[1次] 経済でプラス4点を稼ぐコツ (H25年度)
中小企業診断士を目指す皆様、おはようございます。がんちゃん/岩間 です。
経済学・経済政策が取っ付きにくい科目である理由には、
- 見たことがない問題が出る
- 何を言っているか分からない問題が出る
- どう計算したらよいか分からない問題が出る
ということがある思います。
しかし、そのような問題の中には、見方を変えてみると容易に解けるものもあります。
そこで今回は、そういった問題に対処するコツを、平成25年度の試験問題から3問を例に取りながら、お伝えします。
(扱う設問:第10問、第11問、第15問)
設問(グラフや選択肢も)、解説・解答 も載せていますので、解きながら進めてみてくださいね。
◆まずは3問を解いてみましょう(目安:6分)
(1)第10問 実質貨幣鋳造収入は、実質貨幣残高と期待インフレ率の積に相当する。期待インフレ率の変化が実質貨幣鋳造収入に与える影響に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。 a 期待インフレ率の上昇は、実質貨幣残高1単位あたりの実質貨幣鋳造収入を引き上げる。 [解答群] (出典:中小企業診断士 平成25年度 第1次試験問題 経済学・経済政策 8ページ) |
(2)第11問 いま、2種類の生産要素、資本Kと労働Nを用いて、生産量Yが産出されている。次の生産関数は、労働1単位あたりの資本と労働1単位あたりの生産量との対応関係を表している。 ここでk=K/Nは資本・労働比率を、y=Y/Nは労働1単位あたりの生産量である。また、労働成長率nは所与であり、常に完全雇用が実現しているとする。また、人々は所得の一定割合sを常に貯蓄するとする。 下図の新古典派の経済成長モデルを参照した上で、労働成長率nの低下と貯蓄率sの低下、それぞれが定常状態における労働1単位あたりの生産量に与える影響に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。ただし、k1は定常状態の資本・労働比率を表している。 [解答群] (出典:中小企業診断士 平成25年度 第1次試験問題 経済学・経済政策 9ページ) |
(3)第15問 いま、下図のような線形の需要曲線ABを考える。需要曲線AB上の点Lは、線分OMと線分MBの長さが等しくなるような線分ABの中点である。需要曲線AB上の点Kは、点Lにより左に位置している。 需要曲線の価格弾力性εの絶対値|ε|は、価格をp、数量をxとし、価格が微少にΔpだけ増加したときの数量の微少な変化分をΔxとすれば、|ε|=(Δx/x)/(Δp/p)=Δx/Δp・p/x と書き表すことができる。この需要曲線に関する説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。 [解答群] (出典:中小企業診断士 平成25年度 第1次試験問題 経済学・経済政策 14ページ。ただし、分数は/記号等により表記) |
いかがでしょうか?
では、各問題について、解き方を説明したうえで、対処するためのコツをお伝えします。
(まだであれば、6分間時間を取って考えてみましょう)
◆解説&コツ(1)<第10問>
設問文に、「実質貨幣鋳造収入」、「実質貨幣残高」、「期待インフレ率」といった見慣れない概念が出てきており、戸惑ったかもしれません。
しかし、これらの概念を知らなくても、解答に至ることができます。
【解説】
これらの用語を隠して、再度設問を読んでみます。
(以下では、[-1-]、[-2-]、[-3-] という文字で隠して、設問を再掲します)
第10問 [-1-]は、[-2-]と[-3-]の積に相当する①。[-3-]の変化が[-1-]に与える影響に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。 a [-3-]の上昇は、[-2-]1単位あたりの[-1-]②を引き上げる。 [解答群] |
これだけの情報から、次のように解くことができます。
- aとbについて
- 設問文の①の部分から、[-1-]=[-2-]×[-3-] と分かります。
- すると、選択肢の②の部分の「[-2-]1単位あたりの[-1-]」は、[-1-]÷[-2-] となりますので、[-3-] に等しくなります。
- 従って、[-3-] が上昇すると、②「[-2-]1単位あたりの[-1-]」も上昇します。
⇒aは正しく、bは誤りです。
- cとdについて
- 選択肢の③の部分について
名目金利が上昇すると、債券需要が増加するため、貨幣需要が減少します。
⇒cは誤りで、dは正しいです。
- 選択肢の③の部分について
- ⇒従って、イが正解です。
この設問は、「設問文に書かれている用語を知らなくても正解にたどり着ける」という設問でした。
【コツ】
- 知らない用語ばかりが出てきたら、いったん無視して読み進めてみましょう。その用語を理解しなくても、解ける場合があります。
⇒試験中は、捨ててしまう(知らないと割りきって勘でマークする)前に、「用語が分からなくても解けるのでは?」という気持ちを持って読んでみることをお勧めします。
◆解説&コツ(2)<第11問>
続いて2問めです。
概念や変数がたくさん出てきて、戸惑ったかもしれません。しかし、設問文とグラフをていねいに読めば、解答にたどり着くことができます。
【解説】
次の2点を行ってから、再度設問を読んでみます。
- 概念だけが書かれているところについて、問題文中に変数を明記してみます(下記赤字部分)。
- 経済学特有の概念に関わる部分も消します。
また、解答から逆算して、解答に直結しないと思われる部分も消します。(下記灰色 部分)
第11問 いま、2種類の生産要素、資本Kと労働Nを用いて、生産量Yが産出されている。次の生産関数は、労働1単位あたりの資本と労働1単位あたりの生産量との対応関係を表している。 ア 労働成長率nの低下と貯蓄率sの低下、いずれによっても減少する。 |
このように読むと、「nが低下するとk1におけるyはどうなって、sが低下するとk1におけるyはどうなるか?」を調べればよいということが見えてきます。
そこでグラフを見ると、「nが低下するとk1は増え、yも増える」そして「sが低下するとk1は減り、yも減る」と分かり(※)、正解はエと分かります。
(※このようになる理由は、6/18の勉強会レポート の図をご参照ください)
この設問も、1問目と同じく「設問文に書かれている用語を知らなくても正解にたどり着ける」という設問でした。
【コツ】
- 難しそうに見えても、設問文とグラフを丁寧に読み解くことで、解答に辿り着ける設問もあります。
⇒選択肢から逆算して、グラフを読んでみましょう
(このコツが適用できる他の設問:第18問)
◆解説&コツ(3)<第15問>
続いて3問めです。
この問題は最初の2つと比べ、設問文中には難しい用語がなく、意図は明確です。しかし、選択肢中にある「線分の長さ」をどのように捉えて計算したら良いかが難しいと思われます。
⇒そこで、適当な値を入れて解いてみます。
まず、必要最低限の箇所に、適当な数値を入れてみます。
- 点Aと点Bについて、それぞれの座標を2と4とおきます。
- そして、点Dの座標を1とおきます。
(2や4や1は適当に入れた数字です。図と矛盾しない値であれば何でも構いません。10と15と4でも構いませんし、100と200と40でも構いません。)
すると、他の点の座標も求まります。
- 点Cの座標は1.5、直線ABの傾きは−0.5となります。
- また、点Mの座標も2と求まります。(「点Lが線分ABの中点であること」より、点Mは線分OBの中点となるからです)
ここまで準備したうえで、それぞれの選択肢を見てみます。
- 【ア 点KにおけるΔx/Δp①は、線分ODの長さを線分ACの長さ②で除した値と等しい。】
- ①は、直線の傾きΔp/Δx の逆数であるため、1÷(−0.5)=−2
- ②は、1÷(2−1.5)=2
- ⇒よって、アは不適切(ただし絶対値で判断すれば適切)です。
- 【イ 点Kにおけるp/x③は、線分OCの長さを線分ODの長さで除した値④と等しい。】
- ③は、1.5÷1=1.5
- ④は、1.5÷1=1.5
- ⇒よって両者は等しいため、イは適切です。
- 【ウ 点Kの需要の価格弾力性⑤は、線分BDの長さを線分ODの長さで除すこと⑥で求められる。】
- ⑤は、Δx/Δp・p/x=−2・(1.5/1)=−3
- ⑥は、3÷1=3
- よって両者は等しくないため、ウは不適切(ただし絶対値で判断すれば適切)です。
- 【エ 点Lの需要の価格弾力性⑦は1より大きい。】
- ⑦は、Δx/Δp・p/x=−2・(1/2)=−1
- これは1より大きくないため、エは不適切です。
ここで、ア・ウ・エの3つが不適切と推測されましたが、「最も不適切なもの」を選ぶという指示に従って、以下の理由からエを選びます。
- 需要曲線の価格弾力性を求める場合に、マイナスを掛けて(正の値として)定義する場合がありました。
- 設問文中の定義式 |ε|=Δx/Δp・p/x に着目すると、|ε|>0、p/x>0 であることは明らかですので、Δx/Δp を正の値だと見なすように暗示されているとも考えられます。
- そこで、価格弾力性の符号の不一致についてを無視すれば(すなわちΔx/Δp を正の値である見なせば)、アとウは、エほどは不適切ではないと考えられます。
- ア:①は2となるため、適切
- ウ:⑤は3となるため、適切
- エ:⑦は1となり、依然として「1より大きい」を満たさないので、不適切
【コツ】
適当な数字を代入して計算すると、計算が楽になる場合があります。
⇒変数ばかり出てきていたら、適当な値を代入してみましょう。
本問を真っ当に解くとすると、
- 図形的性質から、条件の正誤を判断する
- 点A、点B、点Dの座標を文字式で置いて計算し、条件の正誤を判断する
- グラフを眺めて、定性的に、条件の正誤を判断する
といった方法になるのではと思います。しかし、具体的な数字を当てはめて計算することで、正誤判断が容易になります。
(他に適用できる設問:第13問)
◆まとめ
今日お伝えした3つのコツを、再度まとめます。
- 知らない用語ばかりが出てきたら、いったん無視。
⇒「用語が分からなくても解けるのでは?」と考えて読んでみる。 - 難しそうに見えても、設問文とグラフを丁寧に読み解くことで、解答に辿り着ける設問もある。
⇒選択肢を見て必要な情報が何かを考えてから、設問文とグラフを読む - 適当な数字を代入して計算すると、計算が楽になる場合があります。
⇒変数ばかり出てきていたら、適当な値を代入してみる。
当然これらのコツがいつでも使えるというわけではありません。
しかし、これらを裏ワザとして持っておけば、捨て問題を拾うことができ、プラス4点、8点・・・を稼げる可能性があります。
初見問題を解く際(過去問を解くときなど)にトレーニングしてみてくださいね。特に、コツの2番めと3番めは、平成25年度の第18問と、第13問にも応用できますので、さっそく試してみていただければと思います。
気温変化が大きい時期ですが、体調に十分気をつけて、頑張ってくださいね。
また、1次試験の企業経営理論、財務・会計に苦戦している方や、得意で伸ばしたい方 がいらっしゃいましたら、勉強会もご活用いただければと思います。
タキプロ勉強会のお知らせ
【今後の予定(東京)】
◆日時・場所
・7/6 (日) 9:30~11:45 京橋区民館 題材:H25< 1次>企業経営理論
・7/10 (木) 19:30~21:45 京橋区民館 題材:H24< 1次>財務・会計
・7/23 (水) 19:30~21:45 八丁堀区民館 題材:H22事例Ⅰ
・7/27 (日) 9:30~11:45 京橋区民館 題材:H22事例Ⅱ
◆会費 :500円
*お釣りが出ないようにご用意ください。
==1次試験対策の勉強会参加にあたって==
*可能であれば題材の過去問を解き、解答プロセスを説明できるよう
ご準備ください。
*解答はご自身分がお手元にあれば良いです。
*過去問解説書の使用などはご自由にお使いください。
*問題を忘れずにご持参ください(自分で確認用)。
==2次試験対策の勉強会参加にあたって==
*題材の過去問を解いて、解答のコピーを8部 ご用意ください。
*問題を忘れずに持ってきてください(自分で確認用)。
*時間の都合上、全部の設問を扱うことはできません。
あらかじめご了承願います。
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