事例Ⅲ、設問から「切り口」と「キーワード」で解答をイメージ byさっと
初めまして。タキプロ13期生のさっとと申します。
13期生として、自分が中小企業診断士合格まで、非常に苦労した分、受験生向けに一つでも有用な情報を提供したいと考えております。
これから、1年間よろしくお願い致します。
目次
■自己紹介:苦労人
・ハンドルネーム:さっと
・年代/性別:40代/男性、既婚
・職業:専門商社で半導体検査装置の技術営業、中間管理職
・大学専攻:電子・電気工学科(理系)
・住所:神戸
・勉強方法:2年間のみ予備校、あと独学
・受験遍歴:1次7回(内5回合格)、2次7回(休止期間省き、概ね10年目で合格)
・得意科目:1次 (5回合格により、得意というより慣れている)
・苦手科目:事例Ⅰ
・好きなもの : お酒、お笑い、M-1
私は多年度生でこの中小企業診断士の合格までに、非常に苦労しています。
受験歴は、1次試験を7回受験(内5回合格)、2次試験を7回受験し、令和3年度でようやく合格。
合格までは、2年間予備校に通い、残り独学で10年程度かかっております。予備校の2年間は集中して勉強していたのですが、1次受け直しのショックにより挫折。うだうだ試験直前に勉強をやり直すスタイルで中々能力が伸びず。
その中でも、2次試験を239点で落ちた時には、もうこの試験に向いていないと撤退を検討しました。
しかし、『ここまでやってきたのだから、合格するまで受け続ける』を自分理念として、七転八倒でようやく合格を掴みとりました。
ひどい状態の時、試験前にモノが机から落ちた際には、『あ、今年も試験落ちたな』と思うほど、負のスパイラル状態でしたが…。
よって、多年度でご苦労されている受験生の気持ちは身をもって分かります。
■2次試験に関して
診断士2次試験は紙上のコンサルティング、ケーススタディと言われています。
1次試験は勉強時間が成績に反映されやすく、2次試験は逆に1000時間勉強したからと言って、成績に反映されるとは言い切れません。
過去にA評価を得ても、以降D評価を受けた方も多くいると思われます。
2次試験内容の詳細説明は省きますが、事例Ⅰ~Ⅳの中でも勉強時間が結果に活きやすいのが、事例Ⅳの次に事例Ⅲと言われており、受験経験を通じて実際にそうと考えます。
■事例Ⅲに関して
事例Ⅲは生産・技術(+営業)を中心とした経営分析・経営課題に関する事例で、製造業のメーカが題材となります。
事例Ⅲは製造業の事例の特性上、事例ⅠやⅡと違い、ある程度解答をパターン化でき、得点の安定化に繋がりやすいと言えます。
そもそも、私は理系出身で、大学では電子・電子工学部を専攻しており、国語や記述系をできるだけ避けていた一人。
そんな者でも、事例ⅢはA評価を多く取っています。
※ 直近の結果は、令和3年の事例Ⅲで71点、令和1年で73点です。(令和2年はコロナ禍で受験せず)
事例の解き方(事例Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)としては、以下の①〜④の手順を使っている方が多いのではないでしょうか?
① 先ず与件分の最初(会社概要)を確認
② 設問解釈 → 切り口やキーワードをメモ、骨子作成、ある程度の解答をイメージする
③ 与件文読み込み → ➁の方向性を元に、与件分から根拠を探す(マーキング、メモなど)
④ 解答記述
事例Ⅲは、練習を積めば、➁の設問解釈で解答内容のイメージ化が可能となります。
これが進めば与件を見なくても、記述できるレベルまで到達します。
(もちろん、与件文との対応付けは必要になりますが)
このイメージ化は、特に本番で何を書いていいか纏まらない方、時間不足になる方への対策や得点の安定化にお薦めな方法です。
■事例Ⅲのノウハウ、設問から「切り口」と「キーワード」で解答をイメージする
では実際に事例Ⅲのノウハウとして、②の設問解釈の段階でイメージする方法を記述します。
これは、自分で『切り口』と『キーワード』リストを頭に設けておき、それを割り当てる感じです。
切り口とキーワードは事例Ⅲの場合、頻出される型が概ね決まっており、分かりやすいと考えます。
※ 切り口とは
『切る手並み。また、方法。物事を批判したり分析したりするときの、着眼や発想のしかたなど』
出展:デジタル大辞泉(小学館)
深く考えると難しいので、切り口≒キーワード的な感覚で捉えれば良いでしょう。
無論、100点満点が取れれば理想ですが、60点を目指す解答を心がけます。
なので、細部にこだわらないことが必要です。
こだわると何を書いて良いか纏まりがつかず、時間不足になることや、解答を絞り込んで100点を目指せば、逆に大外しするリスクもあるため。
例:
a) 生産計画をガントチャートで進捗管理し
→ 生産計画を月次から週次化し (ガントチャートなどの細部こだわりは不要)
※ 生産計画のことをあまり知らなくても、60点レベルの解答ができればOK。
b) SLPでスペース相互関係ダイヤグラムを整備し、レイアウトを最適化
→ SLPで作業スペースを見直し、レイアウトを最適化 (スペース相互関係ダイヤグラムなどの細部こだわりは不要)
また、事例Ⅲは事例企業の問題点や改善点が多く、80分間で設問の切り分けが困難により、『もれなくダブりなし(MECE)』でかたくなりすぎず、『もれなくダブりあり』の精神で取り組みます。
では実例を以下に記述します。設問は、令和2年の事例Ⅲを使用します。
■事例Ⅲ 「切り口」、「キーワード」リスト
事例Ⅲの『切り口』、『キーワード』リスト(例)となります。リストの内容は自分で作成・改訂する過程で定着していきます。
項目 | 意味 | メモ |
SWOT | S(強み), W(弱み),O(機会), T(脅威) | SとWは、生産技術面・営業(経営)面で検討 (最初の設問に多い) |
SWOTのS | S(強み) 生産技術面・営業(経営)面 | 高品質・精度、特殊技術、独自、ノウハウ蓄積、一貫生産体制、専業体制 |
人材力(ベテラン、教育)、一括受注、研究開発力、提案営業力、新規開拓力 | ||
SWOTのW | W(弱み) 生産技術面・営業(経営)面 | 納期遅延、高コスト、品質管理不備、未標準化(技術員の能力差)、 |
外部に依存、低収益、生産管理体制の未熟 | ||
営業部門の課題 | 営業部門(力)が無い/弱い、連携不足、業務負荷増、顧客やり取りに時間要す | |
成長戦略 | 成長に向けた企業の進むべき道、あるべき姿 | SをOにぶつける、Wの克服 (最終の設問に多い)、差別化、高付加価値化 |
QCD | Q(品質), C(コスト), D(納期) | 定番、C(コスト)とD(納期)に問題あることが多い |
生産計画 | いつまでに、どれくらいの量を生産するのか | 全社的に策定、計画の短縮化、修正の機会、精緻化、製作/調達計画と連動 |
生産統制 | 進度, 余力, 現品管理 | 生産計画を精緻化し、生産統制を徹底 (在庫管理、作業進捗管理、標準化など) |
ECRS | E(排除), C(結合と分離), R(入替), S(簡単化) | 作業効率向上、工程・業務改善 (E←C←R←Sの順で効果高) |
5S | 整理・整頓・清掃・清潔・躾 | 作業場整理、移動容易化、作業効率向上、ムリ・ムラ・ムダ改善、 |
在庫管理 | 必要なときに、必要な量を、必要な場所へ供給 | 発注サイクルの見直し(定期・定量など)、管理ルール化、ABC分析 |
リードタイム | 工程着手~工程や納品完了までの時間 | 生産リードタイム、納品リードタイム短縮、納期遅延解消 |
4M | 人, 機械, 材料, 方法 | 製造工程の効率化、品質管理/調達方法適正化、多能工、標準化、保全 |
VE | 価値 = 機能 / コスト | 設計/製造方法変更、部材共通化、コスト低減、付加価値(機能)向上 |
SLP | 工場レイアウトの適正配置と流れを計画 | レイアウト最適化、作業/運搬/生産効率の向上、個別受注生産(PQ分析) |
作業管理 | 作業方法の分析、改善、標準作業と時間の設定 | マニュアル化、標準化、教育(OJT)、作業バラつき削減 |
保全活動 | 設備性能を維持するための活動 | 事後保全を予防保全化、設備の故障、停止を防ぐ |
受注生産 | (生産時期)注文を受けてから製品の製造に取りかかる | リードタイム短縮、CとDの見積精度向上、稼働率増、平準化が必要 |
見込み生産 | (生産時期)注文前に生産、在庫保有し注文に応じて出荷 | 過剰在庫や売れ残りリスク回避、生産計画と連動が必要 |
ロット生産 | (生産方式)複数の製品を交互に生産、品種変更 | ロットサイズの最適化、段取替え時間短縮(外段取り化、作業標準化など) |
連続生産 | (生産方式)同一製品を一定期間続けて生産 | 生産効率は良い、作りすぎ/在庫過多/生産量の適正化 |
内外製作区分 | 自社で作るか、他社に外注するかの判断 | 外注時:QCD管理、関係性構築、自社主導、自社コア集中強化 |
OEM | 他社ブランドの製品を受託製造 | 自社ブランド育成、販売チャネル構築、依存度の低減が必要 |
ファブレス化 | 自社工場を持たずに生産を行う | 初期費用小で新規参入、需給調整やリソース集中が可、QCD管理を要徹底 |
DRINK | D(データベース)、R(リアルタイム)、 I (一元管理)、N (ネットワーク)、K(共有化) | IT系の問題で使用。DB構築しリアルタイムで共有、全社(部門間)で一元管理。 作業手順や工数の標準化、生産計画/生産統制への利用、CAD。 |
CAD、CAM | CAD:PC等で図面作成、 CAM:CADデータを元に作業を機械へ指示するSW | CAD:データ共有、DB化で設計業務や営業業務を効率化、納期短縮、3DCAD CAM:4M最適化で作業効率向上、リードタイム短縮 |
コンカレントエンジニアリング | CADデータ等の電子データを全体共有、製造~販売の統合化、同時進行化 | 生産・納品リードタイムの短縮化、製造コスト削減 |
MRP | 生産計画、在庫量等から資材の必要量と時期を計画 | 資材発注量の適正化、在庫量の最適化、資材発注コスト低減 |
■令和2年の事例Ⅲを使用した実例
◇ 令和2年事例Ⅲ 第1問
【第1問】
C社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。
ここは、第1問で良く出題されるSWOT分析です。事例Ⅲの中小企業製造業の場合は、品質面(Q)、納期面(D)に強みがあり(Qが多い)、納期面(D)、コスト面(C)で弱みや問題点を持っているケースが大半かと思います。
強み:生産・技術面(QCDベース)、営業(経営)面の強み
弱み:生産・技術面(QCDべース)、営業(経営)面の弱み(営業面に強みがあれば、除外)
『切り口』、『キーワード』リストから解答を想定、何も見なくても以下のような感じの回答が反射的にイメージできればOK。
もちろん、与件文との対応付けは最重要で、必須です!
※ 切り口、キーワードリストより:
(強み) 高品質・精度、特殊技術、独自、ノウハウ蓄積、一貫生産体制、
専業、人材力(ベテラン、教育)、一括受注、研究開発力、提案営業力
(弱み) 納期遅延、高コスト、品質管理不備、未標準化(技術員の能力差)、
外部に依存、低収益、生産管理体制の未熟
例:解答イメージ (設問を見ただけで、こんな感じの解答が頭に浮かんだらOK)
強み:独自の技術ノウハウで、高品質な加工を実現し、設計から生産までの一貫体制を有すこと。
弱み:未標準化で技術員の能力差や、生産管理体制の未熟により、コストの上昇や納期遅延が発生。
◇ 令和2年事例Ⅲ 第2問
【第2問】
C社の大きな悩みとなっている納期遅延について、以下の設問に答えよ。
大きな悩み①:納期遅延のボトルネック、納期遅延がC社全体にどう影響しているかを意識
大きな悩み②:わざわざ大きな悩みと書いてあるので、Q1の弱みにつながる可能性を意識
(設問1)
C社の営業部門で生じている(a)問題点と(b)その対応策について、それぞれ60字以内で述べよ。
※ 切り口、キーワードリストより:
営業部門(力)が無い/弱い、連携不足、業務負荷増、顧客やり取りに時間要す
例:解答イメージ (設問から)
a) ①営業部門体制の不足で、各担当の業務負荷が高いこと、②顧客とのやりとりに時間を要し製作期間が長いこと
b) ①営業部門の強化や情報共有、連携で業務負担を軽減し、②顧客とのやりとりの時間を短縮し、納期を遵守すること
→ 対応策は問題点の裏返しで記述をイメージ (60点の解答を目指す)
(設問2)
C社の製造部門で生じている(a)問題点と(b)その対応策について、それぞれ60字以内で述べよ。
製造部門の問題点は山ほどイメージできそうですね。
製造部門の問題点:
生産計画、発注サイクル、資材管理、不稼働、工数、散財、作業方法(順序、作業スペース、未標準化、能力差)、在庫過多など
→ 切り口、キーワードが多岐に渡るので、色々文章イメージがつきそうです。
例:解答イメージ (設問から)
a) ①生産計画が月次作成により非効率、②作業員の能力差、作業スペースの不足、工数や作業順序の未整備で製作期間が長い。
対応策:
生産計画の短縮・修正の機会、生産統制、発注サイクルの適正化、資材管理の、外段取り化、工程順序や工数見積のルール化、OJT、
作業方法の標準化・マニュアル化、5Sの徹底、SLPなど
→ 切り口、キーワードが多岐に渡るので、色々文章イメージがつきそうです。
例:解答イメージ (設問から)
b) ①生産計画の週次にし修正の機会を設けて精緻化、生産統制の徹底 ②作業員能力差を無すためOJT実施、③工程順序の標準化、④SLPや5Sで作業スペースを整備。
◇ 令和2年事例Ⅲ 第3問
【第3問】
C社社長は、納期遅延対策として社内のIT化を考えている。C社のIT活用について、
中小企業診断士としてどのように助言するか、120字以内で述べよ。
助言系→ 期待効果まで記述
『もれなし、ダブりあり』で検討(無理に切り分けない(60点を目指す))
※ 切り口、キーワードリストより:
IT化:DRINK、CAD、コンカレントエンジニアリング
例:解答イメージ (設問から)
助言は、①生産計画や現品、進捗、余力の生産統制情報を一元化、②作業方法や工程順序の標準化、③CAD情報のDB化を行い、リアルタイムで全社共有することで、製造から営業の同時進行化を図り、リードタイム短縮、納期を遵守する。
◇ 令和2年事例Ⅲ 第4問
【第4問】
C社社長は、付加価値の高いモニュメント製造事業の拡大を戦略に位置付けている。
モニュメント製品事業の充実、拡大をどのように行うべきか、中小企業診断士として120字以内で助言せよ。
充実面:(質、内面) 現状の体制を充実など
拡大面:(量、外面) 新規体制構築、販路(売上)拡大など
→ 本試験で細部にこだわると時間オーバーになるため、注意
助言:期待効果まで
※ 切り口、キーワードリストより:
成長戦略:SxO、Wの克服(Q1やQ2と連動)、競争優位/差別化、高付加価値
例:解答イメージ (設問から)
独自の技術ノウハウや高品質な加工技術、設計から生産までの一貫体制を活かして、(〇〇という機会)に対応し売上拡大を図る。そのために、①工程手や作業手順を標準化や生産体制の整備でコスト低減、納期遅延を解消。②営業部門強化で技術提案力を強化、新規開拓を促し、高付加価値で差別化を図る。
■まとめ
・60点を目指す解答には、細部へのこだわりは不要。設問間で『もれなく、ダブりあり』で記述する
→ あくまでも試験対策として割り切る
・『切り口』、『キーワード』リストを自分で設けており、設問を見ただけでどの切り口を使用するか、あてはめていく
→ 本リストは定着させるため、自分の手で作り、都度ブラッシュアップが必要
・設問を見ただけで、解答構成がイメージできるまで繰り返しトレーニングする
→ 国語、記述が苦手な方でも点数安定化
イメージして、与件文を読み込み内容を編集(肉付け)する
■おわりに
次回はまなをさんの登場です。
お楽しみに!
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