[小ネタ][財務・会計] ROA, ROEとは?

中小企業診断士を目指す皆様、おはようございます。がんちゃん/岩間 です。

今日はまずはクイズです。

  1. ROAの “R” は “Return (利益)” の略ですが、どの種類の利益を指すでしょうか? (総利益?営業利益?事業利益?経常利益?純利益?)
  2. ROEの “R” も利益を指しますが、どの種類の利益のことでしょうか?
  3. なぜROAとROEでは異なる種類の利益を使うのでしょうか?
  4. ROEを上げるにはどうしたらよいでしょうか?
    また、これはROAがどういうときに成り立つでしょうか?

分かりましたでしょうか?(「1や2は覚えていたけれど3や4は難しい」という方が多いかもしれません)

ROAやROE は、イメージが湧きづらい領域かもしれません。そこで本記事では、ROAやROEについて例えを交えて説明します。

(※本記事ではアナロジーを用いることにより、厳密性に欠ける部分があります。ご了承ください。)

 

◆例

あなたは小さい会社の社長です。

  • パートタイマー1人を雇っています。
  • 【稼ぎ】
    会社全体では毎月50万円を稼いでいます。
    そのうち、パートタイマーには毎月10万円を支払い、あなた(社長)は毎月40万円を得ています。
  • 【労働日数】
    あなた(社長)毎月20日働き、パートタイマー毎月10日働いています。

稼ぎと労働日数について、図にまとめると次のようになります。

【毎月の稼ぎ】   【毎月の労働日数】
会社の利益 50万円 パートタイマーに支払う金額 10万円   会社全体 30人日 パートタイマー 10人日
あなたの手元に残る金額 40万円 あなた 20人日

そして、このように「稼ぎ」と「労働日数」を並べると、「1人1日あたりにどれだけ稼いでいるか」についても興味が出てきます。(この記事ではこれを「稼ぎ率」と呼ぶことにします)
⇒計算してみると次のようになります。

【稼ぎ率】
(1人1日あたりにどれだけ稼いでいるか)

会社全体

 50万円÷30人日
1.7万円/人日

パートタイマー

 10万円÷10人日
1万円/人日

あなた

 40万円÷20人日
2万円/人日

あなたは会社全体を見る役割をしているので、パートタイマーよりも稼ぎ率は大きいです。会社全体の稼ぎ率は、あなたパートタイマーの中間になっています。)

 

◆財務の概念に置き換えてみます

まず、パートタイマーの労働日数(10人日)を負債あなたの労働日数(20人日)を自己資本と読み替えます。すると、会社全体の労働日数(30人日)は総資本になります。

そして、

  • 会社の利益(50万円)は事業利益に相当します。
  • パートタイマーへの給与(10万円)は支払利息に相当します。
    負債に対して支払う対価であると考えられるためです)
  • あなたの手元に残る金額(40万円)は純利益に相当します。

利益

 

資本構成

事業利益

50万円

支払利息

10万円

 

総資本

30人日

負債

10人日

純利益 40万円 自己資本 20人日

そして、さきほど計算した「稼ぎ率:1人1日あたりにどれだけ稼いでいるか」は、総資本自己資本 それぞれに相当する利益や、負債に対する利息になります。

  • 総資本がどれだけの(事業)利益を稼ぐか
    総資本事業利益率(ROA; Return<利益> on Assets<総資本>)
  • 自己資本がどれだけの(純)利益を稼ぐか
    自己資本利益率(ROE; Return<利益> on Equity<自己資本>)

総資本事業利益率
(ROA)

 50万円÷30人日
1.7万円/人日

負債の利子率

 10万円÷10人日
1万円/人日

自己資本利益率
(ROE)

 40万円÷20人日
2万円/人日


◆財務レバレッジ効果とは?
(1) ROEを高めるには負債比率をどうすべき?

この例をもとに、「ROEを高めるには、負債比率をどのように変えれば良いか?」について考えてみましょう。

ROEとは「あなたの稼ぎ率:1人1日あたりにどれだけ稼ぐか」でした。あなたの稼ぎ率を増やすには・・・「あなたの労働日数を減らしてパートタイマーの労働日数を増やす」のが有効です。
⇒ですので、ROEを高めるには負債比率を上げれば良いのです。

具体的に確認してみましょう。

  • あなたの労働日数を20人日→10人日に下げ、パートタイマーの労働日数を10人日→20人日に上げることにします
    (負債比率は50%→200%に増えます)。
  • すると、パートタイマーに支払う金額(支払利息)が上がります。これによりあなたの手元に残る金額(純利益)が下がります。
  • しかし、あなたの稼ぎ率(自己資本利益率)は2万円/人日→3万円/人日に上がります。
【毎月の稼ぎ】
(利益)
  【毎月の労働日数】
(資本構成)
  【稼ぎ率】

会社に入る金額(事業利益)

50万円

パートタイマーに支払う金額(支払利息) 10万円
↓増↓
20万円
  会社(総資本) 30人日

パートタイマー(負債)

10人日
↓増↓
20人日

  会社全体(ROA) 1.7万円/人日 パートタイマー(負債の利子率) 1万円/人日

あなたの手元に残る金額
(純利益)

40万円
↓減↓
30万円

あなた(自己資本) 20人日
↓減↓
10人日
あなた(ROE) 2万円/人日
↓増↓
3万円/人日


◆財務レバレッジ効果とは?
(2) 例外:会社が儲かっていない場合は・・・

さて、「ROEを高めるには負債比率を上げれば良い」というのには例外もあります。それは、会社全体があまり儲かっていないとき、すなわちROAが低いときです。

例えば、会社としては0.5万円/人日しか利益が出ていないのに、パートタイマー1.0万円/人日支払っていたら、パートタイマーの比率を増やしたらあなたの稼ぎ率(ROE)は下がってしまいます。

→ですから、「ROEを高めるには負債比率を上げれば良い」には、「ROA負債の利子率だったら」という条件がつくのです。


◆余談(公式の導出)

ROE=ROA+(ROA−負債の利子率)×負債比率 という公式も、実はすぐに導出することができます。数式が得意という方は、式や結果を丸暗記するのではなく、必要になった時に都度導出することをお勧めします。(以下、負債の利子率を i, 負債を D, 自己資本を E と表します)

 事業利益支払利息純利益
 (↓それぞれの項を、ROAiROEで表します↓)
ROA×(DE)=i×DROE×E
 (↓ROEを独立化します。
   ゴールの式が「ROE=」で始まるからです↓)
ROEROA×(DEEi×D÷E
 (↓上式の下線部を展開します↓)
ROEROA×D÷EROAi×D÷E
 (↓上式の下線部をまとめます↓)
ROEROA+(ROAiD÷E

※なお、ここでのROEは「税引前当期純利益」ベースとしました。ROEを「税引後当期純利益」ベースとする場合には、最後の式に 1−税率 を掛けます。


◆まとめ

ここまでの話の流れをイメージとして持っておけば、冒頭の質問の答えも直感的に答えられると思います。

  1. ROAの”R”は、どの利益のことでしょうか?
  2. ROEの”R”は、どの利益のことでしょうか?
  3. なぜROAROEでは異なる利益をベースにするのでしょうか?
  4. ROEを上げるにはどうしたらよいでしょうか?
    また、これはROAがどういうときに成り立つでしょうか?

最後に今日の流れをもう一度振り返ります。

  1. 財務諸表上の負債自己資本を、次のように見なしました。
    • 負債パートタイマーの労働日数
    • 自己資本あなた(社長)の労働日数
  2. これにより、負債の支払利息や純利益を、次のように見なせました。
    • 負債の支払利息パートタイマーへの給与
    • 純利益あなた(社長)の収入
  3. そして、ROA, ROEなどは次のように見なせました。
    • ROA会社全体の稼ぎ率
    • 負債の利子率パートタイマーの稼ぎ率
    • ROEあなたの稼ぎ率
  4. ROE(あなたの稼ぎ率)を高めるには、パートタイマーの労働日数を増やし、あなたの労働日数を減らせば良いので、負債比率を上げればよいことが分かりました。
  5. しかし、これは、ROA(会社の稼ぎ率)負債の利子率(パートタイマーの稼ぎ率)より大きい場合に限ります。

 

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以上、がんちゃん/岩間でした。

 

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