「ふぞろいな合格答案」を活用した2次試験の勉強法 byかものしか
読者のみなさん、こんにちは。
タキプロ14期のかものしかと申します。
この記事が公開される令和5年9月7日は2次筆記試験まであと52日で、既に2次試験対策真っ只中だと思います。
今回は、まだまだ2次試験の勉強法に悩んだり迷ったりしている方のために、「ふぞろいな合格答案」を活用した2次筆記試験の勉強法について書かせていただきます。
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目次
- ■はじめに
- Ⅰ.2次試験の点数について
- Ⅱ.事例Ⅰ~Ⅲにおけるふぞろいの活用法
- Ⅲ.事例Ⅳにおけるふぞろいの活用法
- ■おわりに
■はじめに
既に皆さんご存じだとは思いますが、「ふぞろいな合格答案」(ふぞろいな合格答案プロジェクトチーム編、同友館)とは、2次筆記試験の受験生から寄せられた再現答案を分析した書籍で、2007年度(平成19年度)過去問分から2022年度(令和4年度)過去問分までの16年度分が出版されています。
ふぞろいな合格答案(以下「ふぞろい」)の最大の特徴は、キーワードによる過去問事例の自己採点が可能となっていることです。
そこで、私は昨年の受験生時代に、ふぞろいをどのように活用していたのかを紹介したいと思います。
今回は以下の3部構成でお送りします。
Ⅰ.2次試験の点数について
Ⅱ.事例Ⅰ~Ⅲにおけるふぞろいの活用法
Ⅲ.事例Ⅳにおけるふぞろいの活用法
Ⅰ.2次試験の点数について
1次試験と比較した2次試験の点数のポイントは以下の3つです。
①科目合格が無く、4科目(事例)一発勝負で合格点を取る必要があること
②6割以上で合格だが、実質的に相対評価と言われていること
③正解や採点基準が非公開の記述式試験であること
1.科目合格が無く、4科目(事例)一発勝負で合格点を取る必要があること
令和5年度の2次試験の合格基準について、試験案内に以下のとおり記載されています。
3.合格基準など ⑴ 第2次試験の合格基準は、筆記試験における総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満がなく、口述試験における評定が60%以上であることを基準とします。 ⑵ 合否および採点、試験問題の内容などに関するお問い合わせには応じられません。 ⑶ 第2次試験の筆記試験の出題の趣旨は、合格発表日の午前中に当協会のWebサイトに掲載する予定です。 |
また、筆記試験の配点および総点数については、試験案内に以下のとおり記載されています。
配点 | 試験科目 |
100点 | A 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅰ |
100点 | B 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅱ |
100点 | C 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ |
100点 | D 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅳ |
つまり、総点数(400点)の60%以上である240点以上を取ったうえで、各科目で39点未満がなければ合格となります。
そのため、全科目60点以上取れなくても、合計で240点以上取れれば合格できます。
昨年度(令和4年度)の科目別得点と合否の関係について、X(旧Twitter)等で得点開示を公表していた人のうち令和5年8月末時点で閲覧可能な分として、180人(合格者91人、不合格者89人)の科目別得点を集計して分析してみました。
なお、合格者と不合格者の比率がほぼ1対1となっており、実際の合格者と不合格者の比率(概算で1対5)とは大きく異なっています。これは、合格者の方が自分の得点開示を公表する傾向にあるからだと思います。
まずは、2次筆記試験の合格者と不合格者における60点以上の科目(事例)と総点数の関係を図表Ⅰ-1に示してみました。
このグラフによると、ざっくり言って3科目以上で60点以上取れれば合格できる確率が高いことが分かります。
図表Ⅰ-1 令和4年度2次筆記試験合格者(サンプル数91)と不合格者(サンプル数89)における60点以上の科目(事例)数の割合
また、総点数を5点刻みで集計のうえ、60点以上の科目数との関係をグラフ化すると図表Ⅰ-2のとおりになります。このグラフによると、60点以上が2科目の場合は合格と不合格に分かれています。
図表Ⅰ-2 総点数と60点以上の科目(事例)数との関係(サンプル数180)
そこで、図表Ⅰ-3~Ⅰ-4のとおり、合格者と不合格者における、60点以上の科目数と各科目の平均点の関係を分析してみました。
60点以上の科目が2科目の受験生の場合、合格者では事例ⅠとⅣで得点を稼いで6割以上を確保しているのに対し、不合格者では逆に事例ⅠとⅣで得点できていない傾向がありました。
図表Ⅰ-3 60点以上の科目が2科目の受験生における科目別平均点
●60点以上が2科目の合格者の具体例
事例Ⅰ | 事例Ⅱ | 事例Ⅲ | 事例Ⅳ | 総点数 |
63 | 57 | 55 | 72 | 247 |
●60点以上が2科目の不合格者の具体例
事例Ⅰ | 事例Ⅱ | 事例Ⅲ | 事例Ⅳ | 総点数 |
57 | 60 | 62 | 51 | 230 |
また、60点以上の科目が3科目の受験生の場合でも、合格者は事例ⅠとⅣの得点が高い傾向がありますが、不合格者は特に事例Ⅰの低得点により不合格となる傾向にありました。
図表Ⅰ-4 60点以上の科目が3科目の受験生における科目別平均点
●60点以上が3科目の合格者の具体例
事例Ⅰ | 事例Ⅱ | 事例Ⅲ | 事例Ⅳ | 総点数 |
70 | 62 | 58 | 67 | 257 |
●60点以上が3科目の不合格者の具体例
事例Ⅰ | 事例Ⅱ | 事例Ⅲ | 事例Ⅳ | 総点数 |
51 | 63 | 61 | 60 | 235 |
結論としては、4科目全部で60点以上取れるのが理想ですが、4科目中3科目で60点以上取れれば合格の可能性は高いと思います。
2.6割以上で合格だが、実質的に相対評価と言われていること
2次筆記試験は、毎年合格率がほぼ一定であることから、実際には相対評価であり、240点以上の割合が一定となるよう得点を調整していると考えられます。
図表Ⅰ-5 2次試験の合格率と合格者数の推移(平成25年度~令和4年度)
相対評価の場合、皆が解けない難問は解けなくても相対評価で6割以上取ることが可能です。また、皆が解ける問題を解けなかった場合は相対評価で低い点数になります。
昨年(令和4年度)の私の例として、事例Ⅳの出来が悪く、絶対に足切りで不合格だと思い込んでいましたが、結果は6割超の65点でした。この得点開示を見て、この試験が相対評価であることをよく理解できました。
そのため、2次筆記試験の対策としては、80分間の制限時間の中で初見の問題の難易度を手際よく判断し、易しそうな問題は確実に得点することが重要です。そのうえで、難問も部分点を取れれば合格の可能性が高まります。
3.正解や採点基準が非公開の記述式試験であること
1次試験はマークシート式であり、正解と配点が公開されるため、なぜ自分がその点数なのかはマークミスでもない限りは明確です。
一方、2次筆記試験は記述式であり、正解や採点基準が非公開であるため、試験結果として得点開示が行われても、なぜ自分がその点数なのか理解することは難しいです。
特に、相対評価で合格率を一定にするために得点調整が行われている場合、自分の解答の出来と得点とが直接的に結びつかないため、自分の答案だけを見てもその点数が付いた理由が分かりにくいと思います。
そのため、記述式試験で点の付く解答を書くための対策としては、他の受験生の得点開示付き再現答案を複数集めて、どこに点数の違いがあるのかを比較してみることが有効だと思います。また、それを行うためのツールとして、ふぞろいが活用できると思っています。
Ⅱ.事例Ⅰ~Ⅲにおけるふぞろいの活用法
私のふぞろいの活用法は、事例Ⅰ~Ⅲと事例Ⅳとでは違いましたので、まずは事例Ⅰ~Ⅲでの活用法について紹介します。
1.ふぞろいの使用目的
事例Ⅰ~Ⅲでは、最初に「10年データブック」から使い始めたこともあり、基本的には参考書としてではなくデータ集として使用していました。
具体的には、各年度の各事例の「●解答ランキングとふぞろい流採点基準」および「●再現答案」のみを利用していました。
その利用目的は以下の2つです。
①自分の解答を点数化して自分のレベルを客観的に把握すること ②他人の解答を点数化して自分の解答と比較しやすくすること |
(1)自分の解答を点数化して自分のレベルを客観的に把握すること
私は、2次試験の学習として過去問事例演習を開始した際、解答に何を書けばよいのか全然分かりませんでした。
そのため、とりあえず何か書いて解答欄を埋めたうえで、2次対策の教材として使っていた「『まとめシート』流!解法実況」(野網美帆子、kindle電子出版)やスタディングのロジックマップに書かれている模範解答を見ながら復習と振り返りを行いました。
復習と振り返りに際しては、最初にふぞろいで自分の解答を自己採点して点数化し、自分が合格レベルに全然届いていないことを客観視したうえで、前述の模範解答と何が違うかを理解するよう努めました。
この段階での主な振り返りポイントの例は図表Ⅱ-1のとおりです。
図表Ⅱ-1 事例Ⅰ〜Ⅲの主な振り返りポイントの例
問題点 | 原因の例 | 対策の例 |
そもそも、何を問われているのか分かっていない | 設問文の制約条件が読めていない(日本語の問題) | 設問文の制約条件に線を引く |
〃 | 設問文から問われている論点が何か思いつかない(知識の問題) | ①事例毎の頻出の1次知識のパターンを覚える ②事例毎のフレームワークを覚える |
与件文から関連する記述に気付けていない | 与件文から、A~C社の強みや弱みが何かを読み取れない | 与件文を読む際、与件文にSWOTを書き込む |
〃 | 与件文から、設問文で問われている事項と関連する箇所を見つけられない | ①与件文の段落に番号を振り、段落単位で文章を把握する ②復習時に与件文を精読して文章全体の構造を把握する |
〃 | 与件文に関連する記述が少ない場合は、1次知識やフレームワークを思い出して使う必要があるが、思い出せない | ①過去問事例演習の復習時に、関連する1次知識の復習を行い、1次知識を具体的な事例と紐付けて覚える ②スキマ時間の100字トレーニング時に、1次知識やフレームワークを思い出すトレーニングを行う |
与件文の記載や1次知識/フレームワークには気付いているが、解答骨子に拾えていない | 他の解答要素に気を取られて拾えなかった | 与件文や解答メモへの書き込みを工夫して、情報を整理して一覧的に把握できるようにする |
〃 | 解答骨子作成時にフレームワークで多面的に拾えていない | 設問文や解答メモに枠組みを書いて忘れないようにする |
解答骨子には拾えているが、最後の解答で書けていない | 文章に無駄な記載が多く指定文字数に収まらなかった | 他人の解答や模範解答を参考に、指定文字数に収まるよう無駄な記述を削って伝えるべき事項のみを書くトレーニングを行う |
〃 | 解答骨子の解答要素のうち、問われていることに関連の薄い方を優先して書いてしまった | 解答骨子から解答を作る際、何となくメモした順に書くのではなく、内容の優先順位と文章の論理的な順序を意識して全体の構成を決めたうえで解答を書く |
また、9月中旬頃からは、単に自己採点するだけでなく、ふぞろいと同じように自分の解答のキーワードに下線を引いて、解答のどの部分に点が付いているかを可視化するようにしました。
私の過去問事例演習におけるふぞろい採点結果は、1周目で60点以上になることはほとんど無く、苦手としていた事例Ⅰでは2周目でも60点未満となることが多かったです。
ご参考として、6月に投稿した合格体験記から、私の過去問事例演習(Ⅰ~Ⅲ)におけるふぞろい自己採点結果を再掲します。
図表Ⅱ-2 私の過去問演習時のふぞろい自己採点結果(事例Ⅰ~Ⅲ)
(2)他人の解答を点数化して自分の解答と比較しやすくすること
9月中旬以降、自分の解答のキーワードに下線を引くのに合わせて、模範解答として利用していたまとめシート流とスタディングの解答もふぞろい採点とキーワードへの下線記入を行うようになりました。
復習の際、その分の時間と手間が増えましたが、採点することで模範解答に対する理解が深まり、学習効果は高かったです。
これら模範解答自体の引用は控えますが、ご参考として昨年の受験生時代に採点した点数を公開します。
図表Ⅱ-3 事例Ⅰ~Ⅲでの使用教材のふぞろい採点結果
特に、まとめシート流の解答をふぞろい採点した結果として、以下のような気付きを得ることができました。
①まとめシート流やスタディングの解答でもふぞろい採点では60~70点台しか付いていないので、事例Ⅰ~Ⅲに関してはふぞろいのキーワード基準では70点ぐらい取れれば充分である。そこから先は、キーワード以外の文章の論理性や読みやすさを意識する方がよい。
②強み/弱みを答える問題など、与件文の抜き書きの列挙でよい問題に関しては、むしろふぞろい流のキーワード詰め込み解答が有効である。一方、助言問題では文章の論理性や分かりやすさの方が重要である。
③まとめシート流では1次知識を使って解答を作成する際、TBCなどの解答と較べると与件文のヒントをあまり使わずに1次知識やフレームワークだけで解答を書いているように見えるが、「80分間で現実的に書ける解答」というコンセプトに沿って、あえてそのような解答を書いているのではないか。
2.令和4年度事例Ⅰの解法実況解答&再現解答のふぞろい採点
ふぞろい16発売前に、令和4年度事例Ⅰ~Ⅲの再現解答を用いた解説記事をタキプロブログに投稿していますので、ふぞろい16発売後のフォローアップとして、それらのブログに掲載した解法実況および再現解答をふぞろい採点してみます。
まずは、令和5年6月8日公開のブログ
で公開した解法実況解答および再現答案のふぞろい採点結果です。
2-1.令和4年度事例Ⅰの解法実況解答のふぞろい採点結果
(1)採点結果(75点)
●第1問《1+2+1+1+3+3+1=12点》
強みは①作り方にこだわり1、有機JASとJGAPの認証2を受けた野菜の栽培②農業経験豊富な従業員1の連携1による栽培品種の拡大。弱みは①従業員間に明確な役割分担が無く3②従業員の定着が悪く3、新規就農者の確保が難しい1点。
●第2問《2+5+(5-2)+5+2=17点》
施策は①採用活動として農作業体験2を行い農業の魅力5を訴求し②役割分担を明確にして未経験者への教育(5-2)を充実し③地域の農業関係者との関係づくりの機会5を設けることで、新規就農者の帰属意識を高め2定着を図る。
●第3問《(3+1)+1+3+2+(3+2)=15点》
大手中食業者との取引で蓄積された対応能力を生かして新たな品種を生産(3+1)し、大手中食業者への新品種や加工食品の取引提案1により関係を強化3するとともに、複数の業者との取引を拡大2することで売上依存度を下げる(3+2)。
●第4問《4+5+5+1=15点》
農業、食品加工、直営店の機能別組織4とし、専門性を高める5ことで役割分担を明確化5し新たな分野へ挑戦1する。
●第5問《1+5+5+5=16点》
後継者に対し①直営店以外の食品加工や農業1を経験させ②常務が経営管理の教育5を行い③実績を積ませた後に全体の権限を委譲5する。各部門に責任者を配置し、責任者への権限委譲5により後継者を補佐する人材を育成する。
(2)他の模範解答のふぞろい採点結果との点数比較
比較検討のため、私が受験生時代に参考にしていたまとめシート流の解答と、TBCの解答速報も合わせてふぞろいキーワード採点してみました
※著作権の関係上、他の模範解答は引用せずに採点結果だけ公開しています
図表Ⅱ−4 事例Ⅰの解法実況解答と他の模範解答とのふぞろい採点結果
第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 設問1 | 第4問 設問2 | 合計 | |
かものしか解法実況解答 | 12 | 17 | 15 | 15 | 16 | 75 |
まとめシート流 | 16 | 13 | 15 | 15 | 15 | 74 |
TBC解答速報 | 14 | 17 | 16 | 3 | 10 | 60 |
(3)考察
●第1問
私の解法実況解答では弱みとして与件文第6段落の「繁忙期と閑散期の人手の調整が難しい」を書いていませんが、他の模範解答ではどちらも書いていました。
第1問は強み弱みを問う情報整理の問題であり、キーワード詰め込みが有効であるため、このキーワードも書けておればもっと良かったと思います。
2-2.令和4年度事例Ⅰの合格者再現解答のふぞろい採点結果
次に、前述のブログにて再現答案を提供いただいた3人の合格者の方に了承を得たうえで、私の分を含めた4人分をふぞろい採点してみました。
(1)合計点の開示得点との比較
こちょびさんを除く3人はふぞろいキーワード採点よりも開示得点の方が高く、特にごまさんは16点もの差がありました。
図表Ⅱ-5 令和4年度合格者の事例Ⅰのふぞろい採点と開示得点の比較
ふぞろい採点 | 開示得点 | 比較 | |
ごまさん | 61 | 77 | 開示得点の方が+16 |
かものしか | 66 | 74 | 開示得点の方が+8 |
ROBINさん | 53 | 61 | 開示得点の方が+8 |
こちょびさん | 49 | 49 | ±0 |
(2)第1問(配点20点)
A社が株式会社化(法人化)する以前において、同社の強みと弱みを 100 字以内で分析せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)法人化前における内部環境分析に関わる問題である。 |
●ごまさん《1+1+2+3+3+3=13点》
強みは①経験豊富な従業員1の連携1とパート社員の活用体勢②JASとJGAPの認証2を受けた農産物③親族による二人三脚の経営体制。弱みは①経営が複雑化し役割分担が不明瞭3②繁閑による人余りと人不足3③従業員の定着が悪い3。
●かものしか《2+1+1+1+3+3+1=12点》
強みは①作り方にこだわった2野菜の栽培②農業経験豊富な従業員1が互いにうまく連携1し③有機JASとJGAPの認証1。弱みは①従業員に明確な役割分担が無く3②従業員の定着が悪く3、帰属意識の高い従業員の確保が難しい1こと。
●ROBINさん《1+1+2+1+3+3=11点》
強みは①作り方にこだわった1野菜②甘さと食感が人気のサツマイモを共同開発1した洋菓子が特産品2として認知度が高い1点。弱みは①従業員間で明確な役割分担がなく3②天候の影響や季節的な繁閑により人手調整が難しい点3。
●こちょびさん《2+1+2+3+3+3=14点》
強みは①有機JASとJGAPの認証2取得②高品質1な有機野菜と洋菓子が贈答用2として地元の特産品となっていること。弱みは①従業員間の役割分担がされていない3こと②需給調整問題3③従業員の定着が悪い3こと。
●考察
第1問は情報整理問題で、4人の点数に大きな差は無かったですが、ふぞろいでは弱みで3つのキーワードにそれぞれ3点配点しており、そのキーワードを3つとも書けていたごまさんとこちょびさんの得点が高くなっていました。
第2問以降のふぞろい配点では「繁閑への対応力」への施策を書いてもあまり点数が付かないため、私の意見として一貫性の観点からは弱みには「繁閑への対応力」は書かなくてもよい気がするのですが、ふぞろい流では書いた方が点が付いていました。
(3)第2問(配点20点)
A社が新規就農者を獲得し定着させるために必要な施策について、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)基盤事業における人材の採用と定着の方法について、助言する能力を問う問題である。 |
●ごまさん《2+5+5+3+2=17点》
①農業大学校の学生にインターンシップを活用2し農業の魅力を伝え5②ジョブローテーションを通し地域の農業関係者との関係性を構築5し③フレックスタイムやシフト勤務の活用で業務の負荷を分散3して従業員の定着2を図る。
●かものしか《5+5+1+2=13点》
必要な施策は①コンセプト5を打ち出した採用活動を行い②従業員間で役割分担を明確化し、需給に応じたパートの採用を行い③地域の農業関係者との関係づくりの機会5を設けることで、従業員のモラールを高め1定着を図る2。
●ROBINさん《5+2+1+2=10点》
施策は①新卒・中途採用により幅広く人材を獲得し②OJTによる教育5でコミュニケーションを円滑化2し、一体感を醸成し③表彰制度や公平な評価制度の導入で士気向上1し、定着率を高める2。
●こちょびさん《(5-2)+2=5点》
施策は①若手従業員の活躍を㏚し、新卒社員を採用②後継者の例を㏚し、Uターン中途社員を採用③適切な配置と能力開発(5-2)を行い④適切な評価で士気を向上させ⑤貢献意欲を向上させることにより、従業員の定着を図る2。
●考察
再現答案解説ブログでの評価と同じく、ごまさんが高得点となっていました。その要因としては「施策が具体的であること」と「施策が第7段落に記載の問題点への対応策になっていること」の2つです。
(4)第3問(配点20点)
A社は大手中食業者とどのような取引関係を築いていくべきか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)主要取引先との関係の強化と新しい分野の探索について、助言する能力を問う問題である。 |
●ごまさん《2+2+3=max6点》
大手中食業者対応の部門を新設して役割分担を明確にし①定期的ミーティングで情報交換を進め2て顧客ニーズに沿った商品開発2を進める②高まる要求水準への対応能力を強化3していく。以上で事業拡大と売上の安定を図る。
●かものしか《(3+1)+1+2+3+(3+2)=15点》
①大手中食業者からの要求水準に対応し、対応能力を蓄積しながら新品種生産(3+1)の余力を確保1し②食品加工や直営店で複数の業者と取引2することで、大手中食業者との関係を維持3しながら売上依存度を下げる(3+2)。
●ROBINさん《2+(3+2)+3+3+1=14点》
助言は①厳しい要求に対する対応能力を高め、信頼関係を築き、対等に交渉2できるようにし②大手中食業者への依存度が高まらないよう留意(3+2)しながら取引関係を維持3し、デリバリー事業を拡大3し売上向上1を図る。
●こちょびさん《1+3+2+3=9点》
大手中食業者と協力し①人にやさしく環境にやさしい農業を打ち出し、高品質野菜1を使用した製品を開発3し販売する②協業で新たな品種を開発生産し中食業者が販売2する。以上により提携関係を強化3し、取引を継続する。
●考察
この問題のふぞろい採点ではごまさんの点数が一番低かったです。再現答案解説ブログでも書いたとおり、「大手中食業者との関係を強化」と「新しい分野の探索により大手中食業者への依存度を下げる」の両面について書ければふぞろい採点でも高得点となり、比較的書けていた私とROBINさんの点数が高くなっていました。
(5)第4問設問1(設問1と2の合計で配点40点)
A社の今後の戦略展開にあたって、以下の設問に答えよ。 (設問1) A社は今後の事業展開にあたり、どのような組織構造を構築すべきか、中小企業診断士として50字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)経営戦略の展開にあたっての経営組織の構造について、助言する能力を問う問題である。 |
●ごまさん《2+2+2=6点》
生産、直営店、食品加工の事業部制2とし、利益責任を明確2にし迅速な意志決定2で事業拡大と事業承継を進める。
●かものしか《5+2+1=8点》
直営店や食品加工と農業を分離5した事業別組織とする。理由は、意思決定の迅速化2と収支責任の明確化1のため。
●ROBINさん《5+5=10点》
明確な役割分担5により各事業の専門性を高め5つつ人材流動し、繁閑に応じた人手不足に対応する。
●こちょびさん《1+2+2=5点》
直営店と食品加工分野を後継者に一任し、育成1しながら経営成績を明確化2できる、事業部制組織2にするべき。
●考察
この問題では、機能別組織と事業部制組織のどちらの組織形態が正解か論争がありましたが、どちらも書いていないROBINさんがふぞろい採点では一番高得点でした。
その理由としては、ふぞろいでは組織形態よりも「役割分担を明確化し、各組織の専門性を高める組織構造を構築する」ことが書けていれば高得点となるからでした。
なお、再現答案解説ブログでは、与件文第10段落の「今後も地域に根ざした農業を基盤に据えつつ、新たな分野に挑戦したいと考えている」に沿った回答ができるかをポイントとしており、効果として「事業拡大」を書けていたごまさんが高得点と予想していましたが、ふぞろい採点ではむしろごまさんの得点は低かったです。この辺の相違が、ふぞろいキーワード採点と得点開示との16点差につながっていると思います。
(6)第4問設問2(設問1と2の合計で配点40点)
現経営者は、今後5年程度の期間で、後継者を中心とした組織体制にすることを検討している。その際、どのように権限委譲や人員配置を行っていくべきか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)円滑な次世代経営体制への移行プロセスについて、助言する能力を問う問題である。 |
●ごまさん《2+5+2+5+5=19点》
後継者の飲食サービス業の店舗マネジメントや商品開発の経験を生かし食品加工や直営店の責任者2として次世代経営者の経験5を積み、徐々に2生産販売、経営の権限委譲5を行う。人員配置は役割分担を明確にし適材適所で配置5。
●かものしか《2+5+5+5+1=18点》
直営店2の部門長として権限委譲5し、実績を積ませた後に全体の権限を委譲5する。人員配置5は、後継者を補佐する人材を付け、その人材を部門間で異動することで各部門の連携を確保し、事業間のシナジー1を確保する。
●ROBINさん《5+1+1+1=8点》
助言は①若手や直営店従業員に権限委譲5し、消費者の声を基にした商品開発や新しい分野への挑戦1を促し②適材適所の配置転換やジョブローテーションによりモラール向上1し、多様な人材を活用し組織活性化1を図る。
●こちょびさん《2+5+2+5+1+1=16点》
直営店の部門責任者として組織を運営2することで、次期社長としての育成5とスムーズな事業承継2を行えるようにする。若手を積極的に活用、能力に応じた適切な配置5を行い、従業員の士気向上1と組織文化の変革1を図る。
●考察
この問題のふぞろい採点では、ROBINさんだけ点数が低く、その他の3人は高得点でした。その理由は以下の2つです。
①この問題では「次期社長の育成」と「従業員への権限委譲や人員配置による組織体制の整備」の2つの論点について書く必要がありますが、ROBINさんだけ「次期社長の育成」について書けていなかった。
②この問題のふぞろいキーワードは比較的抽象的であり、点を付けられる範囲が広めで点を付けやすかった。
(7)事例Ⅰ全体まとめ
再現答案解説ブログで最後に書いたとおり、令和4年度の事例Ⅰでは合格率を一定にするための得点調整で全体的に得点が底上げされており、特に高得点の人ほど底上げの点数が多いのではないかと思います。
そのため、この事例では得点開示の高得点解答と低得点解答とを比較して、ふぞろいキーワード採点以外の要素で何が違うのかを分析してみると勉強になると思います。
3.令和4年度事例Ⅱの解法実況解答&再現解答のふぞろい採点
次に、令和5年6月8日公開のブログ
で公開した解法実況解答および再現答案をふぞろい採点してみます。
3-1.令和4年度事例Ⅱの解法実況解答のふぞろい採点結果
(1)採点結果(77点)
●第1問《3+2+3+2+2+4+4+(2+2+3=max5)=25点》
顧客は①コロナ禍でホテル・旅館、飲食店3との取引が激減2し②最終消費者3は巣ごもり需要が拡大2。競合は①B社の周囲の全国スーパー23店舗は大手食肉卸売業者4と取引し②大手ネットショップには食肉販売業者が多数存在4。自社は①高い技術力2で最高級の食肉加工品を自社ブランド2で開発でき②顧客の要望に応じた納品が可能3である。
●第2問《2+2+2+(1+2+2+1+1=max5)=11点》
コンセプトは、X県の山の幸・海の幸2の特産品を高い技術力で加工2した地域ブランド商品2とする。販路は、B社の直営小売店や高速道路1の土産物店2、道の駅2のほか、X県の大規模集客施設1や観光エリア1でも販売する。
●第3問《3+3+2+3+1+1+2+3=18点》
料理の楽しさに目覚めた客3や作りたての揚げ物を買い求める客3をターゲットとする。最高級2の食肉や食肉加工品3、途中工程までの調理済み商品1を品揃えとし、対面接客1により顧客のニーズに合わせ2た販売で売上増加3を図る。
●第4問《(3+3)+3+2+2+2+(4+3)+1=23点》
協業相手は最終消費者向けにミールキット(3+3)を販売するオンライン事業者とする。提案は、料理の楽しさに目覚めたが献立の考案や調理3を簡便化2したい最終消費者に、双方向コミュニケーション2により顧客の要望を直接把握2のうえ、B社の最高級の食肉や食肉加工品を用いたメニューのミールキット(4+3)を提案し、顧客の固定客化1を図る。
(2)他の模範解答のふぞろい採点結果との点数比較
比較検討のため、私が受験生時代に参考にしていたまとめシート流の解答と、TBCの解答速報も合わせてふぞろいキーワード採点してみました。
※著作権の関係上、他の模範解答は引用せずに採点結果だけ公開しています
図表Ⅱ-6 事例Ⅱの解法実況解答と他の模範解答とのふぞろい採点結果
第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 | 合計 | |
かものしか解法実況解答 | 25 | 11 | 18 | 23 | 77 |
まとめシート流 | 23 | 16 | 16 | 23 | 78 |
TBC解答速報 | 24 | 7 | 15 | 18 | 64 |
(3)考察
●第1問
私の解法実況解答では「第2問以降で使わない」という理由から自社に関しては強みしか書いていませんが、他の模範解答ではどちらも自社に関して弱みも書いていました。3C分析においては、自社の強みと弱みの両方を書いた方が良いかもしれません。
●第2問
まとめシート流が高得点になっていたのは、「一次産業と協業」のキーワードが書けており、ふぞろいではそのキーワードが高得点となっていたからでした。私の解答では「山の幸・海の幸」のキーワードに「一次産業と協業」も含めていたつもりでしたが、ふぞろいの採点基準ではその2つを分けて使った方が高得点になるようでした。
3-2.令和4年度事例Ⅱの合格者再現解答のふぞろい採点結果
次に、前述のブログにて再現答案を提供いただいた3人の合格者の方に了承を得たうえで、私の分を含めた4人分をふぞろい採点してみました。
(1)合計点の開示得点との比較
事例Ⅱでは、こちょびさんがふぞろい採点結果より開示得点の方が10点高く、逆にごまさんは開示得点の方が12点低い結果となり、ふぞろいキーワード採点の基準があまり当てにならない結果となりました。
ただし、開示得点が75点のROBINさんはふぞろい採点でも高得点となっていました。
図表Ⅱ-7 令和4年度合格者の事例Ⅱのふぞろい採点と開示得点の比較
ふぞろい採点 | 開示得点 | 比較 | |
ROBINさん | 82 | 75 | 開示得点の方が▲7 |
こちょびさん | 60 | 70 | 開示得点の方が+10 |
かものしか | 54 | 59 | 開示得点の方が+5 |
ごまさん | 65 | 53 | 開示得点の方が▲12 |
(2)第1問(配点30点)
B社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から150字以内で述べよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨) 内外の経営環境を分析する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん《3+2+3+2+4+2+4+(2+1+2+3=max5)=25点》
顧客面では①直営店の最終消費者3が急増中2②スーパー、ホテル・旅館、飲食店3は取引減少2③百貨店。競合面では①大手食肉卸売業者4②全国チェーンのスーパー2③ネットショッピングモール出店の食肉販売業者4。自社面では①高技術力2の職人1と良質な自社ブランド2を持ち②顧客要望に応じた納品が可能3だが③冷凍在庫の積み増しがある。
●こちょびさん《4+2+4+(1+2+2+1=max5)=15点》
顧客面は①スーパーからの受注は大手食肉卸売業者に占有され取引なし②直営店では最高級品質の肉が評判である。競合面では①大手食肉卸売業者4がスーパー2への納入を独占 ②ネット販売業者が多数存在4。自社は①観光エリアにあり、山や海の特産品の存在②高品質な食肉1・加工品を自社ブランド2で開発③高い技術力2の職人1の存在。
●かものしか《3+2+3+2+2+4+(1+3+3+2=max5)=21点》
顧客は①コロナ禍でホテル、旅館、飲食店3との取引が激減2し②最終消費者3はコロナ禍の巣ごもり需要が拡大2した。競合は①周囲5km圏内で広い駐車場のスーパー23店舗が食肉を取扱い②大手ネットショップには冷凍肉販売業者4が多い。自社は①良い食肉を仕入れ1て様々な肉の消費機会に対応し3②自社工場3の加工製造は技術力が高い2。
●ごまさん《3+3+2+2+4+1+3+(3+3=max5)=23点》
顧客は①近隣住民3②ホテルや旅館、飲食店3はb社の売上は減少傾向2③百貨店、スーパーの納入量は減少傾向。競合は①近隣のスーパー23つ②オンラインに出店する多数の食肉販売業社4。自社は①最高品質の食肉1・食肉加工品②自社工場3を新設し食肉製造加工が可能②コロナ禍によりホテル・旅館との取引が激減3③自社の売上が他社に左右3される。
●考察
第1問は情報整理問題で、与件文からの抜き書きを効率よく詰め込んで書けば高得点が狙えます。
ふぞろい採点では4人の中でこちょびさんの点数が低くなっています。その理由は、顧客では現状の顧客を具体的にキーワードとして書かないと点が付きませんが、こちょびさんの解答ではそれが書けていないためです。
競合については、ふぞろいでは「食肉卸売業者」が重要キーワードとなっていましたが、私とごまさんの2人はそれが書けていませんでした。
自社については、ふぞろいでは強みだけでなく弱みも書くことが求められていますが、4人の中で弱みに関するキーワードが書けていたのはごまさんだけでした。
(3)第2問(配点20点)
B社は、X県から「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ、県の社会経済活動の促進に力を貸してほしい」という依頼を受け、B社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行うことにした。商品コンセプトと販路を明確にして、100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)自社の強みを生かして地域課題の解決を図るための商品戦略と流通戦略について、助言する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん《5+2+2+2+1+(1+1+1+2+2+1=max5)+1+1=19点》
コンセプトは、農業との協業5で山・海の幸2を高い製造加工技術2を活かした最高級2の加工品1。販路はホテル・旅館1、飲食店1、高速道路1の土産物店2、道の駅2等の観光エリア1で最終消費者に販売し、地域活性化1と売上拡大1を図る。
●こちょびさん《2+2+5+1+2+1=13点》
コンセプトは、X県の山や海の幸2をB社の加工技術を生かし2た加工品にし、B社の食肉加工品5とセットにして販売する。販路は、高速道路1や道の駅2で試食販売を行い、X県の魅力を伝えながら地域経済の活性化1を図る。
●かものしか《2+5+(1+2+2+1=max5)=12点》
商品コンセプトはX県の海の幸、山の幸2の特産品と自社の食肉とを合わせた加工食品5を販売する。販路は①直営小売店や高速道路1の土産物店2、道の駅2などで販売し②飲食店1へ加工食品を使ったメニュー提案を行う。
●ごまさん《2+2+2+1+1+2+2+1=12点》
地元事業者と協業し山の幸、海の幸2を活かした地域ブランド2を立ち上げ、こだわりの高品質2な食品加工品1を開発して直営小売店、高速道路1の土産物店2道の駅2で販売し、口コミを誘発して新規顧客を獲得し県の経済を活性化1させる。
●考察
4人の採点結果の中ではROBINさんが高得点となっていますが、その理由は、ふぞろいでは「一次産業との協業」を高得点キーワードとしており、4人の中でそれを書けていたのがROBINさんだけだったからです。
事例Ⅱの再現答案解説ブログでは「一次産業との協業」はノーマークでしたが、確かに、設問文には「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ」と書いてあり、また与件文第7段落には「野菜・果物・畜産などの農業、漁業」という記載もあるので、「一次産業との協業」というキーワードもありだと思います。
(4)第3問(配点20点)
アフターコロナを見据えて、B社は直営の食肉小売店の販売力強化を図りたいと考えている。どのような施策をとればよいか、顧客ターゲットと品揃えの観点から100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)自社の成長事業を強化するためのターゲティング戦略について、助言する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん《3+3+2+3+1+(2+2+1=max3)+3=18点》
料理の楽しさに目覚めた客3や作り立ての良質な商品を求める客3をターゲットに、最高級2のハム等の食肉加工品3、途中工程まで調理済み商品1の品揃えを強化2し、個々のニーズに合わせた2対面接客1で販売し、売上向上3を図る。
●こちょびさん《1+(3+2+3=max7)+3=11点》
ターゲットは、高級志向の工業団地の現役世代とする。店頭での試食販売1で、作り立ての揚げ物3を販売し固定客化を図り、高品質2加工品の少量パックを販売。料理にそのまま使用できるカット肉3を準備し売上向上3を図る。
●かものしか《2+3+1+2=8点》
顧客ターゲットは①B社周辺の集合住宅に家族で住む現役世代②X県都市部から高速道路で来る客とする。品揃えは最高級2の食肉や食肉加工品3とし、対面接客1により顧客のニーズに合わせた商品の販売2を行う。
●ごまさん《3+3+1+2+2+3+(2+3=max3)=17点》
近隣に住む料理の楽しさに目覚めた顧客3や、作りたての揚げ物を買い求める客3をターゲットとし対面接客1により顧客のニーズに合わせた2クオリティの高い2食肉3を訴求し、顧客満足を向上2させ食肉直営店を強化し売上拡大3を図る。
●考察
この問題のふぞろい採点結果では、高得点(ROBINさん、ごまさん)と低得点(こちょびさん、かものしか)に分かれました。
ふぞろいキーワード採点ではROBINさんとごまさんは1点差ですが、開示得点では大差がついています。その理由としては、ROBINさんの解答では「料理の楽しさに目覚めた客をターゲットに、途中工程まで調理済み商品の品揃えを強化する」という新たな施策が具体的に助言できているのに対して、ごまさんの解答ではその部分が具体的ではなく、現在の直営店で行っていること(与件文第4段落の記載「対面接客による買物客のニーズに合わせた販売を行い」)とどう違うのかが分かりにくいことが挙げられます。
こちょびさんはふぞろいキーワード採点では低い点となっていますが、ダナドコのうち「何を」と「どのように」の部分で具体的な助言を書けているため、キーワードとは別の基準で開示得点での高得点につながっていると思います。
私(かものしか)の解答は、ターゲットを外している、「何を」と「どのように」が具体的でない、効果が書けていないの三重苦で、不合格解答の見本となっています。
(5)第4問(配点30点)
B社社長は、新規事業として、最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出すつもりである。ただし、コロナ禍で試した大手ネットショッピングモールでの自社単独の食肉販売がうまくいかなかった経験から、オンライン販売事業者との協業によって行うことを考えている。 中小企業診断士に相談したところ、B社社長は日本政策金融公庫『消費者動向調査』(令和4年1月)を 示された。これによると、家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は「献立の考案」(29.4%)、「調理」(19.8%)、「後片付け」(18. 2%)、「食材の購入」(10.7%)、「容器等のごみの処分」(8.5%)、「盛り付け・配膳」(3.3%)、「特にない」(10.3%)とのことであった。 B社はどのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するためにB社はどのような提案を行うべきか、150字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨)新規市場への参入にあたって必要となる取引関係の構築、商品戦略、協業先がとるべきコミュニケーション戦略の提案について、助言する能力を問う問題である。 |
●ROBINさん《(3+3)+2+4+3+3+2=20点》
X県の農家やミールキット(3+3)販売業者と協業し、食材にこだわり家事は簡便化したい2現役世代の家庭に向けた商品をオンラインで販売する。具体的には、農家の野菜とB社の途中工程までの調理済み商品4や最高級の食肉加工品をセットにし、献立の考案が不要で調理が簡単3なミールキット3として販売し、差別化・高付加価値化2を図る。
●こちょびさん《(3+2)+3+2+2+3+4+2=21点》
全国の食通家庭に高級食材セット販売する(3+2)オンライン販売事業者と協業する。献立の考案・調理・後片付け3等、家事を簡便化したい家庭のニーズ2に答え、X県の特産品とB社の高級肉・加工品を使用2し、簡単調理・片付けが楽にできるレシピ3と食材セット4を提案。顧客増加で販売事業者との関係性を深め、長期的な売上拡大2を目指す。
●かものしか《3+3+1+2+2+2=13点》
協業すべき事業者は、半加工の食材3と献立のレシピ3のセットを最終消費者へ向けて定期的1に販売するオンライン販売事業者である。行うべき提案は、個々の顧客の要望をオンライン上で収集2し、双方向コミュニケーション2により顧客のニーズを把握することで、新規メニューの開発に活かす2ことである。
●ごまさん《3+4+2+2+(1+2=max2)=13点》
協業すべきは献立や調理方法の情報を提供3し顧客ニーズ収集のできるオンライン販売事業者。地元事業者と育成した地域ブランドの高品質な食品加工品4を訴求し、収集した顧客ニーズ2を製品作りに活かし2固定客化1して売上げを拡大2。
●考察
この問題のふぞろい採点では、ROBINさんとこちょびさんが高得点、私(かものしか)とごまさんが低得点に分かれました。
高得点の2人は、提案の部分でダナドコを意識した解答が書けていますが、顧客ニーズ収集については書いていません。
一方、低得点の2人は、提案の部分で顧客ニーズ収集について書いていますが、ターゲット顧客が求める価値について書けていません。
開示得点でもROBINさんとこちょびさんが70点以上であることから考えると、この問題では顧客ニーズ収集について書くよりも、ターゲット顧客が求める価値について解答することが求められていたのではないかと思います。
(6)事例Ⅱ全体まとめ
事例Ⅱでは、4人の開示得点に対してふぞろい採点の方が低い場合と高い場合の両方があり、ふぞろいキーワード採点とは別の基準で採点されている可能性が高いと思います。
別の基準とは、例えば設問間の一貫性や助言の具体性、ダナドコのフレームワークに沿った助言の論理性などだと思います。
4.令和4年度事例Ⅲの解法実況解答&再現解答のふぞろい採点
次に、令和5年4月29日公開のブログ
で公開した解法実況解答および再現答案をふぞろい採点してみます。
4-1.令和4年度事例Ⅲの解法実況解答のふぞろい採点結果
(1)採点結果(75点)
●第1問《2+2+4+3+4=15点》
販売面の課題は、コロナ禍2による業務用食器・什器の受注減少2を補う為の受注拡大4である。生産面の課題は、X社との新規取引に伴う短納期化3や発注小ロット化4への対応である。
●第2問《3+3+3+2+2=13点》
課題は①発注元との仕様確認や設計・仕様変更の期間短縮3と②設計課での設計業務の混乱解消3である。対応策は①3次元CAD導入3で発注元とデータ共有2により設計期間を短縮し②設計課内のプレス加工と板金加工の担当を分離2して、金型製作期間の短縮を図る。
●第3問《4+4+4+4=16点》
対応策は①発注ロットサイズに合わせた加工ロットサイズ4を柔軟に設定し②生産計画は全社一括で立案4のうえ計画作成頻度を短サイクル化4し③プレス加工機の製品変更時に段取り作業の手順を見直して段取り時間を短縮4することで、発注小ロット化に対応する。
●第4問《2+2+2+3+3+3+2+2=19点》
デジタル化の内容は①発注元からの商品企画②設計課のCADデータ2③生産計画2および在庫情報2④X社からの月販売予測と発注データ3である。社内活動は①情報をDB3化し②情報の交換と共有3にパソコンを使用し③運用を標準化のうえマニュアル化2して教育2を行う。
●第5問《3+1+1+3+2+2=12点》
今後の戦略に持つ可能性は①X社からの高価格製品3の受注拡大②短納期化1や発注小ロット化への対応1によるX社以外の新規取引先からの受注3③アウトドア商品の生産ノウハウ獲得2による自社独自製品の開発2・販売、である。
(2)他の模範解答のふぞろい採点結果との点数比較
比較検討のため、私が受験生時代に参考にしていたまとめシート流の解答と、TBCの解答速報も合わせてふぞろいキーワード採点してみました。
※著作権の関係上、他の模範解答は引用せずに採点結果だけ公開しています
図表Ⅱ-8 事例Ⅲの解法実況解答と他の模範解答とのふぞろい採点結果
第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 | 第5問 | 合計 | |
かものしか解法実況解答 | 15 | 13 | 16 | 19 | 12 | 75 |
まとめシート流 | 12 | 11 | 16 | 13 | 11 | 63 |
TBC解答速報 | 15 | 12 | 20 | 15 | 14 | 76 |
(3)考察
●第1問
事例Ⅲの再現解答ブログでも書いたとおり、私の意見としては「ベテラン技能者の高齢化に伴う若手育成」は選ばない方が高得点になると思っていましたが、ふぞろい採点ではそのキーワードにも点が付いていました。
また、私の解法実況解答では短納期化や小ロット化への対応を課題とする理由として「X社との新規取引」と書いていますが、まとめシート流やTBC解答速報ではそのようには書いていませんでした。
私は与件文だけを読んで「X社との新規取引」と書きましたが、第2問の設問文には「プレス加工製品では短納期生産が一般化している」と書かれているので、「X社との新規取引」と書かない方がよいかも知れません。この点はふぞろいキーワード採点では影響がないですが、実際の採点では影響があるかもしれません。
●第4問
私の解法実況解答ではキーワード詰め込みでふぞろい採点高得点となっていますが、まとめシート流やTBC解答速報では、特に社内活動の解答でキーワード詰め込みではなく手順を意識した論理的な解答となっていました。この問題は助言問題なので、実際の採点ではキーワード詰め込みよりも論理的な解答の方が高得点になるかもしれません。
4-2.令和4年度事例Ⅲの合格者再現解答のふぞろい採点結果
次に、前述のブログにて再現答案を提供いただいた4人の合格者の方に了承を得たうえで、私の分を含めた5人分をふぞろい採点してみました。
(1)合計点の開示得点との比較
事例Ⅲでは、ふぞろい採点結果よりも開示得点の方が高い人と低い人に分かれており、キーワード以外での採点基準があると思います。ただし、前述の事例Ⅰや事例Ⅱと較べると点差が少なめであり、比較的キーワード採点が当てになるのかもしれません。
図表Ⅱ-9 令和4年度合格者の事例Ⅲのふぞろい採点と開示得点の比較
ふぞろい採点 | 開示得点 | 比較 | |
UAさん | 76 | 81 | 開示得点の方が+5 |
かものしか | 61 | 64 | 開示得点の方が+3 |
JBさん | 62 | 58 | 開示得点の方が▲4 |
KOさん | 60 | 56 | 開示得点の方が▲4 |
YKさん | 60 | 55 | 開示得点の方が▲5 |
(2)第1問(配点20点)
2020 年以降今日までの外部経営環境の変化の中で、C 社の販売面、生産面の課題を 80 字以内で述べよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨) 新型コロナウイルスのパンデミックや急激な円安など 2020 年以降今日までの外部経営環境変化の中で、C 社に生じている販売面と生産面の課題について、分析する能力を問う問題である。 |
●UAさん《2+2+4=8点》
販売面はコロナの影響2で低迷する卸売企業2社2以外の販売先をコスト低減や生産性向上提案で開拓4。生産面はPB商品で蓄積したノウハウを活用して独自商品開発を行うこと。
●かものしか《2+2+4+3=11点》
販売面の課題は、コロナ禍2による業務用什器の受注減少2を補うための、新規の受注拡大4。生産面の課題は、ベテラン技能者の高齢化に伴う若手への技能伝承3。
●JBさん《2+4+4+3=13点》
販売面は①観光需要減少2に対し新規顧客を獲得4すること、②雑貨・日用品のBtoC市場開拓。生産面は①ロットサイズ適正化4②ベテラン技能者の高齢化対応として若手育成3。
●KOさん《2+2+4+3+1+1=13点》
販売面は、コロナ2による受注量減少2を補うための新規受注先の確保4である。生産面は、①技能者高齢化に伴い若手の育成3②全社生産計画立案1による生産効率化1である。
●YKさん《4+3+1+3=11点》
販売面はX社との取引拡大4で卸売企業2社依存への売上依存からの脱却3を図ること。生産面は生産計画立案1を週次化し、X社の発注7日後納品に対応3すること。工程負荷平準化。
●考察
販売面の課題については、難易度が低く5人の間に大きな差は付いていないと思います。
生産面の課題については解答が分かれていますが、5人中3人が若手の育成について書いています。
私の意見としては、設問文の「2020年以降今日までの外部経営環境の変化の中で」という記載を制約条件として捉えた場合、若手の育成は外部経営環境の変化と関係がないため書くべきではないと思っていますが、ふぞろいのキーワード採点では点数が付いていました。
(3)第2問(配点20点)
C社の主力製品であるプレス加工製品の新規受注では、新規引合いから量産製品初回納品まで長期化することがある。しかし、プレス加工製品では短納期生産が一般化している。C社が新規受注の短納期化を図るための課題とその対応策を120字以内で述べよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨) プレス加工製品の金型製作工程と製品量産工程の生産プロセスにおいて、新規受注の際に長期化する要因を整理し、短納期化するための課題とその対応策について、助言する能力を問う問題である。 |
●UAさん《3+2+2+3+1+2+2=15点》
課題は金型製作期間の短期化である。対応策は①3DCADを導入3して発注元とデータ共有2し確認や変更を減らし②プレス加工と板金加工の設計担当を分け2て設計期間を短縮3③ベテラン技術者からOJT1で若手に技術承継2して生産性を向上することで短納期化2する。
●かものしか《3+3+3+2+2=13点》
課題は①発注元との仕様確認、設計変更、仕様変更の期間を短縮3し②設計課での設計業務の混乱を解消3すること。対応策は①3次元CAD導入3により発注元とのデータ共有を図り2、設計期間を短縮し②設計課内でのプレス加工と板金加工の担当を分離2すること。
●JBさん《2+2+2=6点》
課題は①金型制作短縮化②生産の効率化。対応策は①CADを発注元と共有2し、仕様確認を行う、個別受注の設計を標準化し担当を分ける2、②生産計画を短サイクル化し、複数人で段取りを行い、ロットサイズを小さくする。以上により短納期化図る2。
●KOさん《3+3+2+1=9点》
課題は①設計工程の仕様確認遅れ3と設計の混乱をなくす3②金型工程のLTの短期化である。対応策は①発注元とのオンライン化でタイムリーは仕様変更を行えるようにすること、担当者を専任2で混乱を防ぐこと②熟練職人の技術を標準化し教育1で負荷の平準化を図る事。
●YKさん《2+2+3+1+2=10点》
課題は①発注元とのやり取り効率化2②ベテラン作業員のノウハウ承継2である。対応策は①3DCAD導入で変更のやり取りを少なく3し②ベテラン作業員のノウハウを標準化マニュアル化しOJTで教育1を行う。以上でプレス加工製品の短納期化2を図る。
●考察
この問題のポイントは2つあると思います。
1つめは、JBさんが課題として書いている「生産の効率化」とその対応策にふぞろい採点では点が付かないことです。
この問題の設問文と与件文をよく読むと、新規受注の納期には製品量産工程も含まれているため、課題として「生産の効率化」を書くことは間違いとは言い切れないと思うのですが、ふぞろいキーワード採点では点を付けていません。その理由としては、課題を新規受注時に限定していることと、解答の内容が第3問と重複することがあると思います。
2つめのポイントは、若手への技能伝承が短納期化につながるかです。私の意見としては、与件文の第8段落には金型製作課のベテラン技能者の高齢化が納期に影響しているとの明確な記載がないため、若手への技能伝承が短納期化にはつながらないと思っていますが、今回の5人中3人が技能伝承による短納期化を解答に書いており、ふぞろいキーワード採点ではそれで点数も付きます。その理由として、与件文第8段落には「担当者は、金型の修理や改善作業も兼務し」と書いてあるためだと思います。
(4)第3問(配点20点)
C社の販売先である業務用食器・什器卸売企業からの発注ロットサイズが減少している。また、検討しているホームセンター X社の新規取引でも、1回の発注ロットサイズはさらに小ロットになる。このような顧客企業の発注方法の変化に対応すべきC社の生産面の対応策を 120字以内で述べよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨) 顧客企業の発注ロットサイズの小ロット化への変化に対応するためのC社の製品量産工程の課題を整理し、その対応策について、助言する能力を問う問題である。 |
●UAさん《(4+4+4+4+2=max16点)+3+1=max20点》
対応策は①基準日程から確定受注量にあわせてロットサイズを決定4②小ロット化で増加する段取り作業の見直しと人員補強4③プレス加工のみの生産計画を全社化4、短サイクル化4して生産統制を実施2する。以上で生産能力の効率化3を図り、在庫適正化1する。
●かものしか《4+4+4=12点》
対応策は①生産計画について、プレス加工と製品部品組付、製品仕上との一括計画を立案4し②発注ロットサイズに合わせた加工ロットサイズを設定4し③プレス加工機の製品変更時に、段取り作業の手順見直しや外段取り化により段取り時間を短縮4すること。
●JBさん《4+4+2+4=14点》
対応策は①月1回の生産計画を短サイクル化4し、全社的に行い4②生産統制2により現品管理を行い在庫適正化を図る③発注情報を早期に顧客から入手し計画のスピード向上を図り、ロットサイズの適正化4を図る。
●KOさん《4+4+2+4=14点》
対応策は①全社を通しての生産計画4を立案・DB化、見直しの短サイクル化4を行うことで、タイムリーに受注を生産計画に反映②進捗管理・在庫管理情報を反映2し、適切な生産ロットサイズに見直しを行う4こと、である。
●YKさん《4+2+4+4=14点》
対応策は①プレス加工工程だけでなく全体を考慮した生産計画を策定4し管理等統制2し②月度生産計画を改め生産計画立案を週次日次等に短サイクル化4し、適正な資材発注と加工ロットサイズで顧客要望である小ロット生産に対応4していく。
●考察
この問題では、与件文の第9~11段落および第17段落に基づき解答することとなり、ふぞろい採点ではキーワードをいくつ書けたかで点数の差が付いています。
解答の論点の流れとしては、大きくは以下の2つになると思います。
①生産計画の全社化・短サイクル化→生産統制の実施
②発注ロットサイズに合わせた加工ロットサイズの設定→段取り作業の増加に伴う段取り時間の短縮
なお、生産計画の短サイクル化は第11段落に記載の「業務用食器・什器卸売企業からの受注」では必須ではないですが、与件文の第17段落に記載のとおり、X社との新規取引では必須の対応策となります。
(5)第4問(配点20点)
C社社長は、ホームセンターX社との新規取引を契機として、生産業務の情報の交換と共有についてデジタル化を進め、生産業務のスピードアップを図りたいと考えている。C社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動はどのように進めるべきか、120字以内で述べよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨) 生産業務のスピードアップを図り、生産リードタイムを短縮するためのC社の生産業務の課題を整理し、そのために優先すべきデジタル化の対象、業務内容と、デジタル化構築のために必要となる社内活動について、助言する能力を問う問題である。 |
●UAさん《3+2+2+2+3+1+3+(1+1=MAX1)=17点》
優先すべき内容は①発注元からの受注情報3と設計・仕様変更情報2②全社的な生産計画2と在庫情報2。社内活動は①受注から納品に至る社内業務情報をDB化3しリアルタイム1で全社共有3し②生産プロセスの同時進行化と調達・在庫管理適正化で効率化1と納期短縮1を図る。
●かものしか《2+2+2+3+3+3=15点》
デジタル化の内容は①発注元からのデザイン図②設計課のCADデータ2③生産計画2および在庫情報2④X社からの月販売予測と発注データ3。社内活動は①X社からの予測と発注に応じた生産計画の週次化と在庫量の設定②情報のデータベース化3と共有3・管理のパソコン使用。
●JBさん《3+2+2+3+3=13点》
デジタル化の内容と社内活動は①紙でやりとりしている社内業務のデジタル化と社内プロセス改善する活動②受注3、生産2、在庫情報2のデータベース化、一元管理3して共有3する活動③生産システムを使用し生産計画を高度化させる活動を行い、X社との情報共有に備える。
●KOさん《3+2+2+3+3+1=14点》
デジタル化の内容は①紙で行われている受注情報・納期情報3②生産計画2情報③生産統制2情報等である。社内活動は①DB化し一元管理3を行い全社で共有3すること②週次の定例会を行い共有、コミュニケーションを図ること。以上により、生産性向上と生産効率化1を図る。
●YKさん《3+3+1+3+1=11点》
優先内容は①四半期ごとのX社からの商品企画と月販売予測②確定納品情報③これまでの受注内容3である。社内活動は①それらをデータベース登録3し②リアルタイム1で更新し③社内で誰でも閲覧可能3にし④チーム間やりとりをパソコンにし、生産業務の効率化1を図る。
●考察
この問題のポイントとしては以下の2つが挙げられます。
1つめは、デジタル化の内容として、与件文の文章と図から「設計情報」「受注情報」「生産計画情報」「資材発注のための在庫情報」であることを整理できるかです。5人のうちでこの4つとも書けていたのはUAさんと私(かものしか)の2人だけでした。
2つめは、私が社内活動として書いていた「生産計画の週次化」にはふぞろい採点では点が付かないことです。その理由は、「生産計画の短サイクル化」は第3問で解答する内容であることと、デジタル化とは直接的に関係しないことです。
(6)第5問(配点20点)
C社社長が積極的に取り組みたいと考えているホームセンターX社との新規取引に応えることは、C社の今後の戦略にどのような可能性を持つのか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。 |
(中小企業診断協会による出題の趣旨) ホームセンターX社との新規取引に応えることによって、C 社の今後の戦略に影響する製品や市場、業績などに生じる新たな可能性について、助言する能力を問う問題である。 |
●UAさん《1+(2+2+2=max4)+3+2+3+3=16点》
売上拡大することで経営を安定化1し、蓄積した最終消費者向け製品のノウハウ2と強みの金型製作技術(2+2)を活用して高付加価値3な独自製品を開発2することができる。卸売企業2社依存の脱却3を図りながら新市場で受注拡大3する。
●かものしか《2+3+1+1+3=10点》
今後の戦略の可能性は①X社からの新たな雑貨用品の受注②技術の高さ2を生かした高価格製品3の受注の拡大③コスト削減と生産性向上1に結びつく提案1により、X社以外からの新規取引先からの受注の拡大3。
●JBさん《(2+2)+3+3+3+3=16点》
今後は①強みの金型制作ノウハウ(2+2)を生かし、差別化した高付加価値商品3を販売②X社の物流、販売機能を利用し、生産に注力③多角化により新たなBtoC市場の開発3を行う。以上により経営リスクの分散3と売上増加3を図る。
●KOさん《2+2+3+3=10点》
①PB商品の受託2で安定した受注を得られる反面中国の復活や競合他社の参入で、コスト競争に巻き込まれ低価格になる可能性②自社2高付価値製品の開発3を行い、構築したX社との関係で販売を行い、売上拡大3の可能性。
●YKさん《2+(2+1+1+1+1=max4)+3+2+3=14点》
助言は①X社の受注2に応えノウハウ蓄積2や稼働率向上し短納期化1・小ロット化1に対応した体制構築で差別化②コスト低減や生産性向上提案(1+1)で高付加価値3化。成長市場2を捉えて卸売企業への売上依存から脱却3し事業発展を図る。
●考察
この問題のふぞろい採点では、以下①~③の事項に関するキーワードが書けていると高得点になっていました。
①与件文第15段落の記載と関連する「成長市場であるアウトドア商品市場での成長」
②与件文第15~16段落の記載と関連する「自社の強みを生かした製品の高付加価値化」
③第1問の販売面の課題と関連する「業務用食器・什器卸売企業への依存からの脱却」
(7)事例Ⅲ全体まとめ
事例Ⅲのふぞろいキーワード採点では、UAさんだけが高得点で、残りの4人は60~62点の2点差以内に収まっていましたが、その4人の中でも開示得点では最大9点の差がありました。
各人の解答について、キーワード以外の要素である文章の論理性や設問間の一貫性、助言問題における文章の分かりやすさ、記述内容の根拠(与件文、1次知識、自分の経験、ほか)、などを比較してみると、勉強になると思います。
Ⅲ.事例Ⅳにおけるふぞろいの活用法
1.事例Ⅳの難しさについて
事例Ⅳに関しては、令和5年度も簡単には正解できない難問が出題されると予想します。
理由としては、事例Ⅳは正解非公表ながら比較的正解を特定しやすいため、素点で多くの受験生が60点以上を取れてしまうと、合格率を一定に調整することが現実的に不可能だと思うからです。
そのため、素点では60点をなかなか取れない問題を出題したうえで、合格率が一定になるよう素点から得点を底上げする形で得点調整するのではないかと思っています。
(1)事例Ⅳの難しさの3要素
私は、事例Ⅳの難しさを理論、解法、記述の3つに分解して考えています。
図表Ⅲ-1 事例Ⅳの難しさの3要素
理論 | 企業経営における財務・会計の基本的なルールやお約束の難しさ |
解法 | 個別の問題を解いて答えを求める難しさ |
記述 | 計算結果だけでなく、計算過程や説明文を書いて採点者に伝える難しさ |
事例Ⅳが苦手な人は、恐らくは理論、解法、記述の全てが苦手だと思います。
私の場合は、過去の学習歴や1次試験対策での財務・会計の勉強により、2次試験の勉強開始時点で理論の部分はギリギリ何とかなっていたと思いますが、それでも解法と記述はとても難しく感じました。
(2)事例Ⅳの理論について
私の意見として、事例Ⅳで理論の部分をクリアできていない人が解法(事例Ⅳの問題集や過去問)から勉強を開始した場合、いわゆる「一を聞いて十を知る」ことができる人であれば問題を解きながら理論も理解できると思いますが、そうでない人の場合はなかなかハードモードだと思います。
そのため、事例Ⅳが苦手な人ほど、解法の勉強とは別に理論の勉強もした方がよいと思います。
事例Ⅳの理論の勉強として必要なのは概ね以下①~④の4つだと思います。
①貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)の基本的な勘定科目とその意味を覚えること ②企業経営における主要な活動(取引)において、BSとPLがどう連動するのか、つながりを理解すること ③利益とキャッシュフロー(CF)の違いを理解し、企業経営における主要な活動(取引)において、キャッシュフロー(営業CF、投資CF、財務CF)がどう増減するのか理解すること ④企業経営において、経営戦略や経営計画を立案するために、管理会計(CVP(損益分岐点)分析、投資の意思決定、その他)をどう使うのか理解すること |
①から④まで順番に積み上げていくイメージで、経営分析の問題を解くためには②まで、CVPや意思決定会計の問題を解くためには④まで理解しておくことが望ましいです。
理論については、できれば1次試験受験時に財務・会計の勉強をした時点で理解しておくことが望ましいですが、自信が無い場合は、再度1次試験のテキストや問題集に立ち戻って理解を深めることをお勧めします。
(3)事例Ⅳの解法について
事例Ⅳでは、解法の部分が一番難しいと思います。その理由として、問題文の記述が複雑で分かりにくく、限られた試験時間内で初見の問題を見て何を答えればよいのか理解するのが難しいからです。
問題文の記述が複雑で分かりにくい問題の対策としては、問題集や過去問の演習時に解答メモを作って情報を整理しながら解くことをお勧めします。
私の解法の勉強としては、「中小企業診断士 第2次試験 事例Ⅳの解き方」(TAC出版)を2周したあと、事例Ⅳの過去問を年度別に10年分(平成24年度~令和3年度)を2~3周の、累計28事例解きました。
過去問を解いた後の解答解説では、スタディングの教材(ロジックマップ)と「事例Ⅳの全知識&全ノウハウ」(同友館)を利用していました。
(4)事例Ⅳの記述について
事例Ⅳでは、問題を解いた結果を解答用紙に記述するのも難しいです。
事例Ⅳの記述の方法としては主に以下の3種類です。
図表Ⅲ-2 事例Ⅳの記述の方法
数字・語句 | 解答欄に解答の数字、数字+単位、または指定された語句(財務指標の名称など)を書く |
計算過程 | 指定のサイズの解答欄に解答の計算過程を書く |
文章 | 解答欄のマス目に合わせた指定文字数で解答の文章を書く |
この中で特に難しいのは計算過程と文章の記述です。
計算過程の記述の難しさは、以下の2つです。
①解答欄のサイズがあまり広くなく、計算過程の全てを書けないため、要点を簡潔に書く必要がある。
②解答の計算結果が間違っていた場合でも部分点が取れるよう、理論を理解していることが採点者に伝わるよう書く必要がある。
また、文章の記述の難しさは、以下の2つです。
①基本的に財務・会計の知識を使って書く必要があり、与件文や設問文のヒントが少ない場合もある。
②指定文字数が少なめであることが多く、書きたい内容を書ききれない場合がある。
(5)私の事例Ⅳ60点確保のための戦法
過去問演習の結果、私の能力では同じ問題を3回ぐらい繰り返して解けば正解できますが、初見の問題で正解するのは難しいことを悟りました。
図表Ⅲ-3 私の過去問演習時のふぞろい自己採点結果(事例Ⅳ)
その前提で、私が昨年立てた事例Ⅳ60点確保のための戦法は「計算過程の部分点と文章記述問題で点を稼ぐ」でした。
その結果、令和4年度の2次試験本番では、第1問の設問2(経営分析問題の記述)を後回しにして空欄のまま試験時間終了になるなどの大失敗もしながら、何とか65点を取れたのはこの戦法のおかげだったと思います。
この「計算過程の部分点と文章記述問題で点を稼ぐ」を意識して勉強するにあたり、ふぞろいが大いに役に立ちました。
2.事例Ⅳにおけるふぞろいの使用目的
私の事例Ⅳにおけるふぞろいの使用目的は、「理論や解法ではなく、記述の部分に特化した参考書として活用する」です。
具体的には、以下の3つの目的で使っていました。
①自分の解答を自己採点して点数化し、計算問題では正解できなくても部分点が付くことを理解する ②計算問題の計算過程の記述で、何を書けば部分点が付くのかを理解する ③文章記述問題で、何を問われた時に何を書けば点数が付くのかを理解する |
なお、まことに申し訳ありませんが、私は事例Ⅳだけ再現答案を作っていないため、計算過程の記述や文章記述問題に何を書いて本番で65点を取れたのか、実例を示すことができません。
(1)計算問題では正解できなくても部分点が付くことを理解する
図表Ⅲ-4は、過去5年分(平成30年度~令和4年度)の事例Ⅳ過去問のうち、第1問(経営分析)を除く計算問題の配点と、そのうち計算結果が正解の場合のみ付く点数について、ふぞろいを用いて分析した結果です。
このグラフによると、令和4年度の事例Ⅳでは、計算を間違えていても55点中最大44点の部分点が付くことになります。
例えば同年度の第3問設問1では、買取価格を販売予想額の60万円より高い675,000円と解答しても部分点が付くという、驚きの分析結果となっていました。
図表Ⅲ-4 事例Ⅳの計算問題(経営分析を除く)の配点とその内訳
(2)計算問題の計算過程の記述で、何を書けば部分点が付くのかを理解する
事例Ⅳの過去問演習では、主にAASのサイトの解答用紙をダウンロードのうえ紙に印刷して解答を書き込んでいました。その場合、計算問題の計算過程の欄が私にとっては狭く、大体6行ぐらいしか書き込めないため、計算過程の全てを書くのは無理でした。
そのため、過去問演習後の復習時には、ふぞろいの計算過程の再現答案を参考にして、何を抜粋して書けば良いのかを確認していました。
私の令和4年度の再現答案はありませんが、ご参考として、令和3年度の過去問演習時に書いた解答のふぞろい採点結果を紹介します。
①令和3年度 第2問設問1(b) ふぞろい配点6点
第2問 D社はこれまで、各店舗のレジを法定耐用年数に従って5年ごとに更新してきたが、現在保有しているセミセルフレジ100台を2022年度期首にフルセルフレジへと取り替えることを検討している。またD社は、この検討において取替投資を行わないという結論に至った場合には、現在使用しているセミセルフレジと取得原価および耐用期間が等しいセミセルフレジへ2023年度期首に更新する予定である。 現在使用中のセミセルフレジは、2018年度期首に1台につき100万円で購入し有人レジから更新したもので、定額法で減価償却(耐用年数5年、残存価額0円)されており、2022年度期首に取り替える場合には耐用年数を1年残すことになる。一方、更新を検討しているフルセルフレジは付随費用込みで1台当たり210万円の価格であるが、耐用期間が6年と既存レジの耐用年数より1年長く使用できる。D社はフルセルフレジに更新した場合、減価償却においては法定耐用年数にかかわらず耐用期間に合わせて耐用年数6年、残存価額0円の定額法で処理する予定である。また、レジ更新に際して現在保有しているセミセルフレジは1台当たり8万円で下取りされ、フルセルフレジの代価から差し引かれることになっている。 D社ではフルセルフレジへと更新することにより、D社全体で人件費が毎年2,500万円削減されると見込んでいる。なお、D社の全社的利益(課税所得)は今後も黒字であることが予測されており、利益に対する税率は30%である。 (設問1) D 社が2023 年度期首でのセミセルフレジの更新ではなく、2022 年度期首にフルセルフレジへと取替投資を行った場合の、初期投資額を除いた2022 年度中のキャッシュフローを計算し、(a)欄に答えよ(単位:円)。なお、(b)欄には計算過程を示すこと。ただし、レジの取替は2022 年度期首に全店舗一斉更新を予定している。また、初期投資額は期首に支出し、それ以外のキャッシュフローは年度末に一括して生じるものとする。 |
●私の過去問演習時の解答《2+2=4点》
減価償却費 フルセルフレジ3,500万円、セミセルフレジ2,000万円、差額1,500万円2
セミセルフレジの除却損 (20-8)×100=1,200万円2
2022年度中のキャッシュフロー
(2,500-1,500-1,200)×0.7+1,500+1,200=2,560万円
●考察
人件費削減額が2,500万円であることを明記できていないので、ふぞろい採点ではその分の部分点が付かないと判断しました。
なお、ふぞろい配点では(a)の解答が25,600,000円と書けていれば(b)も満点ですが、「単位:円」の制約条件を見落として(a)を千円単位で解答してしまった場合などには(b)が部分点で採点されることになるようです。
②令和3年度 第2問設問2 ふぞろい配点10点
当該取替投資案の採否を現在価値法に従って判定せよ。計算過程も示して、計算結果とともに判定結果を答えよ。なお、割引率は6 %であり、以下の現価係数を使用して計算すること。 |
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | |
現価係数 | 0.943 | 0.890 | 0.840 | 0.792 | 0.747 | 0.705 |
●(参考)私の解答のプロセス(金額の単位:万円)
■正味現在価値の計算式 =投資により将来得られるキャッシュフロー(CF)差額の現在価値の合計-投資額 ■投資額 フルセルフレジ1台:210 セミセルフレジ下取り1台:8 フルセルフレジの投資額:210×100-8×100=20,200(①) ■2022年度末のCF差額:2,560(②) →設問1で計算したとおり、2022年度のフルセルフレジとセミセルフレジの減価償却費の差額1,500万円、およびセミセルフレジの除却損1,200万円が②に反映されている ■2023年度期首のセミセルフレジの更新にかかる支出: 100×100台=10,000(③) →取替投資を行う場合、③の支出が不要となるので、セミセルフレジ更新と比較して③のCFが増えると見なす ■2023年度末から2027年度末の各年度のCF差額: =利益の増加額-利益の増加額に対する税金+減価償却費の増加額 =(人件費削減額2,500-減価償却費の増加額1,500)×(1-税率30%)+減価償却費の増加額1,500 =2,200(④) →取替投資を行わない場合、更新後のセミセルフレジの減価償却費2,000万円が発生するので、その分は意思決定に関わらず発生する埋没費用(サンクコスト)としてフルセルフレジの減価償却費3,500万円から引いて、取替投資による増加額1,500万円のみを考慮する ■2027年度末のフルセルフレジの残存価額:0(⑤) →残存価額がある場合、売却してCFが増えると見なす ■セミセルフレジ更新時の2027年度末の残存価額:0(⑥) →残存価額がある場合、売却してCFが増えると見なすので、取替投資を行う場合はセミセルフレジ更新と比較してその分のCFが減ると見なす ■正味現在価値 =(2022年度末のCF差額×1年の現価係数)+(2023~2027年度末の各年度CF差額×2~6年の現価係数の合計)+(2027年度末の残存価額の差額×6年の現価係数)-投資額 =(②+③)×0.943+④×(0.890+0.840+0.792+0.747+0.705)+(⑤-⑥)×0.705-① =(②2,560+③10,000)×0.943+④2,200×(0.890+0.840+0.792+0.747+0.705)+(⑤0-⑥0)×0.705-①20,200 =20,586.88-20,200 =386.88(万円) |
●私の過去問演習時の解答《5+3+2=10点》
正味現在価値が386.88万円5であり投資すべき2である。
各年度のキャッシュフロー 1年後 2,560万円 2~6年後 2,200万円
初期投資額の差額 (210-8)×100-(100×100)×0.943=10,770万円
正味現在価値
2,560×0.943+2,200×(0.890+0.840+0.792+0.747+0.705)3-10,770=11,156.88-10,770=386.88万円
●考察
初期投資額の差額を考慮していることをアピールするため、わざわざ正味現在価値の計算と分けて記載しましたが、他の模範解答では正味現在価値の計算の中に含めているのが多数派だったので、
正味現在価値
(2,560+10,000)×0.943+2,200×(0.890+0.840+0.792+0.747+0.705)-20,200=20,586.88-20,000=386.88万円
と書いた方がよいかもしれません。
設問2では単位の指定が無かったため万円単位で解答しましたが、ふぞろいでは設問1に合わせて円単位を正解としていたので、実際の採点では減点されるかもしれません。
③令和3年度 第3問設問2(b) ふぞろい配点4点
第3問 D社は現在、新規事業として検討している魚種Xの養殖事業について短期の利益計画を策定している。 当該事業では、自治体からの補助金が活用されるため、事業を実施することによるD社の費用は、水槽等の設備や水道光熱費、人件費のほか、稚魚の購入および餌代、薬剤などに限定される。D社は当面スタートアップ期間として最大年間養殖量が50,000kgである水槽を設置することを計画しており、当該水槽で魚種Xを50,000kg生産した場合の総経費は3,000万円である。また、この総経費に占める変動費の割合は60%、固定費の割合は40%と見積もられている。D社がわが国における魚種Xの販売実績を調査したところ、1kg当たり平均1,200円で販売されていることが分かった。 (設問2) D社は最適な養殖量を検討するため、D社の顧客層に対して魚種Xの購買行動に関するマーケティングリサーチを行った。その結果、魚種Xの味については好評を得たものの魚種Xがわが国においてあまりなじみのないことから、それが必ずしも購買行動につながらないことが分かった。そこでD社は魚種Xの販売に当たり、D社の商圏においては販売数量に応じた適切な価格設定が重要であると判断し、下表のように目標販売数量に応じた魚種Xの1kg当たり販売単価を設定することにした。 この販売計画のもとで、年間1,500万円の利益を達成するための年間販売数量を計算し、(a)欄に答えよ(単位:kg)。また、(b)欄には計算過程を示すこと。 |
表 魚種Xの販売計画
目標販売数量 | 販売単価 |
0kg~20,000kg以下 | 販売数量すべてを1kgあたり1,400円で販売 |
20,000kg~30,000kg以下 | 販売数量すべてを1kgあたり1,240円で販売 |
30,000kg~40,000kg以下 | 販売数量すべてを1kgあたり1,060円で販売 |
40,000kg~50,000kg以下 | 販売数量すべてを1kgあたり860円で販売 |
●私の過去問演習時の解答《2+2=4点》
kg当り変動費 360円1 固定費 1,200万円1
年間利益1,500万円1時の販売数量をχとすると、条件に合うのは単価1,060円1時
単価1,400円時 (1,400-360)χ=1,200万+1,500万=2,700万 χ≒25,962kg
単価1,240円時 (1,240-360)χ=2,700万 χ≒30,682kg
単価1,060円時 (1,060-360)χ=2,700万 χ≒38,572kg
単価860円時 (860-360)χ=2,700万 χ=54,000kg
●考察
ふぞろい採点では単価別の利益1,500万円達成のための年間販売数量を列挙した部分には点が付きませんでしたので、この部分は書かなくてもよいかもです。
(3)文章記述問題で、何を問われた時に何を書けば点数が付くのかを理解する
事例Ⅳでは毎年文章記述問題が出題されており、この問題では何か書いて空欄にしないことが60点以上取るためには重要です。
図表Ⅲ-5は、過去10年分(平成25年度~令和4年度)の事例Ⅳについて、文章記述問題の配点をふぞろいを用いて集計したものです。
このグラフによると、計算が不要で文章記述だけの問題の配点が8~30点で、過去4年分では20点となっています。
また、経営分析問題の記述も配点が10~14点となっています。
また、計算問題に付随する文章記述問題が過去10年間で6回出題されており、出題された場合の配点は最大20点となっています。
図表Ⅲ-5 事例Ⅳの文章記述問題の配点の内訳
文章記述問題では、過去問演習時に事例Ⅳ年度別全問一式を80分で解いたうえで、ふぞろいでキーワード採点を行い、ふぞろいの再現答案と比較して何を書けば点が付くかを確認しました。
そのうえで、知識があやふやな場合には1次試験で使っていた教材に立ち戻り、問題の内容に関連する知識の復習を行っていました。
私の令和4年度の再現答案はありませんが、ご参考として、令和3年度の過去問演習時に書いた解答のふぞろい採点結果を紹介します。
①令和3年度 第1問設問2(経営分析問題の記述)ふぞろい配点14点
D社の財務的特徴と課題について、同業他社と比較しながら財務指標から読み取れる点を80 字以内で述べよ。 |
●(参考)設問2の解答の前提となる、私の設問1の解答
※優れていると考えられる指標を①、②の欄に、課題を示すと考えられる指標を③、④の欄に記入
(a) | (b) | |
① | 売上高総利益率 | 27.78(%) |
② | 棚卸資産回転率 | 25.79(回) |
③ | 売上高営業利益率 | 0.32(%) |
④ | 負債比率 | 403.82(%) |
●私の過去問演習時の解答《(3+1+1+2+3+4+1=max11)+3=14点》
地元密着3の経営で売上原価と商品が少なく、売上高総利益率1と効率性が高い1。顧客獲得競争2と移動販売事業で販管費3と借入金4が多く売上高営業利益率と安全性が低く1、改善が課題。
●考察
少ない文字数の中で、与件文のキーワードと財務的特徴との因果関係を論理的に書く必要があります。
私の解答は、ふぞろいキーワード採点では満点ですが、文章の論理性の面で以下①~③の問題があり、実際の採点基準では満点が付かないと思います。
①「地元密着の経営」と「売上原価と商品が少なく」との間に因果関係が無い。「売上原価と商品が少なく」は書かなくてもよい。
②なぜ「移動販売事業」のせいで販管費と借入金が多くなるのか分からない。移動販売事業の代わりに与件文に記載のキーワードである「不採算事業」と書くか、または文字数が許せば「不採算の移動販売事業」と書く方がよい。
③優れている点に「売上高総利益率」、課題に「売上高営業利益率」を挙げているため、「収益性」と書かずに財務指標をそのまま書いており、結論として収益性が良いのか悪いのか分かりにくい。与件文の記載に従い、課題の方で売上高営業利益率ではなく「収益性」と書く方がよい。
②令和3年度 第4問設問1(記述のみの問題)ふぞろい配点10点
第4問 D社は現在不採算事業となっている移動販売事業への対処として、当該事業を廃止しネット通販事業に一本化することを検討している。 (設問1 ) 移動販売事業をネット通販事業に一本化することによる短期的なメリットについて、財務指標をあげながら40 字以内で述べよ。 |
●私の過去問演習時の解答《4+4=8点》
トラックの固定資産と人件費の販管費が削減4され、売上高営業利益率4と安全性が改善する。
●考察
第1問の財務的特徴と課題を意識した解答が必要だと思います。
私の解答では第1問設問2の記載を受けて「安全性が改善」と書いていますが、ふぞろいキーワード採点では点が付きませんでした。また、そもそも安全性は財務指標ではありません。
なお、ふぞろいではトラックの固定資産削減によるメリットとして「有形固定資産回転率が改善」と書けば点が付きますが、第1問のふぞろいキーワード採点では「有形固定資産回転率」を優れている指標としており、第1問との一貫性が取れていないように思います。
③令和3年度 第4問設問2(記述のみの問題)ふぞろい配点10点
D社の経営者は移動販売事業を継続することが必ずしも企業価値を低下させるとは考えていない。その理由を推測して40字以内で述べよ。 |
●私の過去問演習時の解答《4+3=7点》
地元の高齢化4が進むエリアを対象としており、地元密着3のブランドイメージ強化に繋がる為。
●考察
財務・会計の知識が無くても解答できる問題です。企業経営理論の知識の方が役に立つと思います。
■おわりに
以上のとおり、私はふぞろいを、事例Ⅰ~Ⅲでは自己採点用のデータ集、事例Ⅳでは記述の部分に特化した参考書、として活用していました。
受験生の皆さんも、ふぞろいと他の教材とを上手く組み合わせて活用することで、合格を勝ち取ってください。
次回はMokaさんの登場です。
お楽しみに!
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