事例Ⅲを安定させたい人へ byタイニー

読者の皆さま、初めましてこんにちは。
タイニーと申します。
タキプロ13期として受験生支援ブログを執筆させていただくことになりました。
令和3年度の中小企業診断士試験に独学ストレート合格した経験を踏まえ、少しでも受験生のお役に立てるよう努力します。


私は中小企業診断士試験の専門家でも何でもなく、ぽっと出のいち合格者です。
なので、偉そうに理論を語ったり講釈を垂れるようなことをするつもりはありません(できません)
あくまで実体験をベースとした話を中心にできればと思っています。
その中で受験生の方々に少しでも参考にしていただける記事が残せたら嬉しいです。


1年間どうぞよろしくお願いします!!

■はじめに

まずは自己紹介です。

年代/性別 :30代/男性
職種   :地方公務員
受験歴  :1次1回、2次1回
勉強時間 :1次約1090時間(!)、2次約320時間
勉強方法 :独学
保有資格 :日商簿記2級、宅建(未登録)など
得意科目 :1次/運営管理、経営法務、中小企業経営・政策、2次/事例Ⅰ、事例Ⅲ
得点開示 :1次/経済68、財務64、企経65、運営72、法務68、情報60、中小71、計468
2次/事例Ⅰ56、事例Ⅱ61、事例Ⅲ72、事例Ⅳ62、計251

1次はガッツリ時間をかけて勉強しました。500点ぐらい取る意気込みで勉強しましたがそこまで伸びず。
2次は1次終了後の時間がない中で必死にもがいてなんとか合格。1/14の合格発表時は最高に嬉しかったですね。


製造業とは縁もゆかりもない(というか工場に足を踏み入れたこと自体ほぼない)私ですが、結果的に1次は運営管理、2次は事例Ⅲを一番の得点源とすることができました。
ぶっちゃけて言いますと、未だに工場のイメージなんて頭の中に浮かびません…
(※将来的に製造業の支援をさせていただくことがあった場合それでは困るので、今後折を見てしっかり勉強したいです)
しかし!あくまで「試験対策」と割り切れば、事例Ⅲは他事例と比べて型に嵌めて安定させやすい科目だと思っています。


本日は私の体験に基づき、事例Ⅲの勉強方法について書いていきます。

■事例Ⅲへの入口

いきなり他ブログの紹介になり恐縮ですが、事例Ⅲを勉強する前に必ずこの記事を読んでください!

だいまつが教える事例Ⅲ攻略の極意

一発合格道場だいまつ様の記事です。
はっきり言って事例Ⅲのバイブル、伝説の記事です。


平成28年度事例Ⅲ(カット野菜)を題材に、事例Ⅲの設問を4つの切り口で考える方法について書かれています。
4つの切り口とは、「現状把握」・「生産管理」・「生産性向上」・「経営戦略」です。
この記事が書かれてから数年経過していますが、現在の事例Ⅲでも十分に通用する普遍的な考え方です。


2次試験対策中でまだこの記事を読んだことがない方、ぜひ今すぐ読んでみることをお勧めします。特に独学者は必読です。


また、1次試験勉強中の方でも、事例Ⅲの雰囲気を知るために読んでみても良いかもしれません。
記事中では平成28年度事例Ⅲを解いてから読むことが推奨されていますが、いきなり事例を解くなんて無理!という方は、与件文と設問を一読してから記事を読むだけでも十分に効果がありますよ。

■「生産管理」と「生産性向上」の切り分け

上記4つの切り口のうち、「現状把握」と「経営戦略」については割と分かりやすいと思います。
第1問に現状把握が来て、最終問題が経営戦略というパターンが多いです。


経営戦略系の問題は、次のようなポイントを意識して多面的に回答しましょう。
・第1問で指摘した強み(S)や、助言系の問題で克服した弱み(W)を機会(O)や顧客ニーズにぶつける
・与件文中に連携できそうな企業等が出ていれば、活用する方向で考える
・熟練職人から若手職人への技術承継を進め、将来へ向けて生産体制を維持する

そして近年の事例Ⅲで最も頭を悩まされるのは、
「生産管理」と「生産性向上」の切り分けではないかと思います。

ざっくりしたイメージで言うと、
・生産管理→計画立案と統制の話
・生産性向上→現場レベルの話
と捉えて試験対策上は差し支えないです。

しかし昨日わぎーさんも書かれていたように、近年の事例Ⅲでは設問要求が複雑化されてきており、パッと見ではどう切り分ければ良いかよく分からないということになりがちです。

■切り分けに困ったら…

仮に時間制限がなく、いくらでも考えていいよと言われればよりベターな切り分けができるかもしれません。
しかし2次筆記試験の制限時間は80分。
この限られた時間の中で、作問者が意図したとおりの切り分けをした上で回答するのはほぼ不可能です。


そこで私が考えていたのは、「切り分けに困ったら複数の設問に対して同じ内容を書いちゃう」ということです。
これは結構いろいろなところで言われていることではありますが、令和3年度の事例Ⅲで私が自ら本試験で体現させていただきましたのでご覧ください。

突然ですが、こちらが私の令和3年度事例Ⅲの再現答案です。

※以下令和3年度事例Ⅲのネタバレを含むので、温存しておきたいストレート目標生の方は閲覧注意です

—以下タイニーの再現答案—

第1問
(a)手作り感のある高級仕様の自社ブランドが収益貢献しており、EC販売チャネルを持つ点。
(b)受注が低価格品中心で、企画・開発経験が少なく、製造全体の技術習熟が進んでいない点。

第2問
(a)縫製工程の負荷軽減とリードタイム短縮化。
(b)①OJTによりバッグを一人で製品化するための製造全体の技術習熟を推進し、②ラインバランシングや工程の機械化実施により、工程間の負荷平準化とリードタイム短縮化を図る。
(a)在庫削減のため小ロット化を図ること。
(b)①生産計画の立案頻度の短サイクル化及び柔軟な見直しの実施、②受注量に応じた適正なロットサイジングを行い、③受注予測の精度向上を図ることである。

第3問
製品企画面は、研修等により社員の製品企画力を強化、顧客ニーズ収集に努め高付加価値な製品を企画すること。生産面は、全工程を通した生産計画を、立案頻度を短縮化して作成、短サイクルで適宜見直しつつ統制を行うことで、自社ブランド製品の開発強化を図る。

第4問
自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出すことを選択する。対応は、企画・開発コンセプトを訴求した製品を推進して他社との差別化、修理等アフターフォローの強化で高付加価値を狙う。また熟練職人のOJTで若手を教育、技術承継を進めて生産体制を維持する。以上で直営店での売上向上を図る。

—以上タイニーの再現答案—

※与件文と設問は中小企業診断協会のサイトでご確認ください。

本試験中、与件文と設問を一読した段階で、
第1問→現状把握
第2問→生産性向上
第3問→生産管理
第4問→経営戦略

大まかにはこの切り分けになるだろうと思いました。
しかし第2問が受託生産品の話で第3問が自社ブランド製品の話という設問の制約条件があるため、どういう回答の方向性にするべきか悩みました。
そして最終的に、OJTによる技術承継を第2問と第4問に、生産計画立案頻度の短サイクル化を第2問と第3問にそれぞれ使いました。
めちゃくちゃ被ってますね!


厳密に言うと、
OJT→第2問では生産性向上のため、第4問では生産体制維持のため
生産計画立案頻度→第2問では受託生産品小ロット化のため、第3問では自社ブランド製品(見込生産)強化のため
というつもりで書いたので趣旨は違うつもりなのですが、表面的には書いた内容は同じです。
※第2問は「効率化を進める上で」という設問指示ですが、 受託生産品に関する内容であれば工程レベルの話に捉われなくても良いのかもしれないと考え、ロットサイジング(生産管理っぽい話)を織り交ぜました。

これが2021年11月7日に私ができた最大限の対応です。

設問ごとの得点は分からないので、この辺りを採点者さんがどう捉えたのかは不明です。
しかしこれでも72点取れているので、致命的な失点にはなっていないだろうと推察されます。

「一つの論点は一つ設問にしか使わない」というスタンスを取ると、大外しした場合は多重事故を起こすリスクがあります。
そこで上述のように、敢えて複数の設問で同じ論点を用いることで、そのような危険を排除しようという考え方を持っていました。
この考え方は事例ⅠとⅡでも使えなくはないですが、特に切り分けという考え方が重要な事例Ⅲではとても大事になってくると思います。


リスクヘッジに重点を置いた発想なので、これでは80点とか90点といった超高得点は取れないかもしれません。
しかし、「複数の設問で同じ論点を用いてもOK」とあらかじめ自分の中でルール付けしておけば、試験中のプレッシャーが少し軽減され、落ち着いて回答できるメリットもあるのではないかと思います。

■平成27年度の事例Ⅲに挑戦しよう

私は事例Ⅰ~Ⅲについては直近6年分(R2~H27)の過去問を解いて試験に臨みました。
その中で、個人的に「設問の切り分け」が最も難しいのは断トツで平成27年度の事例Ⅲ(マンホール蓋)ではないかと思います。
特に第1問(設問2)~第3問までの切り分けには非常に頭を悩まされます。
それ以外にも、


・第1問(設問1)→強みを2つ問われたら、2つの切り口から強みを探す
・第1問(設問2)→新規事業参入による技術力向上やシナジー、主要製品への依存脱却
・第2問→ネック工程への対処
・第3問→ICT

などなど、事例Ⅲで大事な考え方がギュッと濃縮されています。
この事例をやり込み、腑に落ちて人に説明できるまで理解したならば、正直ここ数年の事例Ⅲは簡単に思えるはずです。

■お役立ちリンク集

一発合格道場アヤカ様の記事
生産性向上カテゴリーの対策に非常に役に立つ記事です。
生産性向上は4Mから検討するという大事なことを教わりました。
素敵なExcelもDLできるので、カスタマイズして使わせていただいていました。

とりあえず診断士になるソクラテスさんの記事
生産管理と生産性向上の切り分け、それぞれのフレームについて掘り下げて解説されておりとても分かりやすいです。
個人的には、ICT導入は生産性向上だけでなく生産管理上の課題解決にもつながるという部分が目から鱗でした。

■おわりに

いかがでしたでしょうか。
少々テクニック的な話もしましたが、以上が私の考える事例Ⅲ対策です。

冒頭のだいまつ様の記事中にもあるように、「事例Ⅲは難しく考えないで、できていないこと、やらなきゃいけないことを、ただやってくださいと言うだけ」なんです。
こんなこと言うと少し恥ずかしいですが、私は事例Ⅲで大切と言われるQCDとか試験中ほとんど気にしていませんでした。
設問を適切に切り分け、与件文からC社の「 できていないこと、やらなきゃいけないこと 」を探し、「 やってください」と言う。
シンプルですが、これがちゃんとできれば結果的には自然とQCDの改善に繋がる回答になっているはずです。


事例Ⅲで必要な知識や切り分けの嗅覚は過去問演習を通じて養っていただき、この記事があと一押しの数点アップに繋がればとても嬉しいです。
ぜひ事例Ⅲを安定させて得点源にしてくださいね。


次回はヌノさんの登場です。
お楽しみに!

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