僕が中小企業診断士を目指した理由 by ノブ
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目次
■はじめに
受験生の皆様、日々の勉強ご苦労様です。昨年2次を受けられた方々、結果発表を控えて日々の生活に手が付かない状況ではないかと推測します。受かっていたら次は口述試験ですね。がんばってください。
新年の誓いとして”今年絶対合格”を立てた方、誓いの実現に向けて既にスタートを切られているかもしれませんね。
皆さんいろいろな思いで新年を迎えらえたと思いますが、そもそも皆さんはなぜこの試験を受けることに決めたのでしょうか?
”中小企業の支援がしたい”、”自分のキャリアップのために実力を付けたい”といった理由から、”士業の資格を取ってxx先生と呼ばれたい”なんてのもあるかもしれませんね。10人の受験生が集まれば、10の理由があることでしょう。
今日はその辺のところを僕の思い出を振り返りつつ書いていきたいと思います。
■中小企業診断士の人気と需要
このブログの読者は中小企業診断士を目指す方々でしょうから、中小企業診断士の資格に関してはすでにいろいろなことをご存じのことと思います。
ビジネスパーソンに役立つ資格ランキングなど経営系の資格としては絶えず上位に位置付けられている資格でもありますね。
そもそも、中小企業診断士の歴史を皆さんご存じでしょうか?僕も漠然としか知らなかったので、少し調べてみました。
中小企業診断士は昔は「中小企業診断員」といわれていたようです。これが1969年に「中小企業診断士」に名称が変更され今に至っています。
更に2000年の中小企業指導法の大幅改正に伴い、中小企業診断士の位置付けが「国や都道府県が行う中小企業指導事業に協力する者」から「中小企業の経営診断の業務に従事する者」に変更され、2001年より現行の試験制度になっています。
下の図は現行の試験制度のなってからの毎年の1次試験の申込者数です。
多少の凹凸はありますがほぼ右肩上がりのグラフとなっており、2022年は24,778人が申し込んでいます。年々申込者が増えているわけですから、人気の資格といってよいでしょう。最新の統計情報では、2023年は25,986人が申し込みしたようです。
下図は現行制度になってからの合格者の合計値です。
毎年積みあがっており、既に合格者は20,000人を超える状況となっています(経産省の統計情報でも平成31年4月1日時点で約27,000人が登録されているとの記載があります[出展:経済産業省 中小企業診断士])。
ちなみに他の士業を見てみると、
弁護士は2019年3月31日で約41,000人[出展:日本弁護士連合会 弁護士人口]、
公認会計士は2022年11月30日時点で約34,000人[出展:日本公認会計士協会 会員数等調]
が登録されています。
これらの数値に比べると中小企業診断士の数はちょっと少ない気はしますが、中小企業診断士の対応先である中小企業の数が340万社程度[出展:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します]であることを考えると、単純計算でいけば中小企業診断士の数は中小企業125社に1人(3,400,000/27,000=125.9)の割合となりますのでそろそろ数的には充足しているような気もしますが、実際には他に本業を持っていて企業内診断士として活躍されている方々が54.5%[出展:一般社団法人中小企業診断協会 データで見る中小企業診断士]であることを考慮すれば(この方々がほぼ中小企業支援をしないという前提が成り立つとすれば)、およそ280社に1人(3,400,000/27,000*(1-0.545)=276.8)という事になるかと思います。
中小企業の中には、業績が非常によく何も心配がない企業も多数存在していると思いますが、何らかの悩みを抱えており中小企業診断士が支援すべき企業も一定割合は存在していると思われます。それがどの程度かを示す定量的なデータは見つけることができませんでしたが、例えば1割程度の企業が支援を必要としているとするならば、現状の中小企業診断士の数では一人で28社(280社×0.1)面倒を見なければいけない計算になります。
一人で28社を見るのはなかなか大変ですね。特に現代は人口減少・後継者不足、需要の高度化や多様化等中小企業を取り巻く問題は山積みで、悩みを抱えている中小企業は多数あると思われます。中小企業診断士の需要は減少どころか、ますます活躍の場が広がっている状況だと思います。やる気が出てきますね。
■この資格はビジネスマンに本当に役に立つのか
これは日々どんな仕事をしているかによると思います。でもどんな仕事をしていても何かしらの役に立つと思います。僕の場合、本業はエンジニアなので経営に関する業務はほとんどありません。でも資格を取るために勉強したおかげで、新規に開発する製品のためにSWOT分析を実施するなんてことが割とすんなりできるようになったり、開発に対する投資効果をNPVで考えることもできるようになりました。今まではそんなことは考えずに開発に取り組んできたので、その点は大変役に立っていると思います。
また、たまに特許を書いたりもするので、試験のために覚えた特許に関する法律なんかも結構役立っています。
経営に近い仕事や、コンサルティング関連の仕事をしていれば、役立つのはいうまでもありません。
■資格をとったら日々の生活はどう変わる
僕の場合企業内診断士をしていますので、日々の業務は資格取得前と基本的には同じです。でも先に述べたように、この資格をとるために勉強した内容は、日々の業務をすすめるうえで役に立っています。
会社での業務の面では大きな変化はなかったのですが、タキプロなどの受験生支援活動・実務補習・診断士協会での研究会活動を通して、多くの同じ志を持った人々と出会ったことで、人間関係に大きな変化がありました。
今までの会社生活では出会うことはなかったであろう多くの人と知り合い、お話しをし、一緒に活動するようになり、会社で仕事をしている平日の日中は大きな変化はおきていませんが、平日の夜や休日の生活が大きく変わりました。
■周りの見る目は変わったか
これはあまり変わってません。僕の場合、会社でこの資格を取ったことをあまり話してませんから、当然といえば当然です。
嫁と子供たちは、僕がこの試験のためにかなり勉強をしていたのを知っていたので、合格した際はすごいねと褒めてくれました。
また、子供たちに対しては、なにがしかの資格を取るには勉強が必要という事を暗に示せたのではないかと思います。
■資格をどんなことに役立てようとしているか
ココが今回最も書きたかったパートになります。
僕は既に書いた通り本業はエンジニアです。今の会社に入社以来30年以上にわたりコンピュータやFA(Factory Automation)向けの装置を開発してきました。特に装置に組み込むLSIという部品を設計してきました。
LSIの設計とは、国内で大規模投資が行われることでこのところ話題となっている半導体の中身(これを回路と呼びます)を設計する業務のことを言います。
ここからはちょっと専門的な話になりますが、しばらくお付き合いください。半導体の集積度が年々向上してきたことにより、1つのLSIに入れられる回路の規模は僕が会社に入った頃から比べたら100倍以上になりました。したがってLSIに入れる回路は機能が増え複雑化しており、設計がえらく大変になりました。
またLSIに入れた回路に設計ミスが見つかった場合、LSIの中身を修正する必要があるのですが、これをやるのが一苦労。
WordやExcelなどのソフトウェア製品は設計ミスが見つかってもバグFIXといって、アップデータをインストールすれば修正は可能ですが、LSIはそうはいきません。回路は半導体の中に焼き付けてあるので、修正する場合はLSIの製造データを改定して製造し直さなければなりません。最悪の場合、市場に出ている製品を回収して、製品に装着してあるLSIを改定した物に付け替える必要があるのです。
これを避けるにはLSIを作る際に設計データを徹底的に検証して、不具合がないことを確認してからLSIを製造する必要があります。
徹底的というのは書くのは簡単ですが、これを実現するのは大変です。検証作業をいつまでもしていてよいわけではありません。長時間作業をすればその分コストもかかりますし、製品の出荷スケジュールを守ることもできなくなります。効率よく作業を進めて品質を上げることがLSI設計を進める上で非常に重要なことになります。
このような環境の中で30年以上にわたり仕事を続けてきたわけですから、僕の体には効率よく品質の高い物を作っていく手法を考える習慣がしみついています。
そろそろ第2の人生を考えなければならない年齢になってきて、今までやってきた仕事や経験が日本のものづくりに役立てられるないかな~と考え始めました。今までは自分の所属している会社の成功のためにやってきた効率よく品質の高い物を作ることを、何かほかでも役立てられるのではないかと妄想しだしたわけです。
何といっても、効率よく品質の高い物を作るのはものづくりの基本ですからね。
ここまでの話は中小企業診断士とは全く関係のない、技術屋さんのお話でした。
ではなぜ中小企業診断士なのかですが、例えば僕が中小企業を支援する立場になった場合、技術のお話だけできればそれで良いのでしょうか?
日本の中小企業の社長さんの悩みは多岐にわたります。もちろん社長さんにとって、技術の相談相手になってもらえることはうれしいかもしれませんが、それだけではやはり心もとないでしょう。
そんな時に知ったのが、中小企業診断士の試験でした(それ以前から名前は知っていたけど、中身は漠然としか知らなかったというのが正しい表現です)。
中小企業診断士試験の勉強をすれば、経済学や経済政策から始まり、財務・会計、組織運営、中小企業政策まで広く学べます。中小企業の実態や、日本経済における重要性、国や自治体の政策まで知ることができます。
これらの知識を持っていて、初めて中小企業の社長さんとお話ができるのではないかと思います。そのうえで技術のお話をさせていただければと考えた次第です。
つまり僕が中小企業診断士を目指した理由は、中小企業の社長さんとお話しできる知識を得るためで、その先には僕が持っている技術を中小企業の支援に使いたいという目的があるからということになります。
■おわりに
中小企業診断士になるためには、試験合格後に15日以上の実務補習を受けるか、実務に従事する必要があります。これを受けると晴れて経済産業大臣の印鑑の押された登録証を手にすることができます。
試験の合格は中小企業診断士としての最初の一歩にすぎません。診断士として活躍する自分の姿を想像して勉強すると、より学ぶことに身が入るのではないかと思います。
皆さんの健闘をお祈りします。そして、皆さんが中小企業診断士になった暁には協力して中小企業を支援し、日本を元気な国にしていきましょう。
次回は、こは さんの登場です。
お楽しみに!
口述試験対策セミナー開催のお知らせ
最後に読者の皆さんにお知らせです。
毎年恒例、口述試験対策セミナーを今年も開催します。昨年はZoomでのリモート開催のみでしたが、今回は東京・大阪・名古屋・福岡の各会場でのリアル開催も実施いたします!
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