事例Ⅱ攻略の方向性byヌノ

事例Ⅱ

読者の皆様、こんにちは。
タキプロ13期のヌノと申します。2度目の投稿です。今回は、事例Ⅱについてお話しさせていただきます。
事例ⅡのB社は、多くがBtoC企業であり、受験生にとってイメージは付きやすいものの、逆に思い込みが邪魔をして論点がずれてしまうなど、実は危険の大きい科目です。
最も重要なことは、「与件文」です。これを意識して、事例Ⅱ攻略の方向性を紐解いていきましょう。

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■私の学習方法

前回投稿した記事にも記載しましたが、私の本業は弁護士です。
受験歴は2回(1次試験2回、2次試験1回)です。2次試験に関しては、1次試験本試験後の学習開始でしたので、比較的短期の学習期間で合格することができたと思います。本稿では、私が学習時に意識していたことをお伝えできればと思います。
なお、使用教材は「ふぞろい」シリーズ「2次試験合格者の頭の中にあった全知識」のみです。
検討した過去問は、H28~R2までの当時の直近5年分。80分時間を測ってフルの解答を作成したことはなく、一通りメモ書きをしたうえで、解答・解説を確認していました。
もともとマーケティングに関する知識など全く有しておりませんでしたが、何とか合格することができましたので、方向性さえ誤らなければ学習量としてはこれで十分だと思います。

■知識×論理○(与件文の重要性)

すでに多くの合格者が述べていることだと思いますが、事例Ⅱ(事例Ⅱに限られたことではありませんが)で最も重要なことは、「与件文」です。
これを離れた解答には点数が付かないといっても過言ではないと思います。
解答を作成する際、基にする情報は、「与件文」及び「与件文から『確実に』読み取れること」のみです。
与件文の事情を論理的に組み合わせて解答を作成します。
その際、与件分を離れて、自分の知識から施策を提案することはNGです。
特に事例Ⅱは題材が分かりやすい場合が多いですから、自分がこれまで見聞きした情報を盛り込んでしまいがちです。
マーケティングに関する知識を有しておられる方ほど、この点は注意をする必要があります。

■愚直なまでに「だなどこ」

事例Ⅱのフレームワークといえば「だなどこ」です(あまりにも多くの記事や書籍で触れられていますから、「だなどこ」それ自体の解説は省略させていただきます。)。
与件文を「だなどこ」に愚直に当てはめていくだけで、一定の解答が得られるでしょう。
その中で、他の受験生と差をつけるため、より論理的・説得的な解答を作成するにはどのようなことを意識すればよいのでしょうか。

これもよく言われていることですが、中小企業は経営資源が乏しく、物量作戦では大企業と渡り合うことができません。そのため、限られた経営資源を、ニッチなところに適切に注ぎ、大企業との差別化を図る必要があります(差別化集中戦略)。
事例Ⅱで登場するB社の多くは、ほぼ確実に、商品やサービス(以下「商品等」といいます。)で、他社より優れたものを経営資源として有しています(強み(S)です)。
また、その商品等を欲している(ニーズを感じている)人たちも必ずB社がアクセスできる範囲に存在します(機会(O)です)。
B社の強みである商品等を、ニーズを感じている人に対してピンポイントで提供する。
シンプルですが、このような方向性で与件文を組み合わせ、「だなどこ」に沿って当てはめていけば、論理的・説得的な解答を作成することができると考えています。
その際、「こ」つまり施策の「効果」まで触れることを絶対に忘れないようにしてください(本当に忘れがちです。)。
施策を提案する際は、クライアントに対し「効果」まで説明するのが中小企業診断士の使命だからです。
効果として挙げられることが多いのが、「売上向上」「顧客満足度向上」「顧客との関係性強化」「客単価向上」「好意的口コミ獲得」などです。パターンとして頭の片隅においておけば、時間節約になります。
ただし、ご自身が考えられた施策にきちんと当てはまるかの検討を忘れないようにしてください(機械的にパターンを吐き出すだけというのはNGです。おそらく、採点官も「パターン吐き出し型」の答案には高得点をつけてくれないと思います。)。

■「成功体験」は活用すべきヒントである

事例Ⅱでは、B社がある試みを行ったところ、顧客から好反応を得られたり、売上が伸びたことが与件文に記載されていることがあります。
そのような事実は、B社に施策を提案する際のヒントとなります。
例をいくつか挙げましょう。

【平成29年事例Ⅱ】(寝具店の事例)
「日頃の交流を通じて、顧客の好みをよく把握している副社長が品揃えを厳選した。予約会には井戸端会議のメンバーが多数来店し、時間によっては顧客が会場に入れないほどであった。」

【平成30年事例Ⅱ】(老舗日本旅館の事例)
「8 代目が試しに従来の簡素な朝食を日本の朝を感じられる献立に切り替え、器にもこだわってみたところ、多くの宿泊客から喜びの声が聞かれた。」

【令和元年事例Ⅱ】(ネイルサロンの事例)
「あるとき、B 社社長が、自分の子供の卒業式で着用した和服に合わせてデザインしたジェルネイルの写真を写真共有アプリ上にアップした。その画像がネット上で話題になり拡散され、技術の高さを評価した周辺住民が来店するようになった。」

これらはあくまで一例で、他にも挙げられるかもしれません。
このようなB社の成功体験は、もちろん強み(S)として挙げられる場合もあるでしょうが、強み(S)が多く、強み(S)を指摘する設問ではわざわざ挙げないようなものもあります(例えば、令和元年の事例Ⅱでいえば、写真をアップした事実自体は、強みにはならないですよね?)。
これは、「ターゲット及びニーズを把握するのに重要な事実である」と与件文がヒントをくれているものですから、必ずどこかで活用するようにしてください。加点ポイントとなる可能性が非常に高いと思います。
さて、これから解く方もおられるでしょうから、上記では令和3年度試験の事例Ⅱの例はあえて挙げませんでしたが、実際の試験現場で与件文を読みながら、「あ、この成功体験使えるわ!!」と思ったものがありました。ぜひ探してみてください。

■1次試験の知識はどこまで必要か??

令和2年度試験の事例Ⅱ第3問(設問1)では、以下のように問われました。
「上記の事象について、アンゾフの『製品・市場マトリックス』の考え方を使って50字以内で説明せよ。」

私はこの問題を見たとき、率直に「なんじゃそりゃ?」と思いました。
もちろん勉強不足であることには間違いないのですが、今後もこのような問われ方をするのであれば、1次試験の知識もしっかりと復習しないといけないのでは?という懸念が生じたのです(同じように思われた方もおられるのではないでしょうか?)。

しかし、2次試験までの時間は限られています。1次試験の知識復習に時間をかけすぎるのも間違いなくナンセンスと思いました。
そこで私は、「『全知識』をざっと読む。ここに書いていない知識を問われた場合は、素直に降参するしかない。」と腹を決め、それ以上の知識インプットは行いませんでした。
この試験の本質はあくまで論理的な解答を作成することであり、多くの問題がそのように作られていましたから、1次試験のプロパー知識を前提にする問題が出題されたとしても、そこは潔く諦め、他の設問でしっかり点を取る、という方向性に決めました。
ご自身に与えられた時間との兼ね合いだと思いますが、知識よりも、論理的な解答を作成できるようになることを優先していただくのがよいと考えます。

■おわりに

以上のとおり、事例Ⅱ攻略には、与件文を使いこなす必要がありますから、過去問をベースに、「ふぞろい」などを利用して、合格者がどのように与件文を分解・結合して解答を作成していたかを分析することがとても重要だと思います。
過去5、6年分分析すれば、重要なパターンは網羅できるでしょうから、余った時間は他の学習に当てるのがよいと思います。
事例Ⅱを苦手と考えられる方は、どうか手を広げすぎず、過去問を繰り返し解くという方向性で学習してみてください(すでに解いたことのある事例について、時間を計って解くのであれば、負荷をかけるためにも、実際の試験時間である80分から短縮し、50~60分程度で作成するのがよいと思います。)。
ご自身だけで学習するのに限界を感じられるようであれば、ぜひタキプロWEB勉強会をご活用ください。百戦錬磨のタキメンたちが、受験生の方の解答と向き合い、本気のアドバイスをさせていただきます。

次回はロッキーさんの登場です。
お楽しみに!

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