「与件に忠実に」は本当か?〜91点の答案を見ながら〜 by なー
読者のみなさん、こんにちは。
タキプロ15期の なー と申します。
目次
■はじめに
お久しぶりです。
タキプロ15期のなーと申します。
自己紹介は過去のブログをご確認ください。
「与件に忠実に」「与件の言葉を使って回答」とよく言われますが、本当に与件に忠実である方がいいのでしょうか?
タイトルにもありますが、令和5年事例Ⅰで91点を取ることができたので、この再現答案を用いて検証していきたいと思います。
本当は色々な点数の再現答案などと比較したかったのですが、時間の都合上91点の答案のみの集計となることをご了承ください。
その代わりと言ってはなんですが、試験中に私が考えていたことも書いていきます。(記憶がある限り)
※この記事はR5年事例Ⅰの内容を引用しながら書いています。ネタバレを避けたい方は、R5年事例Ⅰを解いてから読んでください!
■「与件に忠実に」について
私は2次試験を2回受け、それぞれで使用した予備校がことなります。
また、オプションとして複数の予備校も活用しており、オプションを含めると、4つの予備校を使用していました。
この4つ全ての予備校が、「与件に忠実に」「与件に言葉を使って」といったことを教えていました。
4つの予備校が言ってるんだから信憑性は高いのですが、定量的に証明されたものを見たことがないです。(すでにあるのかもしれませんが、私は見たことがないです)
てことで、自分でやってみようと思いました。
なお、「与件に忠実に」は事例Ⅰに限ったものではないと思いますが、個人的には4事例の中で一番忠実にすべきなのが事例Ⅰだと思います。
事例Ⅱはいつも与件にないことを書かざるを得ないことがある気がする。
事例Ⅲは対応策を求められることが多いため、与件よりも知識の比重が重い気がする。
事例Ⅳはいわずもがな。
■ルール
①与件文に回答と同じ(もしくは同義)の文章があるかを数える。(文字数)
②「与件の文章を使った文字数」÷「回答文字数」により、「与件率」を算出する。
ex)100字の回答のうち60字が与件の言葉であれば、与件率は60%となる。
③「てにをは」「、」「。」レベルまでは深く考えない(作業簡略のため、含めたり含めなかったりします。すみません)
■第1問(強み) 89.7%
回答(29文字)
①自前のコシの強い蕎麦②高いサービス③自主的に助け合う風土
与件文
2段落目1行目:「自前で打っており、コシの強い蕎麦」
7段落目6行目:「サービスの質を高めることで、差別化を行った。」
8段落目9〜11行目:「チームとして相互に助け合う土壌が生まれ、従業員が定着するようになった。とりわけ接客においては、自主的に問題点を提起し解決するような風土が醸成されていた。」
回答29文字に対し、26字が与件です。
与件率は、
26÷29=89.7%
です。(×100の計算は省略)
※とはいえ、残り3文字は「①②③」なので、実質100%ですが、、、
試験中考えてたこと
風土とサービスは絶対入れる。
蕎麦は事例Ⅰっぽくないけど、最後に活かせそうやから書いとこ。
■第1問(弱み) 78.6%
回答(28文字)
①原材料の仕入れ先不安定②新たな顧客層を取り込めていない
与件文
7段落目7行目:「原材料の仕入れが不安定」
9段落目4行目:「新たな顧客層の取り込みがますます重要」
回答28文字に対し、22字が与件です。
与件率は、
22÷28=78.6%
です。
試験中考えてたこと
原材料価格高騰まで書きたいけど、文字数的に難しい。
「地元顧客の高齢化」やと脅威っぽくなってしまうから、弱みっぽく書く。
■第2問 70%
回答(100文字)
差別化は①総花的・非効率メニュー見直し②出前廃止③客層絞り込み④オリジナルメニュー開発⑤サービスの向上で差別化。狙いは、経営資源を集中しターゲットを絞り高付加価値な商品提供で差別化し売上高を拡大する。
与件文
5段落目4行目:「総花的なメニューを見直し、この店にとってはオペレーション効率の悪い丼もの」
5段落目5行目:「出前をやめて来店のみの経営」
7段落目2行目:「メインの客層を地元のファミリー層に絞り込んだ」
7段落目5行目:「看板となるオリジナルメニューを開発」
7段落目6行目:「サービスの質を高めることで、差別化を行った」
5段落目6行目:「蕎麦に資源を集中」
7段落目2行目:「メインの客層を地元のファミリー層に絞り込んだ」
7段落目6行目:「サービスの質を高めることで、差別化を行った」
5段落目2行目:「売上高拡大のための」
回答100文字に対し、70字が与件です。
与件率は、
70÷100=70.0%
です。
試験中考えてたこと
え〜、、、
差別化の内容は5段落と7段落どっちの内容書くべき、、、?
全部書くのは文字数的に無理や。
7段落っぽいけど、怖いからリスク分散で半々くらいにしとこ。
狙いは5段落の2行目に「売上拡大のためのさまざまな施策」ってあるから、「売上拡大」が狙いやな。
あと、5段落の最後に「蕎麦に資源を集中」ってある。これ回答に使って欲しそう。「経営資源の集中」やな。
■第3問 72.8%
回答(92文字)
留意点は①接客やサービスが省力化されている②従業員間の横のつながりが少なく意思疎通がとれていない、等A社の戦略や風土と異なる点。また、離職率が高く、統合に不安を感じる従業員がいること。
与件
11段落目4行目:「接客やサービスは省力化されてきた。」
11段落目8行目:「厨房、接客、管理の従業員は担当業務に専念するのみで横のつながりが少なく、淡々と日々のルーティンをこなしている状況であった。店舗レイアウトやメニューの変更などの担当を横断する意思疎通が必要な場合、X 社経営者がそれを補っていた。」
12段落目10行目:「離職率も高く」
13段落目3行目:「経営統合にともなって、不安になった X 社の正社員やアルバイトから退職に関わる相談が出てきている。」
回答92文字に対し、67字が与件です。
与件率は、
67÷92=72.8%
です。
試験中考えてたこと
でた〜、留意点、、、
第4問で助言させてるから、ここは問題提起するだけでいいかな?
設問的に、X社の悪いところを挙げていくべきか。
てか、A社とX社って色々違うよな〜。
サービスとか組織風土とか。
統合するんやし、相違しているところは留意すべきやね。
第7,8段落と第11段落って、「接客サービス」「組織風土」について対比的に書かれてる気がするから、これらを回答にしよ。
最終段落で不安を抱えてる従業員出てきてるから、これも問題提起してあげよう。
■第4問(1) 60.3%
回答(78文字)
接客リーダーにX店を任せ、会社の目指す方向性を明確にし、目的意識の共有や意思疎通の統一を図り、横のつながりを作り、組織活性化、貢献意欲向上により定着を図る。
与件
8段落目7行目:「接客リーダーとともに会社として目指す方向性を明確にし、目的意識の共有や意思の統一を図る」
11段落目8行目:「厨房、接客、管理の従業員は担当業務に専念するのみで横のつながりが少なく」
8段落目9行目:「チームとして相互に助け合う土壌が生まれ、従業員が定着するようになった。」
回答78文字に対し、47字が与件です。
与件率は、
47÷78=60.3%
です。
試験中考えてたこと
「どのように」組織の統合を進めるか?やから、「具体的な方法」を聞かれてるんだろうな〜。
第3問で提起した問題を回収する感じかな?
第4段落で「厨房を担当していた数名の正社員も独立〜」って書いてて、
第8段落で「接客リーダーは自分の店を持ちたい」って言ってるから、これは退職リスクか?
じゃあX社の店を接客リーダーに任せると、退職防止できるか。
あと、接客リーダーは過去にA社経営者と「会社としての目指すべき〜」「目的意識共有」「意思の統一」「相互に助け合う土壌」とかやってて、対してX社は「横のつながりがなく」「意思疎通がない」状況なので、接客リーダーの過去の成功体験を活かせそう。
特に「意思」という文言が第8段落にも第11段落にも出てきてるから、絶対書いたほうがいい。
で、不安を抱えてるX社の従業員についても、第8段落で「従業員が定着するようになった」って言ってるから、今回も定着に繋げられそう。
全体的に「共通目的・貢献意欲・コミュニケーション」の組織の3要素についての内容になりそうやから、「貢献意欲」って書いとこ。
■第4問(2) 49.5%
回答(99文字)
競争戦略は、高品質な原材料で大手外食と差別化し、両社のシナジーを発揮する差別化戦略とする。成長戦略は、強みの蕎麦で商品開発し公共交通機関を利用する外国人観光客等の新たな顧客を取り込む新市場開拓戦略。
与件
11段落目6行目:「地元産の高品質な原材料をも扱う生産」
7段落目5行目:「近隣の競合する外食店とは異なる、商品とサービスの質を高めることで、差別化を行った。」
5段落目5行目:「元々の看板であった蕎麦」
7段落目5行目:「オリジナルメニューを開発し、」
13段落目1行目:「地域の食べ歩きを目的とした外国人観光客や若者が増え始めた。とりわけ SNS の口コミやグルメアプリを頼りに、公共交通機関を利用する来訪者が目立つようになった。」
9段落目4行目:「新たな顧客層の取り込みがますます重要」
回答99文字に対し、49字が与件です。
与件率は、
49÷99=49.5%
です。
試験中考えてたこと
え〜、、、競争戦略や成長戦略かぁ、、、
どっちも書くべき?○○戦略とか明確に書くべき?
迷う要素が多い、、、
時間もないから無難に両方明確に書いていこ。
競争戦略は差別化戦略の一択やな。
成長戦略は微妙、、、
メニュー開発するという意味では新商品?
顧客層も外国人観光客とか若者がでてくるから、新市場?
両方あるから多角化?
いや、さすがに多角化と言うほど大々的な転換でもない。
「蕎麦」という面では変わっていないから、新商品ではない、ってことにしよ。
よし、新市場開拓戦略にしよ。
あとはよくある「シナジー」とか念の為書いておこう、、、
■まとめ
回答文字数:29+28+100+92+78+99=426文字
与件文字数:26+22+70+67+47+49=281文字
与件率:281÷426=66.0%
だいたい6〜7割くらいが与件からひっぱってきていることがわかりました。
逆に言うと、3〜4割が知識や「シナジー」とか「組織活性化」のよくあるワードの内容になってるみたいです。
ネットに転がっている再現答案を眺めていると、やっぱりA評価以上は与件の内容が多い印象でした。
逆に、C,D評価は、与件と関係のない文章が多く、「本当にこの事例企業について回答してるのか?」と思うものが多かったです。
国家試験である以上、解答は、「勉強した人の誰もが回答できる内容」でなければならないと思います。(突拍子のないアイデアを聞かれているのではない)
そう考えると、「与件に忠実に」でなければ、「勉強した人の誰もが回答できる内容」を導くことは不可能だと思います。
総括
やっぱり与件は大事
■おわりに
今回は「与件に忠実に」について検証してみました。
冒頭でも書きましたが、本当はA評価とそれ以外でもっとサンプル数増やして集計すべきですが、時間の都合上ご了承ください、、、
では、このブログがみなさんのお役に少しでもなれば幸いです!
次回は、しゅうすけ さんの登場です。
お楽しみに!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
↓下のボタンを押して、読んだよ! と合図していただけると、とっても嬉しいです。
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高得点解答の分析ありがとうございます。
与件のどこを利用されたのかがよくわかりました。
実際に与件文のどこにマークを引かれたのかも知りたいです。
返信遅れて申し訳ございません。
画像を添付したいのですが、コメントへの返信ではできないようなので、方法検討させてください。
しばらくお待ちください。
本日のブログで与件について投稿しました。
お待たせして申し訳ございませんでした。