一次知識の要否と設問解釈、再現答案に触れながらbyやま
タキプロ15期の やま と申します。
今回は二次試験の組織や人事に関連する「事例Ⅰ」についての記事となります。
①知識の必要性②設問解釈③私の再現答案も掲載していますので、参考になれば幸いです!
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■はじめに~やまの自己紹介~
名前:やま
年代/性別:30代 男性
職種:弁護士
受験歴:1次1回、2次2回
勉強時間:1次約200時間(法務と財務会計は免除)、2次約200時間 *測ってないので適当です。
勉強方法:1次:診断士ゼミナール、2次:LECの道場2つくらいと独学
得意科目:受けていませんが経営法務
私は弁護士登録以降、主に企業を対象にリーガルサービスを提供してきました。
今後自分が事務所を経営するにあたり、リーダーシップ論や組織論、財務会計を理解しておいた方が良いだろうし、企業法務の質を高める上でも有用だろうと考え、2023年の4月に受験することを決め、同年の一次試験に合格しました。
一次試験は、知識が未定着ながらも、文章の内容に不自然さを感じた選択肢を切っていく等して、運よく合格できたのですが、二次試験の与件文や設問の解釈に苦労し、同年の二次試験は不合格となりました。
診断士二次試験の勉強においては、一次知識の要否や使い方、設問解釈について議論となることが多く、ここの向き合い方に時間を要してしまう方も一定数いるように思いますので、参考までに私の考え方をまとめてみようと思います。
■①一次知識は必要?
私は、与件文を正しく読むために(一部の)一次知識は必要だと思っています。
例えば、「X君の論文は抽象的だ。」、「Y君は自分の意見を絶対だと考えている」といった文章を読んだとき、「抽象的」、「絶対」という言葉(知識)を正しく理解していないとすると、文章の意味がわかりません。
逆にこれらを理解していれば、X君の論文は具体性を欠いているからもう少し個別具体的な内容にすることが求められているのかな?とか、Y君は他の人の意見を顧みない点が問題なのかな?と解釈することができます。
令和5年度の二次試験事例Ⅰでも、例えば、【厨房を担当していた数名の正社員も独立するようになり、重要な役割を担う正社員の離職も相次いだため、一時的に従業員は家族とアルバイトだけとなり、サービスの質の低下を招いていった。】といった記載を見たときに、業務にやりがいがなかったのかな?アルバイトだけだとノウハウが貯まらないよな?といった風に推測しながら与件を読んでいく必要があり、これを支えるのが一次知識だと思います。
とはいえ、どこまでやれば十分なのかは中々判断しにくいと思いますし、私もそうでした。
そんな私にとって、非常に勉強になったのが、LEC立花先生の二次専用知識の道場でした。
私は本科生でもなければ回し者でもないのですが、習得する一次知識の範囲や使い方に迷っている方は受講を検討してみてもよいかなと思います。おすすめです。
https://online.lec-jp.com/disp/CSfLastPackGoodsPage_003.jsp?GOODS_NO=100212525
■②設問解釈とは?
「設問解釈が大事だ」、「設問解釈の時点でうんたらかんたら・・・」みたいな話をよく見聞きましたが、正直今でも「設問解釈」の正体はわかっていません(笑)
私自身は、「偏見なく、設問に書いてある通りに理解すること。日本語をありのまま読むこと」が重要だと思っています。
偏見なくというのは、「与件文に○○といった内容があるからきっとこれが問われているはずだ」とか「○○先生が○○(知識)は重要と言っていたから解答に使うはずだ」といった決めつけで設問を歪めないこと。文字通りそのまま設問を理解するという意味合いです。
特に、「時間(いつ)」、「主体(誰が)」、「何をどうする」を意識して設問を読んでいました。
あと設問でよく出てくる単語(例えば問題点、課題、留意点等)の範囲や違いが曖昧ということもあると思います。そういった場合はこれらの単語の意味を辞書で調べておくのもおすすめです。
国の試験ですから、試験委員も設問の日本語を変な独自の意味で使用することはできないはずですからね。
■再現答案
色々書きましたが、結局お前はどんな解答書いたんや?ってなると思いますので、再現答案と考えていたことを簡単にまとめてみようと思います。以下に記載する私の答案は73点でした。色々と当日は気付かず、漏れている点もありますが、参考になれば幸いです。
第1問(配点20点)
統合前のA社における①強みと②弱みについて、それぞれ30字以内で述べよ。
(設問解釈)
過去問を解く中で、意外と強みと機会、弱みと脅威の区別が曖昧でこれはどっちだとなることが多かったように思います(島のハーブが強みなのか機会なのかとか、いくつか微妙なのがあったように思います)。
こういう時にふわっと、「強み」「弱み」「機会」「脅威」という言葉だけで捉えていると、どちらの言葉にも含まれそうなものが出てきたときに困ってしまいます。こういったときに明確に区別できるよう、言葉の定義を明確にする必要があるのです。
基本的な箇所ですが、私は以下のように定義付けして、内部要因か外部要因か(自社でコントロールし得るか否か)で区別していました。
- 強み:事業にプラスとなる企業内部の特質
- 弱み:事業に障害となる企業内部の特質
- 機会:事業にプラスとなる外部の特質
- 脅威:事業の障害となる外部の特質
(再現答案)
S:①商品開発力②高品質な商品とサービス③従業員の相互援助
w:①材料仕入の不安②新規原料供給先が未確保③顧客獲得力弱い
(振り返り)
弱みの②について、与件の表現は「近隣の原材料の仕入れ業者の高齢化によって、原材料の仕入れが不安定になり、新たな供給先の確保が必要となりつつある。」となっていますが、「原材料の仕入れ業者の高齢化」は外部の変化であり、そのまま記載すると脅威のようになってしまいます。
近隣の原材料仕入業者の高齢化(脅威)⇒ほかの供給先を確保できていない⇒新たな供給先を確保する能力が低い点が弱みと考えました。
同様に、弱みの③についても与件では「常連である地元の顧客も高齢化し、新たな顧客層の取り込みがますます重要となっていった。」とありますが、顧客の高齢化自体は外部の特質であり、そのまま記載すると脅威のようになってしまいます。
「常連である地元の顧客も高齢化」(脅威)⇒若い地元の常連がいない⇒新規顧客の獲得力が弱いと考えました。
第2問(配点20点)
A社の現経営者は、先代経営者と比べてどのような戦略上の差別化を行ってきたか、かつその狙いは何か。100字以内で述べよ。
(設問解釈)
主体:A社の現経営者(つまり、先代の長男)
時制:特に、「先代の長男が経営者になって以降」といった制約はないので、先代の長男が行った差別化であればすべて含まれると判断しました。与件文を読んでいただくと、長男が経営を引き継いだのは2010年であるところ、実は長男は2010年以前から色々やっていることがわかると思います。上記の通り時期の制約はないので、2010年以前に行った差別化も解答要素に含まれるのだろうと思います。
何をどうする:「先代経営者と比べてどのような戦略上の差別化を行ったか」とあるので、先代の方針(何でも屋として差別化)にも触れつつ、現経営者の差別化に触れる必要があると理解しました。
(再現答案)
①総花的メニューや出前を廃止し蕎麦に資源を集中②地元ファミリー層にボックス席を用意し複数での来店を促す③原材料厳選し高付加価値化。チェーン店と品質で差別化し、客単価と客数を向上し収益向上を図った。
第3問(配点20点)
A社経営者は、経営統合に先立って、X社のどのような点に留意するべきか。100 字以内で助言せよ。
(設問解釈)
時制:経営統合前。経営統合後の対応ではなく、経営統合前というのがポイントだと思います。
主体:A社経営者
何をどうする:X社のどのような点に留意するべきか。X社の問題点や課題に限定せず、広く「Xのどのような点」としているのがポイントだと思います。X社単体で見ると問題点や課題でなくとも、Aと掛け合わせるにあたってAが気にするべきことは解答要素に含まれることとなります。
(再現答案)
①客層が一見の駅利用者でAと異なる②客単価が低くサービス省力化されておりAの強みと相反③Xの個人的関係による仕入先との取引継続が不透明④従業員間の連携がない⑤業務過大で離職率が高い、点に留意する
(振り返り)
統合後にすべき対応は、設問の「経営統合に先立って」や「X社のどのような点」という問いから外れそうです。
また、上記の通り、広く「どのような点に留意するべきか」なので、X社の問題点や課題に限らず、Xが気にすべき点を広く拾いあげることを意識しました。例えば、仕入先がXの個人的関係というのは別にXの弱みではないですよね。だけど、AがXの事業を引き継ぐ際には、Aが引き継いだ後も取引を継続してもらえるのか?という留意点が生じることになります。
(余談)
再現答案でも触れた、【③Xの個人的関係による仕入先との取引継続が不透明】について、何らの対応もせず、A社に統合後、その仕入先に「Xさんじゃないと嫌!」と取引を拒絶されたらA社は困ってしまいます(特にA社の従来の供給先も高齢化してきていますからなおさら。)。
そのため、実務的には、A社とX社の統合の実行条件として、「仕入先から、A社との統合後も取引を継続することの同意を得ること」を設定することも多くあります。
その上で仕入先に出向いて、本件であれば、かつて同じ蕎麦店から暖簾分けした経緯等を話して、統合後の取引(契約の引き継ぎ)を同意してもらったりするかなと思います。
統合の際には、当然、AからX社に事業の対価を払うわけで、お金を払った後に仕入先から取引を拒絶されると思っていた通りのシナジーを発揮できず、A社は損失を被ることになってしまうので。
事前に留意しているからこそ、こういった対応ができるわけで、この設問はそういったことに思いを馳せて欲しかったのかなと解釈しています。
第4問(配点40点)
A社とX社の経営統合過程のマネジメントについて、以下の設問に答えよ。
(設問1)
どのように組織の統合を進めていくべきか。80字以内で助言せよ。
(設問解釈)
時制:経営統合過程なので少し幅がありますね。PMIについては、また機会と時間があればどこかで解説してみようと思います。
主体:設問上の限定はありません。
何を:組織の統合
(再現答案)
①統合後の方向性、目的や意思の統一を図る為に従業員と協議②A社の従業員を配置し段階的に組織文化をすり合わせる③食品卸売業者と協議し取引承継、で円滑に統合を進める
(振り返り)
こんなブログを書きながら、③は組織の統合の話ではないので、設問から外れてしまっていますね。
②のところももう少し具体的に接客リーダー配置まで書くべきでした(本番は気付きませんでした)。この設問は色々とやらかしていますね。
(設問2)
今後、どのような事業を展開していくべきか。競争戦略や成長戦略の観点から100字以内で助言せよ。
(設問解釈)
時制:A社とX社の経営統合過程のマネジメント(第4問本文)+今後 で統合過程以降と整理しました。
主体:統合過程後のA社
何をどうする:どのような事業を展開
(再現答案)
地元産高品質な原材料を使用した高品質な蕎麦、独自メニューや丁寧な接客で競合と差別化し、口コミ等で市場浸透を図り、外国人観光客や若者を獲得する。A社の技術とX社の原材料、立地のシナジーをいかす事業。
(振り返り)
食べ歩き用の蕎麦とか外国人向けの蕎麦作り体験とか色々思いついたのですが、これをできる資源もなさそうですし、無難に高い技術や接客(従来のA社)×地元の原材料(従来のX社)という形にしました。
少し解答の抽象度が高い気もしますが、設問が問うているのも「どのような事業」とある程度幅を持たせていますし、戦略を聞いているので、具体的な事業内容よりはこのくらいの抽象度でよかったのかなと思っています。1文目と2文目のつながりが悪く恥ずかしいのですが、合格点はもらえたようでよかったです。
■おわりに
ここまで好き勝手書いてきましたが、私の考え方があっているのかどうかもわかりません。笑
色々見て聞いて、取捨選択していく選択の過程で、私の投稿が何かしらの参考になれば幸いです!
次回は、おくそんさんの登場です。
お楽しみに!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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