事例Ⅲは町医者の気持ちで解こうby サルマン

こんにちは、サルマンです。
在宅勤務が長く続き、体がすっかり固まってしまっていたので、久しぶりにマッサージに行ったところだいぶ楽になりました。
一次試験まであと少しです。万全の体調で臨んでください!

今日は事例Ⅲについて書きます。

事例Ⅲの特徴

事例Ⅲは不思議な試験です。生産管理は他の事例と違い、普段なじみが全くないという人が多いため、一見実務経験がある方が有利に見えます。
ところが、実際には実務経験のある人が案外落ちやすく、実務経験のない人が素直な答案を書いた方が点を取りやすいといわれています。
また、様々な会社が登場するにも関わらず、解答はいつも似たような内容に収斂していく傾向があります。

それでは、なぜそのような専門性の高い分野において、現場をよく知っているはずの実務経験者が落ちてしまうことが多いのか?

この点について、受験生時代はずっと腑に落ちませんでしたが、実務補習に参加して初めて気が付いたことがあります。

実際の工場を見てみると、正直わからないことだらけです。工作機械などは見たこともないですし、現場を見られるわずかな時間では、人がどのように動いているかを把握するのも困難です。レイアウトが最適化どうかなどといった判断は当然難しいものがあります。
が、チェックポイントはわかります。生産スケジュールが作られていない、どこそこの整理整頓ができていない、顧客とのやり取りがFAXなどなど。まさに事例Ⅲによく出てくるポイントです。
そうして考えると、事例Ⅲで勉強してきたことは、チェックリストを覚えて、現場で当てはめていくことで問題を探し出す能力なのだと気づかされました。医者が問診表をもって、企業の症状を聞いていくようなものです。だからこそ事例企業の状況は違っても、似た内容の回答が多くなるわけです。

中小企業診断士の役割

中小企業診断士は、カバー範囲が広い資格です。浅く広く、と言い換えてもいいかもしれません。なぜカバー範囲が広いかといえば、様々な企業を多角的な側面から診断する必要があるからです。医者でいうならば町医者の役割といえます。

町医者は、患者の最初の相談相手として、ありとあらゆる病気をまず見ます。その中で、風邪などよくある病気についてはそのまま薬を処方して解決します。一方、町医者が診てみて、原因がわからない、あるいは重症であると考えるばあいには、大学病院などにいる専門医に回すこととなります。

そうして考えると、中小企業診断士試験は、経営の分野で町医者と同じような役割を果たせるかを見る試験であると言えます。

事例Ⅲ以外では、比較的なじみがある分野であるだけに、町医者としての役割と、専門医の役割分担が曖昧であり、町医者の時点で判断ができる事例が少なくありません。
一方で、事例Ⅲは専門性が高い分野であるだけに、町医者としての診断士の領分を明確にすることが重要になってきます。すなわち、町医者として必要な事項を問診し、それについて基礎的な判断をくだし、より詳細についてはしかるべき専門医に回す、という役割を果たせるかが重要になってくるわけです。

事例の考え方

こうした診断士のあり方がわかりやすいのが、平成28年度の事例Ⅲです。
この事例に登場するカット野菜メーカーの特徴をいくつか挙げると以下の通りです。
①食品を扱う会社であるにも関わらず異物混入や異臭が頻発している
②限界利益が赤字
③メンテナンス技術がない
④衛生管理意識・品質意識が低い

事例企業が深刻な弱点だらけで長所がほとんどないことから、「このような会社には廃業をすすめる」が真の正解である、として話題になった事例です。

ではなぜ、この事例の正解は「廃業をすすめる」ことではないのでしょうか?それは、「廃業」という判断は最終的に専門医が行う判断だからと考えると納得がいきます。

個人で開業している医院に、末期ガンと思しき患者が来たとします。見るからにもう助かりそうにありません。そのときに我々町医者の役割は、もう助からないと思いますので諦めてお引き取りください、と言うことでしょうか?
そうではないと思います。
たとえ助かる気配がなくても、まず問診をして病状を見ます。(会社分析)。平成28年度事例Ⅲでは特性要因図が出題されました。これは、体温を測ったり、聴診器を当てたりするのと同じでしょうか。そして、悪い部分を把握し、可能性が低くとも、まず町医者としてまず処方できる薬を出し、そしてその病気を治せる確率の高い専門医を紹介する。これがまずすることです。

そこで、専門医がもはやどうしようもない、との判断に至って、初めて専門医から余命宣告や終末期医療の手配をしてもらうことになります。企業でいえば、最後は金融機関が融資を打ち切ることで、人工呼吸器を外すことになるでしょう。

ここが生産管理に造詣の深い実務経験者が間違えてしまうポイントです。
自分が既に専門医であるからといって、町医者としての能力を問う試験に対し、いきなり余命宣告をしてはいけませんし、いきなり終末期医療の話をし始めてもいけません。まずは問診表をもって診断をしていくところから始めましょう。

次回はダイナマイト九州さんです。お楽しみに。

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