令和6年度B社来訪記 by サトシ
タキプロ15期の サトシ と申します。
今回は私が11月17日に令和6年度のB社を訪れたレポートをお送りします。
前日の16日に、私は福岡でタキプロの九州メンバーとの懇親会をしていました。翌日は西九州新幹線に乗って長崎に行こうと思っていたところに今回のB社が長崎県の企業という話を聞き、「こりゃ行くっきゃないだろ!」と思って、実際に令和6年度のB社に行ってきました。
それでは、今回もよろしくお願いします。
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目次
■事例Ⅰ〜Ⅲにはモデル企業がある
ん?B社を訪れたってどういうこと?長崎県の企業?あれは試験問題上の企業であってフィクションじゃないの?
と思われた方もいらっしゃると思います。
実は事例Ⅰ〜Ⅲの企業は実在する企業がモデルになっています(事例Ⅳの企業は架空です)。主に補助金を申請した企業や、はばたく中小企業など優良事例として紹介された企業、地元での有名な中小企業が選ばれる傾向があります。
また、取引先などで出てくるX社・Y社・Z社なども実在する企業(こちらは大企業も含む)になっていることが多いです。
こういうモデル企業を器用に見つける予備校があり、その予備校の動画チャンネルからB社が「有限会社マルヒロ」ということを知りました。
有限会社マルヒロのホームページはこちらになります。
ちなみに、令和5年度のA社は茨城県神栖市にある「砂場」という蕎麦屋、B社は千葉県鎌ケ谷市にある「超野球専門店CV」というスポーツ店、C社は徳島県徳島市にある「鹿祿」という食品加工業者です。私は2次筆記試験の合格発表直後に口述試験対策として実際に見に行きました。
令和4年度はC社こそ北海道の企業なので遠すぎて見に行きませんでしたが、A社は茨城県鉾田市にある「深作農園」という農業法人、B社は千葉県千葉市にある「シェフミートチグサ」という肉屋で、この2社は実際に見に行きました。
■口述試験の参考になります
ここまでの内容を見ていくと、「サトシは実際の企業を見に行って何が楽しいんだ?」とか「えっ?そんなことまでしないといけないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、実際に見に行く必要はありません。半分は「フットワークの軽さ」という私の強みを証明するための自己満ですから(笑)
しかし、こういう実際の企業のことを見ることは完全に無意味ということはなく、「印象に残りやすい」というメリットがあります。
例えば私が受けた令和5年度のB社も、「豊富な野球用品の品揃え」という内容が与件文に書いてありましたが、これを「単なる文字の羅列」で見るよりも、この写真のような実際に壁一面に野球のグローブやバットが並んでいる画を見るほうが、印象に残りやすいですよね。
実際に私も口述試験で「B社の強みを挙げてください」という問いが来たので、「よっしゃ!あの壁一面に広がっている品揃えのことを言うぞ!」と思って自信をもって回答することができました。
■「X市=波佐見町」、「X焼=波佐見焼」
令和6年度のB社は、佐賀県と長崎県の県境付近にある波佐見町にあります。
こちらがグーグルマップでの波佐見町の位置になります。長崎県で唯一、海のない自治体だそうです。
近くには有田焼で有名な佐賀県有田町があり、車がなくても有田駅からタクシーで向かうことができます。
最近は西九州新幹線(武雄温泉〜長崎)も開業し、嬉野温泉駅からバスで向かうこともできます(私はそのルートで行きました)。
他にも近くに高速バスの停留所があり、そこから歩いて向かうこともできます。3kmほどありますが、自然の中を歩くと気分転換になりますよ。
■「自然環境に囲まれている」のイメージ
「自然環境に囲まれている」というフレーズが与件文にありましたよね。
これが「自然環境に囲まれている」の実際の写真です。
のどかですよね。でも逆に静かすぎました(笑)
土日だというのに歩いている人が全くおらず、車がちらほら通るだけでした。
B社直営店と後で紹介する「くわらん館」には観光客が車で訪れていましたが、街を歩いている人は皆無でしたね。
■分業制の工程
こちらも与件文に書かれていましたよね。これも実際の写真を見たほうがイメージしやすくなると思います。
これは波佐見町(X市)の観光マップや波佐見焼(X焼)の資料の説明に書かれていました。
こちらがその写真です。
■歴史のこと
与件文には江戸時代のことなど、X焼の歴史のことも書かれていましたよね。
こちらも実際に案内がありました。
(この写真の下にあるSDGsへの取り組みについては、この後で改めて見ていきます)
■陶磁器祭り
これも与件文に書かれていましたよね。
波佐見町(X市)には本当に陶磁器の祭りがあるそうで、こちらが詳しい内容となっております。
(うちる編集局 【2024 波佐見陶器まつり】徹底ガイド!基本情報やおすすめ作家さん紹介 より)
■大消費地=福岡市
大消費地の業者にサンプルを持っていったら一刀両断されたところですね。
こちらは福岡市と思われます。九州一の大都会です。
波佐見町は佐世保から福岡に行く高速バスに乗ることができ、福岡まで2時間弱で行けます。また、有田駅から博多駅(福岡)まで特急で1時間半で行けます。
しかし、福岡市からすると波佐見町よりも近くにある有田焼や伊万里焼のほうが有名です。波佐見焼は県内での知名度はありますが、県外の知名度では有田焼や伊万里焼に負けてしまうので、普通のデザインや色の焼き物では勝てません。
有田焼や伊万里焼は「著名性」がある一方で、波佐見焼は「周知性」があるイメージですね。法務で習いましたよね。
だからこそ、一刀両断されてしまい、その後に今までなかったセンスを持ち込んだデザインや色の焼き物を用意してきたのだと思います。
もちろん大消費地が東京や大阪の可能性もありますが、どちらにしても知名度で負けてしまうのは確かです。
■「新しい作風、今までにないデザイン、今までなかったようなセンス」のイメージ
令和5年度B社の「豊富な野球用品の品揃え」のように、抽象的な表現のものは与件文のフレーズだけ読むのと、実際のものを目で見るのとでは理解度に差が出ます。
というわけで、私がその「新しい作風、今までなかったようなセンス」はこういうものというのを撮影してきました。それがこちらです。
イメージは、田舎のヤ●キー、もとい「ちょいワル」の方が喜びそうなものですね。スプレーで壁に落書きするようなデザインや奇抜なデザインのものもありました。
言い方を変えると、こういうのに憧れる人にターゲットを絞っているのだと思います。
また、社長予定者(3代目)がファッション業界で働いていたこともあり、B社直営店の店内にはジーンズショップでかかっていそうなパンクなミュージックがかかっていました。
■若者とみられる視聴者
与件文の最後のほう、動画のことが書かれている部分にありましたよね。
B社直営店に行って驚いたのは、来ている客が若者ばかりだったということです。
確かに、スプレーで壁に落書きするようなデザインや奇抜なデザインのものが中心なので、それに興味をもつのは若者や奇抜なデザインが好きな人になります。年配の方もそういう方の付き添いで来ていることがありましたが、買いたい人はいない印象でした。
与件文にある「コロナ禍で家庭に関心を向けるようになった若者」というのは、親がそのようなデザインに興味をもっていて子供も連れてきているファミリー層と考えればいいかと思います(もちろん解答では与件文の表現のまま書く必要があります)。
■他の人は?
波佐見町(X市)には、「くわらん館」という、波佐見焼の様々な工房の商品が集まる施設があり、そちらに大抵の観光客が流れていました。こちらで扱う商品は奇抜なデザインのものではなく普通のデザインのものでした。
なのでB社直営店に来るのは若者や奇抜なデザインが好きな人(ファミリー層含む)で、くわらん館に来るのはその他の層、というイメージですね。
■オリジナル食器の提案力はありそう
こちらがB社の直営店に売っている陶磁器ですが、先ほどの奇抜なデザインのものやコラボしたものから、このような一般的なデザインのものまであり、ホテルなど取引先から依頼があればそれに合うデザインのオリジナル食器を作れそうです。
■価格帯は高め
これは中小企業なら当たり前ですが、今回のB社(有限会社マルヒロ)の商品も価格帯は高めでした。コストリーダーシップ戦略ではなく、高付加価値での差別化戦略ですね。
例えばお猪口が2000円から3000円くらいしました。私は飲み屋のお通しで出てくるサイズの皿(普通のデザインのもの)を買いましたが、それでも1200円くらいしました。
■カフェスペースもちゃんとあります
カフェスペースもあり、コーヒーやお菓子類が売っていました。ハーブティーもありましたね。さすがに「眠る前に飲むハーブティー」ではないと思いますが(笑)
このカフェスペースで使われている器はもちろん波佐見焼のもので、B社直営店で売っているものです(テイクアウトもできますが、その際はプラスチックの容器が使われていました)。
「店で使われているものが売っていますよ」としておけば、気に入れば買いたくなりますよね。「利用→満足度向上→店舗で購入」の流れです。
最近はカレーのCoCo壱でも揚げ物にかけるソースやサラダにかけるドレッシングがその場で買えるようになっていますよね。これと同じです。「あ、サラダにかかっているこのドレッシングおいしいな」と思って、レジ横にドレッシングが売っていたらつい買ってしまいますよね。こうやって非計画購買を促し客単価を向上せる狙いがあります。
■実際の企業からカットされているところもある
このB社、実際の企業(有限会社マルヒロ)は直営店の中に広大な公園があります。この広大な公園でイベントをやったりするそうです。
しかし、これを与件文に書いてしまうと、ただでさえ難しい今回の事例Ⅱの設定がさらに複雑になって余計に難しくなってしまうことから、あえて出題者が公園の設定を丸ごとカットし、その代わりイベントはカフェスペースでできるような設定にしたのだと思います。
このように、難易度の都合で実際の企業の設定をカットしたり変更したりする場合もあります。
■弱みは何?
今回の第1問のSWOT分析は、弱みについては明確なものがありませんでしたよね。ちなみに私は経営状態の悪化とかプロモーションの不足と思いました。
実際、プロモーションは不足していました。例えば波佐見町の観光マップにはB社の直営店は載っていませんでした。陶磁器を扱う他の店は載っているのにB社の店は載っていないとなると、観光客には認知されませんから、不利になりますよね。
また、B社直営店に行っても商品の説明がほぼありませんでした。店員もレジに立っているか陳列された棚を見ているだけで、顧客に何か言ってくれるわけでもありませんでした。
私はB社直営店に30分くらい滞在していましたが、店で何か買っている人はほぼいませんでした。なので、プロモーション戦略が全体的に不足しているのは確かでしょうね。
第4問の設問文で「顧客の顔を直接見ながら販売」とも書いていますし、本来なら顧客の顔を直接見ながらの販売を3代目は理想にしているものと思われます。
例えば「お客様、どういうものをお探しですか?何かお困りごとはありませんか?」と店員が聞いて、顧客が「軽いマグカップが欲しいんですけど」と言ったら「ではこちらはどうですか?」と提案することで買ってもらいやすくなりますよね。店員が何も声をかけずに帰られてしまうよりはるかにマシです。
もうお気づきだと思いますが、これこそが「双方向のコミュニケーション」です。なので、第4問でもそれが解答に求められていると思われます。
■X市の郷土料理=波佐見町の郷土料理
「じっくり炙った食材を地元の発酵調味料と混ぜ合わせて食べる郷土料理」が気になったので、波佐見町の郷土料理を調べたところ、「ぼうぶらずうし」というものがありました。「ぼうぶら」はカボチャ、「ずうし」はおじやのことらしいです。
他にも「茄子の味噌ころ」や「ぬたもの」、「なすび飯」というものありました。
どれも家庭料理だそうで、カフェやレストランで出されるのではなく、旅館に泊まると出される感じですね。
https://note.com/as_cooking/n/ne3cd15d21e54
こちら(asさんのnote 長崎県東彼杵郡波佐見町の郷土料理「ぼうぶらずうし」)にぼうぶらずうしの調理工程を載せていますが、これを見たらガスコンロに火をかける工程がありますよね。このときに直接ガスコンロに乗せて調理ができる陶磁器(耐熱の皿)があると便利ですよね。器と鍋を兼用できるから洗い物も減りますし。
ちなみに、「直接ガスコンロに乗せて調理ができる陶磁器」は、くわらん館にこのようなものが売っていました。
買おうと思ったのですが、かなり重くてこれを買うと帰りの飛行機の機内持ち運び制限重量(7kg)に引っかかると思い、やめときました(笑)
■動画チャンネルもあります
2次試験ではオンライン動画サイトに掲載するコンテンツを2本作ったとありましたね。マルヒロの公式チャンネルがこちらです。
https://m.youtube.com/@maruhiroinc.6687
しかし、この公式チャンネルに事例Ⅱで書かれていたような動画はありませんでした。あくまで試験用ということで、おそらく解答根拠にするために出題者がB社のものと変えて入れたのだと思います。
このように、2次試験の定番の解答が作れるように実際の設定をアレンジすることも2次試験では見られます。
強いて言うなら、1本目の「家庭でも見違えるほどおいしそうに見える食器への盛り付け方を紹介する動画」はこちらですかね。ちなみに第2問のふるさと納税でもらえる器のことも出てきています。
一方、2本目の「X市の郷土料理とX焼を紹介する動画」は、有効なものはありませんでした。
■本当はNetflix
動画を見て若者視聴者に刺さるという内容は、本当ならNetflixのことだと思います。
B社直営店に行ったらNetflixのマークがいくつかありました。おそらく連携しているか広告を出しているのだと思います。
そして「Netflixから紹介してもらう→SNSで拡散→SNSをやる世代(若者やファミリー層、奇抜なデザインが好きな人)が来店もしくはECサイトを利用」という流れを享受しているのだと思います。これなら海外の人々もターゲットにできますからね。
しかし、国家試験なので特定の企業や商品の名前は出せないことから「Netflix」という単語は出せませんし、試験委員も高齢の方でそれほどNetflixに詳しくないと思われるので、あえてバッサリと設定を変えて「オンライン動画サイト」として、さらに試験用に内容をアレンジしたのだと思います。
与件文にあった「驚きや感動を表すコメントが書き込まれた」というものも、youtube公式チャンネルのコメントもあるとは思いますが、それよりもインスタなどをやっているためだと思われます。
■ふるさと納税
こちらが波佐見町(X市)のふるさと納税の返礼品となります。
焼き物がメインですね。先ほどの動画でもふるさと納税のことがありましたが、焼き物でしたね。
今回の事例Ⅱも、この焼き物を使って郷土料理を思い出させることが、感覚価値と観念価値の問題とリンクしていると思われます。
なお、感覚価値と観念価値は正しい内容がわからなくても、解答根拠に使う与件文の部分を正しく抜いてくることができれば、結果的に両者のことを解答していることになっているカラクリでした。
また、先ほどの「X市としての郷土料理への取り組み」の1つにふるさと納税もあるかもしれません。
■SDGsへの取り組み
波佐見町(X市)は、ふるさと納税もですがSDGsへの取り組みもアピールしていました。この写真のように焼き物の器にお菓子を入れたものがあり、器を捨てずに容器として今後も利用できることをアピールしていました。
また、B社(有限会社マルヒロ)のホームページでもSDGsに関する取り組みをアピールしています。となると、口述試験でSDGsのことが聞かれる可能性(解答の中身はふるさと納税と同じようなものでOK)があります。
■オマケ
B社直営店で私は小皿を買ってきました。奇抜なデザインのものではなく普通のものですけどね(笑)
また、「くわらん館」ではコーヒーカップと湯呑みを買いました。
どれも「HASAMI」という単語が裏底に書かれていて、波佐見焼だとわかるようになっています。
■おわりに
今回は私が令和6年度B社を訪れたレポートをお送りしました。長くなってしまって申し訳ございません。
口述対策にもなると思いますので、筆記試験の合格発表後に再び読んでいただいてもいいかもしれません。
今回もありがとうございました。
次回は、ざわ さんの登場です。
お楽しみに!
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