【みっつんの勉強会ブログ・第17回】<過去問斜め読みシリーズ(その4)>歴代16年分のD社の変遷を見てみよう

おはようございます/こんにちは みっつんです。
試験間際になって急に気温の低い日が続いていますが、体調は万全でしょうか。

さて、今回は、9月からスタートした「過去問斜め読みシリーズ」の第4回です。第1回(事例Ⅰ)第2回(事例Ⅱ)第3回(事例Ⅲ)に続いて、今回は事例Ⅳ(D社)でどんな企業が過去問に登場してきたかをざっくりと見直してみました。新制度になった平成13年度以降に登場したB社を、16年分順次ご紹介します。長文につきご注意ください。

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【平成13年度】ガラスや研磨剤の輸入商社
過去5年間の売上高の伸びは約20%と急激で高い成長率を示している。
販売先、仕入先管理はコンピュータで行っていない。
・経営者は今のうちに収益力が高く財務的にも健全な経営体質に改善したいと考えている。

【平成14年度】書店
大都市の駅前に保有している自社ビルを店舗及び倉庫として使用している。
・昨年度、卸売者の強い意向でPOSレジを導入した。
D社の総資本営業利益率が約1%と低迷している。こうした状況を打破するために、新事業等のアイディアを検討中である。その候補としては、インターネットによる書籍販売、中古本販売を考えている。また洋書の卸売業者との代金決済としてドルなど現地通貨による決済も検討している。

【平成15年度】板金加工メーカー
・大都市近郊に位置し、電機メーカーX社Y工場から受注する特殊用途の配電盤や制御機器等の筐体を製造している。
・堅実経営を理念としてきたので本業以外の事業等に投資することもなく、現在、不良資産を抱えておらず利益の内部留保も大きい。
小ロットに短納期で対応できる技術力を背景に生き残ってきたが、長引く不況の中でX社Y工場から同一製品を再受注するたびに価格が引き下げられたり受注量が減らされており、ここ5年減収減益が続き平成14年度には営業利益が赤字になった。このため、土地の遊休部分を一部売却して新設備を導入する経営改善計画を策定するために中小企業診断士に助言を依頼してきた。
従業員の高齢化が進んでいる。

【平成16年度】水道蛇口の製造販売業
・従来型製品に関しては納入先からの価格値下げ圧力が強い一方で、製品ラインナップではさらに多品種化することも求められている。
・将来的な製品ニーズへの対応や排出物、騒音等の環境問題への対応を考えると、現所在地から約100km離れた場所への工場移転及び新設備の導入計画案も検討している。ところが、現段階の投資案では、新工場設備の償却終了の5年後には現在の当期利益より減少してしまう予想結果となり、再検討が必要である。
・ある蛇口メーカーX社からD社を15億円で買収したいとの提案があった。この買収提示額が妥当な金額であるかを検討したいと考えている。
・一方、リフォーム需要の増加傾向を踏まえ、製品供給と共に取り付け工事一式を本格的に請け負う新規事業に乗り出す提案を大手ゼネコンY社から持ちかけられている。

【平成17年度】鉄・アルミの使用済み飲料缶のリサイクル業者
鉄とアルミの分別が不十分なため出荷製品の純度が低く販売価格は安く、取引先や販売量は安定しているものの、経営的には厳しい状況が続いている。
・そこで、飲料缶の塗料を焼却処理した後にその形状を造粒機で粒状化して時期による鉄とアルミの分別の精度を高めることで品質を向上させる設備投資案を検討している。これにより、販売価格の値上げと運送費の低減が見込める。
原材料である使用済み飲料缶の購入価格が需給関係によって高騰することも考えられる。安定操業に必要な在庫量を確保しかつ過大な在庫を抱えることによるコスト負担の増加を防ぐ手立てがないか悩んでいる。

【平成18年度】独立系コンビニエンスストアチェーン
・D社では店舗を、鉄道の駅前に3店舗、住宅街に3店舗、ロードサイドに3店舗展開しているが、それぞれで顧客層が異なっている。
・各店舗では店長のみが正社員で、一般店員はアルバイトである。企業規模が小さいために各店舗で柔軟で多様な仕入れを行うことが困難であり、全店舗で画一的な品揃えになっている。
平成17年度になって大手コンビニエンスストアチェーンがD社商圏に店舗を展開し始めている。企業規模や企業体力を考えると、ある程度店舗タイプを絞り込んで行くことで、顧客層に対して的確に対応できる品揃えや仕入効率の向上を図りたいと考えている。

【平成19年度】基礎化粧品製造業
工場は大都市圏にあり商圏はその全域にわたっている。卸売企業を通さず、町の薬局を500店ほど「取扱薬局」とし直接製品を卸している。
・単価は他社製品よりやや高いものの、取扱薬局による対面販売のメリットを活かして、地域住民の中高年女性を固定客として安定的に確保している。
・近年では健康志向、安全志向が進み、大手メーカーが次々に新たな基礎化粧品を市場に投入しており、今後は早急に基礎化粧品に関する商品開発を進めることが求められている。
・大手ドラッグストアの進出等により取扱薬局が減少しており、新たな販売チャネルの開拓が必要になっている。若年層をターゲットとする低価格製品のインターネット販売をビジネスプランとして検討している。新製品は肌の保湿性を高める新製品を配合するものであり、当該成分にかかわる基礎研究を進めてきたものの製品開発に至っていない。

【平成20年度】工業製品全般の塗装業
・D社の主力の粉体塗装の技術力が主要取引先Z社から高く評価され、安定的に受注を得ている。D社は定期的に設備更新を行っており、主力設備を5年前に更新したがこの主力設備は当時の最新機能を備えたものではなかった。最近は老朽化による故障が多発しているためメンテナンス費用が増加している。
・熟練した従業員の高齢化が長年の経営上のリスクであったが、ここ数年で若手従業員への技術移転が進み、最新設備への更新が可能であれば、メンテナンス費用の減少が見込まれ、平成21年度以降は売上の増大も期待できる。設備更新に要する資金が体力に比べて過大であることが重要課題である。
・Z社からは事業継続を要請され、出資を含む資本面での支援の申し出を受けている。D社は同業他社に比べて従業員を手厚く処遇しており、従業員の技術力が競争上の優位性でもある。

【平成21年度】スポーツウェアの製造・販売業
高い縫製加工技術による自社製品に定評を有しており、その技術力から国内大手のY社より有名ブランド品のOEM生産を受託している。主力製品はY社向け有名ブランドスポーツウェアで、日本製の高品質・高機能が消費者に支持されている。
成長市場であるアジア諸国でも順調に売上高を伸ばしているが、D社の取締役会では、各国の経済状況に伴う売上高の変動リスクが経営の課題として繰り返し議論されている。
・D社本社は創業当初より現所在地である中核都市の駅前にあるが、事業拡大に伴って隣地の中古不動産を買い増ししてきた。本社社屋の一部は老朽化しており建て替えも検討しなければならない時期を迎えている。一方で駅前の再開発も進んでいる。
・D社では本社を平成21年度期首に売却してオフィスを賃借すると同時に、本社の管理業務の一部をアウトソーシングすることを検討している。

【平成22年度】電子部品メーカー
・地方都市に本社をおき、工場は本社近くの工業団地に位置し、本社との密接な連携と、顧客の要求に対する迅速な対応はD社の強みである。積極的な技術開発と設備投資により製品の小型化・高性能化と安定した品質を実現し、顧客である大手メーカーからの信頼を得てきた。そのため、受注は安定的で収益も高く、獲得した利益を内部留保として、これを設備投資に振り向けて成長してきた。
・大手メーカーZ社から主力部品の納入価格の大幅な引き下げを要求されている。平成20年度までに遊休資産の売却等全社的に大規模なリストラクチャリングを断行した為、さらなる固定費の削減は望めない状況にある。

【平成23年度】水産加工メーカー
・近年の販売実績は、食の安全に対する消費者意識、生活習慣病を予防する食生活への関心を反映して、地元で揚がる魚介類に対するニーズが高まったこともあり、概ね好調である。
工場設備は老朽化がみられ、大手スーパーから増産の要請も見込まれるため、HACCP導入を前提とした新規工場建設、製品ラインの見直しを検討している。
単身世帯の増加、個食への対応として、電子レンジや真空パック用個別包装の製品開発、生産、販売という新規事業案が提案されている。

【平成24年度】温泉旅館
・D旅館は大都市圏からの客も多い温泉地に立つ創業85年の小~中規模旅館である。各室に担当が1名付き細やかなサービスを提供することや、地元食材を用いた創作料理が、評判である。
・近年、周辺旅館では施設のリニューアルがみられ、その影響もあり、稼働率は低下し、2年連続で赤字を記録した。宿泊者数減少の原因は、老朽化した木造の旧館にある、とオーナー夫妻は分析している。旧館での営業を取りやめ新館のみでの営業に切り替えるか、旧館を改修することが検討されている。
オーナー夫妻には子供がなく、後継者並びに事業承継問題が悩みの種である。

【平成25年度】医薬品製剤製造会社
・ジェネリック医薬品や栄養ドリンクなど大手医薬品メーカー製品のOEM生産が主体となっている。
・大手医薬品メーカーの要請に積極的に対応し、生産ラインの見直しと自動化を進め、生産工程の技術管理、衛生管理や納期の徹底を図るなどして厚い信頼を得てきた。
経営状態は比較的安定しているものの、近年の大手医薬品メーカーによる品質管理のさらなる徹底及び価格低減の要請が粗利益の圧迫要因となり、事業の見通しは決して明るくない。そのため、現在休眠中の旧工場の建屋を活用した新規事業として植物工場の設立を検討している。栽培においては水温・水質、温度・湿度の管理が必要になるが、D社が長年培ってきた生産管理上のノウハウを生かすことが期待されている。

【平成26年度】喫茶店
・D社は創業が1950年代で、県内に18店舗をチェーン展開する老舗喫茶店である。セントラルキッチン方式を導入し、自社工場を保有している。古くからの顧客を中心にD社の味を求めるファンは多く、県内での知名度は高い。
古くからの店舗のいくつかは店舗面積も狭く、客足が落ちている。一方で、近年はオフィス街のテナントや郊外のロードサイド店舗を実験的に開店し、成功を収めている。
外食産業を取り巻く環境は、原油価格高騰によるエネルギーコストの上昇や、消費税増税等の影響、少子高齢化による市場規模の縮小やコンビニエンスストアとの競争激化による売上高減少のリスクにさらされている。
・ブログ等でⅮ社の軽量メニューやデザートが地元のB級グルメとして注目を集めるようになった。工場の一部のラインを利用してお土産として商品化することに成功し、収益の柱の1つとして見込んでいる。しかし、工場の生産能力にも限界があり、需要に合わせた商品群の整理も必要な時期に来ている。

【平成27年度】精密備品の製造・販売を行う金属加工業
・自動車部品製造業X社への供給を目的としたカーエアコン取付部品セットやカーエアコン用コンプレッサ関連の精密部品の製造・販売に加え、X社以外向けにも事業拡大を図ってきた。その過程で多様な金属加工技術(板金・切削)を蓄積したことにより、D社の技術力は市場から一定の評価を受けている。
・自社製品のz鋼板を使用した精密部品が主力製品の1つになりつつあり、X社向け以外の受注が増加傾向にある。さらに、同社が有する金属加工技術を活かした新規事業として、既製品と異なる需要動向を示す環境関連製品の製造・販売を計画している。
D社を取り巻く環境にはなお先行きの不透明感もある。また、X社は部品調達の一部を海外企業に求めることを決定しており、そのため来期の受注数量が減少すると予想している。

【平成28年度】レストランチェーン
顧客の節約志向が強く業界環境が厳しいなか、主要顧客である県外からの観光客数が堅調に推移しており、D社の県内店舗の来客数は増加傾向を維持し、客単価も維持できている。
・同社は、顧客満足の提供を追求して、食材にこだわり、きめ細やかな心配りによるホスピタリティあふれるサービスのために社員教育の徹底に努めている。圏外の鉄板焼きレストランの業績は順調に推移している。大都市の都心部に前期出店した創作料理店は業績不振が続いており全社業績に影響が出ている。
・本社機能の充実に加え、人材育成の拠点となる研修施設の拡充、新規出店の目的で、用地代を含め約8億円を投じて新しい本社社屋を建設する計画である。

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さて、ここまで一読されてお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、様々な業種のD社が出てきていますが、共通する背景もちらほら散見されます。もちろん、各D社が置かれた背景が類似しているというだけでD社の前提は全く異なるため、過去問を解いていれば有利というわけではないと思いますが、一度目を通したことのある背景が出てくれば、全く初見の問題でもとっつきやすく感じることができると思います。

なお、同じ背景であればO(機会)T(脅威)が共通する部分があるかもしれませんが、与件文に書かれていない事柄を想定して問題に取り組むのはご法度ですので、注意が必要です。念のため。

今回かなりの長文になりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

いよいよ2次試験間近ですが、普段の自分が出せるように体調に気を付けて頑張ってください。ぜひみっつんはじめ昨年度合格のタキプロメンバーの後に続いていただけるように祈念しています。

明日は関西から:スーさんです。お楽しみに。

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