他人の回答から客観的に見つめる事例Ⅰ byかずや
タキプロ15期の かずや と申します。
■はじめに
「中小企業診断士2次試験の壁をどう乗り越えるか?」
多くの受験生がこの問いに悩み、何度も模擬試験や過去問に挑戦しています。
しかし、どうしても得点が伸び悩む…私も同じ受験生の一人でした。実は、回答がピントのずれたものになっているかもしれません。
本記事では、練習問題に対するそれぞれふたつの回答例を用い、得点力を向上させるためのポイントを探りたいと思います。
理解力と表現力、この2つの軸を押さえることで、あなたの答案が変わるヒントが見つかるはずです。
では練習問題からいってみましょう。
■練習問題:経営戦略の再構築
与件文:
A社は、創業20年を迎えた中堅の製造業企業で、従業員数は約80名、年商15億円です。A社は高品質な製品を提供することで、一部の大手企業と長年にわたる取引関係を築いています。しかし、近年は新規顧客の獲得が停滞しており、売上高は伸び悩んでいます。さらに、主要取引先が新たなサプライヤーを模索しているとの情報も入り、A社の将来に対する不安が高まっています。
これまでのA社の経営戦略は、「安定した品質と信頼性を維持し、既存顧客との関係を深める」ことに重点を置いてきました。しかし、市場環境が急速に変化する中で、A社はこれまでの戦略を見直す必要性を感じています。特に、競争力を強化し、新規市場への参入を模索することが求められています。
A社の経営陣は、新たな市場機会を探りつつ、企業の持続的な成長を目指した戦略の再構築を図りたいと考えています。しかし、どのような方向性で経営戦略を進めるべきか、具体的なプランを持ち合わせていません。
設問1
A社の現状を踏まえ、これまでの経営戦略の問題点を分析し、新たな市場環境に対応するための戦略オプションをいくつか提案してください。それぞれの戦略オプションのメリットとリスクを比較し、最適な戦略を選定してください。
設問2
選定した戦略を効果的に実行するためのステップを説明してください。また、その戦略が成功するための重要な要因と、経営陣が注意すべきリスク管理のポイントについても考察してください。
■設問1
ここでは、いまいちな回答と改善を施した回答のふたつを並べ、見比べていきたいと思います。
ピントのずれた回答例(100字):
A社は新規顧客の獲得が停滞しているため、広告費を増やして知名度を上げるべきである。また、製品の品質をさらに向上させ、既存顧客との信頼関係を深める戦略も重要である。合格に向けた回答例(100字):
A社の経営戦略は、既存顧客依存によるリスクが高まっているため、新規市場への参入と新製品開発を進めるべきである。また、営業力強化とマーケティング戦略の見直しが急務である。
いかがでしょうか。
ここでの修正のポイント:
- 問題点の認識不足:ピントのずれた回答では、現状の戦略に固執し、問題の本質を捉えていません。現状の「既存顧客依存」のリスクを明確に認識することが重要です。
- 戦略の多様性不足:単に広告費を増やすという提案は戦略の多様性に欠け、問題の本質を解決しません。新規市場参入や新製品開発といった、企業成長のための具体的な戦略を考慮する必要があります。
では続いて設問2です。
■設問2
設問2も同様に見比べてみましょう。
ピントのずれた回答例(100字):
A社は広告キャンペーンを展開し、営業マンの数を増やして売上を拡大すべきである。リスクとしては、広告効果が出ない可能性があるが、粘り強く取り組むことが大切である。合格点がもらえそうな回答例(100字):
選定した戦略を実行するためには、ターゲット市場の明確化、商品開発プロセスの強化、そして営業体制の再構築が必要である。リスク管理には市場調査と段階的実行が重要である。
修正のポイント:
- 具体性の欠如:ピントのずれた回答は、提案が漠然としており具体的な実行ステップが示されていません。ターゲット市場や商品開発プロセス、営業体制の再構築といった具体的なステップを明示する必要があります。
- リスク管理の不十分さ:リスクに対する対応が不十分です。リスク管理においては市場調査や段階的な実行といった具体的な対策を示し、リスクの軽減を図る必要があります。
■回答からのまとめ
ここまでの修正のポイントをまとめます。
修正ポイントのまとめ:
- 問題の本質を正確に把握する:企業の現状や課題を的確に分析し、何が問題かを明確にすることが重要です。
- 具体的な戦略提案:単なる表面的な対策ではなく、具体的で実行可能な戦略を提案することが求められます。
- リスク管理と実行ステップの詳細化:リスクに対する具体的な対応策や、戦略を成功に導くための実行ステップを明確にすることが重要です。
これらのポイントを押さえることで、回答の質を高め、合格点を狙うことができます。
■なぜピントのずれた回答になってしまうのか
では、なぜピントがずれてしまうのでしょうか。
ピントのずれた回答をしてしまう理由はいくつか考えられます。
以下はその主な原因です。
1. 問題の本質を理解していない
- 問題文の与件や設問を十分に理解していない場合、表面的な問題点や解決策にとどまってしまうことがあります。例えば、A社の課題が「新規市場への対応」であるにもかかわらず、既存の広告戦略に固執してしまうのは、問題の本質を見誤っていることが原因です。
- もしかしたらもやもやとした理解はできているのですが、的確に文字で表現できていないのかもしれません。
2. 設問の意図を読み取れていない
- 設問が求めている内容を正確に把握できていないことも原因です。例えば、設問1が「問題点の分析と戦略オプションの提案」を求めているのに、単に「広告費を増やす」といった単一の対策にとどまるのは、設問の意図を読み違えているからです。
3. 思考の柔軟性の欠如
- 一つのアイデアに固執してしまうと、他の可能性を考慮する余裕がなくなります。たとえば、「広告を増やす」というアイデアに固執し、他の戦略オプション(新製品開発や新市場開拓)を見逃してしまうことがあります。
4. 不十分なアウトプットトレーニング
- 答案を作成する練習が不十分だと、回答を論理的に構成する力が弱くなります。これにより、設問に対する適切な回答を作成できず、ピントがずれることがあります。
改善のためのアプローチ
- 問題文と設問をじっくり読む:問題の本質を捉えるために、与件文と設問をしっかり読み、何が問われているのかを理解する時間を設けましょう。
- 模擬問題の実践とフィードバック:多くの練習問題を解き、回答後には必ずフィードバックを受けることで、思考の癖や弱点を修正することができます。
- 実務知識の習得:理論と実務の橋渡しができるよう、業界の事例や実務経験を通じて知識を深めましょう。
- 柔軟な思考の訓練:一つのアイデアに固執せず、多角的な視点から問題を考える練習を意識的に行うことが大切です。
これらの改善を通じて、ピントのずれた回答を防ぎ、より合格に近い答案作成ができるようになるのではないでしょうか。
■2軸で切り分けてみると
ピントのずれた回答をしてしまう原因を2軸に切り分けると、今回は「理解力(問題の理解度)」と「表現力(回答の表現・構成力)」の2つの軸で分類することができるかと思います。
- 理解力(縦軸):問題の本質や設問の意図を正しく理解できているかどうか。
- 高:問題の本質を正しく理解している
- 低:問題の本質を十分に理解していない
- 表現力(横軸):理解した内容を効果的に表現・構成できているかどうか。
- 高:理解した内容を的確に表現できる
- 低:理解した内容をうまく表現できない
ご自身の状態が上記のマトリクスのどの部分が不足しているのかを考えることで、具体的な対策が見えてくると思います。
試験日が近づいてきましたね。
毎日少しずつ練習を重ねれば、必ず合格に近づくと思います!
次回は、きたっち さんの登場です。
お楽しみに!
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