コール・オプション

 こんばんは。ごとりん@たきぷろ6期です。財務会計が苦手な方がかなり多いと思いますが,ある程度の基本をおさえれば60点の壁はクリアできると思います。ピンポイントではありますが,このブログが何らかの得点につながれば嬉しいかぎりです。

 金融商品そのものはデジタルの世界ですが,人間の日常生活はアナログです。ですからどうしてもデリバティブの概念は肌身で理解しにくいものがあります。通常の商品や製品といった棚卸資産の場合には安く仕入れて高く売ることで利益を稼ぎます。しかしながらデジタルの世界では,「高く売ってから安く仕入れる」といったことが可能になります。 

 平成26年度の本試験でもコール・オプションが出題されましたが,コール・オプションとは「あるモノを買う権利」のことをいいます。たとえば100円で「商品A」を買う権利を購入した場合,この100円のことを権利行使価格といい,所定の期日に「商品A」の市場価格が120円だった場合にはコール・オプションを行使して100円で「商品A」を仕入れて120円で売却すれば20円儲かります。逆に市場価格が90円だったら権利を行使しないでおくといったことができます。この仕組み自体はもはや基本中の基本になっていると思いますが,もう一度復習しておきましょう。コール・オプションでは「商品A」(原資産)の市場価格が上がれば上がるほど利益が出るということですね。

 平成26年度ではさらに踏み込んで金利とコール・オプションとの関係や原資産の価格とコール・オプションの関係が問われました。たとえば以下の問題はどうでしょう。

「他の条件が一定であるとき,金利が高ければコール・オプションの価値は低くなる」という命題は正しいでしょうか,間違っているでしょうか。

 金融関係などにお勤めであれば,すぐに解答できるかもしれませんが,そうでない場合にはその場で応用して考えなければなりません。まずコール・オプションの利益は何か…ということを考えてみましょう。期日における市場価格と権利行使価格との差額がコール・オプションの利益ですね。長期的には景気が過熱して物価が上昇し,その結果,期日に市場価格が上昇しているといったことも考えられますが,そこまで深く考えるとこの問題は正解が出なくなりますから,他の条件が一定となる短期の場合に限定して考えます。そうすると市場価格は一定です。それでは権利行使価格はどうなるかというと,1年後の権利行使価格を現在価値に割り戻すと,「権利行使価格÷(1+利子率)」という数式で表せます(1年後に限定したかなりシンプルな数式ですが)。そうすると利子率が上がれば上がるほど権利行使価格の割引現在価値が低くなることがわかります。これをさらに以下の数式に直すと「コール・オプションの価値=市場価値-権利行使価格÷(1+利子率)」という数式になります。つまり,利子率が上がれば上がるほどコール・オプションの価値が上がることがわかります。つまり,「他の条件が一定であるとき,金利が高ければコール・オプションの価値は高くなる」という命題が正しいことがわかります。要は「販売価格が一定で,金利が上がると仕入価格が下がります。そうするとコール・オプションの価値は上がりますよね」という問題です。時間が1時間しかないなかで,「コール・オプションってどうやって利益を上げるんだっけ」とあれこれ考えながら解答を出すのはかなり大変ですが,市場価値から権利行使価格を引いて,権利行使価格を利子率で割り引くと現在価値が出る…というところまで類推できれば,なんとか解答できると思います。

それでは,この命題はどうでしょう?
「他の条件が一定であるとき、原資産の市場価値が高ければコール・オプションの価値は高くなる。」
「コール・オプションの価値=市場価値-権利行使価格÷(1+利子率)」ですし,他の条件は一定なのですから市場価値が上がれば,当然コール・オプションの価値も上がりますね。販売価格が上がって仕入価格がそのままということですから,儲けは大きくなるという意味です。ですからこの命題は正しいです。

それでは次にこの命題です。
「他の条件が一定であるとき、行使価格が高ければコール・オプションの価値は低くなる。」
「コール・オプションの価値=市場価値-権利行使価格÷(1+利子率)」ですから権利行使価格が高くなると当然コール・オプションの価値は低くなります。販売価格がそのままで仕入価格が上昇するというのと同じですから,儲けは少なくなるのでコール・オプションの価値は低くなります。これも正しい命題ですね。
 そうすると平成26年度の財務会計でかなり正答率が低かった第22問なのですが,消去法で正解が導き出せるということになります。ある意味では非常にしんどい思考が求められますが,4択のうち3択までは同じ考え方で正解が導き出せるように工夫されていますから,この手の出題はまたあるのかもしれません。プット・オプションの場合にはどうなるのか,価格変動性が高い場合にはどうなるのかといった応用論点も含めて,基礎的な知識をまた確認してみてくださいね。

 

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