとすれば、解答の対象は企業活動の範囲、すなわち資金調達で問題ないと考えます。極端な話、グローバル化なんかはどうでもよくて、理由は何であれ研究開発にカネが出るのであれば”経営環境”としては同じことだと考えます。
    2.例題も、A君にとっての環境変化なのか、もっとマクロ的な環境変化なのか、どちらを問うているのかによって解答の方向性は異なってくるはずで、その意味で、問いかけを単に”環境”とだけしていることが方向性を迷わす要因なのではないでしょうか?

    1. タキプロ より:

      名古屋のオヤジ様
      コメントありがとうございます。
      鋭いご指摘をいただきまして、こちらこそ恐れいります。
      とても勉強になります。私も引き続き考えて参りたいと思います。

      せっかく問いかけをいただいたので、個人的な見解を述べさせていただきます。

      1.「経営環境」にはマクロもミクロも含まれると考えます。解答全体の中では、複数の論点について触れることができたほうが望ましいと思います。その意味でグローバル化について触れる必要は必ずしもないと思いますが、選択肢として持っていてもいいのではないでしょうか。
       さて、私の記事は、“経営者たるもの、常に時代の先を読むべき”という個人的な考えがにじみ出てしまい、いささか理想論的な内容だったかもしれません。混乱を招く内容であったことをお詫びいたします。
       しかしながら、試験の解答から離れて考えますと、「グローバル化なんてどうでもいい、カネが出るから研究開発するんだ」という近視眼的発想だけで、経営の舵取りができるのかは疑問に思うところです。経営者に助言する立場である我々も同様です。
      解答には不要な要素かもしれませんが。

      2.もとの設問自体「経営環境」に関する問いかけで、マクロかミクロかは指定されていません。どこに軸足をおいて解答するかは受験生次第で、その選択の優劣が問われるものではないと思います。
      2次試験とは、ひとつの正解を探り当てる作業ではなくて、設問について多面的、重層的に考え、自ら方向性を決定していく作業ではないかと考えています。
      従いまして「問いかけが曖昧だ」とのご意見には「曖昧ななかでいろんな可能性を考えてみてください」とお答え致します。

  2. ナゴヤのオヤジ より:

    タキプロ様
    迅速かつ丁寧な返信、ありがとうございます。
    当方は”経営環境”を”事業環境””マクロ環境”と区別し別概念で捉えました。タキプロ様は、これを同一概念でとらえられた、要は、”経営環境”という用語をどう理解するか、解釈の差ということだと思います。
    なお、当方の書き方もマズくて意図が伝わっていないようでしたので、以下補足をします。
    1.ご指摘いただいている経営のかじ取りの下りですが、グローバル化の認識が経営に不要という趣旨ではありません。上記用語定義のうえで「”経営環境”としては、どうでもいい」と言っているだけで、”マクロ環境””事業環境”として経営者は認識、認知すべき、との発想です。
    2.「問いかけが曖昧」との指摘は、タキプロ様の例示中の題意が単に”環境”となっていることを指しています。範囲のある問いかけ(”経営環境”)に対する補足説明として、範囲のない問いかけ(”環境”)を例味とするのは、論点のすり替えでは、と思った次第です。
    ※返信は不要です。

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