事例Ⅲに違和感を感じる人のための合格点を獲得するノウハウ by サト

事例Ⅲ

読者のみなさん、こんにちは。
タキプロ14期、独立開業してから中小企業診断士を志したサトと申します。
50代以上で構成されたTKPエイジレスのメンバーでもあります。

今回は事例Ⅲ対策ですが、製造業経験が豊富で、事例Ⅲに違和感を覚える方に向けて書きます。

■はじめに

2次試験は、自分が得意とする専門分野ほど高得点が取りにくいと言われています。

製造業経験の豊富な方は、事例Ⅲの与件文やふぞろいの解答を読んで、次のような違和感を感じる方も多いのではないかと思います。

「こんなことありえない。」

「こんなことで解決するならば苦労しない。」

「こんな解答は意味がない。具体的に何をするかが重要なのに……。」

しかし、試験に合格するためには、事例Ⅲでも、可能な限り得点を取らなければなりません。
受験生としては、合格するために得点を取れる解答を書くしかないと考え、その方法を模索しました。
この記事では、その方法をお伝えします。

なお、ふぞろいの解答をベースに書いていきますが、ふぞろいの解答以外に得点の入る解答がないわけではありません。

事例Ⅲは事例Ⅱと比較して、得点の入るキーワードの範囲が広いと思います。

実際、私は過去4回の2次試験で、ふぞろいで取り上げられていないキーワードを含む解答をいつも書いてしまっていますが、ふぞろい流採点よりも実際の得点はいつも高くなっていました。

事例Ⅲでは、ふぞろいで取り上げられたキーワード以外にも、得点の入るキーワードがある証拠だと思います。
ふぞろいでは、得点の入るキーワードでも、書いた人が少ない場合は、そのキーワードは出てきません。

しかし、合格点を取るためには、ふぞろいの得点の入るキーワードを盛り込んだ答案を書けるようになることが、最も確実です。

■事例Ⅲの解答戦略

(1)違和感を持っても深く考えず、そのまま受け入れる

例えば、事例Ⅲでは、しばしば納期遅延が頻発しているという会社が取り上げられます。
生産計画策定が月1回であると、計画策定の短サイクル化がふぞろいの解答になります。

R3年度の与件文では追加発注等があると見直しを行っていると書かれています。
随時、生産計画の見直しを行っているならば、計画策定の短サイクル化は意味がありません。
それでも、ふぞろいでは、短サイクル化が高得点のキーワードとなっています。

計画立案後の受注内容の変動や特急品の割込みに対しては生産計画の都度見直しをするが、材料の入荷遅れ等で生産が予定通り進まない場合や、予想以上の売上で在庫が減った場合には、見直しをしないという不自然な状況を受け入れることにします。

生産計画策定は、月1回では少ないと作問者は考えていることを覚えておかなければなりません。

(2)悪いと書いてあったら素直にそのまま受け入れる

H30年度の与件文には「生産効率を上げるためにロットサイズが受注量より大きく製品在庫が過大」だと書かれています。

ふぞろいでは、生産ロットサイズを受注量より大きく策定していることが、問題点の高得点キーワードになっています。

ロットサイズを大きくして生産効率を上げることによる費用削減効果と製品在庫費用のバランスなどを考える必要はありません。

「過大」とは悪い意味の言葉ですから、作問者はこれを問題だと考えていると素直に捉える必要があります。

経験豊富な方は、さまざまなことが頭に浮かんでくると思いますが、作問者が問題だと考えていることはそのまま受け入れます。

試験時間は限られていますので、それが最善の方法です。

■事例Ⅲの注意点

(1)キーワードはできるだけ盛り込む

事例Ⅲは、広い範囲のキーワードから得点が入ります。
逆に、書いたキーワードが少ないと点数も低くなりがちです。

キーワードを簡潔にして、たくさんのキーワードを盛り込んだ解答が、高い得点を得られます。

事例Ⅲでは、しばしばC社の強みを問われますが、与件文にはたくさんの強みがちりばめられており、解答欄の文字数は限られています。

強みを同じ色でマークして、他の設問で問われていることを考えながら、作問者が重要だと考えていそうな強みを短い言葉でできるだけ数多く書くことが得点を得る秘訣です。

R4年度第1問では、「外部環境の変化の中で、C社の販売面、生産面の課題」を問われました。
外部環境、販売面の課題、生産面の課題をたくさん盛り込むと高得点となったと思います。
私は販売面の課題を「新型コロナによる新規入国規制や外食産業の営業自粛の対応」と「対応」のひと言ですませてしまったため、点数が低かったと思います。

(2)問題と課題

事例Ⅲでは問題と課題を区別しています。

問題とは、ネガティブな現状・事象であり、あるべき姿から外れた状態です。

課題とは、問題をポジティブな方向に変える行動であり、あるべき姿に近づけるための行動です。
課題は「(原因)による(結果)」の形式で表現されることもあります。
例えば、「(コロナ禍の売上減)による(新規取引先開拓)」です。

課題を問われている設問で、問題を答えると大きく減点されます。

(3)課題と対応策

R3年度第2問では、課題と対応策をそれぞれ2つ問われました。

上記のように、課題は問題をポジティブな方向に変える行動ですので、対応策との書き分けに悩むと思います。

抽象度の高いことを課題に書き、それを解決するための具体的なことを対応策に書くと書き分けられます。

例えば、受注生産で、課題が「短納期化」ならば、「稼働率向上」「段取り時間短縮」「標準化」などが対応策になります。

見込生産で、課題が「在庫コスト低減」ならば、「需要予測精度向上」「JIT」「在庫管理強化」などが対応策です。

■事例Ⅲのフレームワーク

以下のフレームワークは覚えておいて損はないと思います。

(1)DRINK

D:データベースの活用
R:リアルタイム
I:一元管理
N:ネットワーク
K:共有化

(2)ひきたほうだれ

ひ:標準化
き:教育・共有
た:多能工化(余力管理、応援体制、負荷の平準化)
ほ:保管方法改善(保管場所を集約、狭いスペースに規制、物品や保管場所に付番)
う:運搬改善(運搬ロットサイズ見直し、運搬器具改善)
だ:段取改善(内段取りの外段取化、治具や工具を加工機械の近くに配置、事前運搬)
れ:レイアウト改善(高頻度・重量物等移動負荷の高い工程間を近接配置、建屋改築)

(3)げもたこ

因果関係整理の要点です。

げ:原因
も:問題点(or課題)
た:対応策
こ:効果

■事例Ⅲのキーワード

(1)頻出キーワード

事例Ⅲでは、次のキーワードが加点ワードとして、よく出てきます。
このようなキーワードを積極的に使うようにします。

  • マニュアル化
  • 標準化
  • OJT
  • 短サイクル化
  • 週次化
  • リードタイム短縮
  • 営業力強化
  • 技術営業
  • 提案型営業
  • 納期遵守
  • 全体的な生産管理・生産統制
  • 進捗管理
  • 現品管理
  • 余力管理
  • コスト削減
  • 効率化
  • 在庫削減

(2)生産管理・生産統制のキーワード

生産管理や生産統制では、以下のような言い回しがよく使われます。
この程度の記述が得点が高くなっていると思います。

  • 全社的な生産計画の立案
  • 見直しサイクルの短縮
  • 納期管理の徹底
  • 負荷の平準化(柔軟な生産体制)
  • 稼働率向上
  • 外注管理の徹底
  • 需要予測の精度向上
  • ロットサイズ適正化
  • 発注頻度・発注量見直し
  • 在庫管理徹底
  • 作業手順(加工順など)の見直し
  • 段取り時間の短縮:外段取り化・シングル段取り化

経験豊富な人は、「〇〇の徹底」と聞くと、
「そんなことわかっている。
どうやって徹底するか。
その具体的な方法が大切なんだ。」
と考えると思いますが、
それは2次試験では要求されていないと考えた方がいいと思います。
それを書くと解答の字数が取られ、多面的な解答ができず、得点が低くなります。

■おわりに

私は、2次試験はコンサルティングのケーススタディではなく、
作問者が作った箱庭の中で、
「正解」を与件文と設問文から見つけるゲームだと考えました。

2次試験で合格点をとるためには、広く深い知識や洞察力・創造力などは必要ありません。
そのため、2次試験は国語の試験だという人もいます。

現実の世界を忘れて、作問者の世界に入り込むことが必要です。

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次回はたっしさんの登場です。
お楽しみに!

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