事例Ⅰの導入編 byつる

読者のみなさん、こんにちは。
タキプロ13期のつると申します。
今回で3度目の記事執筆となります。自己紹介は過去記事を見ていただければと思います。
 ・合格体験記 
 ・事例Ⅳ対策 

事例Ⅰのポイントになりそうな部分について私なりのポイントをまとめましたので、2次試験の勉強を始めたばかりの方、行き詰まっている方はぜひ参考にしていただければ嬉しいです!



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■はじめに

1次試験も終わり、2次試験対策をスタートさせた方も多いと思いますが、進捗はいかがでしょうか。
初めて勉強される方は何から手をつければ良いか迷っている方も多いかもしれません。

今回は事例Ⅰ「組織・人事」がテーマとなります。
事例Ⅰはいかにも診断士っぽい事例ですよね。私は事例Ⅰが一番好きな事例でした。
事例Ⅰの得点は83点でした。再現答案も載せておくので何かしらのヒントになることが見つかれば嬉しいです。

■大前提

【解答は組織・人事の視点で】

さて早速ですが、事例Ⅰは「組織・人事」がテーマですから、2次試験本番では設問に対して「組織・人事」の視点で解答することが求められます。ここは絶対に外さないようにしましょう。視点が異なると0点になってしまう可能性があります。本番で焦ると事例がごちゃまぜになってしまうことがあるので注意が必要です。

【事例Ⅰの世界観】

2次試験においては各事例の世界観をイメージしておくと対応しやすくなります。
事例Ⅰでは、何かしらの変化に対応するために、A社の持ってる資源を最大限有効活用して、あるいは有効活用するために、事業拡大や組織再編、事業承継をすることで乗り越えていくという大きな流れをイメージすると解きやすくなると思います。
解答の方向性としては、限られた資源の中で最大の効果を生み出すために、戦略を定め、社員の意欲を向上させて組織全体を活性化させるといった形が多いイメージです。

個人的な感覚ですが、近年世代交代といった内部環境の変化やコロナ禍を含む急激な外部環境変化に対して、中期的な視点を持ちながらも思い切って事業転換したり、協業したりすることで危機を乗り越えていくといったストーリーが増えている気がします。今年度は何がテーマになるんでしょうね…。

■解答の切り口

様々な人が口を揃えて言う魔法の言葉「さちのひも、けぶかいねこ」。これだけで事例Ⅰはある程度対応できてしまう優れものです。

【人事】
…採用、配置:中途採用、正社員登用、配置換え
…賃金、報酬:成果主義の導入、年功序列型賃金、MIX型
…能力開発 :外部研修、Off-JT、On-JT、メンター制
…評価   :成果主義、公平、公正、明確な評価、目標管理制度
…モチベーション:士気向上、モラール向上
【組織】
…権限移譲 :権限移譲
…部門   :事業部別、専門部門の設置
かい…階層  :フラット化
…ネットワーク:協業、外部連携、産官学連携
…コミュニケーション:会議、意思疎通の向上

まずは「さちのひも、けぶかいねこ」が知識として思い浮かべられるようにしましょう。その次に施策としてどのような効果があるのか、どんな場面で行うと良いのか、事例企業の資源や状況に合わせて使い分けられるようにすると効率よく得点できると思います。

■設問解釈

2次試験の80分間の解き方は人それぞれですが、私は、与件文の1段落と最終段落⇒設問解釈⇒与件文という流れで問題を解いていました。ざっと事例企業の業界やテーマについて確認した後、設問で何が聞かれるのかを確認、推測し、与件を読み始めていました。

事例Ⅰは組織・人事がテーマとなっていますが、設問の種類としては「組織」「人事」「全体戦略」の大きく3つに分かれるかと思います。まずは設問でどのテーマについて聞かれているのか見極めることが重要です。全体戦略について聞かれている設問で組織や人事の個別施策を解答してしまうと出題者の意図を外してしまうので0点になってしまう可能性が高いです。

設問を読み解くうえでは形容詞に注目するとヒントが得られます。
例えば令和3年事例Ⅰ 設問2 を見てみます
「2代目経営者は、なぜA社での経験のなかった3代目にデザイン部門の統括を任せたと考えられるか、100字以内で述べよ」

この設問では「A社での経験のなかった」という修飾部分がポイントになります。「A社での経験のなかった」という文言がなくても文章としては成立しますが、あえてこの文言が入ってくるところに出題者の意図が垣間見えます。

実際に協会の公表している設問2の出題趣旨は下記の通りになっています。
先代経営者からの事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げに関して、経営組織の視点から分析する能力を問う問題である。」

「先代経営者からの事業承継や後継経営者」という部分が「A社での経験のなかった」という表現に繋がっていることが分かります。

このように設問解釈ではまずどのテーマを意識した問題なのかを見極めレイヤーを外さないこと、修飾部分に注目して出題者の意図を読み取ることが大事です。

■課題や問題点に対する解答をストックする

他の事例にも言えますが、2次試験で出てくる企業が抱えている課題や問題点は共通していることが多く、過去問を何年か繰り返すと同じ論点が繰り返し繰り返し出てきていることが分かります。
私のおすすめはこれらの論点に対してメリットデメリットの整理や注目すべきポイントをストックしておくことです。企業の置かれている環境や所有する資源、戦略によってストックしたものが適切かどうかは変わってきますが、対応策をストックできると設問を見るだけで解答の骨子を作ることができます。また与件文を読み解く際に着目すべきポイントが見えてきます。

例えば、成果主義に関して紹介します。
・成果主義を導入するメリット 
 若手社員の士気向上、業績up、成果への執着心、組織活性化、経費削減 など
・成果主義を導入するデメリット
 短期志向、個人主義、協調性の喪失、ベテランの士気低下、会社への帰属意識低下、評価基準の設定が難しい、組織文化の薄れ など
・成果主義を導入する際の留意点
 公正・公平な評価基準の設定、評価者と被評価者との意思疎通 など

成果主義に関しては平成27年度、平成24年度、平成22年度など出題実績があります。例えば平成27年度の第4問では「~成果主義をあえて導入していない理由としてどのようなことが考えられるか」という問題が出ています。先ほどのポイントをしっかり理解できていれば設問を見るだけでおおよそ答えが思いつくかと思います。あとは与件文を見て最も当てはまりそうなポイント整理しまとめれば解答ができます。※事例企業に合わない解答は得点にならないので注意が必要です。

■参考 令和3年度 事例Ⅰ再現答案

【設問1 】20点
2代目経営者は、なぜ印刷工場を持たないファブレス化を行ったと考えられるか、100字以内で述べよ。
【再現答案】
理由は競争激化の印刷市場において多工程で高品質、高精度な印刷が必要な美術印刷分野に集中し、高度で手間のかかる小ロット印刷や印刷事業を展開することで細分化された顧客ニーズに柔軟に対応し差別化を図るため。(100字)

【設問2】20点
2代目経営者は、なぜA社での経験のなかった3代目にデザイン部門の統括を任せたと考えられるか、100字以内で述べよ。
【再現答案】
理由は①3代目の前職のノウハウや人脈を活用し、コンテンツのデジタル化を推進するため②新しい文化を融合させ組織活性化を図るため③3代目に次期社長としての事業経営の知識獲得や経験を積ませるためである。(98字)

【設問3】20点
A社は、現経営者である3代目が、印刷業から広告制作業へと事業ドメインを拡大させていった。これは、同社にどのような利点と欠点をもたらしたと考えられるか、100字以内で述べよ。
【再現答案】
利点は①事業の幅が広がりリスクが分散化②顧客との接点が増えニーズ把握機会の獲得。欠点は①資源が分散化し、営業に必要な資源を投入できない②競合が多くA社の強みが活かせず、売上拡大に繋がっていないこと。(99字)

【設問4】20点
2代目経営者は、プロジェクトごとに社内と外部の協力企業とが連携する形で事業を展開してきたが、3代目は、2代目が構築してきた外部企業との関係をいかに発展させていくことが求められるか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
【再現答案】
協力企業との連携の更なる強化と情報共有化を実施するべき。具体的には交流会や勉強会の実施で社内外の交流を促進し全体の一体感を譲成する。また受注情報の共有化で円滑な業務を実施し、協力企業との連携を強化する。(101字)

【設問5】20点
新規事業であるデザイン部門を担う3代目が、印刷業を含めた全社の経営を引き継ぎ、これから事業を存続させていく上での長期的な課題とその解決策について100字以内で述べよ。
【再現答案】
長期的な課題は営業力強化による新規需要創造で売上拡大を図ること。解決策は営業部の設置と営業担当の中途採用で営業力強化。また社長自ら営業を行い、得たニーズをデザイン部門と共有し新規需要を創出し売上を拡大。(101字)

■おわりに

いかがだったでしょうか。2次試験全体としては設問の分析方法など他にもポイントがあるとは思いますので事例毎の対策はしつつ、事例共通の方法も模索していくと良いと思います。
答えがなく、何が正解なのか悶々とするかと思いますが、この記事が何かヒントになれば嬉しいです。


次回はおぐさんの登場です。
お楽しみに!

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