【おーじ流アドバイス】人気?シリーズ最終回!H30事例Ⅰの予備校解答をぶった切る!/おーじ

1.はじめに

読者のみなさん、こんにちは。タキプロ10期メンバー、「おーじ」です。

ついに9月も終わりますね。残り20日間のカウントダウン!もしもまだ事例Ⅳでしっくり腹落ちしていない頻出単元があるなら、まずは繰り返し問題を解いて徹底していきましょう。そしてもちろん事例Ⅰ-Ⅲも勘が鈍らないように、グルグルと日々科目を変えながらペース落とさずにやってゆきましょう。
そして、試験日前の有休も、できれば金曜日には取っておきたいですね。暗記科目詰め込み用だった1次試験前日ほどの切迫感はないのですが、気持ちにゆとりを持って一通りの科目を一気通貫で復習できる機会として、何とか確保するようにしましょう。

2.3回目のぶった切りシリーズです

はい、今回こそ、もう本当に雑談はやめて、いきなり本題です。
事例Ⅱ→Ⅲときたこの「予備校解答ぶった切りシリーズ」ですが、やはり今日最終回、事例Ⅰでもやってみたいと思います。

初めて読む方のために一応ご説明しますと、H30年度の2次試験後、予備校各校が発表している「解答例」について、比較考察をしてベスト答案を考えてみるという記事となります。これまで同様、比較する予備校は、ネットで入手した、K校A校(名古屋)、O校T校の4校です。著作権の関係で勝手にそのまま転載はできませんが、それぞれのHPへのハイパーリンクを付けています。ブログ内で校名(「K校」など)が書かれている個所は全てリンクを入れておきますので、実際の文章でも確認したい方は都度校名をタップしてください。

※注意!)もしもまだH30事例Ⅰを解いていない人は、ここから先は絶対に解いてから読んでください!!

簡易な表にして比較する関係で、解答文に盛り込まれた因果関係や文章の組み立てなどはあまり考慮できず、あくまでも解答に盛り込んでいる大きな「要素」としての比較ですので、細かいところまではご容赦いただければと思います。
(また、〇×の判断はあくまでも、おーじ個人の見解となりますので合わせてご容赦ください)

それから、念のためですが、各受験校の解答をディスるのが目的ではなく、優秀答案の比較検討からさらにベストな答案を考えることが目的となります。各校の答案が優れているからこそできる比較であること、ご認識ください。

3.第1問

では、まずは第1問。

第1問(配点20点) 研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしてい るのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。

各校の解答例を要素別に分解して、含まれているものに〇を付けたものが以下の表です。

個々の理由 成果
大手参入少で競争回避 研開集中で競争優位確保 多様な市場へ進出 情報通信技術進歩市場 同業者撤退多い市場 収益性確保 差別化と成長
K校
A校
O校
T校

 

この設問文のポイントは、「研究開発型企業であるA社」「競争戦略の視点から」という2つの条件ですね。まず、競争戦略の視点から考えると、「ニッチ市場は大手の参入が少ないため競争を回避できる」、という理由は外したくないところです。そして、研究開発型企業であることから考えて、「研究開発に集中することで競争優位が図れる」ことも入れておきたいです。そして、それ以外の解答としては、T校「多様な市場へ進出しやすい」点もアリだと思います。

しかしながら、O校「情報通信技術が進歩した市場」「同業者の廃業の多い市場」というのは、複写機関連品や事務機機器の市場のことであり、今のA社がターゲットとしている数々のニッチ市場全体のことを述べている訳ではありません。なので、題意を外してしまったと考え、点数は多くはつかないものと予想します。
なお、成果についても解答に入れるのであれば、競争戦略の視点から問われているので、収益性よりも差別化と入れた方が良いと考えます。また、差別化なのか差別化集中なのか、という議論もあると思いますが、今のA社はニッチ市場を多く持っているので、差別化集中とは言い難く、差別化に留めておくくらいで良いかと思います。

という訳で、赤字が解答に必要な要素、オレンジは中立で入るなら入れた方が良い要素、黒字は不要な要素、という見方で以下となりました。

個々の理由 成果
大手参入少で競争回避 研開集中で競争優位確保 多様な市場へ進出 情報通信技術進歩市場 同業者撤退多い市場 収益性確保 差別化と成長
K校
A校
O校
T校

4.第2問(設問1)

続いて、第2問です。

第2問(配点40点) A社の事業展開について、以下の設問に答えよ。
(設問1) A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。 A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。

同じく各校の解答要素を表にしています。

やらない理由 進んだ方向
社員9割技術者 限られた人員 専門のマーケ・営業が不在 情報収集や提案体制不備 組織風土の違い 受け身の開発体制 専門性高い研究開発力強化 事業者向け価値提案
K校
A校
O校
T校

 

変わった書き方をしているのが、T校です。問われているのは「やらない理由」なんですが、「今の方向性に進んだ戦略」について記述しています。表裏一体とは思うのですが、ここは普通に「やらない理由」を書くべきだと考えます。
そして、問題文の「人員構成から考えて」という条件により、絶対外せないのは「技術者が約9割」という部分で、そのことで「営業やマーケが不在(少数)」であり、したがって「顧客ニーズを把握する接点が少ない」という理屈に持ってきたいところです。これらは「やらない・やれない理由」として必須で入れたいところです。

その他の観点では、T校「限られた従業員数」を挙げていますが、より着目すべきは量よりも質(技術者の割合)なので微妙ですが、×ではないとは思います。
それから、K校が挙げた「事業の考え方や組織風土が異なる」という点ですが、事例Ⅰっぽくかつ何年か前のスポーツ用具メーカーの事例を髣髴とさせますね。×ではないと思いますが、類推元となる根拠がやや薄いので中立的なところかもしれません。
そして、A校O校が挙げた「これまで大手電子メーカーを顧客として受け身の製品開発だった」という観点ですが、これは×だと考えます。受け身だったのはバブル崩壊前の大昔の姿で、最終消費者向けをやらないのは過去からずっとで今現在も、の話です。いちばん最後の⑪段落にもあるように、「受け身の製品開発の時代から、時流を先読みし先進的な事業展開を進め…」とあるように、主力取引先に依存したり受け身だったりした企業文化は完全に脱しています。なのに、今もやっていない理由に受け身だったことを挙げるのはおかしいと思います。
ということで、要素を色分けしますとこんな感じになりました。

やらない理由 進んだ方向
社員9割技術者 限られた人員 専門のマーケ・営業が不在 情報収集や提案体制不備 組織風土の違い 受け身の開発体制 専門性高い研究開発力強化 事業者向け価値提案
K校
A校
O校
T校

5.第2問(設問2)

そして、第2問(設問2)。

(設問2) A社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写 機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特性には、どのような違いがあるか。100字以内で答えよ。

はい、解答要素はこちらです。

経営危機以前 複写機関連製品
販売時点で取引完了 受け身の製品開発 消耗品中心 長期的継続的 複数の委託先と連携 最終消費者向け 主体的製品開発
K校
A校
O校
T校

 

まず普通に思いつくのは、④段落最後に書かれた、「売切り型事業の限界を打ち破る」という記述と①段落にある「売上のおよそ6割を・・・消耗品が占めている」という記述から、以前は「販売時点で取引完了の売切り型」、複写機は「消耗品中心」「長期的継続的」という対比です。ここはまずみんな書けると思います。

一方、入れるか入れないか割れたのが、以前は「受け身の製品開発」K校O校T校)、複写機は「主体的な製品開発」O校T校)という対比です。設問文に「異なる考え方に立って」ともありますので、各校は⑪段落にもあるような「受け身」から「時流を先読みした主体的開発」へこの時点で変化したと結びつけたのだと考えられます。確かに、創業からバブル崩壊までは大手電子メーカー向けの特注電子機器を作っていましたので、ここでは受け身だったと考えられます。何しろ「特注」ですから、主体的な開発・提案ではないでしょう。しかし、考え方を一変させる直前、③④段落での平成不況(90年代ー00年代初頭)中にA社が行ってきた、「自社技術を応用して様々な新製品開発にチャレンジ」してきたことは、果たして受け身だったのでしょうか。私は、違うと読み取りました。経営危機により「チャレンジせざるを得ない」状況だったので、進んで変わっていった訳でもないのですが、受け身ではないからこそ、「市場で受け入れられない」ことも多い訳ですよね。したがって、複写機進出時のタイミングでの違いを問われている解答に、「受け身」→「主体的」を入れるのは×と思います。

それから、O校だけが入れている、複写機の「複数の委託先と提携」「最終消費者向け」という観点ですが、残念ながらどちらも×だと考えます。従来の事業が複数の委託先と提携していなかったかと言えば、創業以来ずっと社員の大半は技術者な訳ですから(⑦段落)、製造販売はやっぱり委託先ですよね。そして「最終消費者向け」については、⑤段落に「大口顧客は事務機器販売のフランチャイズチェーン」とありますので、そもそも間違っています。

その結果、赤字は以下のようになりました。至ってシンプルです。A校が正解と見ています。

経営危機以前 複写機関連製品
販売時点で取引完了 受け身の製品開発 消耗品中心 長期的継続的 複数の委託先と連携 最終消費者向け 主体的製品開発
K校
A校
O校
T校

6.第3問

そして、第3問。

第3問(配点20点)  A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。

はい、解答要素はこちらです。

グループ混成 役員部門長 領域別
市場変化に対応 受け身文化変革 製品領域拡大 製品開発力強化 後継者育成目的 業績明確化 業界知識蓄積
K校
A校
O校
T校

 

結構難しい問題ですよね。⑧段落のファクトを抑えつつ、各所に散りばめられたヒントを拾いながら1次知識も動員して回答するタイプの問題、という感じでしょうか。
まず、きちんと入れておきたい要素は、混成チームを作ったことでの「時流を先読みし、市場の変化に迅速に対応」という内容ですね。⑪段落に、今時流を先読みできていると書かれている訳なので、このリーマンショック後の組織改編によってそうなっていると読み取れます。そして「市場の変化に対応する」ことは⑥段落にのあるように社長の強い想いでもあるので、これらが狙いということが分かります。
そして、そのことによって「製品開発力が強化」O校)され、「製品領域が拡大」T校)するのも、自然な流れで入れて良い内容かと思います。
ただ、この混成グループのくだりで追加して入れたかった内容は(どの校も言葉としては入っていないのですが)、「専門知識・技術の交流によるシナジー」ではないのかなと、私は考えます。あえて専門知識の異なる技術者を同じグループに配置したのですから、「技術間シナジー」→「市場変化対応」→「開発力強化」という文脈で全て盛り込めればベストだったのでは、と思います。

その他の要素では、A校「受け身文化の変革」を挙げています。これは先ほども書きましたが、受け身だったのはバブル崩壊までで、リーマンショック後の今とは時間がずれています。なので×です。

それから、「部門長を役員が兼任」のくだりから、「後継者育成」K校)、「業績明確化」A校)を挙げている受験校がありました。A社は創業から40年くらい経っているので社長は70歳前後と予想されます。なので、「後継者育成」は問題ないでしょう。一方の「業績明確化」は、与件内にそのような課題がないのでちょっと微妙なところです。でも、ここもどの受験校も入れていませんが、部門長を役員が兼務した理由でいちばん大きいものは、「意思決定の迅速化」なんじゃないかなと私は思います。

最後に、T校が入れた「業界知識を蓄積する」という観点ですが、これは×だと考えます。A社は販売も外部に委託し、自社では技術の強化に特化しているため業界知識の取得をテーマにしているとは考えにくいためです。業界知識を得たいのであれば、販売を自社で持つべきですが、そのような方針はありません。

赤字は以下のようになると考えます。

グループ混成 役員部門長 領域別
市場変化に対応 受け身文化変革 製品領域拡大 製品開発力強化 後継者育成目的 業績明確化 業界知識蓄積
K校
A校
O校
T校

7.第4問

最後に第4問。

第4問(配点20点) A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的 インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士と して、100字以内で助言せよ。

解答要素表です。

独創性維持 チャレンジ精神
社内外からの知識取込 グループ間異動 権限委譲 提案制度・加点評価 研究開発テーマ自ら立案 管理人材の育成と抜擢 従業員による新規開発
K校
A校
O校
T校

 

この問題も、与件文+1次知識が必要となる、難しめの問題ですね。近年の事例Ⅰでは国語力だけでは対応できない問題が多いので要注意です。
さて、各校の書き方はそれぞれなのですが、いったん設問文に合わせて「独創性維持のため」「チャレンジ精神維持のため」の2つの観点に分けて整理しました。

まず独創性の方では、やはり技術の体得がいちばんかと思いますので、多くの学校で(例は様々ながら)書いている「社内外からの知識や技術の取込」の要素は必須でしょう。そして、それと若干かぶるのですが、「グループ間異動の活性化」も新たな技術シナジーを生むための施策として入れて良いと思います。
そしてチャレンジ精神の方では、主に人事制度の観点が必要になります。K校「権限移譲」K校O校「提案制度・加点評価・昇進制度」などの観点が良いかと思います。ただし、T校が入れた「管理能力のある人材育成と部門長配置」は研究開発型企業が技術者に求める能力としてセオリーに反していると思いますので、残念ながら高い点は得られないと考えます。そして、同じくT校「その部門長の元、従業員主導で製品開発を行う」という要素も同様です。

したがって、解答表ではこのようになりました。

独創性維持 チャレンジ精神
社内外からの知識取込 グループ間異動 権限委譲 提案制度・加点評価 研究開発テーマ自ら立案 管理人材の育成と抜擢 従業員による新規開発
K校
A校
O校
T校

8.おわりに

いかがでしたでしょうか。
ここまで事例Ⅱ→Ⅲ→Ⅰと予備校答案比較を行ってきましたが、解答のプロである各受験校でも満場一致の問題は非常に少数でした。ただし、4校中3校は挙げているポイントなどは結構多くの設問であり、受験生に必要なのはまずそこを外さないことなんだと思います。与件文を素直に読み解けば、それらはちゃんと出てきますし、60点答案は十分作れます。類推と妄想は紙一重ですので、勝手な解釈に走らず素直なポイントを外さないことに留意してゆけば合格も見えて来ます!頑張りましょう!!

タキプロでは毎週水又は日曜に、2次試験の勉強会を開催しております。
ブログでの質問などのコメントも大歓迎です。

明日は、Tomoが事例Ⅱについての記事をお届けします。お楽しみに!

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
以上、おーじでした!!

気に入ってもらえたら、渾身の?過去記事も見てやってください。

===おーじの過去記事===
 #自己紹介および1回目記事「企業経営理論は国語の試験だ!」はこちら
 #2回目記事「2次事例Ⅳのケアレスミスをあなどるな!」はこちら
 #3回目記事「2次での文字量を自在にコントロールする!その①」はこちら
 #4回目記事「2次での文字量を自在にコントロールする!その②」はこちら
 #5回目記事「1次試験会場でよく見る不思議な光景」はこちら
 #6回目記事「経営法務をさらりとクリアする弱者の戦略」はこちら
 #7回目記事「1次試験に受かればもう診断士も同然!?」はこちら
 #8回目記事「与件文でパターン化される経営指標選択(事例Ⅳ)」はこちら
 #9回目記事「経営情報システム・しょーもないダジャレ暗記法」はこちら
 #10回目記事「最高の1次試験のために!直前&本番テクニック集」はこちら
 #11回目記事「H30事例Ⅱの予備校解答をぶった切る!」はこちら
 #12回目記事「事例Ⅳ・まず今やっておくべきこと」はこちら
 #13回目記事「人気シリーズ第2弾!H30事例Ⅲの予備校解答をぶった切る!」はこちら

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