二次筆記試験の前提

 こんばんは。ごとりん@たきぷろ6期です。今回がメディア班としては最後の投稿となります。1年間続けさせていただいた関係者・受験生の皆様方、そして1年間を通して毎回校閲をしていただいていた火曜日担当のぷらむさんに感謝です。ありがとうございました。

 

 さて、この1年間のまとめですが、以下の3つの命題を結論としたいと思います。

  • 過去問題は最大の重要資料なので何度も説きなおしたほうがよい。
  • 過去問題を検討する際には、正解や解き方だけでなく、正解にたどりつくまでのプロセスや、「間違い」とされる誤答についても「なぜそれが誤りなのか」を検討したほうがよい。
  • 一次試験は二次試験の前提になるばかりでなく、二次試験の論述の方向性を決める土台となる。

 

 特に③ですが、二次筆記試験で「何を書いていいのかわからない」という声をいろいろ伺うことがありましたが(また、二次筆記試験の設問だけからしますと自由にあれこれ書いても字数は稼げる設問になっていることは事実ですが)、そこには暗黙の制約条件があります

 まず、企業経営理論などで「最も適切とされた選択肢」の趣旨に沿っていることです。一次試験では「経営は環境問題を意識しなければならない」という理念が明確に打ち出されています。これは論述試験の前提として当然踏まえておかなければなりません。ミルトン・フリードマンなどいわゆるリバタリアンとよばれる経済学の流れには、実は環境問題やら公害問題やらは企業が自由な経済活動をおこなっていれば自然に均衡がとれて解決していくものなので、政府は余計な干渉をするべきではないし、企業も経済活動以外に余計なことをするべきではないという考え方をするグループがあります。これはこれで尊重すべき考え方の一つではありますが、こうしたリバタリアンの考え方を二次試験に持ち込むのは不適切でしょう。

 また、二次筆記試験では「~述べよ」と書いてあるだけなので、たとえばマルクス経済学を学習した受験生がマルクス経済学に依拠して、剰余価値や労働価値といった用語を用いて論述することも可能です。しかし、一次試験の経済学が近代経済学である以上、そうしたマルクス経済学の用語に依拠するのも禁じ手となります(同様に社会学の用語や現代思想の用語を用いて論述したほうがすっきり書けるというケースは当然多々ありますが、二次筆記試験は一次試験で設定された枠組みにもとづいてフレームワークを設定するのが前提です)。

 また、経営学とはいっても、取引費用理論など効率性を重視するアプローチ・資源依存理論などパワー(力)を重視するアプローチ・リソース・ベースト・ビューなど経営資源を重視するアプローチ・経営理念や共通目標などアイデンティティを重視するアプローチがあります。一次試験ではそれぞれのアプローチからバランスよく出題されていますが、一次試験で出題されていないフレームワークに依拠するのも禁じ手です。なぜなら法律学や経済学の学術論文と比較しても、経営学は新たなフレームワークが学術論文で提起される回数がきわめて多く、たとえそのフレームワークが正しくても採点対象にならない可能性があるためです。一次試験に出題されたフレームワークであれば、試験委員はすでに既知のフレームワークであることは明らかですね。

 その上で、事例に設定された企業の環境をふまえ、設問に設定された条件に沿って解答すれば、ポイントを大きく外すことはなくなってくるでしょう。

ピラミッド

 

 

 ただ、これはあくまでも試験に合格するための枠組みであって、合格後はむしろ大多数の診断士とは異なる視点をもつほうが差別化しやすくなってきます。現場の企業はさまざまな悩みを持つわけですが、試験の枠組みは統一的であっても、実際に活動する場合にはなるべく多種多様な中小企業診断士がいたほうが社会的にも便益が高いということなります(100人が100人同じ結論になるのであれば、診断士もそれほど人数がいらないということになります)。

 で、タキプロには同じ試験の合格者・受験者とは思えないほど多様なキャラクター・職業・年齢の方が集っています。そうした方々とめぐりあうチャンスがあるだけでタキプロに参加する意義はきわめて高いです。それこそ色々な方が本当にいらっしゃるので、その知的刺激は相当なものです。まずは過去のブログをざっとご覧いただくだけで、その多様性の幅がおわかりいただけることでしょう。

 

 これから第7期の方々の新たなブログが始まりますが、第6期ともどもなにとぞご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。きっとまた新たな多様性が展開されることと思います。そしてこうした多様性が中小企業になんらかのかたちで還元されていけば、タキプロのブログは受験生の合格率を1%でも高めるだけでなく、中小企業の収益性を1%でも高めることにつながっていくものと信じています

 

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