事例Ⅱの徹底解説!令和4年度過去問の解法実況&再現答案解説 by かものしか
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目次
- ■はじめに
- ■第一部 2次試験のポイントと事例Ⅱの特性
- ■第二部 令和4年度事例Ⅱの解法実況
- ■第三部 再現答案を用いた令和4年度事例Ⅱの解説
- ■おわりに
■はじめに
タキプロブログ読者の皆さま、こんにちは♪
タキプロ14期のかものしかと申します。
令和5年4月29日に投稿しました事例Ⅲ対策の記事に引き続き、私の2次試験突破ノウハウの第2弾として、事例Ⅱ対策の記事を投稿します。
今回の事例Ⅱでも前回に引き続き、少しでも受験生の皆さまのお役に立てるよう、次の3部構成で多面的にお送りします。
第一部:2次試験のポイントと事例Ⅱの特性
第二部:令和4年度事例Ⅱの解法実況
第三部:再現答案を用いた令和4年度事例Ⅱの解説
■第一部 2次試験のポイントと事例Ⅱの特性
最初に、2次試験のポイントについて説明したうえで、事例Ⅱの特性について説明します。
1.2次試験(事例Ⅰ~Ⅲ)のポイント
・私が考える2次試験(事例Ⅰ~Ⅲ)のポイントはたったの2つです。
●ポイント①:解答の型(テンプレート)を作り、そこに内容を入れる
●ポイント②:設問文、与件文、1次知識から当然に言える内容を書く
ポイント①については、2次試験ではとにかく時間がないので、時短のために解答をテンプレート化することが有効です。
ポイント②については、設問文、与件文、1次知識から当然に言える内容を書ければ、たとえ高得点(70点以上)は取れなくても、少なくとも足切り(39点以下)にはならないと思います。
1-1.解答の型(テンプレート)
解答の型とは、予め解答の構成をテンプレート化しておき、解答作成前に設問文の情報から使用するテンプレートを決定するものです。
解答の型の決定要素は、以下の2つです。
①設問のタイプ
②解答の主語
ここで大事なことは、解答の型はあくまでも初期仮説に過ぎないということです。
与件文を読んで初期仮説を検証した後は、解答の型をベースに解答構成を柔軟にカスタマイズしても構いませんし、その方が良いと思います。
(1)設問のタイプ
設問のタイプとは、「『まとめシート』流!ゼロから始める2次対策」(野網美帆子著、kindle電子書籍)でも紹介されている概念で、次の3タイプ(情報整理、期待効果、助言)に分類します。
①情報整理
過去または現在の事項について問われているタイプの設問です。
事例Ⅱでは、原則として「B社の現状」について3C(顧客、競合、自社)分析やSWOT分析などの観点から問われるため、与件文に基づく情報(与件文の抜き書き)のみを書けばよいタイプの設問です。
情報整理で使用する解答構成のテンプレート(基本形)は次のとおりです。
●主語が1つの場合
(主語)は①・・②・・。 |
●主語が2つの場合
(主語1)は①・・②・・、(主語2)は①・・、②・・。 |
②期待効果
今後(未来)の事項について問われており、かつ、理由やメリット・デメリットなどを問われているタイプの設問です。
与件文と1次知識に基づく示唆(理由やメリット・デメリットなどに関する自分の意見)を書く必要があるタイプの設問です。
期待効果で使用する解答構成のテンプレート(基本形)も情報整理と同じです。
●主語が1つの場合
(主語)は①・・②・・。 |
●主語が2つの場合
(主語1)は①・・②・・、(主語2)は①・・、②・・。 |
③助言
今後(未来)の事項について問われており、かつ、「戦略または施策」について問われているタイプの設問です。
設問文に「助言せよ」、「どのような○○を行うべきか」等と書いてあるものです。
与件文と1次知識から、「戦略または施策+その効果」に関する示唆(自分の意見)を書くタイプの設問です。
この場合に使用する解答構成のテンプレート(基本形)は、効果が付け加わります。
●主語が1つの場合
(主語)は①・・②・・、により(効果)する。 |
●主語が2つの場合
(主語1)は①・・②・・、(主語2)は①・・、②・・、により(効果)する。 |
なお、効果の記載は絶対ではありません。解答骨子を作成して書くべき内容を決めた後で、文字数がどうしても足りず、かつ問われている内容から効果よりも戦略や施策などを書く方が重要だと判断した場合は効果の記載を省略しても構いません。
(2)解答の主語
基本的に、設問文で「何を」問われているか把握のうえ、問われている「何」を主語にします。
問われている事項が1つで、かつ指定文字数が少ない場合は主語を省略することも可能です。一方、問われている事項が2つ以上の場合(例:強みと弱み、ターゲット顧客と施策、など)は、主語を省略せずに書く必要があります。
1-2.設問文、1次知識、与件文から当然に言える内容を書く
これは要するに、自分の経験やアイデアに基づく解答を書くのではなく、設問文(制約条件)、与件文(制約条件に合致する記載)、1次知識(設問文と与件文に関連するもの)の3つから当然に言える内容を解答として書くということです。
このうち設問文と与件文については、いわゆる国語力(何を問われているか正しく読解して、問われていることに対して素直に答える能力)が必要です。
また、1次知識については、いわゆる「2次試験で問われる1次試験の知識」を覚えたうえで、それを2次試験で使えるようになる必要があります。
1次知識を2次試験で使えるようになるためには、
①抽象化能力
②論理的思考力(ロジカルシンキング)
の2つの力を身に付ける必要があります。
(1)抽象化能力
抽象化能力とは、要するに「設問文や与件文の記載から、その記載と関連する1次知識の理論に結び付けられる能力」を指します。
事例Ⅱの場合、事例Ⅰや事例Ⅲと較べて覚える必要のある1次知識のボリュームは多くないので、1次知識をきちんと理解すればそれほど難しくはないと思います。
抽象化能力について詳しく知りたい方には「TBC中小企業診断士試験シリーズ 速修2次テキスト」(山口正浩監修、早稲田出版)をお勧めします。
(2)論理的思考力(ロジカルシンキング)
論理的思考力とは、抽象化能力を使って設問文や与件文と結び付けた1次知識を解答作成で使う際に必要となる能力で、具体的には次の2つに分類できます。
①ヨコの論理:枠組み(フレームワーク)
②タテの論理:因果関係
①ヨコの論理:枠組み(フレームワーク)とは、要するに「ものごとを一面だけから見ずに多面的に見る」ということで、2次試験でよく言われる「多面的な解答」とは「枠組みで考える」ということだと思います。
事例Ⅱでよく使われるのは、例えば以下の枠組み(フレームワーク)です。
枠組み | 切り口 |
3C | ・顧客:Customer ・競合:Competitor ・自社(の強みと弱み):Company |
市場細分化 (セグメンテーション) | ・ジオグラフィック:地理的 ・デモグラフィック:人口統計的(年齢、性別、所得など) ・サイコグラフィック:心理的(志向、ライフスタイルなど) |
マーケティングミックス(4P) | ・製品:Product ・価格:Price ・流通:Place ・プロモーション:Promotion |
売上の分解 | 売上=客数×客単価 =(顧客数×購入頻度)×(購入点数×商品単価) |
ダナドコ | ・誰に ・何を ・どのように ・効果 |
②タテの論理:因果関係とは、通常は「Aという施策を行えば、Bという効果がある」という、1段階の因果関係を意味します。
一方、中小企業診断士2次試験の場合は、「Aという課題または問題点があるので、Bという施策を行えば、Cという効果がある」という2段階の因果関係を意識する必要があります。
事例Ⅱの場合は、過去5年間の助言問題では設問文で「得たい効果」が制約条件として指定されていることが多く、「Aという得たい効果があるので、Bという施策を行えば、Cという効果がある」という2段階の因果関係になります。この場合、Aの効果とCの効果が同一の場合と異なる場合の2通りがあり、異なる場合には「Cの効果→Aの効果」という因果関係も成立する必要があります。
「Aという得たい効果」から「Bの施策」を解答する場合には、与件文と設問文の記載および1次知識に基づいて解答する必要があります。
事例Ⅱでよく使われる施策と効果の例は以下のとおりです。
得たい効果 | 施策の例 |
新規顧客の獲得 | ・口コミの活用 |
既存顧客の固定客化 | ・顧客との継続的接触(訪問、ダイレクトメール、ダイレクトメッセージ、等) |
客単価の向上 | ・人的販売による提案 ・購買履歴データを活用した提案 |
新製品の開発 | ・人的販売による顧客ニーズの収集 ・インターネットでの双方向コミュニケーションによる顧客ニーズの収集 |
顧客のファン化 | ・インターネットでの情報発信 ・体験型イベントの実施 |
2.事例Ⅱの特性
ここまでの前提を踏まえて、事例Ⅱの特性について説明します。
2-1.マーケティングの理論に関する参考書籍
本ブログに記載のマーケティング理論については、次の2冊の書籍で紹介している理論を参考としています。本ブログと合わせて参考書籍も読むことで、更に理解が深まると思います。
(1)新人OL、つぶれかけの会社をまかされる(佐藤義典著、青春出版社)
中小企業診断士の資格をお持ちの経営コンサルタントである佐藤義典氏の著書です。
具体(物語)と抽象(理論)とを行き来しながら読み進めることで、マーケティングの基礎理論を体系的に理解できる入門書です。
この本は、最初「ドリルを売るには穴を売れ」というタイトルで出版され、後からリブランディングで今のタイトルに変更されましたが、元のタイトルの方が好きな人が多いせいか、現在は紙書籍版が「ドリルを売るには穴を売れ」、電子書籍版が「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」として、それぞれ違うタイトルで販売されています。
特に、マーケティング初学者である受験生の人にお勧めします。
(2)小が大を超えるマーケティングの法則(岩崎邦彦著、日本経済新聞出版)
中小企業診断士試験の試験委員である岩崎邦彦先生の著書であり、中小企業に特化したマーケティングの理論について書いています。
特に大企業勤務の受験生の人は、この本を読んで、大企業のマーケティング理論と中小企業診断士試験におけるマーケティング理論との違いについて理解しておくことをお勧めします。
岩崎邦彦先生は、過去10年間試験委員を担当しており、令和5年度も試験委員を担当される予定です。
2-2.事例Ⅱのマーケティング理論のポイント
事例Ⅱのマーケティング理論のポイントは次の5つです。
①顧客が求める価値(セグメンテーションとターゲティング)
②B社の競合
③競合との差別化(ポジショニング)
④4Pとダナドコ
⑤B社の経営者の想い
(1)顧客が求める価値(セグメンテーションとターゲティング)
顧客は、商品そのものではなく、商品により得られる「価値」に対して対価を払います。
そのため、事例Ⅱの解答に際しても、顧客がどのような価値を求めているか、与件文または設問文の記載に基づき想定する必要があります。
年度 | 与件文中の顧客価値に関する記載の例 |
令和4 | ・料理の楽しさに目覚めた客 ・作りたての揚げ物を買い求める客 |
令和3 | ・自宅での食事にこだわりを持つ家庭 |
令和2 | ・ヘルスケアに関心の高い人たち |
令和1 | ・デザイン重視の顧客 |
平成30 | ・古き良き時代の日本を感じさせるX市の街のたたずまいは観光地として人気を集めている ・ここ数年は和の風情を求めるインバウンド客が急増している |
解答に際してターゲット顧客を特定する場合は、最初に「どのような価値を求める顧客か」でセグメント化します。そのうえで、設問文や与件文の記載に基づき、必要に応じて地理や年代・性別で更にセグメント化します。
(2)B社の競合
事例Ⅱの与件文には競合に関する記載があります。
過去5年分の実績として、競合には「大手」または「チェーン」というキーワードが入っていることが多いです。
なお、令和2年度の事例Ⅱでは競合に関する記載はありませんでしたが、Z社製品の製造中止を前提とした場合、B社の事業見直しに際して大手の製薬メーカーであるZ社を競合として想定することが可能です。
年度 | 与件文中の競合に関する記載の例 |
令和4 | ・大手食肉卸売業者 ・全国チェーンのスーパー ・大手ネットショッピングモールに出店する食肉販売業者 |
令和3 | ・地場資本のスーパーマーケット ・大手メーカー |
令和2 | (競合に関する記載無し) ※ただし、2~3年後のZ社製品の製造中止を前提とした場合、B社の事業見直しに際して「大手製薬メーカーZ社」を競合として想定可能である |
令和1 | ・大手チェーンによる低価格ネイルサロン |
平成30 | ・距離の離れた駅前のチェーン系ビジネスホテル |
(3)競合との差別化(ポジショニング)
差別化とは「競合に対する差別化」を意味します。
競合を「大手」と想定した場合、中小企業であるB社の差別化の方向性は基本的に以下①~③のとおりとなります。
①「商品力」と「顧客対応力」の2つにより顧客価値を向上し、競合と差別化する
②商品力および顧客対応力のうち、B社の強みであるものはそれを活用する
③与件文に地域または異業種の強みに関する記載があり、かつB社との連携により顧客価値が向上する場合は、それと連携する
前述の2つの参考書籍のうち「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」では、通常は商品力(商品軸)と顧客対応力(顧客軸)のどちらか1つに絞って差別化する必要があると書いています。一方、「小が大を超えるマーケティングの法則」では商品力(ほんもの力)と顧客対応力(きずな力+コミュニケーション力)の両方による差別化が必要である旨の記載があります。
この違いの理由として、恐らくは前者の方が差別化に求めるレベルが高いのではないかと思います。また、前者では商品力(商品軸)に絞って差別化する場合に、顧客対応力(顧客軸)でも平均点以上を取る必要があると書いています。
本ブログでは、中小企業診断士試験の試験委員である岩崎先生の著書である「小が大を超えるマーケティングの法則」の記載に従うものとします。
事例ⅡのB社は、特に与件文中に記載のない限り、価格面での差別化は行いません。
年度 | 与件文中のB社の商品力に関する強みの記載の例 | 与件文中のB社の顧客対応力に関する強みの記載の例 |
令和4 | ・B社の商品はクオリティの高さに定評がある ・最高級のハムやソーセージ、ローストビーフなどの食肉加工品を自社ブランドで開発できるようになった | ・さまざまな食肉の消費機会に対応 ・取引先のニーズに応じて、相手先ブランドでの食肉加工品製造を請け負うことも可能になった ・個々の顧客の要望に応じた納品が可能になった。最近では、飲食店に対してメニュー提案を行ったり、その半加工を請け負ったりすることも増えている。 |
令和3 | ・地元産大豆、水にこだわった豆腐 ・豆腐丼は祖父の時代からB社でまかないとして食べてきたものである。「豆腐に旅をさせるな」といわれるように出来たての豆腐の風味が最も良く、豆腐と同じ水で炊き上げた新米との相性も合って毎年好評を得ていた | 自身が抱える在庫をどうせ廃棄するならば、と小分けにし、使い捨て容器に盛り付け、豆腐に合った調味料をかけて試食を勧めながら、商品説明を積極的に行った結果、次第に高単価商品が売れ始めた |
令和2 | ・無農薬で高品質のハーブが同じ耕作地で年に4~5回収穫できる効率的な栽培方法を開発 ・安眠効果があるとされるハーブ(Yとは異なるハーブ)が注目を集めている | 安眠効果のあるハーブを原材料とした「眠る前に飲むハーブティー」というコンセプトの製品を OEM企業に生産委託し、自社オンラインサイトで販売してみたところ、20歳代後半~50歳代の大都市圏在住の女性層から注文が来るようになった |
令和1 | 2人は開業前にネイリスト専門学校に通い始めた。当初は絵画との筆遣いの違いに戸惑いを覚えたが、要領を得てからは持ち前の絵心で技術は飛躍的に向上した | ・社長は美大卒業後、当該県内の食品メーカーに勤務し、社内各部署からの要望に応じて、パッケージ、販促物をデザインする仕事に従事した。特に在職中から季節感の表現に定評があり、社長が提案した季節限定商品のパッケージや季節催事用の POPは、同社退職後も継続して利用されていた ・Yさんは七五三、卒業式、結婚式に列席する 30~50 代の女性顧客に、顧客の要望を聞きながら、参加イベントの雰囲気に合わせて衣装の提案を行う接客が高く評価されており ・社長やYさんが前の勤務先で培った提案力が生かされた |
平成30 | 歴代の社長たちは皆、芸術や文化への造詣が深く、執筆や創作のために長期滞在する作家や芸術家を支援してきた。このため、館内の廊下や共用スペースには、歴代の社長たちが支援してきた芸術家による美術品が随所に配置され、全体として小規模な施設ながらも文化の香りに満ちた雰囲気である。この中には、海外でも名の知られた作家や芸術家もいる | 館内に無料 Wi-Fi を導入し、B社ホームページも開設した。これにより、それまで電話のみで受け付けていた宿泊予約も、ホームページから外国語でも受け付けられるようになった。また、最低限のコミュニケーションが主要な外国語で図れるよう、従業員教育も始めた |
(4)4Pとダナドコ
事例Ⅱの設問では、前述の差別化の方向性を直接解答することはほとんどなく、差別化の具体的な施策をマーケティングミックスの4P(製品、価格、流通チャネル、プロモーション)に落とし込んで解答することが多いです。ただし、4Pのうち価格について解答を求められることはほとんどありません。
4Pのうち「製品」「流通チャネル」「プロモーション」について解答する場合の留意点は、一貫性と具体性の2つとなります。
①一貫性
・ターゲット顧客や「競合との差別化」と、施策との間に一貫性があること
②具体性
・与件文、設問文、1次知識に基づき、施策を具体的に記載すること
また、事例Ⅱの設問では、ダナドコ(誰に、何を、どのように、効果)の枠組みでの解答が有効であることが多いです。この場合の「ダナドコ」と「ターゲット顧客・競合との差別化・4P」との関係性は次のとおりになります。
枠組み | 記載する内容 |
誰に | ターゲット顧客(どのような価値を求める顧客か) |
何を | 4Pのうち「製品」 |
どのように | 4Pのうち「流通チャネル」および「プロモーション」 ※流通チャネルについては、設問文で指定されている場合は省略可能 |
効果 | 4Pによる効果(設問文に効果が記載されている場合は省略可能) |
(5)B社の経営者の想い
事例Ⅱの与件文には、B社の経営者の想いが記載されていることが多いです。
与件文にB社の経営者の想いが記載されている場合は、その内容を意識しながら解答を作成することが望ましいです。
年度 | 与件文中の経営者の想いに関する記載の例 |
令和4 | B社社長は自社の売り上げが他社の動向に左右されていることに気づき、今後はB社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべきであると納得するに至った。 |
令和3 | 危機こそ好機と捉え、豆腐やおからを材料とする菓子類による主婦層の獲得や、地元産大豆の魅力を伝える全国向けネット販売といった夢をこの機にかなえたいと考えている |
令和2 | 社長は自社ブランド製品の販売に再びチャレンジしたいという思いや、島の活性化への思いがさらに強くなってきた |
令和1 | 子供が手から離れた頃に社長が、好きなデザインの仕事を、家事をこなしながら少ない元手で始められる仕事がないかと思案した結果、ネイルサロンの開業という結論に至った |
平成30 | 8代目は事業承継したばかりで経営の先行きが不透明であるため、宿泊棟の改築などの大規模な投資は当面避けたいと考えている。 既存客との関係を考えると、宿泊料金の値上げにも着手したくない。 打てる手が限られる中、8代目が試しに従来の簡素な朝食を日本の朝を感じられる献立に切り替え、器にもこだわってみたところ、多くの宿泊客から喜びの声が聞かれた。 こうした様子を目にした8代目は、経営刷新して営業を継続したいと考えるようになり、 |
2-3.事例Ⅱの問題の構成
(1)事例Ⅱの大まかなストーリー
平成30年度から令和4年度までの5年間の傾向から言える事例Ⅱの大まかなストーリーは
既存事業改善または新規事業による売上増加の施策を、マーケティング戦略により実現する
です。
事例Ⅱでは既存事業改善と新規事業との区分がそれほど明確ではないため、その区分についてはあまり気にしなくてよいと思います。
年度 | 既存事業改善または新規事業による売上増加の施策 |
令和4 | ・地元事業者との協業による新商品開発 ・直営の食肉小売店の販売強化 ・最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓 |
令和3 | ・ネット販売を通じ地元産大豆の魅力を全国に伝える ・フランチャイズ方式の置き配導入における高齢者顧客への施策 ・菓子類の新規開発、移動販売による主婦層の新規顧客獲得 |
令和2 | ・新たな取引先構成による新たなターゲット顧客の獲得 ・自社オンラインサイト上での顧客の関与向上 ・X島宿泊訪問ツアーによる自社オンラインサイトユーザーのファン化 |
令和1 | ・インスタントメッセンジャーを用いた既存顧客の単価向上 ・他業種との協業による新規顧客獲得 ・店内接客による新規顧客のリピーター化 |
平成30 | ・ホームページ等への自社情報掲載による新規宿泊客増加 ・インターネット上での好意的口コミ誘発 ・X市の夜の活気を取り込んで宿泊需要を生み出す |
(2)現状分析に関する設問と今後の施策に関する設問との一貫性
事例Ⅱでは、第1問で現状分析に関する設問(SWOT、3C)が出題され、第2問以降で今後の施策に関する設問が出題される形式が多いです。
年度 | 現状分析に関する設問 | 今後の施策に関する設問 |
令和4 | 第1問:3C分析 | 第2問、第3問、第4問 |
令和3 | 第1問:SWOT分析 | 第2問、第3問、第4問 |
令和2 | 第1問:SWOT分析、 第3問設問1: 製品・市場マトリックス | 第2問、第3問設問2、第4問 |
令和1 | 第1問:SWOT分析 | 第2問、第3問設問1、第3問設問2 |
平成30 | 第1問:3C分析 | 第2問、第3問、第4問 |
この形式で出題された場合、現状分析と今後の施策との間に一貫性のある解答を作成すると、全体のストーリーにも一貫性が生まれます。
具体的には、以下の方向性を意識して解答します。
●SWOT分析の場合
現状分析での解答事項 | 現状分析における解答の方向性 |
強み(S)、 機会(O) | 「今後の施策に関する設問」で活用できる「強み」および「機会」を優先して解答する |
弱み(W)、 脅威(T) | 「今後の施策に関する設問」と関連する「弱み」および「脅威」を優先して解答する |
●3C分析の場合
現状分析での解答事項 | 現状分析における解答の方向性 |
自社 | まず「今後の施策に関する設問」で活用できる「強み」を優先して解答する。 その次に、「今後の施策に関する設問」と関連する「弱み」があれば解答する |
顧客 | 「今後の施策に関する設問」でのターゲット顧客を優先して解答する |
競合 | 「今後の施策に関する設問」での競合を優先して解答する |
(3)解答字数が100字より多い問題への対応
事例Ⅱは第1問を除き解答字数が100字であることが多いですが、令和4年度では第4問で150字の解答が求められています。
令和4 | 第1問 150字 | 第2問 100字 | 第3問 100字 | 第4問 150字 | |
令和3 | 第1問 30字×4 | 第2問 100字 | 第3問(a) 50字 | 第3問(b) 50字 | 第4問 100字 |
令和2 | 第1問 40字×4 | 第2問 100字 | 第3問設問1 50字 | 第3問設問2 100字 | 第4問 100字 |
令和1 | 第1問 40字×4 | 第2問 100字 | 第3問設問1 100字 | 第3問設問2 100字 | |
平成30 | 第1問 150字 | 第2問 100字 | 第3問 100字 | 第4問 100字 |
■第二部 令和4年度事例Ⅱの解法実況
次に、第一部の内容に基づいて、実際に令和4年度事例Ⅱを解いた場合どうなるかを、実際の私の解法プロセスに沿って順に書いていきます。
なお、ここで書く解答は令和5年5月現在で私が解いた解答であり、昨年の2次筆記試験本番の再現解答ではありません。私の再現解答は第三部で紹介します。
1.私の解答プロセスについて(事例Ⅰ~Ⅲ)
(1)解答プロセスの全体像
解答プロセスとは、要するに「80分間の使い方」です。
色々な流派がありますが、私の流派は「『まとめシート』流!ゼロから始める2次対策」(野網美帆子著、kindle電子書籍)のプロセスをベースに、「30日でマスターできる 中小企業診断士第2次試験 解き方の黄金手順」(黄金手順執筆チーム著、中央経済社)の要素も一部取り入れたうえで、事例演習を繰り返してカスタマイズしたものです。
自分にとってベストの解法プロセスは人それぞれなので、できれば1次試験までには自分に合いそうな流派を見つけておくことが望ましいです。
私の解答プロセスの特徴は「設問解釈に時間を掛けずに、解答メモへの解答骨子記入に時間を掛ける」です。
過去問事例演習時には設問解釈に10分掛けていましたが、2次試験本番では気合で高速処理することで設問解釈を5分に短縮し、稼いだ時間を解答メモへの解答骨子記入に充当しました。
解答プロセス | 事例演習時の目安時間 | 2次試験本番の実績時間 |
①最初にやること | 1分(累計1分) | 1分(累計1分) |
②設問解釈 | 9分(累計10分) | 4分(累計5分) |
③与件文解釈 | 10分(累計20分) | 10分(累計15分) |
④解答メモへの解答骨子記入 | 25分(累計45分) | 30分(累計45分) |
⑤解答用紙への解答記入 | 35分(累計80分) | 35分(累計80分) |
(2)各プロセスで行うこと
解答プロセス | 各プロセスで行うこと |
①最初にやること | ・解答用紙への受験番号記入 ・問題用紙から解答メモを切り離す ・与件文への段落番号記入 ・第1段落だけ読み業種を把握する |
②設問解釈 | ・設問文の制約条件に下線を引く ・設問のタイプとレイヤーを判別して設問文ページに書き込む ・設問文とレイヤーから解答の切り口として使えそうな1次知識を特定して設問文ページに書き込む ・解答の型を設問文ページに書き込む |
③与件文解釈 | ・1回目に与件文を読む時、与件文にSWOTの印を書き込む ・1回目に与件文を読む時、与件文の気になる箇所へシャープペンシルで下線を引く ・2回目に与件文を読む時、各設問に対応した色のフリクションマーカーで与件文の段落に印を付ける |
④解答メモへ解答骨子を記入 | ・解答メモ上で設問別の記入欄を区切り、各設問の解答順序を書き込む ・設問文ページへの書き込み(解答の型、制約条件、1次知識に基づく解答の切り口)と、与件文ページへの書き込み(段落番号とマーカーの印、SWOTの印)に基づき、与件文中で解答に使えそうな記載へマーカーで線を引く ・解答メモに解答骨子を書く |
⑤解答用紙へ解答を記入 | ・解答用紙に④で決めた解答順序で解答を書く |
(3)解答骨子を作る際に意識する点
私の流派の解答プロセスでは「④解答メモへ解答骨子を記入」が最重要プロセスになります。
解答骨子の記入時には、以下の2点を意識する必要があります。
①問われていることとの関連性と重要性
解答には文字数の制限があるため、全ての解答要素が書けない場合があります。
また、「問われていること(設問文の制約条件)」の答えになっていない解答要素を書いても点が付かないと考えます。
そのため、解答骨子の作成時には、「問われていることと関連性があるか」と「B社の特性(強み、弱みなど)から考えて重要性が高いか」の2つの観点から、どの解答要素を使うかを考えながら作成します。
②設問間での一貫性
解答骨子の作成時には、事例Ⅱの全設問を俯瞰的に見て、「第2問以降の施策は、第1問で解答した現状分析の内容と関連があるか」や「ある設問の施策は、別の設問の施策と相反する内容になっていないか」の観点から、どの設問でどの解答要素を使うか、全設問を1つのストーリーと考えて作成します。
ただし、現実的に初見問題で80分の制限時間内に設問間での一貫性まで意識するのはかなり難しいです。そのため、日頃から過去問演習の復習時に設問間の一貫性を意識することで、本番で一貫性のある解答を書ける可能性が少しでも上がると思います。
2.令和4年度事例Ⅱの解法実況
それでは、私の解答プロセスに沿って、令和4年度事例Ⅱの解答を作成していきます。
2-1.最初にやること
最初にやることは、所要時間1分ぐらいを目安に行います。
(1)解答用紙への受験番号記入、問題用紙から解答メモを切り離す
試験開始後、最初に解答用紙へ受験番号を記入します。
次に、問題用紙の裏表紙にあたる部分の紙を、折り目に沿って手で切り離して解答メモを作ります。
(2)与件文への段落番号記入
次に、与件文の各段落へ赤ペンで段落番号を記入します。段落番号を振る意味は、後述の与件文解釈の際に段落単位で与件文と設問文とを紐付けしやすいためです。
(3)第1段落だけ読み業種を把握する
与件文の第1段落にはB社の業種と中小企業の要件(資本金、従業員数)が記載されていますので、設問解釈をスムーズに行うため、第1段落を読んで業種を把握します。
B社は資本金3,000万円、従業者数は45名(うちパート従業員21名)で、食肉と食肉加工品の製造・販売を行う事業者である。現在の事業所は本社、工場、直営小売店1店舗である。2021年度の販売額は約9億円で、取扱商品は牛肉・豚肉・鶏肉・食肉加工品である。 https://www.j-smeca.jp/attach/test/shikenmondai/2ji2022/b2ji2022.pdf |
2-2.設問解釈
いよいよここからが解法プロセスの本番です。設問解釈は所要時間4~9分ぐらい、累計5~10分ぐらいで行います。
2次試験の過去問を解く際、設問文から読む人と与件文から読む人の2通りがありますが、私は設問文から読む方をお勧めします。
理由は、与件文には解答との関連の薄い情報も含まれており、先に設問文を読んで解答の初期仮説を立てて、仮説を検証するという形で与件文を読む方が効率が良く、80分の持ち時間を有効に使えるためです。
(1)設問文の制約条件に下線を引く
まずは、何の内容について解答することを求められているのかを把握するため、設問文を読んで制約条件となる部分に下線を引きます。
制約条件は、
①誰が(主語)
②いつ(When)
③どこで(Where)
④誰に(Who)
⑤なぜ(Why)
⑥何を(What)
の6つ(主語+5WIHのうち5W)に分類できます。
(2)設問のタイプの判別
設問のタイプを判別します。なお、令和元年以降の事例Ⅱでは助言問題に「助言せよ」と書かれており、この場合は設問タイプの設問文ページへの書き込みは不要です。
(3)解答の切り口として使えそうな1次知識の特定
設問文とレイヤーから解答の切り口(フレームワーク)として使えそうな1次知識を特定して設問文ページに書き込みます。
事例Ⅱにおいては、ダナドコの切り口を使うことが多いですが、それ以外の切り口を使うこともあります。
(4)解答の型を設問文ページに書き込む
解答の型は、設問解釈時に一旦初期仮説として決めますが、実際に解答を書く際には内容に応じて構成を見直してもよいと思います。
解答の型を作成する際、複数の解答要素を列挙する場合は「①・・②・・」と、丸囲い数字を用いた箇条書きを用いる人が多く、私もこの書き方で合格点を取れました。
なお、「①・・」と「②・・」の間の句点「、」は、有りでも無しでもどちらでも構いません。
【設問解釈の結果まとめ】
■第1問
B社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から150字以内で述べよ。 |
●制約条件:
B社 | 「①誰が(主語)」の制約 |
現状について | 「②いつ(when)」の制約 |
顧客 | 「⑥何を(what)」の制約 |
競合 | 「⑥何を(what)」の制約 |
自社 | 「⑥何を(what)」の制約 |
●設問のタイプ:情報整理
●1次知識による解答の切り口:3C
●解答の型:
顧客は①・・②・・、競合は①・・、②・・、自社は①・・、②・・。
■第2問
B社は、X県から「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ、県の社会経済活動の促進に力を貸してほしい」という依頼を受け、B社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行うことにした。商品コンセプトと販路を明確にして、100字以内で助言せよ。 |
●制約条件:
B社 | 「①誰が(主語)」の制約 |
地元事業者と協業 | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
第一次産業を再活性化 | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
県の社会経済活動の促進に力を貸し | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
B社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行う | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
商品コンセプト | 「⑥何を(what)」の制約 |
販路 | 「⑥何を(what)」の制約 |
●設問のタイプ:助言
●1次知識による解答の切り口:ダナドコ
●解答の型:
商品コンセプトは(何を)、販路は①(どのように)②(どのように)、により(効果)する。
■第3問
アフターコロナを見据えて、B社は直営の食肉小売店の販売力強化を図りたいと考えている。どのような施策をとればよいか、顧客ターゲットと品揃えの観点から100字以内で助言せよ。 |
●制約条件:
B社 | 「①誰が(主語)」の制約 |
直営の食肉小売店の販売力強化を図りたい | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
どのような施策 | 「⑥何を(what)」の制約 |
顧客ターゲット | 「⑥何を(what)」の制約 |
品揃え | 「⑥何を(what)」の制約 |
●設問のタイプ:助言
●1次知識による解答の切り口:ダナドコ
●解答の型:
顧客ターゲットは①(誰に)②(誰に)、品揃えは①(何を)②(何を)、(どのように)により(効果)する。
■第4問
B社社長は、新規事業として、最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出すつもりである。ただし、コロナ禍で試した大手ネットショッピングモールでの自社単独の食肉販売がうまくいかなかった経験から、オンライン販売事業者との協業によって行うことを考えている。 中小企業診断士に相談したところ、B社社長は日本政策金融公庫『消費者動向調査』(令和4年1月)を 示された。これによると、家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は「献立の考案」(29.4%)、「調理」(19.8%)、「後片付け」(18. 2%)、「食材の購入」(10.7%)、「容器等のごみの処分」(8.5%)、「盛り付け・配膳」(3.3%)、「特にない」(10.3%)とのことであった。 B社はどのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するためにB社はどのような提案を行うべきか、150字以内で助言せよ。 |
●制約条件:
新規事業として、最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出すつもり | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
オンライン販売事業者との協業によって行う | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は「献立の考案」(29.4%)、「調理」(19.8%) | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
B社 | 「①誰が(主語)」の制約 |
どのようなオンライン販売事業者と協業すべき | 「⑥何を(what)」の制約 |
協業が長期的に成功するため | 「⑤なぜ(why)」の制約 |
B社 | 「①誰が(主語)」の制約 |
どのような提案を行うべき | 「⑥何を(what)」の制約 |
●設問のタイプ:助言
●1次知識による解答の切り口:ダナドコ
●解答の型:
協業すべき事業者は・・である。行うべき提案は(誰に)(何を)(どのように)行い、(効果)する。
【設問文ページへの書き込み】
2-3.与件文解釈
与件文解釈は、所要時間10分ぐらい、累計15~20分ぐらいで行います。
私の解法プロセスでは、与件文を2回通しで読みます。
1回目は全体構成の把握とSWOTのチェック、2回目は設問文と与件文との大まかな対応付けを目的としています。
(1)1回目の通読(SWOTのチェック)
1回目の通読では、各段落に何が書かれているかをザクッと把握することで全体の構成とストーリーを把握します。
また、与件文の中で「強み、弱み、機会、脅威」について書かれている箇所に赤ペンでS、W、O、Tの印を振り、2回目に読む際の助けとしていました。これは「解き方の黄金手順」で紹介されていた方法で、個人的には線を引くよりも印を振る方がしっくり来たのでこれを採用していました。
また、特に気になる箇所はシャープペンシルで下線を引いていました。
SWOTの印を付けた結果は以下のとおりとなりました。
【S:強み】
●第3段落
・地域の百貨店や近隣のスーパーなどの大型小売業へ食肉を納入する事業を手がけるようになった
●第4段落
・B社の商品はクオリティの高さに定評がある
・仕入れ元からの B 社に対する信頼も厚く、良い食肉を仕入れられる体制が整っている
・さまざまな食肉の消費機会に対応できる事業者である
●第8段落
・自社工場を新設し、食肉加工品製造も行えるようにした
・高い技術力を有する職人を B 社に招き入れ
・良質でおいしい食肉加工品を製造できる体制を整えた
・B社は最高級のハムやソーセージ、ローストビーフなどの食肉加工品を自社ブランドで開発できるようになった
・単品販売もできるうえ、詰め合わせれば贈答品にもなり
・これら食肉加工品は直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅などで販売している
・取引先のニーズに応じて、相手先ブランドでの食肉加工品製造を請け負うことも可能
●第9段落
・取引先へのコンサルテーションも手がけるようになった
・B社は自社工場という加工の場をもつことによって、個々の顧客の要望に応じた納品が可能になった
・飲食店に対してメニュー提案を行ったり、その半加工を請け負ったりすることも増えている
【W:弱み】
●第11段落
・コロナ禍で同じことを考えた食肉販売業者は多く、B 社紹介ページはネット上で埋もれ、消費者の目にはほとんど留まらないようだった
【O:機会】
●第3段落
・当時の食肉消費拡大の波に乗って順調に売り上げを伸ばした
●第9段落
・ホテル・旅館や飲食店との取引の場合、販売先の調理の都合に合わせた形状のカットや、指定された個数でのパッキング、途中工程までの調理済み商品が求められるなど、顧客ニーズにきめ細かく合わせることが必要
●第10段落
・折からのインバウンド需要の拡大を受け、ホテル・旅館との取引は絶好調
●第11段落
・コロナ禍の巣ごもり需要拡大の影響で、開業以来、とくに何の手も打って来なかった食肉小売店での販売だけが急上昇
・料理の楽しさに目覚めた客や、作りたての揚げ物を買い求める客が、食肉専門店の魅力に気づいて足を運ぶようになった
【T:脅威】
●第5段落
・1980 年代後半以降、スーパーは大手食肉卸売業者と取引を行うようになったため、B社からスーパーへの納入量は徐々に減少していった
・現在、B社の周囲 5 km 圏内には広大な駐車場を構える全国チェーンのスーパーが3店舗あり、食肉も取り扱っているが、いずれもB社との取引関係はない
●第11段落
・国内での新型コロナウイルス感染症の発生を受け、ホテル・旅館や飲食店などを主要取引先とするB社の経営は大打撃を受けた。
・B社の2020年度の売り上げは、2019年度のおよそ半分となった。
(2)2回目の通読(設問文と与件文との対応付け)
私の解法では、2回目に与件文を読む際、6色フリクションマーカーを用いて、与件文の各設問に関係のある段落に各設問と対応付けた色の印を付けて、解答メモに解答骨子をまとめる際に与件文の読み込むべき段落が直感的に分かるようにしていました。
ここでポイントとなるのは、段落番号にマーカーで印を付けることで、段落単位で設問文と与件文を対応付けしておくことです。
【第1問(顧客):ピンク】
現状のB社の顧客に関連する内容の段落に印を付けます。
●マーカーで段落番号に印を付けた段落:第10・11・12段落
【第1問(競合):ブルー】
現状のB社の競合に関連する内容の段落に印を付けます。
●マーカーで段落番号に印を付けた段落:第5・11段落
【第1問(自社):バイオレット】
現状のB社の強みと弱みに関連する内容の段落に印を付けます。
また、現状のB社の機会と脅威に関連する内容の段落にも印を付けます。
●マーカーで段落番号に印を付けた段落:第4・5・8・9・11段落
【第2問:オレンジ】
制約条件から「X県の社会経済活動」および「B社の製造加工技術力」について記載されている段落に印を付けます。
●マーカーで段落番号に印を付けた段落:第7・8・9段落
【第3問:イエロー】
制約条件から、直営の食肉小売店について記載されている段落に印を付けます。
●マーカーで段落番号に印を付けた段落:第3・4・8・11段落
【第4問:グリーン】
制約条件から、「オンライン販売」および「献立の考案・調理」について記載されている段落に印を付けます。
●マーカーで段落番号に印を付けた段落:第9・11・13段落
【与件文解釈での与件文への書き込み】
2-4.解答メモへの解答骨子作成
私の解法プロセスでは、このプロセスを重要視しています。所要時間25~30分ぐらい、累計45分を目安に行います。
ここでは、設問解釈で立てた初期仮説を基に与件文の情報から仮説検証を行い、各設問に対応した解答要素を選択して解答メモ上に解答骨子を作成します。
(1)解答メモ上で設問別の記入欄を区切る
令和4年度の事例Ⅱは設問数が全部で4つ、かつ第1問が顧客・競合・自社の3つに分かれているので、シャープペンシルで解答メモのエリアを大体2:1:1:1ぐらいの割合で区切ったうえで、第1問から第4問に割り当てます。
なお、2次試験本番の問題用紙はB5サイズなので、事例演習を行う際は同じくB5サイズの紙を用意して解答メモにしましょう。
(2)設問間の大まかな関連を把握し解答順序を決める
事例Ⅰ~Ⅲでは、基本的に設問文と与件文とは一つの大きなストーリーを構成しています。
第一部でも解説したとおり、事例Ⅱでは「既存事業改善または新規事業による売上増加の施策を、マーケティング戦略により実現する」というストーリーになっていることが多いです。ただし、令和5年度では傾向が変わっていることもありえます。
令和4年度の事例Ⅱでは、次の図のような全体像をイメージしてみました。
解答順序については、個人的に情報整理の問題は後回しにしたくないことと、第4問の難易度が一番高そうなことから、問題順どおり、①第1問、②第2問、③第3問、④第4問の順番とします。
(3)第1問の解答骨子作成
まずは、顧客から考えます。
マーカーで印を付けた第10~12段落で、次の記載にマーカーで線を引きます。
●第11段落
・コロナ禍の巣ごもり需要拡大
●第12段落
・コロナ禍で長期にわたって取引が激減しているホテル・旅館や、続々と閉店する飲食店
また、第13段落で下線を引いた社長の想いに関する記載「B 社社長は自社の売り上げが他社の動向に左右されていることに気づき、今後は B 社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべきであると納得するに至った」から、以下の記載にもマーカーで線を引きます。
●第13段落
・最終消費者
【解答骨子の作成】
以上の記載を元に、解答骨子を解答メモに書いてみます。
●顧客の解答骨子
・最終消費者はコロナ禍の巣ごもり需要拡大
・コロナ禍でホテル・旅館や飲食店との取引が激減
※(注)試験中は時間が無いので、実際には自分だけに分かるよう殴り書きで書いてますが、ここでは分かりやすく丁寧に書いています(以下同じ)。
次に、競合について考えます。
マーカーで印を付けた第5段落と第11段落で、次の記載にマーカーで線を引きます。
●第5段落
・1980年代後半以降、スーパーは大手食肉卸売業者と取引を行うようになった
・現在、B 社の周囲 5 km 圏内には広大な駐車場を構える全国チェーンのスーパーが 3 店舗あり、食肉も取り扱っているが、いずれも B 社との取引関係はない
●第11段落
・B社は大手ネットショッピングモールに出店し、焼肉用やステーキ用として冷凍肉の販売も試してみた。しかし、コロナ禍で同じことを考えた食肉販売業者は多く、B社紹介ページはネット上で埋もれ
【解答骨子の作成】
以上の記載を元に、可能であれば第2問~第4問におけるB社の競合をイメージしながら、解答骨子を解答メモに書いてみます。
●競合の解答骨子
・スーパーは大手食肉卸売業者と取引
・B社の周囲に取引のない全国スーパー3店舗が存在
・大手ネットショップには食肉販売業者が多数存在
最後に、自社について考えます。
マーカーで印を付けた各段落で、次の記載にマーカーで線を引きます。
●第4段落
・クオリティの高さに定評がある
・最高級品質の食肉や食肉加工品の販売を行い
●第8段落
・高い技術力を有する職人をB社に招き入れ
・B社は最高級のハムやソーセージ、ローストビーフなどの食肉加工品を自社ブランドで開発できる
・取引先のニーズに応じて、相手先ブランドでの食肉加工品製造を請け負うことも可能
●第9段落
・個々の顧客の要望に応じた納品が可能
●第11段落
・国内での新型コロナウイルス感染症の発生を受け、ホテル・旅館や飲食店などを主要取引先とする B 社の経営は大打撃を受けた
・B社紹介ページはネット上で埋もれ、消費者の目にはほとんど留まらない
・食肉小売店での販売だけが急上昇
【解答骨子の作成】
以上の記載を元に、可能であれば第2問~第4問の施策との一貫性をイメージしながら、解答骨子を解答メモに書いてみます。
第13段落で下線を引いた社長の想いに関する記載「自社の強みを生かした新たな事業展開」を意識して、「強み」を主とした解答骨子としてみます。
●自社の解答骨子
・最高級品質の食肉を販売し
・高い技術力で最高級の食肉加工品を自社ブランドで開発でき
・個々の顧客の要望に応じた納品が可能
(4)第2問の解答骨子作成
マーカーで印を付けた各段落から、問われている事項である「地元事業者と協業し、B社の製造加工技術を生かした新商品開発」について、商品コンセプトと販路に関連しそうな記載へマーカーで線を引きます。
●第7段落
・野菜・果物・畜産などの農業、漁業
・山の幸、海の幸の特産品
・大規模な集客施設もあれば、四季それぞれに見どころのある観光エリアもあり
●第8段落
・高い技術力を有する職人を B 社に招き入れ、良質でおいしい食肉加工品を製造できる
・最高級のハムやソーセージ、ローストビーフなどの食肉加工品を自社ブランドで開発できる
・これら食肉加工品は直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅などで販売
【解答骨子の作成】
以上の記載を元に、まずは「商品コンセプト」を箇条書きで書いてみます。
●商品コンセプトの解答骨子
・X県の農業や漁業と協業し
・山の幸・海の幸の特産品を高い技術力で加工して
・地域のブランド商品として販売する。
次に、「販路」を箇条書きで書いてみます。
●販路の解答骨子
・直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅
・大規模な集客施設や観光エリア
(5)第3問の解答骨子作成
マーカーで印を付けた各段落から、問われている事項である「直営食肉小売店の販売力を現状より強化するための施策」について、顧客ターゲットと品揃えに関連しそうな記載へマーカーで線を引きます。
●第4段落
・最高級品質の食肉や食肉加工品の販売を行い
・直営の食肉小売店では対面接客による買物客のニーズに合わせた販売を行い
●第8段落
・最高級のハムやソーセージ、ローストビーフなどの食肉加工品
●第11段落
・料理の楽しさに目覚めた客や、作りたての揚げ物を買い求める客
また、「販売力を現状より強化」するための品揃えを意識して、第9段落から以下の記載にもマーカーで線を引きます。
●第9段落
・途中工程までの調理済み商品
【解答骨子の作成】
以上の記載を元に、まずは「顧客ターゲット」を箇条書きで書いてみます。
●顧客ターゲットの解答骨子
・(誰に)料理の楽しさに目覚めた客や、作りたての揚げ物を買い求める客
次に、「品揃え」を箇条書きで書いてみます。
●品揃えの解答骨子
・(何を)最高級の食肉や食肉加工品、途中工程までの調理済み商品を揃えて
・(どのように)対面接客による買物客のニーズに合わせた販売を行う
・(効果)顧客満足度を向上し売上増加を図る
(6)第4問の解答骨子作成
マーカーで印を付けた各段落から、問われている事項である「オンライン販売事業者との協業による最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓」について、「協業相手」と「協業が長期的に成功するための提案」に関連しそうな記載へマーカーで線を引きます。
●第9段落
・途中工程までの調理済み商品
・個々の顧客の要望に応じた納品が可能
・メニュー提案を行ったり、その半加工を請け負ったりすることも増えている
●第11段落
・コロナ禍の巣ごもり需要拡大
・料理の楽しさに目覚めた
●第13段落
・B社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべき
【解答骨子の作成】
以上の記載を元に、まずは「協業相手」を箇条書きで書いてみます。
なお、ここでは設問文、与件文、1次知識に基づかない一般常識として「ミールキット」(料理のレシピと食材のセット商品)という用語を使用します。
●協業相手の解答骨子
・協業すべきは最終消費者向けにミールキットを販売するオンライン事業者
次に、「協業が長期的に成功するための提案」を箇条書きで書いてみます。
ここでは設問文から「献立の考案や調理を簡便化したい」という記載を使用します。
●協業が長期的に成功するための提案の解答骨子
・(誰に)料理の楽しさに目覚めたが献立の考案や調理を簡便化したい最終消費者に
・(何を)顧客の要望に応じたメニューのミールキットを
・(どのように)双方向コミュニケーションにより最終消費者の要望を直接把握のうえ、B社の最高級の食肉や食肉加工品を用いたメニュー提案を行うことで
・(効果)固定客化を図り長期的な関係を構築する
【解答骨子作成時の与件文と設問文】
【解答メモのイメージ】
※注:本番での解答メモは、時短のため自分だけに分かるような殴り書きで書いています。
2-5.解答用紙への解答記入
このプロセスでは、解答メモの解答骨子を基に、指定字数で解答用紙のマス目に解答を記入します。所要時間35分、累計80分を目安に行います。
解答記入の順序も、解答骨子と同じく①第1問、②第2問、③第3問、④第4問、の順番とします。
(1)第1問の解答(150字以内)
3C(顧客、競合、自社)について書くことを求められていますので、それぞれ約50字の配分で、解答骨子に記載の解答要素各2つで書いてみます。
●解答
顧客は①コロナ禍でホテル・旅館、飲食店との取引が激減し②最終消費者は巣ごもり需要が拡大。競合は①B社の周囲の全国スーパー3店舗は大手食肉卸売業者と取引し②大手ネットショップには食肉販売業者が多数存在。自社は①高い技術力で最高級の食肉加工品を自社ブランドで開発でき②顧客の要望に応じた納品が可能である。(150字)
(2)第2問の解答(100字以内)
商品コンセプトと販路について書くことを求められていますので、それぞれ50字ぐらいの配分で書いてみます。
●解答
コンセプトは、X県の山の幸・海の幸の特産品を高い技術力で加工した地域ブランド商品とする。販路は、B社の直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅のほか、X県の大規模集客施設や観光エリアでも販売する。(97字)
(3)第3問の解答(100字以内)
顧客ターゲットと品揃えについて、ダナドコを意識しながら100字にまとめて書いてみます。
●解答
料理の楽しさに目覚めた客や作りたての揚げ物を買い求める客をターゲットとする。最高級の食肉や食肉加工品、途中工程までの調理済み商品を品揃えとし、対面接客により顧客のニーズに合わせた販売で売上増加を図る。(100字)
(4)第4問の解答(150字以内)
協業相手と「協業が長期的に成功するための提案」について、ダナドコを意識しながら150字で書いてみます。
●解答
協業相手は最終消費者向けにミールキットを販売するオンライン事業者とする。提案は、料理の楽しさに目覚めたが献立の考案や調理を簡便化したい最終消費者に、双方向コミュニケーションにより顧客の要望を直接把握のうえ、B社の最高級の食肉や食肉加工品を用いたメニューのミールキットを提案し、顧客の固定客化を図る。(149字)
■第三部 再現答案を用いた令和4年度事例Ⅱの解説
最後に、私を含めた令和4年度の中小企業診断士2次試験受験者の方々からご提供いただいた再現答案を分析して、実際にどれくらい書ければ60点取れるのかを解説したいと思います。
私(かものしか)の令和4年度事例Ⅱの得点は59点であり、合格点の60点に1点足りませんでした。そこで、令和4年度合格者である計3名の方に私からお願いのうえ再現答案の提供を受けました。この4人の解答を比較して解説します。
なお、第二部で書いた解答は解答プロセスの説明のために新たに書いた解答のため、私の再現解答とは別物です。混同しないようお願いいたします。
ご提供者 | ご紹介 |
①ROBINさん (開示得点75点) | 令和4年度にストレート合格されたお方です。 私が受験生時代に唯一参加した勉強会であるスタディング有志の自主勉強会(最終回)で同じグループとなり、 この方から多くの気付きと刺激を受けたことが私の合格につながったと思っております。 |
②こちょびさん (開示得点70点) | 令和4年度に2回目の2次試験受験で合格されたお方です。 私と同じくタキプロに14期として参加されており、主にYoutubeチームで活動されておられます。 |
③かものしか(筆者) (開示得点59点) | 令和4年度にストレート合格のうえ、タキプロで14期として活動中です。 タキプロではブログのほか、大阪でのリアル勉強会にも参加しており、 受験当時よりも今の方が2次試験への理解が進んでいると思っています。 |
④ごまさん (開示得点53点) | 令和4年度に2回目の2次試験受験で合格されたお方です。 令和4年度の2次筆記試験で283点取られた優秀なお方ですが、 今回は唯一点数の低かった事例Ⅱの再現答案をご提供いただいています。 |
1.再現答案のタテの比較(第1問~第4問の一貫性チェック)
再現答案の比較方法として、次の2つがあります。
①タテの比較
・1人の解答について、一貫性のある解答ができているか、同一事例内で複数の設問の解答を比較する。
②ヨコの比較
・個別の設問について、複数人の設問を比較する。
通常、勉強会では「②ヨコの比較」しかしないことが多いですが、私の意見として、タテの比較とヨコの比較はどちらも実力アップに役立つと思います。
ということで、まずはタテの比較から行っていきます。
(1)高得点答案(75点:ROBINさん)
●第1問
顧客面では①直営店の最終消費者が急増中②スーパー、ホテル・旅館、飲食店は取引減少③百貨店。競合面では①大手食肉卸売業者②全国チェーンのスーパー③ネットショッピングモール出店の食肉販売業者。自社面では①高技術力の職人と良質な自社ブランドを持ち②顧客要望に応じた納品が可能だが③冷凍在庫の積み増しがある。(150字)
●第2問
コンセプトは、農業との協業で山・海の幸を高い製造加工技術を活かした最高級の加工品。販路はホテル・旅館、飲食店、高速道路の土産物店、道の駅等の観光エリアで最終消費者に販売し、地域活性化と売上拡大を図る。(100字)
●第3問
料理の楽しさに目覚めた客や作り立ての良質な商品を求める客をターゲットに、最高級のハム等の食肉加工品、途中工程まで調理済み商品の品揃えを強化し、個々のニーズに合わせた対面接客で販売し、売上向上を図る。(99字)
●第4問
X県の農家やミールキット販売業者と協業し、食材にこだわり家事は簡便化したい現役世代の家庭に向けた商品をオンラインで販売する。具体的には、農家の野菜とB社の途中工程までの調理済み商品や最高級の食肉加工品をセットにし、献立の考案が不要で調理が簡単なミールキットとして販売し、差別化・高付加価値化を図る。(149字)
タテの比較では各設問の解答の一貫性を見るので、設問文無しの解答のみを並べて比較します。まずは高得点のROBINさんからです。
ROBINさんの一貫性チェックの結果は以下のとおりです。顧客、競合、自社ともに一貫性が取れていて素晴らしいです。
(凡例)○:一貫性あり、△:一貫性弱い、-:一貫性なし |
●第1問の顧客の解答と、第2問~第4問のターゲット顧客との一貫性
第1問(顧客) | ①直営店の最終消費者が急増中 | |
第2問(ターゲット顧客) | ○ | 最終消費者 |
第3問(ターゲット顧客) | ○ | 料理の楽しさに目覚めた客や作り立ての良質な商品を求める客 |
第4問(ターゲット顧客) | ○ | 食材にこだわり家事は簡便化したい現役世代の家庭 |
●第1問の競合の解答と、第2問~第4問における競合との一貫性
第1問(競合) | ①大手食肉卸売業者 ②全国チェーンのスーパー | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | ○ | (直営小売店の競合と想定できる) |
第4問(想定される競合) | - |
第1問(競合) | ③ネットショッピングモール出店の食肉販売業者 | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | - | |
第4問(想定される競合) | ○ | (オンライン販売チャネルの競合と想定できる) |
●第1問の自社の強みの解答と、第2問~第4問の施策との一貫性
第1問(自社) | ①高技術力の職人と良質な自社ブランドを持ち | |
第2問(施策) | ○ | 高い製造加工技術を活かした最高級の加工品 |
第3問(施策) | ○ | 最高級のハム等の食肉加工品 |
第4問(施策) | ○ | 最高級の食肉加工品 |
第1問(自社) | ②顧客要望に応じた納品が可能 | |
第2問(施策) | - | |
第3問(施策) | ○ | 途中工程まで調理済み商品 |
第4問(施策) | ○ | 途中工程までの調理済み商品 |
(2)高得点答案(70点:こちょびさん)
●第1問
顧客面は①スーパーからの受注は大手食肉卸売業者に占有され取引なし②直営店では最高級品質の肉が評判である。競合面では①大手食肉卸売業者がスーパーへの納入を独占 ②ネット販売業者が多数存在。自社は①観光エリアにあり、山や海の特産品の存在②高品質な食肉・加工品を自社ブランドで開発③高い技術力の職人の存在。(149字)
●第2問
コンセプトは、X県の山や海の幸をB社の加工技術を生かした加工品にし、B社の食肉加工品とセットにして販売する。販路は、高速道路や道の駅で試食販売を行い、X県の魅力を伝えながら地域経済の活性化を図る。(98字)
●第3問
ターゲットは、高級志向の工業団地の現役世代とする。店頭での試食販売で、作り立ての揚げ物を販売し固定客化を図り、高品質加工品の少量パックを販売。料理にそのまま使用できるカット肉を準備し売上向上を図る。(99字)
●第4問
全国の食通家庭に高級食材セット販売するオンライン販売事業者と協業する。献立の考案・調理・後片付け等、家事を簡便化したい家庭のニーズに答え、X県の特産品とB社の高級肉・加工品を使用し、簡単調理・片付けが楽にできるレシピと食材セットを提案。顧客増加で販売事業者との関係性を深め、長期的な売上拡大を目指す。(150字)
次は同じく70点台の高得点であるこちょびさんの答案です。一貫性チェックの結果は以下のとおりで、顧客、競合、自社ともに一貫性が取れていました。
●第1問の顧客の解答と、第2問~第4問のターゲット顧客との一貫性
第1問(顧客) | ②直営店では最高級品質の肉が評判である | |
第2問(ターゲット顧客) | - | (ターゲット顧客の記載無し) |
第3問(ターゲット顧客) | ○ | 高級志向の工業団地の現役世代 |
第4問(ターゲット顧客) | ○ | 全国の食通家庭 |
●第1問の競合の解答と、第2問~第4問における競合との一貫性
第1問(競合) | ①大手食肉卸売業者がスーパーへの納入を独占 | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | ○ | (直営小売店の競合と想定できる) |
第4問(想定される競合) | - |
第1問(競合) | ②ネット販売業者が多数存在 | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | - | |
第4問(想定される競合) | ○ | (オンライン販売チャネルの競合と想定できる) |
●第1問の自社の強みの解答と、第2問~第4問の施策との一貫性
第1問(自社) | ②高品質な食肉・加工品を自社ブランドで開発 | |
第2問(施策) | - | |
第3問(施策) | ○ | 高品質加工品 |
第4問(施策) | ○ | B社の高級肉・加工品 |
第1問(自社) | ③高い技術力の職人の存在 | |
第2問(施策) | ○ | B社の加工技術を生かした加工品にし |
第3問(施策) | - | |
第4問(施策) | - |
(3)ギリギリ不合格答案(59点:かものしか)
●第1問
顧客は①コロナ禍でホテル、旅館、飲食店との取引が激減し②最終消費者はコロナ禍の巣ごもり需要が拡大した。競合は①周囲5km圏内で広い駐車場のスーパー3店舗が食肉を取扱い②大手ネットショップには冷凍肉販売業者が多い。自社は①良い食肉を仕入れて様々な肉の消費機会に対応し②自社工場の加工製造は技術力が高い。(148字)
●第2問
商品コンセプトはX県の海の幸、山の幸の特産品と自社の食肉とを合わせた加工食品を販売する。販路は①直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅などで販売し②飲食店へ加工食品を使ったメニュー提案を行う。(96字)
●第3問
顧客ターゲットは①B社周辺の集合住宅に家族で住む現役世代②X県都市部から高速道路で来る客とする。品揃えは最高級の食肉や食肉加工品とし、対面接客により顧客のニーズに合わせた商品の販売を行う。(94字)
●第4問
協業すべき事業者は、半加工の食材と献立のレシピのセットを最終消費者へ向けて定期的に販売するオンライン販売事業者である。行うべき提案は、個々の顧客の要望をオンライン上で収集し、双方向コミュニケーションにより顧客のニーズを把握することで、新規メニューの開発に活かすことである。(136字)
次は私の59点の再現答案です。一貫性チェックの結果は以下のとおりで、競合に関しては一貫性が取れていましたが、顧客や自社に関しては高得点のROBINさんやこちょびさんと較べて一貫性が弱く感じました。
(凡例)○:一貫性あり、△:一貫性弱い、-:一貫性なし |
●第1問の顧客の解答と、第2問~第4問のターゲット顧客との一貫性
第1問(顧客) | ②最終消費者はコロナ禍の巣ごもり需要が拡大した | |
第2問(ターゲット顧客) | - | 飲食店 |
第3問(ターゲット顧客) | ○ | ①B社周辺の集合住宅に家族で住む現役世代 ②X県都市部から高速道路で来る客 |
第4問(ターゲット顧客) | ○ | 最終消費者 |
●第1問の競合の解答と、第2問~第4問における競合との一貫性
第1問(競合) | ①周囲5km圏内で広い駐車場のスーパー3店舗が食肉を取扱い | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | ○ | (直営小売店の競合と想定できる) |
第4問(想定される競合) | - |
第1問(競合) | ②大手ネットショップには冷凍肉販売業者が多い | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | - | |
第4問(想定される競合) | ○ | (オンライン販売チャネルの競合と想定できる) |
●第1問の自社の強みの解答と、第2問~第4問の施策との一貫性
第1問(自社) | ①良い食肉を仕入れて様々な肉の消費機会に対応し | |
第2問(施策) | - | |
第3問(施策) | ○ | 最高級の食肉や食肉加工品 |
第4問(施策) | - |
第1問(自社) | ②自社工場の加工製造は技術力が高い | |
第2問(施策) | △ | 加工食品(技術力の高さに関する記載がないため一貫性は弱い) |
第3問(施策) | - | |
第4問(施策) | - |
(4)ギリギリ不合格答案(53点:ごまさん)
●第1問
顧客は①近隣住民②ホテルや旅館、飲食店はb社の売上は減少傾向③百貨店、スーパーの納入量は減少傾向。競合は①近隣のスーパー3つ②オンラインに出店する多数の食肉販売業社。自社は①最高品質の食肉・食肉加工品②自社工場を新設し食肉製造加工が可能③コロナ禍によりホテル・旅館との取引が激減④自社の売上が他社に左右される。(155字)
●第2問
地元事業者と協業し山の幸、海の幸を活かした地域ブランドを立ち上げ、こだわりの高品質な食品加工品を開発して直営小売店、高速道路の土産物店道の駅で販売し、口コミを誘発して新規顧客を獲得し県の経済を活性化させる。(103字)
●第3問
近隣に住む料理の楽しさに目覚めた顧客や、作りたての揚げ物を買い求める客をターゲットとし対面接客により顧客のニーズに合わせたクオリティの高い食肉を訴求し、顧客満足を向上させ食肉直営店を強化し売上拡大を図る。(102字)
●第4問
協業すべきは献立や調理方法の情報を提供し顧客ニーズ収集のできるオンライン販売事業者。地元事業者と育成した地域ブランドの高品質な食品加工品を訴求し、収集した顧客ニーズを製品作りに活かし固定客化して売上げを拡大。(104字)
次はごまさんの53点の再現答案です。一貫性チェックの結果は以下のとおりで、競合と自社に関しては一貫性が取れていましたが、顧客に関しては一貫性が弱く感じました。
(凡例)○:一貫性あり、△:一貫性弱い、-:一貫性なし |
●第1問の顧客の解答と、第2問~第4問のターゲット顧客との一貫性
第1問(顧客) | ①近隣住民 | |
第2問(ターゲット顧客) | - | (ターゲット顧客の記載無し) |
第3問(ターゲット顧客) | ○ | 近隣に住む料理の楽しさに目覚めた顧客や、作りたての揚げ物を買い求める客 |
第4問(ターゲット顧客) | - | (ターゲット顧客の記載無し) |
●第1問の競合の解答と、第2問~第4問における競合との一貫性
第1問(競合) | ①近隣のスーパー3つ | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | ○ | (直営小売店の競合と想定できる) |
第4問(想定される競合) | - |
第1問(競合) | ②オンラインに出店する多数の食肉販売業社 | |
第2問(想定される競合) | - | |
第3問(想定される競合) | - | |
第4問(想定される競合) | ○ | (オンライン販売チャネルの競合と想定できる) |
●第1問の自社の強みの解答と、第2問~第4問の施策との一貫性
第1問(自社) | ①最高品質の食肉・食肉加工品 | |
第2問(施策) | ○ | こだわりの高品質な食品加工品 |
第3問(施策) | ○ | クオリティの高い食肉 |
第4問(施策) | ○ | 高品質な食品加工品 |
2.再現答案のヨコの比較(個別の設問に対する解答内容の違いのチェック)
それではいよいよ、4人の解答を設問毎に比較します。
2-1.第1問
B社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から150字以内で述べよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨) 内外の経営環境を分析する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん
顧客面では①直営店の最終消費者が急増中②スーパー、ホテル・旅館、飲食店は取引減少③百貨店。競合面では①大手食肉卸売業者②全国チェーンのスーパー③ネットショッピングモール出店の食肉販売業者。自社面では①高技術力の職人と良質な自社ブランドを持ち②顧客要望に応じた納品が可能だが③冷凍在庫の積み増しがある。(150字)
●こちょびさん
顧客面は①スーパーからの受注は大手食肉卸売業者に占有され取引なし②直営店では最高級品質の肉が評判である。競合面では①大手食肉卸売業者がスーパーへの納入を独占 ②ネット販売業者が多数存在。自社は①観光エリアにあり、山や海の特産品の存在②高品質な食肉・加工品を自社ブランドで開発③高い技術力の職人の存在。(149字)
●かものしか
顧客は①コロナ禍でホテル、旅館、飲食店との取引が激減し②最終消費者はコロナ禍の巣ごもり需要が拡大した。競合は①周囲5km圏内で広い駐車場のスーパー3店舗が食肉を取扱い②大手ネットショップには冷凍肉販売業者が多い。自社は①良い食肉を仕入れて様々な肉の消費機会に対応し②自社工場の加工製造は技術力が高い。(148字)
●ごまさん
顧客は①近隣住民②ホテルや旅館、飲食店はb社の売上は減少傾向③百貨店、スーパーの納入量は減少傾向。競合は①近隣のスーパー3つ②オンラインに出店する多数の食肉販売業社。自社は①最高品質の食肉・食肉加工品②自社工場を新設し食肉製造加工が可能③コロナ禍によりホテル・旅館との取引が激減④自社の売上が他社に左右される。(155字)
(1)ROBINさん(開示得点75点)
顧客面では①直営店の最終消費者が急増中②スーパー、ホテル・旅館、飲食店は取引減少③百貨店。競合面では①大手食肉卸売業者②全国チェーンのスーパー③ネットショッピングモール出店の食肉販売業者。自社面では①高技術力の職人と良質な自社ブランドを持ち②顧客要望に応じた納品が可能だが③冷凍在庫の積み増しがある。 |
●顧客
「①直営店の最終消費者が急増中」と「②スーパー、ホテル・旅館、飲食店は取引減少」については、与件文の第13段落にある記載「今後はB社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべきである」とも整合しており、第2問以下の解答との一貫性も取れているので良いと思います。
「③百貨店」については、与件文の第3段落〜第7段落に基づく記載であり、顧客構成を漏れなく把握している点は良いと思います。
ただし、第1問で問われているのは「現状の」顧客であり、現状について書いている第10段落以降には百貨店に関する記載が無く、顧客としての重要性は低いと考えられますので、点数が付いているかどうかは不明です。
●競合
「①大手食肉卸売業者」と「②全国チェーンのスーパー」が第3問の直営食肉小売店の競合、「③ネットショッピングモール出店の食肉販売業者」が第4問のオンライン販売の競合として対応しており、良いと思います。
●自社
①のうち「高技術力の職人」は第2問の「高い製造加工技術を活かした」との一貫性があって良いと思います。また「良質な自社ブランドを持ち」も良いとは思いますが、第2問以降の解答で自社ブランドに関する記載が無いのが惜しいと思いました。
「②顧客要望に応じた納品が可能だが」については、与件文第9段落の記載「途中工程までの調理済み商品が求められるなど、顧客ニーズにきめ細かく合わせること」に基づき、第3問と第4問の「途中工程まで調理済み商品」との一貫性があり、それに加点されていると考えられます。
「③冷凍在庫の積み増しがある」については、B社の特段の強みまたは弱みとは言えず、また第2問~第4問の解答でも特に活かせていないため、点が付いていない可能性が高いと思います。
(2)こちょびさん(開示得点70点)
顧客面は①スーパーからの受注は大手食肉卸売業者に占有され取引なし②直営店では最高級品質の肉が評判である。競合面では①大手食肉卸売業者がスーパーへの納入を独占 ②ネット販売業者が多数存在。自社は①観光エリアにあり、山や海の特産品の存在②高品質な食肉・加工品を自社ブランドで開発③高い技術力の職人の存在。 |
●顧客
「①スーパーからの受注は大手食肉卸売業者に占有され取引なし」については、問われているのが「B社の現状」であるため、顧客としての重要性は主要取引先であるホテル・旅館や飲食店の方が高いと思います。なので、①ではホテル・旅館や飲食店について書いた方が良かったと思います。
「②直営店では最高級品質の肉が評判である」については、実は与件文には明確な記載が無いです。ただし、前述のタテの比較でも述べた通り、第3問の「高級志向」、第4問の「高級食材セット」との一貫性が取れており、それが加点につながっていると思います。
●競合
「①大手食肉卸売業者がスーパーへの納入を独占」は第3問の直営食肉小売店の競合、「②ネット販売業者が多数存在」は第4問のオンライン販売の競合と、それぞれ対応しており良いと思います。
●自社
「①観光エリアにあり、山や海の特産品の存在」については、実はB社は観光エリアには立地していませんが、「山や海の特産品の存在」が第2問の「X県の山や海の幸」や第4問の「X県の特産品」とつながっており、一貫性が取れているのが素晴らしいです。
「②高品質な食肉・加工品を自社ブランドで開発」については、「高品質な食肉・加工品」が第3問の「高品質加工品」や第4問の「B社の高級肉・加工品」とつながっており、一貫性が取れています。ただし、「自社ブランドで開発」は第2問以降の解答とつながっていないのが惜しいと思いました。
(3)かものしか(開示得点59点)
顧客は①コロナ禍でホテル、旅館、飲食店との取引が激減し②最終消費者はコロナ禍の巣ごもり需要が拡大した。競合は①周囲5km圏内で広い駐車場のスーパー3店舗が食肉を取扱い②大手ネットショップには冷凍肉販売業者が多い。自社は①良い食肉を仕入れて様々な肉の消費機会に対応し②自社工場の加工製造は技術力が高い。 |
●顧客
「①コロナ禍でホテル、旅館、飲食店との取引が激減し」と「②最終消費者はコロナ禍の巣ごもり需要が拡大した」の両方とも、与件文の第13段落にある記載「今後はB社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべきである」とも整合しており良いと思います。
●競合
「①周囲5km圏内で広い駐車場のスーパー3店舗」が第3問の直営食肉小売店の競合、「②大手ネットショップ」が第4問のオンライン販売の競合として対応しており、良いと思います。
なお、他の人の解答と比較すると「周囲5km圏内で広い駐車場の」という修飾語は不要だと思いました。
●自社
「①良い食肉を仕入れて様々な肉の消費機会に対応し」は与件文第4段落からのピックアップで、悪くはないですが、設問文の「B社の現状」という制約条件から考えると、「商品はクオリティの高さに定評がある」、「最高級の食肉加工品を自社ブランドで開発できる」などの、もっと現状に直結して第2問以降で活かしやすい解答要素の方が良かったと思います。
「②自社工場の加工製造は技術力が高い」についても悪くないですが、技術力の高さを第2問以降の解答で使えていないので、①と同様、もっと第2問以降で活かしやすい解答要素の方が良かったと思います。
(4)ごまさん(開示得点53点)
顧客は①近隣住民②ホテルや旅館、飲食店はb社の売上は減少傾向③百貨店、スーパーの納入量は減少傾向。競合は①近隣のスーパー3つ②オンラインに出店する多数の食肉販売業社。自社は①最高品質の食肉・食肉加工品②自社工場を新設し食肉製造加工が可能③コロナ禍によりホテル・旅館との取引が激減④自社の売上が他社に左右される。 |
●顧客
「①近隣住民」については、第3問の「近隣に住む」との一貫性があるのは良いと思います。
ただし、ここは与件文第13段落の記載「今後はB社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべきである」を受けて「最終消費者」の要素を書けておれば、第2問や第4問との一貫性も取れるので更に良かったと思います。
「②ホテルや旅館、飲食店はB社の売上は減少傾向」については良いと思います。
「③百貨店、スーパーの納入量は減少傾向」についても、確かに与件文第5段落には現在の話として書いてあるので悪くはないと思いますが、1980年代からの話であり解答の優先度は高くないと思います。
●競合
「①近隣のスーパー3つ」が第3問の直営食肉小売店の競合、「②オンラインに出店する多数の食肉販売業社」が第4問のオンライン販売の競合として対応しており、良いと思います。
●自社
「①最高品質の食肉・食肉加工品」と「②自社工場を新設し食肉製造加工が可能」は、第2問の「こだわりの高品質な食品加工品を開発」、第3問の「クオリティの高い食肉」、第4問の「高品質な食品加工品」とつながっており、一貫性が取れていて良いと思います。
「③コロナ禍によりホテル・旅館との取引が激減」については、顧客の②と内容が被っているので、解答に書くのはどちらか片方だけでよかったと思います。
「④自社の売上が他社に左右される」については、与件文第13段落との記載を受けており、良いと思います。
(5)第1問まとめ
顧客面に関しては、与件文第13段落の記載「自社の売り上げが他社の動向に左右されていることに気づき、今後はB社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべきである」を意識して書けているかがポイントだと思います。
競合面に関しては、与件文の記載が分かりやすく、難易度が低かったと思います。
自社面に関しては、弱みよりも強みを主体に解答のうえ、第2問~第4問の解答と一貫性のある強みを選んで書けたかがポイントだと思います。
2-2.第2問
B社は、X県から「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ、県の社会経済活動の促進に力を貸してほしい」という依頼を受け、B社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行うことにした。商品コンセプトと販路を明確にして、100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)自社の強みを生かして地域課題の解決を図るための商品戦略と流通戦略について、助言する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん
コンセプトは、農業との協業で山・海の幸を高い製造加工技術を活かした最高級の加工品。販路はホテル・旅館、飲食店、高速道路の土産物店、道の駅等の観光エリアで最終消費者に販売し、地域活性化と売上拡大を図る。(100字)
●こちょびさん
コンセプトは、X県の山や海の幸をB社の加工技術を生かした加工品にし、B社の食肉加工品とセットにして販売する。販路は、高速道路や道の駅で試食販売を行い、X県の魅力を伝えながら地域経済の活性化を図る。(98字)
●かものしか
商品コンセプトはX県の海の幸、山の幸の特産品と自社の食肉とを合わせた加工食品を販売する。販路は①直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅などで販売し②飲食店へ加工食品を使ったメニュー提案を行う。(96字)
●ごまさん
地元事業者と協業し山の幸、海の幸を活かした地域ブランドを立ち上げ、こだわりの高品質な食品加工品を開発して直営小売店、高速道路の土産物店道の駅で販売し、口コミを誘発して新規顧客を獲得し県の経済を活性化させる。(103字)
(1)ROBINさん(開示得点75点)
コンセプトは、農業との協業で山・海の幸を高い製造加工技術を活かした最高級の加工品。販路はホテル・旅館、飲食店、高速道路の土産物店、道の駅等の観光エリアで最終消費者に販売し、地域活性化と売上拡大を図る。 |
商品コンセプトは「最高級の加工品」であり、良いと思います。ただし、第1問で直接的に「最高級」と書けていれば更に良かったと思います。
販路は「観光エリアで最終消費者に販売」であり、「観光エリア」と書くことでX県の社会経済活動の促進に力を貸すことが書けており良いと思います。また、ターゲット顧客を最終消費者と明記しているのも与件文第13段落との一貫性があり良いと思います。
効果については、設問文に「第一次産業を再活性化させ、県の社会経済活動の促進に力を貸し」と書いてあるので、これくらいの簡単な記載でちょうど良いと思います。
(2)こちょびさん(開示得点70点)
コンセプトは、X県の山や海の幸をB社の加工技術を生かした加工品にし、B社の食肉加工品とセットにして販売する。販路は、高速道路や道の駅で試食販売を行い、X県の魅力を伝えながら地域経済の活性化を図る。 |
商品コンセプトについては良いと思います。ただし、せっかく第1問で「最高級品質の肉」「高品質な食肉・加工品」「高い技術力の職人」と書いているので、ここでも品質の高さについて書けていれば更に良かったと思います。
販路は「高速道路(の土産物店)や道の駅」で、試食販売という最終消費者をターゲット顧客とした具体的な施策を書けているのが良いと思います。
効果については、ROBINさんと同様、設問文の記載の繰り返しになっているので、これくらいの簡単な記載でちょうど良いと思います。
(3)かものしか(開示得点59点)
商品コンセプトはX県の海の幸、山の幸の特産品と自社の食肉とを合わせた加工食品を販売する。販路は①直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅などで販売し②飲食店へ加工食品を使ったメニュー提案を行う。 |
商品コンセプトについては良いと思います。ただし、こちょびさんと同様、第1問で「良い食肉」や「自社工場の加工製造は技術力が高い」と書いているので、ここでも品質の良さや加工技術力の高さについて書けていれば更に良かったと思います。
販路は「①直営小売店や高速道路の土産物店、道の駅など」は良いと思います。
「②飲食店へ加工食品を使ったメニュー提案を行う」については、与件文第13段落の記載「今後はB社自身が最終消費者と直接結びつく事業領域を強化すべきである」との一貫性が無いため、点が付いていない可能性が高いと思います。
効果については全く書いていません。設問文にも効果が書いてあるため、大幅な失点にはなっていないと思いますが、効果も書いていれば60点台になっていたかも知れません。
(4)ごまさん(開示得点53点)
地元事業者と協業し山の幸、海の幸を活かした地域ブランドを立ち上げ、こだわりの高品質な食品加工品を開発して直営小売店、高速道路の土産物店道の駅で販売し、口コミを誘発して新規顧客を獲得し県の経済を活性化させる。 |
商品コンセプトについては「山の幸、海の幸を活かした地域ブランド」と「こだわりの高品質な食品加工品」の2点について書けているのが素晴らしいです。
なお、地域ブランドについては、第1問で「最高級の食肉加工品を自社ブランドで開発できる」旨の解答要素が書けていれば、第1問との一貫性が取れていて更に良かったと思います。
販路は「直営小売店、高速道路の土産物店道の駅」であり、良いと思います。
「口コミを誘発して新規顧客を獲得し」については、単に販路を書くだけでは口コミの誘発にはつながらず、例えばこちょびさんの解答にある「試食販売」みたいな施策を書かないと因果関係が成立しません。
(5)第2問まとめ
商品コンセプトの記載については、4人全員が「山の幸、海の幸」を書けており、設問文の制約条件に従えば難易度は低いと思います。
販路についても、70点台答案と50点台答案では多少の違いがありましたが、「高速道路の土産物店、道の駅」については4人全員が書けており、第2問では大きな点差は付いていないのではないかと思います。
2-3.第3問
アフターコロナを見据えて、B社は直営の食肉小売店の販売力強化を図りたいと考えている。どのような施策をとればよいか、顧客ターゲットと品揃えの観点から100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)自社の成長事業を強化するためのターゲティング戦略について、助言する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん
料理の楽しさに目覚めた客や作り立ての良質な商品を求める客をターゲットに、最高級のハム等の食肉加工品、途中工程まで調理済み商品の品揃えを強化し、個々のニーズに合わせた対面接客で販売し、売上向上を図る。(99字)
●こちょびさん
ターゲットは、高級志向の工業団地の現役世代とする。店頭での試食販売で、作り立ての揚げ物を販売し固定客化を図り、高品質加工品の少量パックを販売。料理にそのまま使用できるカット肉を準備し売上向上を図る。(99字)
●かものしか
顧客ターゲットは①B社周辺の集合住宅に家族で住む現役世代②X県都市部から高速道路で来る客とする。品揃えは最高級の食肉や食肉加工品とし、対面接客により顧客のニーズに合わせた商品の販売を行う。(94字)
●ごまさん
近隣に住む料理の楽しさに目覚めた顧客や、作りたての揚げ物を買い求める客をターゲットとし対面接客により顧客のニーズに合わせたクオリティの高い食肉を訴求し、顧客満足を向上させ食肉直営店を強化し売上拡大を図る。(102字)
(1)ROBINさん(開示得点75点)
料理の楽しさに目覚めた客や作り立ての良質な商品を求める客をターゲットに、最高級のハム等の食肉加工品、途中工程まで調理済み商品の品揃えを強化し、個々のニーズに合わせた対面接客で販売し、売上向上を図る。 |
ターゲット顧客については、「料理の楽しさに目覚めた客や作り立ての良質な商品を求める客」と、顧客の求める価値を具体的に書けているのが素晴らしいです。
品揃えについては、「最高級のハム等の食肉加工品」は既に直営小売店で売っていますが、「途中工程まで調理済み商品」はまだ販売していない商品です。
最終消費者と直接結びつく事業領域を強化するため、従来卸売事業の商品としていた「途中工程まで調理済み商品」を「料理の楽しさに目覚めた客や作り立ての良質な商品を求める」最終消費者向けに販売するという解答は、ストーリーに一貫性があって素晴らしいと思います。
(2)こちょびさん(開示得点70点)
ターゲットは、高級志向の工業団地の現役世代とする。店頭での試食販売で、作り立ての揚げ物を販売し固定客化を図り、高品質加工品の少量パックを販売。料理にそのまま使用できるカット肉を準備し売上向上を図る。 |
ターゲット顧客については「高級志向」という顧客の求める価値を書けているのが良いと思います。
品揃えについては「作り立ての揚げ物」「高品質加工品の少量パック」「料理にそのまま使用できるカット肉」の3つを書いていますが、高級志向の顧客に刺さるのはこのうち「高品質加工品の少量パック」だと思います。
そのため、高級志向の顧客を店頭での試食販売で固定客化するなら、作り立ての揚げ物よりも高品質加工品の試食販売の方が良いと思いました。
(3)かものしか(開示得点59点)
顧客ターゲットは①B社周辺の集合住宅に家族で住む現役世代②X県都市部から高速道路で来る客とする。品揃えは最高級の食肉や食肉加工品とし、対面接客により顧客のニーズに合わせた商品の販売を行う。 |
ターゲット顧客については、地域(ジオグラフィック)や世代・家族構成(デモグラフィック)しか書けておらず、顧客の求める価値について書けていないため、点数が付いていないと思います。
品揃えについても、「最高級の食肉や食肉加工品」は既に直営小売店で売っていると考えられ、設問文の制約事項である「販売力強化」につながっていないため、点数があまり付いていないと思います。
(4)ごまさん(開示得点53点)
近隣に住む料理の楽しさに目覚めた顧客や、作りたての揚げ物を買い求める客をターゲットとし対面接客により顧客のニーズに合わせたクオリティの高い食肉を訴求し、顧客満足を向上させ食肉直営店を強化し売上拡大を図る。 |
ターゲット顧客については「近隣に住む料理の楽しさに目覚めた顧客や、作りたての揚げ物を買い求める客」と、顧客の求める価値を具体的に書けているのが良いです。
品揃えについては「対面接客により顧客のニーズに合わせたクオリティの高い食肉を訴求」と書いていますが、現在の品揃えと変わらないため、点数はあまり付いていないと思います。
効果について、100字のうち25字も使って書いていますが、設問文に「直営の食肉小売店の販売力強化を図りたい」と書いてあるため、効果への配点は少ないと思います。
(5)第3問まとめ
第3問ではこの4人の間で結構点差が付いていると思いました。
ターゲット顧客については、地域(ジオグラフィック)だけでなく、顧客の求める価値を具体的に書けているかで差が付いていました。
品揃えについては、卸売事業の商品である「途中工程まで調理済み商品」を「料理の楽しさに目覚めた客や作り立ての良質な商品を求める」最終消費者向けに販売するというROBINさんの解答が、社長の想いとの一貫性も取れており素晴らしいと思います。
2-4.第4問
B社社長は、新規事業として、最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出すつもりである。ただし、コロナ禍で試した大手ネットショッピングモールでの自社単独の食肉販売がうまくいかなかった経験から、オンライン販売事業者との協業によって行うことを考えている。 中小企業診断士に相談したところ、B社社長は日本政策金融公庫『消費者動向調査』(令和4年1月)を 示された。これによると、家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は「献立の考案」(29.4%)、「調理」(19.8%)、「後片付け」(18. 2%)、「食材の購入」(10.7%)、「容器等のごみの処分」(8.5%)、「盛り付け・配膳」(3.3%)、「特にない」(10.3%)とのことであった。 B社はどのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するためにB社はどのような提案を行うべきか、150字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)新規市場への参入にあたって必要となる取引関係の構築、商品戦略、協業先がとるべきコミュニケーション戦略の提案について、助言する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん
X県の農家やミールキット販売業者と協業し、食材にこだわり家事は簡便化したい現役世代の家庭に向けた商品をオンラインで販売する。具体的には、農家の野菜とB社の途中工程までの調理済み商品や最高級の食肉加工品をセットにし、献立の考案が不要で調理が簡単なミールキットとして販売し、差別化・高付加価値化を図る。(149字)
●こちょびさん
全国の食通家庭に高級食材セット販売するオンライン販売事業者と協業する。献立の考案・調理・後片付け等、家事を簡便化したい家庭のニーズに答え、X県の特産品とB社の高級肉・加工品を使用し、簡単調理・片付けが楽にできるレシピと食材セットを提案。顧客増加で販売事業者との関係性を深め、長期的な売上拡大を目指す。(150字)
●かものしか
協業すべき事業者は、半加工の食材と献立のレシピのセットを最終消費者へ向けて定期的に販売するオンライン販売事業者である。行うべき提案は、個々の顧客の要望をオンライン上で収集し、双方向コミュニケーションにより顧客のニーズを把握することで、新規メニューの開発に活かすことである。(136字)
●ごまさん
協業すべきは献立や調理方法の情報を提供し顧客ニーズ収集のできるオンライン販売事業者。地元事業者と育成した地域ブランドの高品質な食品加工品を訴求し、収集した顧客ニーズを製品作りに活かし固定客化して売上げを拡大。(104字)
(1)ROBINさん(開示得点75点)
X県の農家やミールキット販売業者と協業し、食材にこだわり家事は簡便化したい現役世代の家庭に向けた商品をオンラインで販売する。具体的には、農家の野菜とB社の途中工程までの調理済み商品や最高級の食肉加工品をセットにし、献立の考案が不要で調理が簡単なミールキットとして販売し、差別化・高付加価値化を図る。 |
協業先については、「ミールキット(レシピと食材のセット)販売業者」と具体的に書けているのが良いと思います。なお、「X県の農家」は制約条件である「協業すべきオンライン販売事業者」ではないですが、書いても特に減点になっていないと思います。
B社の提案についてはダナドコに沿って見ていきます。
「誰に」については「食材にこだわり家事は簡便化したい現役世代の家庭」と、顧客の求める価値を具体的に書けているのが素晴らしいです。
「何を」については、「農家の野菜とB社の途中工程までの調理済み商品や最高級の食肉加工品をセットにし、献立の考案が不要で調理が簡単なミールキット」であり、顧客の求める価値に対して具体的に対応しているのが良いと思います。
「どのように」については、販売チャネルとして「オンラインで販売」の記載だけであり、出題の趣旨にある「協業先がとるべきコミュニケーション戦略」については書けていません。これが書けていれば、更に得点が伸びていたと思います。
「効果」については、「差別化・高付加価値化を図る」と書いており、競合である「ネットショッピングモール出店の食肉販売業者」との差別化などについて書いており、設問文の記載と被っていないので良いと思います。
(2)こちょびさん(開示得点70点)
全国の食通家庭に高級食材セット販売するオンライン販売事業者と協業する。献立の考案・調理・後片付け等、家事を簡便化したい家庭のニーズに答え、X県の特産品とB社の高級肉・加工品を使用し、簡単調理・片付けが楽にできるレシピと食材セットを提案。顧客増加で販売事業者との関係性を深め、長期的な売上拡大を目指す。 |
協業先については「全国の食通家庭に高級食材セット販売するオンライン販売事業者」と具体的に書けているのが良いと思います。
B社の提案のうち「誰に」については、「全国の食通家庭」と記載のうえ、「献立の考案・調理・後片付け等、家事を簡便化したい家庭のニーズに答え」と顧客の求める価値についても具体的に書けているのが素晴らしいです。
「何を」については、「X県の特産品とB社の高級肉・加工品を使用し、簡単調理・片付けが楽にできるレシピと食材セット」と、顧客の求める価値に対して具体的に対応しているのが良いと思います。
「どのように」については何も書いていません。出題の趣旨にある「協業先がとるべきコミュニケーション戦略」については書けていれば、更に得点が伸びていたと思います。
「効果」については、「顧客増加で販売事業者との関係性を深め、長期的な売上拡大を目指す」と31字使って書いていますが、「どのように」が書いていないせいもあり記載がやや漠然としており、字数の割に点数が付いていない可能性もあります。
(3)かものしか(開示得点59点)
協業すべき事業者は、半加工の食材と献立のレシピのセットを最終消費者へ向けて定期的に販売するオンライン販売事業者である。行うべき提案は、個々の顧客の要望をオンライン上で収集し、双方向コミュニケーションにより顧客のニーズを把握することで、新規メニューの開発に活かすことである。 |
協業先については、「半加工の食材と献立のレシピのセットを最終消費者へ向けて定期的に販売するオンライン販売事業者」と具体的に書けているのが良いと思います。
B社の提案のうち「誰に」については、「最終消費者」だけであり、顧客の求める価値を具体的に書けていません。
「何を」については、「半加工の食材と献立のレシピのセット」と書いていますが、顧客の求める価値が書けておらず、また第1問で書いた自社の強みである「良い食肉を仕入れて様々な肉の消費機会に対応し」や「自社工場の加工製造は技術力が高い」をどう活かすかも書けていないため、点数が付いているかは分かりません。
「どのように」については、「個々の顧客の要望をオンライン上で収集し、双方向コミュニケーションにより顧客のニーズを把握することで、新規メニューの開発に活かす」と書いています。この記載自体は良いと思いますが、「誰に」と「何を」が書けていないため、提案全体のストーリーとしては不十分なものとなっています。
「効果」については書けていません。
(4)ごまさん(開示得点53点)
協業すべきは献立や調理方法の情報を提供し顧客ニーズ収集のできるオンライン販売事業者。地元事業者と育成した地域ブランドの高品質な食品加工品を訴求し、収集した顧客ニーズを製品作りに活かし固定客化して売上げを拡大。 |
協業先については、「献立や調理方法の情報を提供し顧客ニーズ収集のできるオンライン販売事業者」と具体的に書けているのが良いと思います。
B社の提案のうち「誰に」については一切書けていません。
「何を」については、「地元事業者と育成した地域ブランドの高品質な食品加工品」と書けているのは第2問との一貫性も取れていて良いですが、顧客の求める価値が書けていないため、どれくらい点数が付いているかは不明です。
「どのように」については「顧客ニーズ収集のできるオンライン販売事業者」の「収集した顧客ニーズを製品作りに活かし」と書いていますが、具体的にどのように顧客ニーズを収集するかの施策が書けていません。もし、協業先のオンライン販売事業者が既に行っている顧客ニーズ収集をそのまま利用するのであれば、提案になっていないと思います。また、「誰に」が書けていないため、提案全体のストーリーとしては不十分なものになっています。
「効果」については「固定客化して売上げを拡大」と書いていますが、「どのように」で施策が書けていないため因果関係が漠然としており、点数が付いているかは不明です。
(5)第4問まとめ
協業先については4人とも書けており、差は付いていないと思います。
B社の提案については、「誰に」と「どのように」の部分で差が付いていました。
「誰に」については、設問文の「家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程」から協業先だけを思い付いたか、または協業先と「誰に」(顧客の求める価値)の両方を思い付いたかで差が付いたと思います。
「どのように」については、与件文や設問文中に手掛かりとなる記載がありませんが、設問の趣旨では「協業先がとるべきコミュニケーション戦略」についての提案が求められており、1次知識に基づく解答が求められていたと思います。高得点答案の2人(ROBINさん、こちょびさん)でもオンラインでのコミュニケーション戦略について解答できておらず、この年度の事例Ⅱの中では一番難しい部分であったと思います。
■おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
事例Ⅱについては、ダナドコだけで勝負するのではなく、その前提となる中小企業のマーケティング理論まで理解することで、初見の問題でも安定して点が取れるのではないかと思います。
また、解答を書く際には「一貫性」と「具体性」を意識することで点が伸びると思います。
私は昨年の2次試験本番で59点しか取れませんでしたが、ROBINさん、こちょびさん、ごまさんの3人から再現答案をご提供いただいたおかげで、私も今更ながら事例Ⅱについて勉強し直すことができ、理解が深まりました。3人の方々には深く感謝しております。
このブログ記事が、令和5年度中小企業診断士試験受験者の皆さまのお役に少しでも立てれば幸いです。
●参考文献リスト
・『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(佐藤義典著、青春出版社)
・『小が大を超えるマーケティングの法則』(岩崎邦彦著、日本経済新聞出版)
・『中小企業診断士試験 一発合格: 独学では辿り着けない、予備校では教えてくれない、診断士試験の真実とノウハウ』(「一発合格道場」9代目執筆メンバー著、kindle電子書籍)
・『「まとめシート」流!ゼロから始める2次対策』(野網美帆子著、kindle電子書籍)
・『TBC中小企業診断士試験シリーズ 速修2次テキスト』(山口正浩監修、早稲田出版)
・『30日でマスターできる 中小企業診断士第2次試験 解き方の黄金手順』(黄金手順執筆チーム著、中央経済社)
・『ロジカル・プレゼンテーション――自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」』(高田貴久著、英治出版)
・『グロービスMBAクリティカル・シンキング』(グロービス経営大学院著、ダイヤモンド社)
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