将来キャッシュ・フロー

こんばんは。ごとりん@たきぷろ6期です。一次試験が目前にせまってきましたが,この時期は基礎・基本を再確認しておくとともに,見慣れない問題が出てもあわてずに一つの流れを作っておくと本番では強いと思います。さて,今回も簡単な問いを用意いたしました。

繰延税金資産の回収可能性が低くなると,一般に企業の株価が低下するというのは正しいでしょうか。あるいは間違っているでしょうか。

そもそも繰延税金資産とはなんだろう…という疑問がわいてくるかもしれません。これは,将来の税金を節約できる効果を資産として計上したものです。現在の会計では,資産の本質は将来キャッシュ・フローとみなしています。倉庫に商品が積んであれば,それは将来売却できるので資産性があります。また企業の土地や建物は長期にわたって利用することで,間接的に将来キャッシュ・フローとなります。
企業が赤字を計上しても,一定の年度にわたる累積損失(繰越欠損金といいます)は将来黒字になったときに課税額から控除することが認められています。つまり,税金として支出するお金を節約する効果があるので,将来キャッシュ・フローの増加とほぼ同じとしてとらえることができるわけです。
ただし,そうした繰延税金資産の資産性が認められるためには,将来の一定時点で,その企業が黒字にならなければなりません。そもそも節税効果を資産として計上したわけですから,税金を納付する可能性がなくなれば,資産性は一気に失われ,費用処理しなくてはならなくなります(そのため,繰延税金資産を計上した企業は,毎期将来の回収の見込みについて見直さなければならない旨が定められています)。
そこでこの問題なのですが,繰延税金資産の回収可能性が失われるということは,言い換えれば企業の業績が思わしくなく,黒字になる可能性が減少しているということになります。業績が低下する見込みが高いわけですから,アナリストや投資家は当然その企業の株式を買わなくなるでしょう。その結果,企業の株価は下降傾向になるといえます。したがって,この問題の命題は「正しい」といえます。

このとき回答を丸暗記するよりも,この他に応用できないか…といろいろ考えてみることをお勧めします。たとえば,「繰延税金資産の回収可能性が低くなる」→「黒字になる見込みが低い」ということであれば,貸倒引当金のような評価性引当金を積み増しして,経営の安全性を確保する必要があるといえるかもしれません。また単純に原価管理や原価低減を図る必要性があるともいえるでしょう。基礎となる考え方がある程度確立していれば,多少問題がひねくれていても,ある程度は本番で対応できるという一つの例です。本番まであと少し,がんばってくださいね。

 

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