ビジョナリーであるということ〜事例Ⅰに開眼するまで byにゃーもん
タキプロ15期の にゃーもん と申します。
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■はじめに
プロフィール
名前:にゃーもん
年代・性別:30代・女性
職業:地方公務員
受験歴:1次 1回、2次 2回
勉強時間:1次 300時間、2次 450時間
学習方法:1次独学、2次予備校(クレアール)・タキプロ
好きな科目:1次 経営情報システム、経済学
2次 事例Ⅱ(なぜか点数は高くない)
事例Ⅰ、本当につかみどころがないです。
R4年2次試験では63点で、翌年猛勉強してR5年は64点でした。解せぬ。(多分第3問で大ゴケしたからですハイ)
ですが、診断士試験において他事例でもⅠの考え方は重要ですし、なんなら他試験でも使います。(先日、情報処理技術者試験を受けましたが、事例Ⅰの考えかたを多いに午後の記述試験で使います。プロジェクトマネジメントとか。)せっかくなのでマスターしてしまいましょう。
■事例Ⅰを(多分)理解できたきっかけ
それは、ある一冊の本によるものでした。(この本以降にも事例Ⅰ開眼の機会は数回訪れましたが、比較的初期の体験の一つにフォーカスします。)
2年目もふぞろい読んで、事例Ⅰの説明を読んで抽象的でピンとこん‥と思い悩んでいたある日この本に出会いました。ジム・コリンズ著の「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」です。
言わずと知れたビジネスの名著、有名すぎるといえばその通りです。存在を知ってましたがそれまで読む機会がなく、手にとって勉強の合間に読むことができたのは受験2年目のことでした。この本はアメリカの名だたる企業の経営を分析し組織としての成功要因をケーススタディ的手法で紹介しています。私もまさか事例Ⅰに効くと思わずに読み始めましたが、その後の学習に大きな影響を受けました。
この本の要旨は「ビジョナリーな企業は、そうでない企業より業績利益を上げている」ということです。「ビジョナリー」ということは、事例Ⅰ風にいえば経営者が人に説けるくらい明確なドメインを持っているということです。ドメインがあるからってなんだ?モノや製品がなければどうしようもないんじゃないか?と第1章を読み始めたあたりでは半信半疑でした。
しかし本書の言葉を借りて組織論を語るならばこうです。
「企業そのものが究極の作品である」
組織が存続しパフォーマンスを上げていくために、指導者の在り方についても述べています。本書第2章「時を告げるのではなく、時計をつくる」を始めとして、繰り返し「時計をつくる」指導者が組織作りの秘訣と書かれています。
■「時計をつくる」指導者とは
素晴らしい組織をつくる指導者とはどんな性質を持つのでしょう。素晴らしい製品やサービスのアイディアを持っている人でしょうか?組織論的には違うようです。
「同じような志を持った人を集めて、いい雰囲気にして、そうした人たちをさらに成長させてさらに良いパフォーマンスを上げる仕組みづくり」という観点で見れば組織ができるのは十分すごい成果です。
本書は「時を告げる」「時計をつくる」という言葉で、対照的な指導者の在り方を説いています。「時を告げる」指導者は業務や業績に具体的にせわしなく口を出して回ることが特徴で、「時計をつくる指導者」は社員とドメインを共有し仕組みを提示して自律的に動いてもらうというスタンス。
一人のカリスマ的な指導者が具体的な指示を出して回るやり方は、組織が育っていかない「時を告げる」やり方に分類されます。社長が定型業務以外のことを大体全部やってくれるし、自分は訓練された無能のままでもいいや、とぬるま湯な空気感が醸成されがちです。
■「カルトのような」組織風土
参考書に「組織学習」や「学習する組織」という用語が載っていても、説明を読んでも抽象的でピンとこない人もいるかと思います。本書第6章の「カルトのような文化」という中で、アメリカの高級百貨店ノードストーム社の例が挙げられています。
会社には明確なドメインがあって、ドメインにあった職員を選別します。本書内の例に出てきた人物も、入社してしばらく仕事を楽しんでいましたが結局組織風土についていくことができず同業他社に転職してしまいます(ですが、ノードストーム社で働いたことを良い思い出と語っています。)このように企業は「誰にとっても素晴らしい職場である」というものではなく「合う合わない人を区別」して組織に合わない人を区別します。合わない人は「病原菌かなにか」のように追い払われます。
こうしてある種のカラーを醸成し、組織の雰囲気を形成することで組織文化として定着させます。組織の雰囲気にそぐわないことは反発され、コミュニーケーションが難しくなり、新しい施策への学習が難しくなります。組織文化にそぐわない人員には高い評価を与えなかったり、リストラ等で追い払われたりします。
やっぱり雰囲気は大事です。昔と同じことだけやってればいい。自分の仕事以外は関係ない。こんな空気が蔓延していれば社長が改革を進めようとしても浸透しません(いわゆる組織文化の逆機能)。外部環境に適応できる組織にするためには、組織デザインについて指導者が気を配る必要があります。
■読んだ後、実際に事例を解いてみた
この本を読むまでは、社長はすごいアイディアとカリスマを持っていてモーレツな人が奮闘して組織を作り上げるようなイメージを持っていましたが、それだけじゃいずれ指導者引退などで立ち行かなくなることに気づきました。
トップの指導者はいかに自分の理念を共有して同じように動いてくれる人を作っていけるかにも気にかけるべきです。社長は意思決定業務しなきゃいけないから負担減らす方向でやりましょう。
いい会社は誰にとっても居心地が良い、というのは思い込みに過ぎないというのも衝撃でした。社長をはじめとして組織内でドメインに見合う人材を選別しているのです。
ここからの文章は令和元年と令和5年の事例Ⅰの内容に関する記述があります。読んでも問題のない人だけ三角のトグルをクリックしてください。
令和元年事例Ⅰの葉タバコ乾燥機の会社の例では、社員の大多数が「葉タバコ乾燥しかやらねえ!」と思ってる中で、経理体制を改善したり人員削減したり「農作物の乾燥」をドメインにしたり、非常に思い切ったことをやって組織内部を改革し、潜在顧客にとうとうアクセスすることができました。この社長が古参社員におもねってドメインを「葉タバコ乾燥」のままにしていたらどうでしょう。新たな市場という機会をつかめなかったと思います。
令和5年(私にとっての試験本番)の事例ⅠもA社とX社の対照的な組織風土が描かれていました。A社の社長は経営資源の選択と集中を行い蕎麦に特化、「接客リーダーとともに会社として目指す方向性を明確にし、目的意識の共有や意思の統一を図るチームづくりを行った」ことで時計をつくる指導者であったといえます。対して、X社社長は「担当を横断するような意思疎通」が少ない組織文化の中で調整に奔走する時を告げる経営者タイプに描かれているように思えます。
■本読んだ後どうやって勉強したらいいの?
全知全ノウの付録の設問なしの想定問答集を周回して暗記します。一通り暗記できたら徐々になぜそのような解答なのか理由も考えるようにします。(内容は結構普通です)
診断士っぽい答え方の型をひたすら叩き込みます。設問に対して反射的に書き上げられるくらい鍛える!でも読み込みを丁寧に行う!を心がけます。
■おわりに
私はまだ30代で、トップマネジメントが考えるような意思決定や経営について体感する機会があまりなかったのですが、試験を通してそれらを垣間見ることができるいい機会になりました。思えば事例Ⅰを理解していない頃は会社は自分にとって「雇ってもらうところ」で、経営者にとって企業の在り方をデザインしていくという視点があまりなかったように思えます。
今回の記事を読んだみなさまに、事例Ⅰが「ピンときた」感覚が少しでも伝われば幸いです。
次回は、うなぽん さんの登場です。
お楽しみに!
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